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夜風で冷ます
しおりを挟む「泡沫っていうのはさ。はかないとか、淡く消えてしまうって意味だろう?じゃあ泡沫の夢は、実現できずにあっという間に消えた夢ってこと。それで、どんな夢を見ていたの?」
ディック様がよろけた私を支えると同時にほんの少し抱きしめてくれているような体勢でそんなことを言っている。
「ディック様。あ…」
ーー会いたかった。
そう言いたいのをグッと堪える。
「…あ、ありがとうございます。もう大丈夫ですわ。どうされたのですか?こんなところで。」
ちょっと澄まして言う。
「ああ。眠れなくてね。もしかしてリズに会えるかと思って。」
「会えて嬉しいよ」
そうして、一本の花を渡してくれる。
遠く離れたこの場所でも同じことをしてくれる。そんな彼に心がいっぱいになる。
涙が溢れそうになったのを隠すために俯いてしまう。笑顔でお礼を言いたいのに。私、自分で思うよりも寂しかったりしたのかしら。
「リズ?顔を見せてくれないの?」
思わず涙目のままでディック様を見てしまった。
「え…泣いてる…どうしたの?何かあった?」
「ち…違…私っ…わからないけど、何か嬉しいのと悲しいのと、何かいろいろ…わからないの」
涙腺が爆発した。きっと涙の蛇口が壊れた。何故か涙が止まらない。
「リズ。少し歩いて。あそこの噴水のとこに座ろう?」
ディック様は優しい声で、懐かしい声で、私を誘導してくれた。
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