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勝手な言い分(再)
しおりを挟む「何故わたしに報告をしなかった!」
大きな音を立てて執務室の扉を開けて入って来た無礼な男はいきなり怒鳴った。
メイドはオロオロしている。侍女に目線を送ると目線が返ってきた。どうやらこの無礼な男はリチャード殿下のようだ。こんなお顔だったかしら。忙しいのに。
あら。つい最近も同じことがあったような気がするわ。
「何の話です?」
王太子リチャードのお顔を覚えておかないとまずいかしらと思案しながら聞いてみる。
「来月、クレイドの皇太子が来るそうじゃないか!」
「ええ。皇太子は私の兄ですから。重鎮の送迎のついでに参りますの。」
「そんなことは知っている!だから、何故その報告を私にしなかったのだと言っている!」
「言う必要がありましたか?」
些か驚いたエリザベスは、思わず出てしまった言葉にしまったと思いつつも、出てしまったものは仕方がないので、気を取り直して
「お迎えには王陛下と私がいたします。今回は王妃殿下も待機なさいます。リチャード殿下にも出ていただく必要はございませんわ。」
「父上が…ならばなおさら必要あるに決まっているだろう!」
「わたしはこの国の王太子だぞ!父上とお前が居て、私が居なくて良いはずがないだろう!」
「はぁ…そうですか。」
この人は何もわかっていないのかしら。というより、知らないのかもしれない。
まぁ…迎賓していただけるのなら、わざわざお断りすることもありませんので、その気があるのならお迎えしていただきましょうか。
「では、後ほど来訪日時を文書でお知らせいたしますわ。」
「最初から素直にそうしておけば良いのだ。それから歓迎パーティにも出るからな。」
「歓迎パーティなど行いません。したとしてもせいぜい会食ですわ。」
「なに?侯爵家では夜会を行うと話が出ていたが…」
「そもそも秘匿しておくべき事柄です。侯爵に情報が漏れているのは遺憾ですが、まあ、もう継承まで時間もないことですし、貴族達にも色々と気持ちの準備も必要でしょうし、少々はかまわないでしょう。皇太子は、公式の行事のためではありますが、事前にひっそりと訪国なさるのです。歓迎の夜会など開くわけがありません。」
「うん…うん?」
あ、ダメだ。この人全然わかってない。この国の王陛下は色々放棄したとは仰って居たけれども、この人のことも放棄して居たらしい。
「まぁとにかく、知る気があるのなら邪魔するつもりはありませんので、報告はするようにいたしますわ。そんなことより、もう継承まで時間がないのですよ。お励みになられては如何です?」
「継承?もしかして…」
「ええ。王位の継承ですわね。」
「……!!」
「そうかとうとう…!わたしは何をすればいいのだ?しておくことはあるか?」
「特に何も。細かいことは任せていただいて結構です。殿下はいつも通りその日までお励みなればよろしいのです。」
「そうか。気を引き締めておこう」
「ええ。もうよろしいかしら。私、その準備もしなくてはならないので忙しいのです。」
心なしかウキウキとしているように見える陛下を追い出しにかかる。
もうめんどくさくなってきたので、この人が理解してようがしてなかろうがどうでもいいし、勘違いしているならそれでも構わない。どうせもうどうすることもできないのだから。
この人の血をどうするかだけが、リミットまでは決定しないだけ。私が選ぶのを引き延ばしているだけ。
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