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6 ウィリアム視点
しおりを挟む夜会でダンスをした時は、嬉しくて楽しくて、こうやってずっと楽しく過ごせたら良いと思った。
良い気分で居たのに、オリヴィアが特定の男と親密にしていることに気づいてしまった。
「何だあいつ?」
と、呟くと、エリアスが教えてくれる。
「オリヴィアの馴染みの文官らしいよ。何でも、あの男を頼って王宮での職に応募したらしくて、何かと親しくしているって話だ。」
「何だそれ?」
「王宮に勤めるにはそれなりに厳しい審査もあるし、細い伝手でも頼ってみたんじゃないか?」
「伝手って、あの男はただの文官なんだろう?」
「だから、オリヴィアは文官になる予定だったんだよ。そこにタイミング良く王女の付き人の寿引退で、後釜を探していたんだよ。そりゃ王女の付き人ともなれば、公式に募集はしていなかったんだけど、噂にならないわけがない。自他推薦も山程届くだろ。その中で、目に留まったのが彼女だったんだ。辺境の伯爵の出で、どの派閥にも属していない、年廻りもちょうど良いってな。」
「へえ……。」
ウィリアムは、この時、聞き間違えをしてしまった。辺境伯の出だと思い込んでしまう。
ウィリアムは海辺の港町へ数日の視察に行った。ふとお土産屋を覗いて、可愛い小さな珊瑚をあしらったペンダントを見つけた。
「あいつの瞳みたいだ。」
思わずそれを買って包ませたが、店を出てから
「お前、それ、あの付き人にじゃないだろうな?」
とエリアスからの茶々が入る。
「別に良いだろう。ただの土産だ。特に深い意味があるわけじゃない。」
「いや、不味いだろうそれは。」
「なんで?」
「装飾品は、まず、王女に渡さないと。王女を差し置いて付き人が受け取るわけがないだろう?」
「そうか。ならシャーロットにも、」
と戻ろうとすると、
「王女に渡すものはキチンとした宝飾店でないと。」
と、言うので、宝飾店で選ぶことにした。
宝飾店らしく、緑の透明感のある翡翠が置いていた。
「色も丁度良いな。」
と、それを選んだ。値段が土産物の珊瑚とは段違いで驚いた。
帰ろうとしたら、
「これをいくつか買って置いた方が良いんじゃないか?」
とエリアスが言う。
「なんだ?」
と見ると、手頃な値段の石の、アクセサリーが叩き売りのように下げられている。店の人の話では、
「それは瑪瑙です。翡翠よりは、石の価値としては劣りますが、それでも美しいでしょう。多種の色があって、価格もお手頃なので、貴婦人などがご自宅の使用人達にお土産にしたりするのに丁度良いと人気なのですよ。」
エリアスが言うにはこういうことだ。
「オリヴィアは、プレゼントを受け取らないことで有名だからな。皆にお土産だとでも言わないと、受け取って貰えないかもしれない。」
「なるほど。カムフラージュしないと受け取って貰えないのか。」
「そういうことだ。」
なるほど。色々考えるものなんだな。と感心して、エリアスの言うとおりにした。30個ほど買って、包装紙の色やリボンの掛け方を統一感のないようにしてもらった。
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