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1 とかげ
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ぼくは今、暗闇の中で暗い空を見つめている。
雲はさっきからひとつもなく、月と星が優しく光っている。
前の記憶は、ほとんどない。ある記憶といえば、ぼくがいまさっき起きて、目をぱちぱちとしながらまたたく星と月をぼーっと見ていた時間のことしかない。
ぼくは、何をしたらいいのかわからなかった。
ずっとこうしていても、なにも起きそうにないと思ったので、ぼくは地面に手をついて起き上がった。すこしめまいがしたのでおさまるまでしばらく待った。
ああ。どのくらいこうしているのだろうか。なにもする気がわかない。何か起きてくれ。
ぼくの希望が消えかかったそのとき、何か動くものが視界に入った。ぼくはすぐにその動くものに目をやった──とかげだ。とかげ。とかげにこんなに鋭い爪はあるのか?だがそれ以外は普通のとかげと変わりはない。しまった。こんなことを考えていたら、とかげがすごいスピードで道をかけていく。ぼくは必死になって、とかげが視界から消えないように、必死で、必死で、追いかけて行った。肺が破れてもいい。足の感覚がなくなってもいい。ぼくは今までにないくらい必死になって追いかけた。
どのくらい走ったのだろうか。とかげがようやくスピードを落とした。
ぼくは息をきらしてとかげについて行った。ようやく歩ける。だがぼくは集中力を切らさなかった。ここでとかげを見失ったら、元も子もない。
しばらく歩いていたら、とかげがあるシルクハットの中にするりと入った。ああ、苦しい。ぼくはとりあえず息を整えた。そして、シルクハットの中に入っているとかげを見るために、おそるおそる、シルクハットを持ち上げてみた。緊張で手がふるえる。シルクハットに手のふるえが伝わって小刻みに動く。
そして、黒くきれいに輝くぼうしを、中身が見えるくらいの高さまで持ち上げた。ぼくはそれを見た瞬間、骨の髄まで凍ったのかと思ったほどの衝撃がはしった。
人の頭がある。生首だ。とかげは? それよりもこの頭はなんだ。怖い。ぼくはすぐさまこのぼうしを離した。怖い。と、突然、中からくぐもった声がした。
「ハッハッ。すこしはやすぎるとはおもわんかね。もう少しおちつけ、少年よ。」
生首がしゃべった。男の声だ。だが、生首がしゃべるなんてありえない。ほかの人がしゃべったのか?ぼくは辺りを見回した。が、だれもいない。ほかの可能性も考えるほど、今のぼくには冷静さがなかった。
ぼくは今までにないくらい心臓の鼓動が速くなった。
と、ぼくがまばたきをした瞬間、そこにはシルクハットはなく、きちんとはきこなされた、きれいな靴があった。ぼくはわけがわからず、とりあえず視線を上に向けていった。はきふるされているが、きれいさを保った黒いズボン。同じくきれいなスーツに赤いネクタイ。そして、さっきの黒いシルクハット。ぼくはその男に今までにないくらいの興味をそそられた。
雲はさっきからひとつもなく、月と星が優しく光っている。
前の記憶は、ほとんどない。ある記憶といえば、ぼくがいまさっき起きて、目をぱちぱちとしながらまたたく星と月をぼーっと見ていた時間のことしかない。
ぼくは、何をしたらいいのかわからなかった。
ずっとこうしていても、なにも起きそうにないと思ったので、ぼくは地面に手をついて起き上がった。すこしめまいがしたのでおさまるまでしばらく待った。
ああ。どのくらいこうしているのだろうか。なにもする気がわかない。何か起きてくれ。
ぼくの希望が消えかかったそのとき、何か動くものが視界に入った。ぼくはすぐにその動くものに目をやった──とかげだ。とかげ。とかげにこんなに鋭い爪はあるのか?だがそれ以外は普通のとかげと変わりはない。しまった。こんなことを考えていたら、とかげがすごいスピードで道をかけていく。ぼくは必死になって、とかげが視界から消えないように、必死で、必死で、追いかけて行った。肺が破れてもいい。足の感覚がなくなってもいい。ぼくは今までにないくらい必死になって追いかけた。
どのくらい走ったのだろうか。とかげがようやくスピードを落とした。
ぼくは息をきらしてとかげについて行った。ようやく歩ける。だがぼくは集中力を切らさなかった。ここでとかげを見失ったら、元も子もない。
しばらく歩いていたら、とかげがあるシルクハットの中にするりと入った。ああ、苦しい。ぼくはとりあえず息を整えた。そして、シルクハットの中に入っているとかげを見るために、おそるおそる、シルクハットを持ち上げてみた。緊張で手がふるえる。シルクハットに手のふるえが伝わって小刻みに動く。
そして、黒くきれいに輝くぼうしを、中身が見えるくらいの高さまで持ち上げた。ぼくはそれを見た瞬間、骨の髄まで凍ったのかと思ったほどの衝撃がはしった。
人の頭がある。生首だ。とかげは? それよりもこの頭はなんだ。怖い。ぼくはすぐさまこのぼうしを離した。怖い。と、突然、中からくぐもった声がした。
「ハッハッ。すこしはやすぎるとはおもわんかね。もう少しおちつけ、少年よ。」
生首がしゃべった。男の声だ。だが、生首がしゃべるなんてありえない。ほかの人がしゃべったのか?ぼくは辺りを見回した。が、だれもいない。ほかの可能性も考えるほど、今のぼくには冷静さがなかった。
ぼくは今までにないくらい心臓の鼓動が速くなった。
と、ぼくがまばたきをした瞬間、そこにはシルクハットはなく、きちんとはきこなされた、きれいな靴があった。ぼくはわけがわからず、とりあえず視線を上に向けていった。はきふるされているが、きれいさを保った黒いズボン。同じくきれいなスーツに赤いネクタイ。そして、さっきの黒いシルクハット。ぼくはその男に今までにないくらいの興味をそそられた。
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