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いつもの大樹の元。
おじいちゃんは大樹の根元で待っていた。
「この枝が何なのかわかったかね?」
「はい。扉、ですね。」
おじいちゃんは、うむと頷いて大樹を仰ぎながら話を始めた。
「この枝を我々はラスコと呼んでおる。古くは似た名前の薬草があってな。あらゆる鍵の開け閉めができたそうでの。それにあやかって便宜上そう呼んでおるが、まあ、名称なんぞは、何でも良いのだ。我々の間で通じさえすれば。これは、ユグドラシルの力の片鱗なのだ。望みの力が強ければ、その力を借りることができる。そして、」
と、メラニアを見て続けた。
「最初の5人に連なる聖人にしか与えられない枝なのだ。つまり、ここに来る道を開くことができた時点で、聖女メラニアは最初の5人の末裔ということだ。」
よくわからない。最初の5人とは何なのか。知らない話の説明を求めても良いのだろうか。
「いろいろ、話したいことも話すべきこともあるが、まずは、確認といこうかの。さあ。どの部屋が聖女メラニアのものか教えてもらおう。扉を開けるだけで良い。」
小屋のことだろうか。いつもの小屋の前に立って、扉を開けた。
「中にお入りになりますか?」
と、聞くと、首を振って、
「それは無理じゃ。」
と返事をした。
「ふむ。何も、教えられておらんようだの。」
「ここへ連れて来てくれていた両親が儚くなってからは、教えてくれる人がいなくなってしまったので。」
「そうじゃろうの。」
何かバカにされたような気もして、少しムッとしてしまう。それを察してか、こう続ける。
「ここのことは、ごく限られた人間しか知らないのだ。何せ、外では話すことが許されないからの。師となるものがいなくては、何も伝えられないのは当然なのだ。だが、聖女メラニアはここへ来た。経緯を話してくれるかね?」
「はい。」
そして、両親が鬼籍に入ったあと、後見となった伯父の家族に、財産、爵位だけでなく、聖女の譲渡を迫られたこと。婚約解消に伴い、国の中枢からも聖女の譲渡を求められたこと、断ると牢に入れられて、もう死んで良いと言われたこと、牢で枝が道を作ってくれたので、逃げることができたこと、何かあったら神聖国を頼るように言われていたことを思い出して、頼ってきたことを話した。
ふむ。と大神官は考え込む仕草をしてから、
「望むならば、私がこれからできる限り教えて進ぜるが、学ぶ意思はあるかね?」
願ってもないことだ。両親が教えてくれようとしていたこと、全てを知ることができるなら、この機会を逃す手はない。
「はい。教えてください。できるだけたくさん。」
おじいちゃんは、また、うむと頷いてから、いつの間にかそこにあったティーセットの準備されたテーブルについて、メラニアにも座るように促した。お茶を注がれると、目の前に置かれて、飲むように勧めると、
「おぬしは何代目の種かの?」
と、聞いた。
「6代目です。」
ふいに聞かれて、反射的に正直に答えてしまった。
「なんと……!」
おじいちゃんは、とても驚いた様子で、瞠目してメラニアを見つめた。
「これはこれは……。久しぶりに心が躍るようじゃ。」
フォフォと笑うおじいちゃん。
「今日のところは、聖女メラニアが確かにアシュリーに連なる者であることが確認できただけで十分じゃ。明日から毎日、この時間、午前のお茶の時間に、ここに来なさい。それから、学び終わるまでは、神聖国を出ないこと、これを約束しなくては、何も教えてやれぬが、どうか?」
もちろん、メラニアにはもう、何処にも行くところはない。置いてくれるなら有難いことだ。ただひとつ、懸念があるとすれば、
「私にできる仕事はありますか?」
ということだった。
「なに。聖女は、そこに居るだけで意味がある。やりたい仕事があるのなら自由にやれば良い。ただ、聖性を失わんように気をつけることじゃ。聖女でなくなったら、神聖国に居る意味そのものを失うからの。」
「まあ、聖女メラニアは、大抵のことでは大丈夫だろうがの。強い守護がかかっておる。」
守護?何のことかわからないが、ともかく、メラニアは、神聖国に身を寄せる資格を得た、と考えて良いようだった。
おじいちゃんは大樹の根元で待っていた。
「この枝が何なのかわかったかね?」
「はい。扉、ですね。」
おじいちゃんは、うむと頷いて大樹を仰ぎながら話を始めた。
「この枝を我々はラスコと呼んでおる。古くは似た名前の薬草があってな。あらゆる鍵の開け閉めができたそうでの。それにあやかって便宜上そう呼んでおるが、まあ、名称なんぞは、何でも良いのだ。我々の間で通じさえすれば。これは、ユグドラシルの力の片鱗なのだ。望みの力が強ければ、その力を借りることができる。そして、」
と、メラニアを見て続けた。
「最初の5人に連なる聖人にしか与えられない枝なのだ。つまり、ここに来る道を開くことができた時点で、聖女メラニアは最初の5人の末裔ということだ。」
よくわからない。最初の5人とは何なのか。知らない話の説明を求めても良いのだろうか。
「いろいろ、話したいことも話すべきこともあるが、まずは、確認といこうかの。さあ。どの部屋が聖女メラニアのものか教えてもらおう。扉を開けるだけで良い。」
小屋のことだろうか。いつもの小屋の前に立って、扉を開けた。
「中にお入りになりますか?」
と、聞くと、首を振って、
「それは無理じゃ。」
と返事をした。
「ふむ。何も、教えられておらんようだの。」
「ここへ連れて来てくれていた両親が儚くなってからは、教えてくれる人がいなくなってしまったので。」
「そうじゃろうの。」
何かバカにされたような気もして、少しムッとしてしまう。それを察してか、こう続ける。
「ここのことは、ごく限られた人間しか知らないのだ。何せ、外では話すことが許されないからの。師となるものがいなくては、何も伝えられないのは当然なのだ。だが、聖女メラニアはここへ来た。経緯を話してくれるかね?」
「はい。」
そして、両親が鬼籍に入ったあと、後見となった伯父の家族に、財産、爵位だけでなく、聖女の譲渡を迫られたこと。婚約解消に伴い、国の中枢からも聖女の譲渡を求められたこと、断ると牢に入れられて、もう死んで良いと言われたこと、牢で枝が道を作ってくれたので、逃げることができたこと、何かあったら神聖国を頼るように言われていたことを思い出して、頼ってきたことを話した。
ふむ。と大神官は考え込む仕草をしてから、
「望むならば、私がこれからできる限り教えて進ぜるが、学ぶ意思はあるかね?」
願ってもないことだ。両親が教えてくれようとしていたこと、全てを知ることができるなら、この機会を逃す手はない。
「はい。教えてください。できるだけたくさん。」
おじいちゃんは、また、うむと頷いてから、いつの間にかそこにあったティーセットの準備されたテーブルについて、メラニアにも座るように促した。お茶を注がれると、目の前に置かれて、飲むように勧めると、
「おぬしは何代目の種かの?」
と、聞いた。
「6代目です。」
ふいに聞かれて、反射的に正直に答えてしまった。
「なんと……!」
おじいちゃんは、とても驚いた様子で、瞠目してメラニアを見つめた。
「これはこれは……。久しぶりに心が躍るようじゃ。」
フォフォと笑うおじいちゃん。
「今日のところは、聖女メラニアが確かにアシュリーに連なる者であることが確認できただけで十分じゃ。明日から毎日、この時間、午前のお茶の時間に、ここに来なさい。それから、学び終わるまでは、神聖国を出ないこと、これを約束しなくては、何も教えてやれぬが、どうか?」
もちろん、メラニアにはもう、何処にも行くところはない。置いてくれるなら有難いことだ。ただひとつ、懸念があるとすれば、
「私にできる仕事はありますか?」
ということだった。
「なに。聖女は、そこに居るだけで意味がある。やりたい仕事があるのなら自由にやれば良い。ただ、聖性を失わんように気をつけることじゃ。聖女でなくなったら、神聖国に居る意味そのものを失うからの。」
「まあ、聖女メラニアは、大抵のことでは大丈夫だろうがの。強い守護がかかっておる。」
守護?何のことかわからないが、ともかく、メラニアは、神聖国に身を寄せる資格を得た、と考えて良いようだった。
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※諸事情によりしばらく連載休止致します。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
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