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16 死の意味
しおりを挟むある日、裏口に、封筒が刺さっていた。
心が跳ねた。急いで開けると、いつかのペンダントがポロっと落ちた。
「生きていた?生きている?」
思わず、裏口から外に出て小走りで小道を進みながら周りを見渡す。以前、そうであったように、そこに、彼が居た。
「レイル?」
レイルは確か、反乱軍でそこそこのポジションに居ると、かつてウィリアムがこの場所で言っていた。であれば、今頃政変に伴う業務で忙しいはず。こんな所に居るはずがなかった。
「元気そうで良かったよ。」
「どうしてここに?」
「形見を、届けに。」
ペンダントの意味を知って、それを手の中で握りしめながら泣いた。何が悲しいのかわからない。
「最期の言葉を届けに。」
レイルは再び口を開いてそう言った。
「聞かせて。」
「直接謝りに行けなくてごめん。と。」
彼がそうなることは知っていた。でも、もしかしたらと希望を持っていたのか。溢れる涙は、せめて、私だけはあなたの死を望んでいなかったと、叫びの代わりに流れるように止まらなかった。
レイルはオリヴィアを抱きしめて
「今回のことで領地を賜った。そこに、王女と殿下の菩提を作ってある。……秘密裏に御体を運んだんだ。」
数日後、オリヴィアはレイルの領地だというその土地に赴いていた。小さなお堂に2本の墓石が立っているだけの、質素なものだったが、十分に手入れは行き届いており、彼等は満足しているだろうと、そう思える。
「彼等の最期は、レイルが立ち合ったの?」
「王女は間に合わなかった。見つけた時には自分で自分の首に短刀を突き刺した格好で倒れていたよ。」
「殿下は……しぶとくてね。なかなか見つからなくて。見つけたと思っても逃げられて。やっと姿を捉えても、ものすごく抵抗したらしくてね。牢に入れて繋いでからも、手足を引き千切る勢いで暴れるものだから、どうしたものかと報告がきて会いに行ったんだ。そうしたら、私を見て、ペンダントと言葉をオリヴィアに伝えてくれと。そのあとは大人しく処刑されたよ。最期の瞬間も、穏やかな顔をしていた。」
「自害、処刑、どちらも、どれほど、怖かったでしょうね。」
本当に、彼らは死ななければならなかったのか。何の理由があって死んだのか。王家に生まれただけで、その責任を背負う意味があるのか。考えてもどうしようもない憤りに涙が溢れるのは仕方のないことだろう。
時と場所が違えば、違う身分で出会っていれば、もしかしたら、オリヴィアと彼の未来もあったかもしれない。
世の中の流れの、転換期の生贄のようだ、と思った。
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