愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月

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6 夫を探すも

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夫の風貌を頼りに探し歩く。
見つけたこの家だ。
もうすぐそこに。今、私が参ります。

そこには、見間違えるはずのない夫と、見知らぬ女と、生まれたばかりらしい赤子の幸せそうな家族。

「どちらさまです?可愛らしい人。」

髪の変わった私が夫にはわからない。
その人は誰。
その子は誰。

「愛する妻と愛する我が子です。」

声の変わった私が夫にはわからない。
妻は村に。
ひとりで村に。

「3年も前に、森を抜けてこちらへ来たんです。」

瞳の変わった私に夫はわからない。
今も待っているのに。

「魔物に傷ついた俺を看病してくれた妻なのです。」

肌も、唇も変わった私が夫にはわからない。
傷つきながら、森を抜けて来たのに。

「妻と子は、私の大切な家族です。」

夫は、私に気付かない。
姿の変わった私は変わらずあなたを愛しているのに!

「森の向こう側には私の故郷がありますが、もう2度と戻れないでしょう。あの森は恐ろしいのです。」

私は、何のために、ここに来たのか。
私は、何のために、形を失ったのか。



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