輝く人

彩柚月

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12 地上では。

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 地上では。

 輝夜が渡した箱の中には、空に昇る羽衣と、穢れを落として寿命を延ばす水が入っていた。

 主上は、箱を持って高い山に登ってみたが、輝夜の居る空には届きそうもない。
 
 「これを使ったところで、お互いの記憶がないのなら、この恋しい気持ちは成就することはない。」

 ——おもふことならでは世の中に生きて何かせむ
 (自分の願うことが成就しないのなら、生きることに何の意味があるだろう。)

 主上は、登った山で、箱を燃やしてしまった。
 燃やした煙は、長くて空へと立ち登る。
 

 

 空では。

 光の神と雷の神が皆を集めてこう言った。
 「地上に取って我々は危険であり、我々にとって地上は危険である。今後、どうあっても、地上と我らは、決して相容れることはない。干渉をしてはならない。」

 そして、地上を覗ける隙間は、全て閉じられた。テンペスタの人達は、水場をマゴニアに作って、双方の国の関係はますます強まった。

 テンペスタの女の子が生んだ娘は、空の水を飲むうちに、地上のことを忘れていった。

 かつての2人の女の子は、今も仲の良い友達。

 二つの国は、地上から決して見えない場所に、消えて行った。

 
 光の神と雷の神。
 その名は、イザナギとイザナミ。
 至高のの存在が作り出した、最初の2柱。


 
——終わり——
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