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しおりを挟む少し待っていると、果実水を2つ持って現れた。そして、ひとつをシャーロットに、もうひとつをオリヴィアに差し出す。
「お前にも。」
「まあ、お気遣いありがとうございます。」
果実水は冷たく炭酸が喉に気持ちいい。
「えっと、それから……、レディ、おれ、私と一曲お願いできますか?」
と、手を差し出してきた。
「あらまあ。私にそのようなことはしてくださらなくても良いのですよ。」
「なっ、そういうところがなあ——!」
「王子様の仮面が剥がれ落ちておりますわ。」
「うっ……」
それを見ていた陛下が、
「良いじゃないか。せっかくの夜会だ。楽しまないと損だろう。シャーロットはここで私が付いて居よう。」
シャーロット様も
「そうね。お父様にエスコートされるなんて嬉しいわ。それならオリヴィアも安心でしょう?」
と、ニコニコしながら仰るので、
「そうですか?なら、お願いしようかしら。」
と、ウィリアムの方を向くと、
嬉しそうに
「では、お手をどうぞ。」
と、エスコートしてくれた。
この殿下、こんなこともできたのね。と、感慨深く思いながらエスコートに従った。思いのほか、優しく踊りやすいリードで楽しく踊れた。
「お前、けっこう上手いのな。」
「お褒めいただき光栄です。あなたもお上手ですわ。腐っても王子様ですのね。見直しました。」
「なんでいつも一言多いんだよ。」
「ふふ。このやり取りが嫌いではない癖に。」
「まあな。お前もだろ。」
「そうですわね。」
その会話までが聞かれたとは思わないが、レイルがこちらを見つめているのが少々気になったので、手紙にでも言い訳を書いておいた方が良いかしら。と、思った。
シャーロットが疲れたので部屋に戻ると言うので、部屋まで付き添った後、少しだけレインとの時間が取れた。
「オリヴィアは王弟の息子と仲が良いのかい?」
「んーどうかしら。王女に会いにしょっちゅうお茶会に来るのよ。それで話すようになっただけ。」
「そうか……。あの王弟の息子は王のお気に入りだ。」
「ああ、聞いたことあるかも?」
「陛下は恐ろしい方だから気をつけるんだよ。」
「そうだったわ。とても厳しいお方だと噂だったわね。シャーロット様やウィリアム殿下にはお優しいから忘れそうになるわ。」
「そうか。陛下の機嫌を損ねなければ大丈夫だ。身内を傷つける相手には容赦なく沙汰を下せるお方だ。王女に気に入られているオリヴィアなら大丈夫だろうが、気をつけるに越したことはないからね。それより、もっとゆっくり時間が取れると良いんだけど。」
「お互い忙しいもの。いつか一緒に住めたら、たくさん甘えるわ。」
「はは、お手柔らかにお願いするよ。」
ほんの少しの時間だったけれど、今日はレイルとも話せたし良い日だった。
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