ヤンデレBL作品集

みるきぃ

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◆「俺は、男だ!クソ野郎」【前編】

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主人公受け
杉本 岬(すぎもと みさき)


攻め
岬以外全員


※中学生くらいに書いた作品なのでかなり読みづらい作品になってます。ギャグ多めです。




◇◇◇




季節は、春。

「う~ん!今日はいい天気だな」


俺、杉本 岬。今日から高校一年生になる。そんな俺を祝うかのように空は雲一つない快晴。


「あぁ、俺もやっと高校生か…」


彼女の1つや2つ…いや、3つ!ぜってぇ作ってやるぜ!


「ふっ」

やべぇ…ワクワク過ぎて、つい笑いが。何だって俺は今まで彼女ができたことがないのだから。



「おーい、そこの彼女」


すると、嬉しさに浸っていた俺の肩に、何やら知らない奴の手が置かれた。


「は?」


俺は、急なことでよくわからなくて、ニヤついてる知らない男を睨んだ。その男の後ろにも2人の男がいた。


「うわっ、すげぇ可愛いじゃん」

「俺、タイプかも」

「ねぇ…彼女」


すると、囲まれてしまった。

えっ…。ちょ、待って。今、俺に向かって“彼女”って言わなかったか?



「いやいや待て待て。俺は、男だ」


すぐさま訂正してもらわないとこちらが困る。どうやったら、俺を女だと勘違いするんだよ。コイツらの目大丈夫か…?本気でそう思った。



「君、面白いこと言うねぇ…」

「こんなに小さくて、肌も白くて可愛い子が男なわけないじゃん」

「何?俺らをからかってんの?可愛いー」



なに言ってんだ、コイツら。


「だから男…」

「そんな嘘、すぐわかっちゃうし」


いやいやいや!嘘とか意味わかんねぇよ!



「よく見ろ!俺の制服」



そうだ、俺は今制服を着ている。もちろん、男ものだし。これを見たらもうわかるだろう。わからないとは言わせないぞ!これでも気づかなかったらこいつら人間じゃない。



「はっ?そんなんじゃわかんねぇよ」



グイッ

すると、男どもは、俺の体を動けないように押さえつけた。


「ちょ、お前ら何やってんだよ!?」


いきなりのことで驚く。


「さーて。ちゃんと男かどうか俺がちゃんと確かめてやるよ」


ニヤッとし、どっからどう見ても怪しすぎる笑み。うん、こいつら人間じゃない。てか、確かめるってなんだよ。意味、わかんねぇ。

押さえていた男が俺の着ているシャツのボタンを外し始めた。



「お、おい!何すんだよ!」

気持ち悪くて冷静さを失う。



「確かめてやるって言ったじゃん」


「だから大人しくしようね」


は!?ふざけんな!


「この状態で大人しくしてられっか!」

必死に抵抗するが奴らには俺の力なんて全くの無抵抗に過ぎなかった。ビクともしねぇ……くそぅ。どうすりゃいんだよ。



「じゃあ、そろそろこっちも……」


「っ!?」


気づくと男は、俺のベルトに手をかけてカチカチと次はズボンまで脱がそうとしてやがる。


「や、やめろ!」


俺は無我夢中で、大声で叫ぶ。そして奴らを威嚇するように鋭く睨んだ。



「…かわいー」


「それ睨んでるつもり?逆効果なんだけど」


少し頬を赤く染める男ども。男に可愛いとか言って気持ち悪っ!


「こ、この変態野郎!」



…本当、頭がイカれてやがる。




「やべぇー……今ので勃った」

「さすがに涙目になりながらそんなこと言われたら……」



は…!?ちょ今、俺………ヤバイんじゃね?何かを察知した俺は、バシッと腕を払おうとするがなかなか放れない。



「ま、待て!だから俺は男なんだよ!」

正真正銘の男だ。もちろんアレもついているし!


「へぇー」


「で、証拠は?」


信じてなさそうな顔をしている。


「いい加減、信じろよ!」


こんなに必死で言ってるのに普通気づくだろ。



ギュゥ

男どもは、さっきよりも俺を押さえている力を強くした。まるで、逃げられないように。


「ほ、本当だって言ってるだろ!!放せよ!」


だんだんと荒々しくなる自分の声が無理矢理連れてこられた路地裏に鳴り響いた。すると、次の瞬間少しだけ押さえつけられている力が弱くなった。力を振り絞れば俺の両手はスルリと放れてくれそうだった。でも、両手が自由になったとしても足がみっちり固定されている。あっ。…足が動かねぇと意味ねぇじゃん。




「どうなるだよ、俺…」

ため息を溢しながら言う。

もう現実逃避だ。





「だったら、早く証拠見せろよ」


…証拠……ねぇ?ふと、思いついた。もうアレしか方法はねぇよな。男だと分かれば、こいつらも血相を変えてどっか行ってくれるだろう。そして、俺はある行動に出た。


バシッー

力ずくで両手を男の手から抜け出し、自分が着ているシャツを思いっきり引っ張った。俺は勢いよくシャツを破り、堂々と奴らに見せた。胸がなかったら、いくらなんでもわかるだろう。


ふっ…これでやっと解放される。きっと奴らも今の俺を見て唖然としているに違いない……はず。

って……ん?これは見間違いか?目の前にいる男どもは、唖然としているどころかニヤニヤしているぞ!?な、なぜだ!?俺は、図上にハテナマークを浮かべながら混乱する。



「ねぇ…そんなに襲ってほしいの?サービス良いね~」


男の一人が俺の耳元で甘く囁く。


「必死なところとか可愛すぎだし…」

「興奮するね」


こ、こいつら!なんか、喜んでやがる!男だって証拠、ちゃんとシャツまで破って見せてやったのに意味わかんねぇこと言うな!


「そろそろ俺。もう限界だから入れたい」

「早く、下脱がせるぞ」

危ない言葉が聞こえ、本気でヤバいと思った。


「お、お前らもちゃんと俺が男だってわかっただろ!?んでワケわからないことすんだよ!」

マジ、勘弁してくれ。いや冗談抜きで。



「俺らだってそんなバカじゃないよ?」

「最初から君が男だって知ってたし?」


いやいやいや!待て待て!ちょっと、整理させてくれ。……最初から男だって知ってた?


「アホか!!」


何が『バカじゃない』んだよ!?最上級のバカだろ!変態だろ!ありえないだろ!?俺は、パニクりすぎてよく掴めなくなっている。頭が普段通りに回らない。俺が混乱している間に、とうとうカチカチとベルトを外されてしまった。その音で我に返る。



「く、クソ野郎!」

人をからかうのもいい加減にしろよ。ベルトは、外されたがまだチャックは下ろされていない。もし、この状態が進めば確実ヤバい。


「あ、もしかして怖いの?その様子からしたら初めてだよね」


「じゃあ、目隠ししてあげよっか」


俺の上に馬乗りしている奴に続いて、さっきから隣で恐ろしくニヤニヤしている奴が楽しそうに会話をしてる。



「っ!?」


急に視界が真っ暗になった。数秒後、布みたいので目を覆われているに気づく。




「これ、外せよ!」

視界が何も見えない中、そう叫んだ。


「大丈夫….優しくするから….….グハッ」


突然、男は変な声を出し、バタッと倒れた音が聞こえた。は…?一体何が起こったんだ?目隠しされているため、今の状況に全くついていけない。



バキッー

ガンッー


そのあと、鈍い音が色んなとこから飛び交って聞こえてきた。もう、気づけば押さえられていた体が今は、あっという間に軽くなり自由になっていた。とにかく、どうなっているのか気になった俺は、やっと自由になったその両手で目を覆っていたキツく結ばれた布をほどく。そして、ゆっくりと俺の視界にある光景を映し出す。


 はっ…なんでコイツがいんだよ。


「……………み・さ・き?」



俺の名前に変な区切りを付けて、黒い笑みでこっちを見てる。


「や、やぁ……。だ、大悟くん…」

目の前に、おそらく不機嫌気味な幼なじみの篠崎大悟がいた。その横の地面にのびてボロボロになっているクソ男どもが転がっていた。でも……どうして大悟がここに?…もしかして、助けてくれたとか?


「何、呑気に『やぁ大悟くん』だよ?ふざけてんのか?しかもそんな泣きそうな顔して」


大悟は俺に近づき、安心させるかのようにポンポンと頭を撫でた。


篠崎大悟。俺の幼なじみ。



「いや、泣きそうな顔してねぇし。それより何でお前がここにいんだよ」


「勘だよ、バカ。すげぇ心配した」


「え?」


…心配した?しかも勘って。こいつが小さい頃から世話好きってことは知っているがここまでとは…。まぁ、大悟をよく見たら、汗だくで俺を必死に探してくれたことがわかった。



「大体な!お前は無防備過ぎんだよ!少しは、警戒心くらい持て!」

いきなり、キレる大悟。



「わ、わかってるよ…」


そりゃあ、ああなったのは、俺が少し油断してただけでこれから気をつければいいことだろ。
 
別にそんな怒んなくてもいいじゃん…。


「ほ、ほらベルト.…」

シュンとなる俺に、大悟がさっき奴らに抜かれたベルトを拾って渡してくれた。


「…さんきゅ」


受け取って、ズボンにベルトを通す。でも何だかんだ思ってこいつは気が利く。


「あ、あとさ…大悟」


「何だよ」


「助けに来てくれて…そのありがとな…」

改めて礼なんて言うのなんか照れくさい。




「い、いや別に」

なぜか、頬を赤く染めてる大悟。



「お前、動揺しすぎだし」

つい、面白くなってクスッと笑ってしまった。



「じゃあ、これからは登下校、ずっと一緒な」


は?急に何を言うかと思いきや。


「それはやだ。俺、もう高校生だし、一人で大丈夫」


その途端、思いっきり深いため息を吐かれた。言っとくけど小・中学校は、ずっと嫌になるくらいコイツと一緒に登下校してたし。いや、行動が何をするのも一緒だったと言った方がわかりやすいかもしれない。ストーカーか?と思う時もあった。しかも結構、家が近いし。だから、今日高校生となった俺は、生まれて初めて、朝一人で登校したのだ。



「……高校生になったから一人で大丈夫だと?」

大悟は、さっきと違い急に表情が険しくなった。


「な、何だよ」


大悟の黒い視線に堪えられなくなり、負けじと睨む。


「お前、俺がどれだけ心配したかわかってんの?俺を殺す気かよ」



は?俺が大悟を殺す?


「そんなん知るか!!」

お、おお俺を勝手に殺人犯にするな!



「それくらい知っとけよ。また今日みたいに襲われそうになってもいいのか?」



「襲っ!?いや、あれは単に俺をからかっただけだろ」


「もうこれだから、お前は…!はぁ…この無自覚野郎」


怒ったと思ったら、急に呆れた顔になる大悟。コロコロ表情が変わるから、変な奴だ全く。もう俺は、このやりとりが面倒くさくなって、


「はいはい、わかった。いつも通り、登下校よろしくな」


俺がそう言ったら、大悟は、ホッとするようにため息を浅く吐いた。でもまだ何か言いたそうだったけど、スルーしてやった。…はい、これで解決。たくっ、せっかく高校生になったつうのに、一人じゃダメなのかよ。あぁ、よくわかんねぇから、大悟は、一人で学校にも行けないし、帰れないことにしておこう。



青空の下、曇り始めた俺の高校生活が始まった。


 
 


そして地面から体を起こし、ふと気がついた。あっ。学校に行くその前に。


「俺、ちょっと家に戻るわ」


俺のひとことになぜかキョトンとしている大悟に“遅れるかもしれないから先に行っといて”と付け足した。さすがに大悟まで遅刻にさせたくないからなあぁ、俺まじ優しすぎ。

そう思って、急いで家に戻ろうとした。…が。


ガシッー


「…人の話、ちゃんと聞いてた?み・さ・きちゃん?」


大悟が俺の腕を強く掴み、妖しい笑みを放って、動きを止めやがった。



「ちゃん付けすんなよ!じゃ、急ぐから」


俺の腕を掴んでいた大悟の手を思いっきり振りほどき、再び歩き出そうとした。

トンと次は、肩に手を置かれた。しかも離れにいように、ガッシリと固定してる。


「なんで、家に戻んの?」


はっ!?しかも大悟の周りにはただならぬ黒いオーラが漂っている。




「お前は、バカか!俺、このままだったら入学式に出れねぇだろうが!」


下から大悟を威嚇するように睨む。そう、さっき変な奴らに絡まれたとき、証拠とやらで自ら制服のシャツを破ってしまった。


「ああそういうことか。よしっ。ほらよ」


バフッー

いきなり俺の頭に何かが降ってきて覆い被された。



「ぶはっ。お前、いきなり何すんだよ」

覆い被されていたものを手で退けて訴える。


「それ俺が持ってきたのだけど着ろ」

大悟は、命令口調で“それ”を指差して俺の手の方に向ける。


ん?制服の……シャツ?なんでコイツがこんなの持ってきてんだ?一応、こっちとしては助かるけど気になる。


「まぁ俺のだから、サイズはでかいと思うけどな」


一瞬ニヤッとしたが俺の気のせいだろうか。


「いや、別にありがたいけど、何でタイミングがいんだよ」


「タイミングがいいとかじゃなくていつも持ってきてるし…念のために」


「念のためとか意味わかんねぇよ。じゃあ、まぁこれ借りるな」


そして、さっそく袖を通す。






【大悟side】



俺、篠崎大悟は、小さい頃からずっと片想いしている奴がいる。そいつは、とにかく鈍感で人の好意に気づかない危なっかしい奴だから、守るのに一苦労。

…でも小さくて華奢で触れたら壊れそうなくらい白くて細い。アイツは、女顔で超絶可愛すぎる。だから一人にしたら、まず絶対に狙われるターゲットになるだろう。

そう、俺の好きなやつは知っての通り、幼なじみの杉本 岬だ。案の定、岬を一人で行かせたら、襲われていた。しかも目隠しをされていて、襲っている奴らは、頬を赤く染めていた。岬に触んな!俺は、無我夢中で男どもを殴っていた。そして、岬が目隠しを取って、俺だと気づいた。

でも岬の格好は真新しいシャツが破れており、肌が露出されていた。これを見たときは、俺でも正直ヤバイと思った。色気が半端なく誘っているようにしか見えないのだ。そして、慌てて予備に持ってきた俺のシャツを岬に渡す。そしたら、そそくさと袖を通す岬を見て、自然と口角が上がった。




「やっぱ、お前の大きいな」

岬は、俺のシャツを着た途端、眉を八の字に曲げて言う。

「当たり前だろ」


細い身体付きの岬のサイズは、きっとSサイズだろ?あぁ、なんか、袖の部分とかあちこちブカブカしていて…岬が“俺のもの”になったみてぇだ。やべっ。思わず口を手で覆った。


そう考えただけで今、俺の顔すげぇニヤけてやばいかも。俺だって健全な男…。コイツ(好きなやつ)といたら、理性を失ってしまうが我慢している俺ってある意味すごいと思う。しかも何年も。普通のやつは、すぐ襲っているだろう。今日もまた心にある感情を抑えながら学校に向かった。






【岬side】


―――――
――――――――
―――――――――――

……。


「はぁぁぁぁあー!?」

朝の穏やかの中、俺の叫び声が鳴り響く。人生で最悪なミスを犯してしまった。これもう…無理だ。もう、なにがなんだかわかんねぇ。頭真っ白。


そんな中、俺の隣にいるこいつは、


「だ・か・ら“男子校”って言ってんじゃん」

涼しそうな顔をしてスラッと驚嘆な発言をする。…だ、男子校だと?ふ、ふざけんなぁー!


――――そう。

これは、遡る数分前のことだ。俺たちは、無事に今日から通う“早乙女学園”に辿り着いた。


「ここに将来、俺の嫁になる人がいんのかな~」

少し、伸びをしてワクワクしながら、そう呟いた。


「は?…お前バカ?」

嬉しさに浸っている俺に、ドン底に落とすようなこと言う。ふんっ。どうせ、モテないとか言いたいんだろ。あぁムカつく。ちなみに大悟は、イヤミか?って思うほど容姿端麗でカッコいい。身長も高いし…。だから、当たり前にモテる。はぁ。もうやだ。それより女子だ!俺は、気を取り直して、辺りを見渡す。なんで、こういうときに限って、

「…男子が多いんだよ」

女子は、まだか?皆さん遅刻なのか?そんな俺をさっきから、不思議そうに見ていた大悟が口を開けた。

「男子が多いのは、当たり前だろ。お前、男子校で嫁探してんの?」


バカにしたように、クスッと笑った。………ん?今、コイツ…………何て言った!?


“男子校”確かにコイツはそう言った。俺は、驚きのあまり目が点になる。待て、待て…。ちょ落ち着け俺。ここは“早乙女学園”だぞ?ちゃんと名前に“女”って書いてあるじゃん。おまけに女子がたくさんいそうな感じじゃん。何言ってのさ。


「…大悟。お前バカ?」

マジな目でそう言ったが


ポンッー

「バカはお前の方だ」


と軽く頭を叩かれた。そのあとからは、真っ白。そして今に至るっていうわけ。


「俺…聞いてねぇよ…。ここが男子校なんて…」


これから男がいっぱいいる所で3年間、通わないといけないと思うと…


ゾクッー


嫌だ嫌だ嫌だ。むさ苦しい。


「言ったじゃん」

ハハッと呆れた顔をする大悟。


「それは、今さっきだろ!?受験する前に言えよ、ゴラ!」

俺は、頑張って背伸びをして、 大悟の胸ぐらを強く掴んで力を入れた。鋭く睨み付ける。


「バカだなー。はぁ」

こうも簡単にあっさりと跳ね返された。


あぁもう、

「ふ、ふざけんなー!!!!転校してるー!!!!」

登校初日目、転校したいと思った。彼女作って、enjoyライフを夢見てた俺の憧れがあっさりと崩れ散った。こうなったからには、転校という道しか俺にはない。まだ、高校生活は始まったばっか。諦めたくない。


「転校?ははっ、無理無理」

大悟は、クスッと笑い、俺の後ろの襟を軽々しく掴み、歩き出す。

「おい、引きずるな!」

よくよく考えてみれば、転校できるほど頭は良くない。逆に異常なほど悪すぎる。


「だって、なかなか前に進もうとしねぇじゃん」

「当然だろ。ダメージが強すぎた」


精神面においては、結構重症な感じだと思う、多分。はい、夢は夢のままで終わりました。ガクッと肩を下ろす。



「まっ、とにかく時間ねぇから行くぞ」

「それより離せ」

大悟は、まだ俺の襟を掴んでいてそのまま足を進めようとしてやがる。


「あ、わりぃわりぃ」


パッと離す。今、気づいたのかよ…いちいち腹立つ奴だ、この野郎。謝っているけど、全く反省しているようには見えない。これからどうなるんだよ…俺の高校生活。淡い期待は、もう遥か空の向こう。


――――――
――――――――
――――――――――


……



「ははっ…またか」


ただいま俺は、掲示板に貼り出されているクラス表を見て苦笑い。

「すげぇな。また同じなんて」

大悟は、そう言いながら、これでもかってくらいの笑顔を見せつける。なんで、嬉しそうなんだよ…。今、視界に『1-A』というクラスの中に、俺と大悟の名前が入っていた。つまり、『1-A』=『同じクラス』が成り立つ。

…というわけで。ありえないだろ!?


「おい、大悟!てめぇは俺のストーカーかよ!!」

ちなみに言っておくがもう今回合わせて10年連続だぞ!?小1から今に至るまでのな!


「あぁもうそうなる運命じゃねぇの?」

運命とか、ドラマの話をしてるんじゃない。


「ふ、ふざけんな!」

タクッこの言葉を発したのは本日何回目か…。


「で、でもクラスに知っている奴がいてよかったかも…」

まだいないより、マシかもな、俺の場合。


「……ツンデレ(笑)」

「はっ!?」

ニヤニヤと笑う大悟。おい、急に何だよ。殺すぞ!いつもいつも俺をバカにしては、からかう。ツンデレってなんだよ。意味わからん。ま、どうせ文句言葉の一つだろ?

「ムカつく奴め!」

大悟を睨みながら、大声で言い放った。そしたら、口角を上げて笑う。その身長も整った顔も運動神経も全部ムカつく。すると、誰かが割って入ってきた。


「そこの君たち、少しは落ちついて」

「「ん?」」


誰だ?この目立つ髪の金髪野郎。


「まぁまぁこんな男ばかりの男子校でケンカはやめ…――」


金髪野郎は、俺を見てピタリと止まった。


「んだよ?」

「な、な、なんでここに女の子がいるんだ!?」

え?女子…?


「どこにいんだよ」


俺はキョロキョロと周りを見渡すが女子はいない。てか、ここって男子校だろ?さっき門のとこに【早乙女学園男子校】って詳しく書いてあるのを見たぞ。


「じゃなくて、君だよ」


「は…俺?」


コクンと頷いて俺を指差す。

は。てめぇ、舐めてんのか。


―――…この俺が女だと!?コイツ俺が小さいから女だと思ってんのか?クソッ。初対面で失礼なこと言いやがるぜ。ここは冷静に


「お前の目、イカれてるな」


俺は、ビシッと言ってやった。はぁ…今日は、女と勘違いされるの多いな…。皆、背が高いから小さい男は珍しくて女って言っているのか?じゃあ…家に帰ったらいつもよりたくさん牛乳飲まないといけなくなったな…。


「え…男なの?」


金髪野郎は、頭上に“Really?”と浮かばせている。


「当たり前だろ。てか、初めて会ったくせに失礼なこと言うな」

キッと睨む。すると、金髪野郎は、嫌味なのかわからないが屈んで俺の顔をまじまじと見てくる。


「女の子にしか見えないけど、そっか~。ここ男子校だもんね」

納得したように頷く。


「お前、バカだろ…」

もう、鬱陶しいから消えてくれ…。やれやれという気持ちになる。


「それより、俺。可愛い子見ると抱きつきたくなるんだ!」


ギュッー

「うっ…!」


気づいた時には遅かった。急に前からすっぽりと填まるように奴の胸の中におさまった。


「く、苦しい…やめろ!」

バタバタと抵抗するが金髪野郎の力が遥かに強すぎて離れてくれない。


「いやだよ」

余裕な声が聞こえる。コイツ、まじ消えて下さい…。

バシッー


「え…」

風を切ったような音がしたと思ったらふわっと次は


「おい、てめぇ…馴れ馴れしいんだよ」

さっきから隣で様子を見ていた大悟が苦しんでいる俺を見て助けてくれていた。今日で何回助けられているんだ…。


「いいじゃん、ケチ!」

金髪野郎は、ブーブーと駄々をこね始める。


「お前、ウザイ消えろ」


あ、俺が思っていたことをさらっと大悟が口にした。同じことを思うなんてさすが幼なじみ。



「イヤだね。誰が消えるもんか」


金髪野郎も負けじと言う。あぁ…なんか面倒なことになりそうだよ…。


「あ、俺…先行くわ」



バカに付き合ってるほど暇じゃないんで…。と言うような感じで俺は、一切関わってなかったかのように背を向けて歩き出した。


「それもそうだな。行くか、岬」

スッと隣に来て、俺を見た途端にニコッと微笑む大悟。…さっきの邪悪な顔は、どこにいったんだと不思議に思った。


「え~!こんな奴と行くより俺と一緒に行こうよー!」


後ろの方で変な声が聞こえるけど、無視、無視。


「大悟…早く行こ」


「あぁ。…じゃあ、そういうことで」


大悟は、俺の肩に手を回し、金髪野郎に向かってドヤ顔をする。まさになにかを勝ち誇った感じに。俺には、何が何だが全く理解不能だ…。


「てか、大悟…。お前いくつ顔があんだよ」


王子みたいになったり、悪魔になったり、ドヤッとしたりとかさ…。


「ひとつに決まってんだろ?」

「はぁ…もういいや」

面倒くさがりな俺の性格は、これ以上、何も聞かなかった。



「へぇ~、あの子。岬ちゃんっていうんだ。よしっ。まずは名前Get!」

金髪野郎が遠くの方で、小さくガッツポーズを作っていたとは誰も知らない……――――。

 








【1-A】と書かれた教室の前にいる。

ここか…。俺たちのクラス。入ろうと思って、ドアに手を伸ばすと大悟に阻止された。



「なにすんだよ」

「入ったら頭下げとけ」


「はぁっ!?」


また急に何を言い出すの、コイツ。


「とにかく、絶対だ。お前さ俺にいくら借りがあると思うかわかってんの?」

「うっ…」



無理矢理でも断れないように言ってくる。ある意味、脅しだぞ、おい。で、でもまぁ頭を下げて、借りが返せるならそれでいいか…。


「わかったか?」


「べつにいいけど、ちなみに頭下げたら俺、前に進めねぇじゃん…」



「じゃあ、ここでも掴んでおけ」

指差したところは、大悟のシャツの後ろの袖の方だった。




「あぁ。わかった」



これなら、なんとか前に進めるな。俺は、頭を下げて小さく袖を掴んだ。



そうして、

――… ガラッ。


大悟が先頭に教室に入っていった。うっ…なんか視線が痛いんだが気のせいだよな?




《何、あのイケメンの後ろにいる可愛い生き物…》

《小さいし…なんか、シャツぶかぶかしてねぇ?》

《あ、あの子、さっき見た可愛い子だ…》


色んな所から、ヒソヒソとなにやら会話が聞こえてくるが全く何を言ってるかわからない。



「チッ。作戦失敗か…」

大悟が舌打ちをしながら苛立っている声が聞こえてきた。





「…作戦?」

一体、なんのだ?



「…んでもねぇよ」


「?」




変な大悟。そのあと席順を確認して指定の席に座った。



「あれ…?なんだ。大悟と隣同士じゃん」


座ったら、隣に大悟も座っていた。




「あ、本当だな」

大悟もそれに気づいたのか、なにやら嬉しそうに笑った。ちなみに俺が座っている席は窓際の後ろから2番目ってとこ。なんか、運がついてるかも…。


すると、チャイムが鳴ったと同時にガラッと音を立てて誰か入ってきた。多分、これから一年お世話になる担任だと思うが…。印象は、背が高いっていうのと黒縁メガネ。チッ。先生まで背が高いのかよ。神様は、いくら俺以外にひいきしては、惨めにさせるんだよ…。



…ん?


ふと、前の席に目がいく。チャイムが鳴ったのに、俺の前の席は空席だった。もしかして、遅刻か…?ふっ…入学そうそう遅刻とか一体どんな奴だよ。でも休みっていうこともあるよな…。そう考えていたら、廊下の方からバタバタと誰かの走ってくる音が聞こえた。その足音は、1-Aの教室の前で止まった。


ゾクッー

急に寒気が襲う。なに、この嫌な予感は…。



ガラッ

「遅れてすいません!!」



入ってきた瞬間、頭を深く下げる奴。…っ!?ア、アイツ……さっきの金髪野郎じゃんかよ!!!?つ、つまり、この嫌な予感はこれか…?うん。それしか見つからない。


「とりあえず、席に座りなさい」


先生がひとこと呆れた感じにそう言う。…ん?おいおい、待て待て。今、俺の目の前に不自然にある1つの空席はなんなんだ?

ま、まさか……な。



「岬…俺なんか幻覚見える」

「うん、俺も」


大悟の言葉にコクンと頷いた。うぅ、なんか近づいてくる。



「俺の席は、っと……あーーーー!!!!」

パチンと目が合ってしまった。




「うるさいぞ。さっさと席に着きなさい」

ビシッと先生に叱られてやがる。まぁ、そんなこと俺にとってどうでもいい…。


「ヤッホ!」

変な生き物が見える。や、やっぱり幻覚じゃないんだな、うん。もう一度言います。今、俺の目の前に金髪野郎が見えている。そして、前の空席に立っていた。




…なんだこれ。はははっ。

―――――さらば、俺の平穏な高校生活。






カタンと音を立てて、金髪野郎は、その前の席に腰を下ろした。


「なんだー!岬ちゃんと同じクラスだったのか~」


何、デレデレしちゃってんの、コイツ。



その前に、


「なんで俺の名前、知ってるんだ…」


教えた覚えはない。最悪、なんとなくだがこの金髪野郎には、嫌でも知られたくなかった。まぁ、同じクラスだから、いずれバレることだけど…。


「う~んと、そこの隣にいる奴が言っていたのを聞いた~」

いちいち語尾を伸ばすな。しかもそんなニコニコした表情で。…隣の奴ってことは、大悟のことか。



「盗み聞きなんて、趣味悪いなお前」

急に大悟が金髪野郎を見ながら鋭く睨んだ。



「わー怖い!でも勝手に聞こえたんだからしょうがねぇじゃんかー」


よくよく金髪野郎を見てたら、案外イケメンの分類に入るじゃん…。何、この屈辱感。俺なんて…俺なんて…どうせ、平凡ですよーだ。なんで俺の周りはイケメンばかりなんだよ。イヤミか!レベルが高すぎだろ。まじレベチだよ。




「てかてか、岬ちゃん!」

「おい、ちゃん付けやめろ」

「そうだ、呼んでいいのは俺だけだ」

「大悟…お前もやめろ」


この二人、なんか似てるな…。



「じゃあ、呼び捨て?」

「おい、なぜ照れる」

本当、この金髪野郎が一体何を考えてんだが意味わからない。もう、お笑い的な感じ疲れる。


「それより、自己紹介するね」

「はっ…」


また急だな。


「俺は、滝本太郎!タローちゃんとか好きなように呼んでいいから」


「うーん、じゃ金太郎」

「えっ?」


予想外だったかは、知らないが目が点になっている金髪野郎…いや。金太郎だ。なかなか、いいだろ?俺のネーミングセンス。


「さすが岬。センスある」

大悟はそう言いながらクスッと笑った。


「まぁな」


いくら俺に才能あるって言っても褒めすぎだからもう。


「え…なぜ俺が金太郎…?」



金太郎(命名)は、当然のようにキョトンとなって頭上にはハテナマークを浮かばせている。


「だってお前、金髪じゃん」


俺は、スラッと答えた。



「え!?そんな単純な理由!?」


「それ以外に何があるんだよ」


「俺、てっきりクマと戦うあれかと…」



小さい声でブツブツ呟いている。すると、大悟がニヤリと笑みを浮かべながら入ってきた。



「何、もしかして、金太郎って呼ばれるの嫌なの?…せっかく岬が考えたのに」


大悟の最後の言葉にピクッと反応した金太郎。



「そーだよな!岬ちゃんが俺のために、わざわざ考えてくれたんだよな~」

へへっと笑いながら、照れる金太郎。…なんか、残念なイケメンって感じだな。あとわざわざっていう程、考えてないけど。



「岬、もうコイツと関わるなよ?」


大悟は、指差しながらそう言った。つまり、変人は、相手にするだけ無駄ってことだよな。



「うん、そのつもり」

聞いていた金太郎はちょっと涙ぐむ顔をした。



「んでだよ~。岬ちゃん、俺ともっと仲良くなろ?なんなら、ベットの上で…グハッ!」


鈍い音が聞こえ、悲痛の声を漏らす金太郎。



「いってぇーっ!お前なにすんだよ!」


金太郎は、頭を抑えながら大悟に牙を剥いた。


「岬に変なこと言うな」


大悟は、誰が見ても不機嫌です。みたいな感じの怖い顔で金太郎を睨み付けていた。おまけになんか、さっき金太郎を殴ったと思われる拳が作られていた。


…つか、

「変なこと…?」


俺は、そう言って首を傾ける。変なことなんて言ってったっけ?


「岬は、知らなくていいことだ。…まぁ、将来俺が教えてやるけど」

大悟は、後半の方だけ、小さな声になり何を言ってるか聞き取れなかった。



「へぇー、じゃあお前。俺のライバルだな」

金太郎がそう言い、大悟と二人の間に何かピリッとした邪悪な空気が流れた。



「はぁ?テメェなんか、ライバルにする価値ねぇよ」


大悟は、やれやれとした顔をする。


「んだと~っ!」


大悟の挑発にまんまと掛かる金太郎。この二人…さっきから、ライバルとか意味のわからないことを言って何を話してるんだ?全くついていけないし、とにかく俺に関係ないことは確かだろう。ケンカ中?の二人を見ながらぼーっとしていた。


「岬ちゃん、ぼーっとしちゃって、可愛いなぁ~」

さっきまで、大悟と言い合いしていた金太郎がこちらを急に見てそんなことを言い出した。


「いや、可愛くねぇから」

金太郎は、よしよしと俺の頭を撫できた。



「こ、子供扱いすんなよ!」


俺は、パシッと奴の手を払った。自分で言うのも可哀想だけど平凡な顔だし、前だって、ただ笑っただけなのに顔を赤く染められて皆怒るんだ。だから、可愛いって言ってるコイツには、すぐに眼科をおすすめしたい。


「もう岬ちゃん、超可愛い!!俺のものになる気ない?」

ニコニコ微笑みながら、金太郎は、気持ち悪いことを言う。もうこれは、眼科よりも精神科に行ってもらわないとだめだな。それか、ただ俺に嫌がらせをしているかのどっちかだ。


すると、隣の方でドス黒いオーラが漂ってきた。

「お前、これ以上、変なことを言うと…殺すよ?」


横目でチラッと見ると、殺気立つ大悟。


「じょ、冗談だって!…まぁ、いずれは俺のもんにするけど」



「あぁ"?」

大悟が今までに見たことのない顔をする。それは、よっぽどキレてるのだろう。でもさすがに、こ……怖いです。とりあえず、今の大悟に関わったら殺されそうなので、ここは、安全に眠ろっかな?俺は、呑気にそんなことを考えた。よしっ!眠るが勝ちだ!そう決めて、机に体をうつ伏せ、寝る体勢に入った。…だが、寝るには心地の良い場所ではなかった。


「え~!岬ちゃん、こんなところで眠ったら襲われちゃうよ~」


「それだけは、同感。危険だ。それより、お前の寝顔は、俺だけのものなんだよ」


「はっ?俺のものですぅ~!野獣は、見ないでください~」


「テメェ、吊るすぞ。それ以上岬に近づくな」


「近づくなってそんなの無理だし~、あっ岬ちゃん。早く起きないと王子の熱いキッスで目を覚まして…うぉえッ!」


本日、二回目の悲痛の声が聞こえてきた。…うるさい。なんで、静かに寝かせてくれないんだ。新手のいじめかよ。


「隙あり。……チュッ」

リップ音が近くで聞こえたと思いきや俺の頬に何やら違和感。バッと飛び起きる。気づいた時には、もう遅かった。満足そうに、満面の笑みで笑ってる金太郎。


「起きなかった岬ちゃんが悪いんだからね?」

ごちそうさま!とか付け加えてた。最悪…。俺は、シャツの袖で頬をごしごし拭く。すると、強烈な黒いオーラが俺達を囲いこむ。



「…許さねぇ。お前死ね」


大悟の怒りの声が教室中に鳴り響いた。


good-bye金太郎。

俺は、心の中でそう悟った。金太郎は、どうなったか言うまでもない。損失は、俺の初頬チューだけ。




はぁ…

「マジ、席替えしたい…」




てか、俺の平穏の日々は、いつ来ることやら。まだ遠い話だと俺は、現実に目を背けていた。






――――――――
――――――――――
――――――――――――

………。




次の日。俺は、約束した通りに今日はちゃんと大悟と一緒に登校している。まぁ、昨日はとにかくさんざんな一日だった。関わりたくない奴(金太郎)となんか友達?みたいなのになったし。


「あ、大悟。昨日は、コレありがとな…」


さっそく大悟に借りていたシャツを返した。



「いや、大丈夫。気にすんな」


「気にするから!あ、ちなみに俺が頑張って洗って、アイロンしたんだかんな。すぐ汚すなよ?」


それに馴れない洗濯とアイロンを頑張った俺の苦労が水の泡になるからな。



すると、それを聞いた大悟は急に立ち止まった。


「岬が…?」


すると今、着ているシャツを脱ぎ出した。




「お、おい!?大悟!」

突然、おかしくなった大悟を俺は慌てながら両手で周りに見えないようで隠す。


こ、こいつ急に脱ぐとかバカなの!?


今の時間帯なんて、学生が通学中だ!ほら、見てみろ。あっちこっちの女の人がお前を物珍しそうに見ながらガン見してるぞ!

こっちが恥ずかしくなる。


そんな俺の心配は、よそに大悟は、脱いだシャツを自分の鞄に入れ、俺がさっき返したばかりのシャツに着替えた。


「だ、大悟…?」

「さっきと別に変わらないけど、どう似合う?」



大悟はなぜか仁王立ちをしていた。


え…?

急にどうした、本当。引くぞ。



「岬…?」


「えっ…あ、似合ってるよ!でも大悟は、何着ても似合うんじゃねーのか?」


まぁ、俺とは違って。てか、わざわざそんなこと俺に聞かなくてもいいのに。チラッと大悟に目線を向けたら、固まっていた。おいおい、次はどうした?



「おーい。大悟ー。お前さっきから様子が変だぞ?」


今も固まって動かない大悟。



すると、何秒後かにハッ!と我に返った大悟は顔を真っ赤にした。



「お、お前、まさか熱あるのか!?」




だからさっきから様子がおかしかったんだと、そう納得する。


「いや、ねぇから!…この無自覚」


「はぁ!嘘つけ」


「本当だ。なら、おでこ触ってみろ」


大悟は、そう言って俺の身長くらいの高さまで屈んだ。チッ、嫌みか!とにかく、今は、熱があるかどうか確かめないと!

俺は、大悟のおでこに手を伸ばした。




………。



あ、あれ?



「熱くない…?」



俺のおでこと比べても熱くなかった。



「だろ?ほら、もう行くぞ」



大悟は地面に置いていた鞄を拾い、歩き始めた。



「あぁ。待てよ!」

大悟の背中を追った。



―――……。


in 教室!!と言いたいところだが

俺は、唖然と大悟に目を向ける。



「なぁ…大悟。教室、誰もいないぞ?」


ハテナマークを頭上に浮かべた。え?なに、今日休みでしたってオチないよね?俺は、誰一人いないことに焦り始める。


「あー、そうだった」


すると、大悟は、何かを思い出したかのように両手を合わせてパンッと音を鳴らした。

一体、何を思い出したんだ?




「えっと、今日なんかあるのか?」


気になって、問いかけた。でも、身構えた俺の耳に次の瞬間、聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。




「あぁ、…入学式がな」

大悟は、平然とした顔で持っていた鞄を机の上に置いた。俺は、一瞬にして体が固まっていくのがわかった。はははっ……what?



「にゅ、入学式?」


俺は、一度聞き直した。



「そうだよ。もしかして、知らなかった?」



大悟は、すぐさま即答した。えっ、ちょ、待って。



この学園に来て俺は、なんか頭の能力が低下しているようだ。つか、今さら入学式って遅くないか!?俺は、てっきり昨日でやらなかったからもうしないと思っていた。なのに、なぜに微妙な今日?



「だ、大悟。入学式って普通、昨日やるもんじゃないのか?」


だって、おかしいだろ?もう、ドキドキとした感情は昨日で使い果たしてしまったぞ、俺。


「あぁ。本当は、昨日する予定だったけど、生徒会の奴がサボったらしくて、今日に変更になったみたいだ」


はぁぁあ!?


「なんだよ、それ!?」



俺は、呆れた理由に驚いた。たかが、生徒会がサボっただけでわざわざ入学式の日にちをずらしてまでする必要あるか!?たくっ…この学園どうなってんだよ。



「なぁ、そんなに生徒会とやらは、偉いのか?」



いくら、奴等が呑気にサボっただけで都合よく『はい、明日』なんて決められて腹立たしい。



「まぁ、そんなとこだ。なんだって、この学園、豪華だろ?その生徒会の奴らが寄付して成り立ってるみたいなもんらしい」




「ま、まじかよ…。あ、でもなんでそんなに詳しいんだ?」



次は、いろいろ知ってる大悟に驚いた。



「まぁ、あ、あれだよ。風の噂ってやつ!(やべぇ。ハッキングして、岬を狙いそうな奴を調べあげていたら、いつの間に知ったなんて言ったら俺、変態じゃん)」



「ふぅ~ん。そうなのか」



大悟は、少し動揺しているみたいだが、多分、先生が話しているのを聞いたんだろう。ただ、かっこよく言いたいため風の噂なんか変なこと言ったんだな。なんか、納得。あっ、俺自慢じゃないけど先生の話、ろくに聞いたことない。



「あ、そうだ。岬」


「ん、なに?」


「生徒会の奴らに、近づいたらダメだぞ?(なんせ、危険リストに入れたから)」


「あったりめーだ!!誰があんなムカツク集団に、ほいほいと近づくかよ」 


え?なに、俺が生徒会の奴らに脅されると思ちゃってる系ですか?



例えば、『アレ買ってこい、バカ』『金出せや、この野郎』みたいなこと言われてるとか…。いや…待て。金出せは、さすがにない。なんだって、坊っちゃんらしいからな。





つうか。自ら、ストレスを溜めに行くマネ恐ろしくてできないぜ。そもそも、そんな偉いと言われてる生徒会とばったり、会うなんてことなんて考えてみればないことだろ?大悟は、たまに変なこと言うんだよな。


「じゃあ、まぁ。そうことだから。ほら、体育館行くぞ」


大悟は、ホッしたような顔をして最後促した。俺も机に鞄を置きそれから、一緒に体育館に向かった。



間に合う…よな?





―――――
―――――――
―――――――――……。


ふぅ~……よかった。

間に合ってるみたいだ。



体育館に着くと、まだ始まっていないらしく安心した。


《あともう少しで、始まりますので新入生の皆さんは、指定の椅子に座って下さい――……》



すると、舞台側の端の方で先生らしき人がそうアナウンスしている声が聞こえてきた。新入生って、俺たちのことだよな?


「今から始まるのか…。よしっ、大悟行こうぜ」

「あぁ」



そして俺らは、指定された椅子を確認して座った。ちなみに大悟は、俺の右隣だった。そして、左隣はまだ空席だったけどこのパターン前もあった気がする。な~んか、ね。ドドドドンと足音が遠くから聞こえてくるんだよね。


 

「あー!!!俺の愛しい岬ちゃん~」


語尾にハートマークが付きそうな声で何者かが勢いよく抱きついてきた。


なるべく、抱きつかれてる方を見ないで

「ど、どちら様ですか?」


知らないフリを実行した。マジで、今の気持ちSOSでいっぱい。


「え~!!岬ちゃん、自分の彼氏のこと忘れちゃったの?俺との仲じゃん!!」



何、アホなこと言ってんだ。これ以上、知らないフリを続けるとコイツなにするかわからねぇ。



「なぁ、金太郎…。頼むから、静かにしてくれ」



まだ抱きついて離れない金太郎に『離せ!!』と言わんばかりに抵抗するが…なんか、力の差というものがあるらしく、敵わない。


「あぁもう、ちゃんと俺のこと知ってるじゃん!ちなみに夜は、静かにしてあげないぞ!」



うわっ。もう理解不能です。バカには、通じないみたいだ。俺が呆れていると


「てか、岬ちゃん腰細っ!!全体的に華奢過ぎっ!!もう少しご飯食べなさい!」


なんて、次は、お母さんが言いそうなことを言ってきた。


もう、呆れて物も言えないってまさにこのことだろうな…。つうか、俺は、毎日三食きっちり食べてます。おかわりするくらいね。それなのに、なかなか体重が増えないことに俺は、イライラして困ってんだよっ!!たくっ、嫌なこと思い出させんな、つーの。

はぁ、生徒会よりコイツの方がストレスを溜める気がするのはきっと、気のせいだよな…?




「岬は、隙を見せすぎ。…おい、いい加減離れろ」


ドスッーと音と共に次は、大悟の腕の中にすっぽりおさまっていた。



「何すんだよ!!俺と岬ちゃんとの愛を邪魔すんな!」

なんか俺、近くで変な声が聞こえたよ。耳鼻科行った方がいいのかな?




はははっ…愛だと?コイツ、本当意味わかんねぇこと抜かすから実は、宇宙人じゃね?あぁ、面倒くさい…。

少し、落ち着いたところで


「てか、お前。何呑気に岬の隣座ってんの?」


大悟が嫌な顔丸出しで言う。


「だって、ここが俺だし!岬ちゃんの左隣~」



「あーぁ、マジかよ。…面倒なことになりそう」


ガクッと首を下に向ける大悟。その気持ち、すっごくわかる。



「あ、岬ちゃん!ちょっと、俺のとこ向いて」



そう金太郎は、言って改めてチラッと見ると、包帯で右手を巻いている金太郎の姿があった。



俺は、目を見開く。


「お、お前…。骨折したのか!?」


「うん~そうなんだ。昨日、誰かさんにバキバキ殴り、蹴られでね」



金太郎は、痛そうに骨折したであろう部分を眺める。




ちょっと、待て。ま、まさかと思うがその誰かさんって………。俺は大悟に恐る恐る視線を向ける。なんか、オーラがとにかく半端ないっ!!危険な意味で。



「もう岬ちゃんが看病してくれたら、俺の骨折治っちゃうかも~(そして、俺だけのメイドになりな!)」



もし仮に、コイツがマジで骨折していたとしよう。で。看病しても俺そんな治せる能力もってないぜ?医者でもあるまいし。つか、バカなこと簡単に言うな、アホか。




あと、副音声でメイドとか聞こえなかったか?…ん?気のせい?やべっ、本当に耳鼻科行った方がいいかも。若干、おかしくなっていることを二人に悟られないように終始うつむいた。





すると、右隣から、手をポキポキ…いや、ゴキゴキと鳴らしている音が聞こえてきた。気になって、顔を上げたら、あっ…大悟が般若みたいになってる。


さっきから、黙って聞いていた大悟が



「へぇー?お前、本当に骨折したんだ。岬に看病してもらって、変なこと考えてんだろ?おい、骨折じゃすまないくらい次は、痛めつけてやるよ。病院送りは、確実だけどな」



長々と息継ぎもせずに、恐ろしい顔をしながらそう言った。


ゾクッ

全身に鳥肌と寒気がきた。この世の終わりみたいな雰囲気が流れる。



「は、ははっ…じょ、冗談だよ!う、嘘です!ほら、見てよ。こんなに動くよ」




金太郎は、危機を感じたのか正直に、骨折していたはずだった腕がものすごい早さで動かして大悟に見せた。



つか、マジで

「嘘だったのかよっ!」


俺は、金太郎を睨んだ。ちょっとだけ、大丈夫か?と心配した俺の優しさ返せ!



「岬、アイツと一緒にいたらダメだぞ?バカが移る」


「本当にそうしたい…」


ポンポンと大悟は、優しく俺の頭を撫でた。



「岬ちゃん!嘘ついたのは、謝る!!だけど、関わらないなんて、そんな寂しいこと言わないで~!」



嫌だ嫌だと駄々をこねる金太郎。


「ウザいな。そんなに病院に行きたいの?」


今の大悟のひとことで金太郎は、びっくりするほど喋るのを止めた。正確には、黙らせた。

す、すげぇ。こ、こわ。


大悟は、いつも俺のことになると、なんか、こうやって人格が変わってしまう。いくら、幼なじみだから過保護すぎるっていうか………ま、とにかく敵にしたら危ない奴だな。新たな発見に体が固まってしまった。



そしたら、急に眠たくなって気づかないうちに、大悟の肩にコツと凭れていた。




―――――
―――――――
―――――――――

……。



「う~ん…ふぁあ~」


俺は、欠伸をしながら、目を覚ました。あー、よく寝たかも。



「岬、おはよう」


隣にいた大悟がにこって笑ってそう言った。



「うん、おはよう。てか、入学式まだ始まってねぇのか?」


周りがざわざわしていたので疑問に思って聞いてみた。…俺、結構寝てたんだけどな。




「岬ちゃん、もう入学式は終わったよ」


すると、いつの間にか元気を取り戻した金太郎が言ってきた。


つか、

「は?嘘…」


「俺は、岬ちゃんに嫌われたくないから、もう嘘なんてつかないよ!」



金太郎は、少し照れながらそう言った。なんか、信じらなれないな…。


「大悟…それは、本当なのか?」


「あぁ、それだけは本当だ」


「ま、マジで…。やべぇー」



全然、聞いてなかった。でもまぁ、大丈夫だよな少しくらい。



「でも岬ちゃん、あんなうるさかったのに目を覚まさないなんて凄いな」


金太郎は、感心したように言った。



え?…うるさかったの?入学式なのに…?よくわからなくて首を傾ける。



「…~~っ!それ反則だよ、岬ちゃん!」



トマトみたいに顔が赤い金太郎。



「反則…?意味わかんねー。で、何でうるさかったわけ?」



「まぁ、そのことは、教室で教えてあげるね!ほら、行こう」



すると、周りが次々に移動していくのが見えた。あ、そーいえば、入学式終わってたんだっけ。そう気づいて、俺達もそそくさと教室に向かった。



――……。

教室に着きカタンと音を立てて、椅子に座る。



「岬ちゃん、さっきの続きなんだけど」


前に座る金太郎が後ろを向いてそんなことを言ってきた。



「あ?あー、そうだった」

さっき、そういえば話の途中だったよな。



「でね、ここって男子校じゃん?」


金太郎は、当たり前なことを急に聞いてきた。



「うん。それがどうしたの?」


男子校だが今の話に関係あるのか?


「ホモとかバイが結構いるんだ」


金太郎は、微笑んで俺に説明するが



「なにそれ?」



全く、聞いたことのない言葉だった。ホモ…?バイ…?一体、何なんだ。初めて聞く、知らない単語に疑問を抱いた。



「え…?岬ちゃん、ホモやバイの意味知らないの?」



金太郎は、ポカーンとした顔で目を見開き驚いていた。そ、そんなに知らないだけでびっくりされるのか!?俺って時代に遅れているのかな…。急に心配になってきた。




「なぁ、大悟はわかるか?」


俺は、大悟に話を振った。




今思えば大悟は俺と同じように育ってきたから知ってるはずないよな…………って、思っていたのに


「一応、知っているが…」



「え!?」

知ってたのかよ!?少し大袈裟に驚いてしまった。




「でも岬は、知っちゃいけないことだ」


大悟は、きっぱりそう言って話す気がないようにズボンのポケットに手を突っ込んでいた。



く、くそぅ。


「な、何でだよ!?」



大悟のその様子にムカッときたが何で俺はダメなんだよ。皆、知っていることなんだろっ!?これじゃあ、不公平じゃん。あー、俺だけ知らないなんてちょっと嫌。かなり腹立つ。こうなったら何がなんでも大悟の口から聞いてやる!

頼むときってどうすればいいんだ?

まぁ、適当でいっか。



「大悟、なぁいいだろう?少しくらい教えてくれよ?」



俺は、今も手は、ポケットに突っ込んでいる大悟の袖を掴みながらお願いをした。これでも、必死に頼んだはずっ!





それを見た大悟は、言葉を詰まらせ次の瞬間、ぼわぁっと顔を真っ赤に染めてしまった。そして、ポケットに突っ込んでいたはずの手がいつの間にか自分の口元をおさえていた。…んだよ。もしかして、俺がダメだって言われたのにしつこすぎて、怒っているのか?そうだったら、やばい。ケンカになる前に早めに謝っておいた方が身のためだな。


「だ、大悟…その悪かった」

大悟を敵にまわしたら、多分、生き残れない。だから、こうやって急ぎよく謝る手段を選んだ。すると、大悟は、はぁー…と深くため息を吐いて


「あー、もう仕方ねぇな」

まいったという感じにそう言った。



「え…?教えてくれるの?」


俺は、キョトンとする。なんか、予想と違って、意外だった。



「まぁ、簡単に言うと、昨日の朝お前を襲おうとしていた奴らがいただろ?」



大悟は、話を続けてきた。え?昨日の朝…襲おう…って、あっ、いやいやいや!



「あれは、単に俺をからかった奴らの間違いだろ?」



大悟は、大袈裟なんだ。





「えっ!?岬ちゃん襲われたの!?」


急に、話を聞いていた金太郎が入ってきた。あー、話がややこしくなる…。



「変態は、黙れ。岬、あれをからかうというのに区別したら、世の中ヤバイことになるぞ」



大悟は、金太郎が話に加わると俺と同じでややこしくなると思ったのか黙らせた。そして、最後に大悟は、もう少し危機感をもてと付け足した。よく考えてみたら、あれは、からかいにしてはやりすぎだよなと思うような…。もし、俺が女だったら、からかいっていうことじゃすまなくなるよな…?嫌がらせとか?あー、もうよくわからん。




「でも、それがどうしたんだ?」

俺の頭では、これ以上考えても理解できそうにないから諦めて聞いた。


「俺が言いたいのは、あーいうのがここには、いっぱいいるってことだよ。だから、朝入学式で、生徒会の奴らが挨拶していた時に、周りがキャーキャーと甲高い声を出して騒ぎだし、うるさかったわけ。理解OK?」



大悟は、長々とちゃんと教えてくれた。え…?ちょっと待て。あーいうのって、平気で人をからかう奴がたくさんいるってことだよな!?おもしろがって、人のズボンを脱がそうとするそーいう奴らがここに…!?や、やばくね!?

このときとんでもないとこに入学してしまったんだと心底残念に思った。で、でも何で生徒会の奴らは、キャーキャーと騒がれてたんだ?生徒会って、偉い奴らって思っていたけど、一般生徒にバカにされてんのか?俺は、そこだけわからなくて、顎に手を当てながら考える。




そんな俺の様子を見ていた金太郎が


「岬ちゃん、その様子だとまだわかってないことがあるみたいだね」

当たりだ…。図星つかれて、何も言えなかった。



「つまりね。まとめると、ここの学園の奴らは、男が好き。イコール、同性に好意をもっている奴が多いってことなんだよ!」



「えっ!?」

驚きのあまり目を見開いた。大悟は、隣で「余計なことを…」と小さく呟いていた。



「生徒会の奴らは、皆美形で有名で、この男子校では、人気ものなんだよ~、だからファンとか好意をもっている奴がいてキャーキャーうるさいってことなんだ」


「…ま、まじで」

俺は、大悟を見て金太郎が言った言葉に否定をしないってことは、本当のことだよな…。俺、ここにきて頭を使いすぎている。まー、つまり、生徒会は、バカにされているわけではなくて皆に好かれているってことか?

なんだよ、それぇー!?いくらさ、同性が好きだからって、自分勝手で自己中な生徒会のどこがいいんだ!?てか、同性好きとか、そんなの知らなかったぞ!?今まで生きていて聞いたのは、初めてだった。




「お、男を好きになるってことは、………………ここでは、ありなのか?」


俺は、できれば否定して欲しかったんだけど


「当然のことだよ!」


とニコニコした表情で金太郎は、返しやがった。そうなんだ…。ここでは、それが普通なのか。で、でも俺は、女の子が大好きだ。つまりこれは、ノーマルっていうやつだよな?そう、それだ。



「なぁ、金太郎もノーマルだよな…?」



「う~ん それは、岬ちゃんに会う前の話かな?」



「なんだよ、それ!!」


俺みたら、変になるつうことかよ!失礼しちゃうぜ。まっ、金太郎のことだから、俺の反応を楽しむためにおもしろ半分で笑えない冗談を言ったと思うけど。同性に好意ね…。あぁ、世間でよく言う知らない方が幸せってやつか。まさに、このことだな。数時間前の俺に戻りたい。そして、知りたがってた俺をものすごく蹴りたい。



「岬ちゃんって、本当 純粋だよね~」


「は?純粋?」


急に金太郎がそう言ってきた。

「純白で、なんか俺色に染めたくなっちゃうな!(食べちゃいたい)」



「なに、言ってんだ」


ときどき、本当コイツが何を言っているか通じなくなる。




まぁ、でもわかったことは、好かれているような美貌をもった奴らは、危険ってことだよな?じゃあ、俺もろ安心じゃん。関係ないことじゃん。むしろ圏外ってとこだよな?だって、チビだし、キモいし、平凡だし…いいとこがない。泣きたくなるがこのコンプレックスを感謝する日が来るなんて…!でも、実際女の子にモテないのは、ショックだけど…。



「岬、絶対油断して、どこでも寝るんじゃねぇぞ。気をつけろよな?」


「え?なんで俺?」


「(無自覚バカ)…とにかくだ。だから、俺から絶対離れるんじゃねぇーぞ?」


「意味わかんねー…「いいな?」


「はい」



大悟の黒い笑みが怖くて頷いた。気をつけるって、何に気をつけるんだ?俺なら、全然大丈夫だけど…あっ、喧嘩は、弱いけど口喧嘩は、こう見えて結構強いんだ!



「岬ちゃん、もう気づいてないとか可愛すぎっ。俺が守ってあげ…「バキッー…」



言い終わる前に鈍い音が聞こえ、その途端、金太郎は、悲痛の声を出した。


「それは、もうとっくに間に合っている。岬を守るのは俺一人だけでいい」

大悟は、金太郎の腕を捻りながら笑顔でそう言った。



「っ!イテェだろ!!」


「当たり前だ。痛くしたんだから」



あー、またなんでこの二人は、争っているんだ。


ガラッー

すると、急に教室のドアが開いてのっぽの先生が入ってきた。



「おいー皆、席につけー」


大声でそう言いながら、教卓の前に立った先生は、何か手には、ボックスを持っていた。



「よしっ。今からクラスの委員長を決めたいと思う」


さっきのボックスをバンバンと叩きながらそう言った。ま、まさか…。



「このボックスの中にお前ら一人一人の名前が書かれた紙が入っている。ってなわけで、先生が今から引くから、それに名前が書かれていた奴がこのクラスの委員長だ。いいな?」


先生は、皆の返事を聞かず、ボックスに手を突っ込んだ。そして、紙を一枚取る。


やっぱり、まさかだとは、思っていたけどそのやり方で決めんな!普通は、やりたい人がやるもんだろ!実は、俺こーいうので決めたやつ毎回当たってるんだよな。だから、嫌い。でも落ち着け。ここには、40人いるし、大丈夫だ。当たる可能性は、低い!




「おー、決まったぞ。杉本岬に決定だ」


えぇぇぇっ!?マジで!?本当に俺かよ!?

無理、無理。



「先生!嫌です…」


すぐさま拒否した。

誰が面倒くさいことするかって話だ。そんなの俺には、むいてないし。



「ダメだ。決まったことだし、これで決めることは、この学園の伝統だ」



うぅっ…。何も言えなかった。あぁ、俺って運なさすぎ…。しかも伝統ってなんだよ。意味わかんねー、はぁ。




《え?姫が委員長?》

《も、萌え…》

《しょんぼりしている姿、可愛すぎ》



俺が机で項垂れている時、クラスの奴らがそんなことを考えていたなんて知らない―――……。




――――――
――――――――
――――――――――………。



あれから、いつの間にか放課後。

俺は、早く家に帰って休もうと考えていたら、



「杉本ー」


と、先生に呼ばれ俺は、はいと返事を返していやいや先生がいる教卓の前に立った。


「はい、これ。職員室までよろしく!」



少し声の高さを上げてそう言う先生は、数枚にまとめられたプリントを俺に渡してきた。


は?


「ちょ、えっ!?なんで俺がそんな面倒なことを…」



「だって、委員長だろ?」


「いくらなんでも…「委員長だろ?」



「俺、早く帰り…「委員長だろ?」


帰りたいまで言わせろォォォォ!!!!委員長だろ?委員長だろ?ってしつけぇ!



「このクラスの委員長…だろ?」


「はい、わかりました。届ければいいんでしょ」


あはは…っ。負けた。なんか、先生の性格が大悟と少し似ていて怖い。

ク、クソォォー!!委員長になったら、先生にパシられるのかよ。あ、ありえない…。



「あ、大悟。俺ちょっと職員室行ってくるから、教室で待ってて」


手にぎゅっとプリントを持ちそう言った。



「岬、待て。一人は危険だ。俺も一緒に行く」



後ろの方で、聞いていた金太郎が『俺も一緒に~』とか言ってるけど無視。




「これくらい大丈夫だし!子ども扱いすんな!じゃ、すぐ戻るから」



俺は、そうひとこと言って大悟の話を聞かず、そのままもうダッシュで教室を飛び出した。俺が頼まれたことだし、大悟に迷惑かけれねぇしな…。






「やべぇ…。すぐ追いかけないと」


俺が教室を飛び出したあと、心配し、焦った大悟は、急ぎで自分の鞄と俺の鞄、合わせて2つ持って、あとから俺を追っていた。金太郎は、無視されたことにショックをうけ、トボトボと家に帰った。




俺は、このあと大悟と一緒に職員室へ行けばよかったと後悔するとは、知らずにひたすら走っていた。


まさか、あんなことが起きるなんて――――…………。







【帝side】



俺は、この春2年に進級し、早乙女学園の生徒会長を務めている西園寺 帝。




この学園じゃ、人気者だ。なんせ、俺様は、容姿端麗、頭脳明晰、まけに運動神経抜群、家柄全てよしの完璧人間だから。もう新入生たちにもファンとか親衛隊とかできている。ま、当然のことだけどな。


そう、ここは、ホモ学園とも言われる学園だ。この俺様は、この学園での“抱かれたい男No.1”。


寄ってくるものは、誰だろうが全て抱いてやった。


ま、学校なんて、面倒くせーし、気まぐれで来ているもんだ。生徒会になったものは、授業免除っていう特権があり、いつものんびりできる。



それなのに、理事長に入学式どうしても生徒会から何かひとこと挨拶をしてくれと頼まれ、仕方なく、一日ずらしてもらって引き受けた。


はぁー、今日の入学式ちょーうるさくて鼓膜が破れるかと思ったぜ…。あー、結構疲れた。俺は、生徒会室の自分の机にうつ伏せる。



「なぁー、帝。1年の姫って知ってるか?」



すると、突然チャラ男で有名な生徒会書記の橋川翼が横からそう言ってきた。


「は?…姫?」


誰だ、それ。



「やっぱ、その様子だと帝も知らないみたいだな」



翼は、はぁーとため息を吐きそう言った。



「知らねーよ。んなもん」


俺は、少し翼の態度にイラっとし、素っ気なく返した。姫とか一体、誰だよ。この俺様が一般の奴なんか知るわけがない。



「ふーん。あ、肇は知ってるか?姫」



翼は、次にソファで紅茶を飲んでいる紺野 肇にそう聞いた。コイツは、ハーフで外国語ペラペラ。んで、日本語は、誰に対しても敬語で話す。ちなみに生徒会副会長。



「いいえ、存じ上げませんが…」


「はぁー、だよな…。じゃあ、陸人。お前は?」



翼がその横で、呑気におかしを食っていた陸人に話を振った途端、ピクッと反応した。本田 陸人。コイツは、スポーツマンで爽やかだと騒がれている生徒会会計。

さっきのその反応からして見れば、


「おい、陸人。お前なんか知ってるな?」


怪しんでそう聞いた。


「は、はぁ?し、知らないよ!岬ちゃんなんて………あっ」



キョドりながら、しまった。みたいな顔をする陸人。



「ほら、見ろ。やっぱ、なんか知ってんじゃねーか」



声を少し低くして、この俺様を騙そうとしていたことに苛立った。


「そういえば、陸人。昨日、生徒会の仕事で珍しく一年生の名簿を長く見ていましたよね?それは、もしや…」


黒いオーラを放つ肇は、結構、腹黒い性格。


「あーもう、俺は、顔と名前だけ知っているだけだ!」



肇の脅しが効いたのか、とうとう白状しやがった。


「そーなの!?どんな子だった?」

興味津々に聞く翼。


「絶対、教えねぇ!岬ちゃんがお前みたいな下半身野郎に汚されたら困る」



陸人は、何がなんでもその岬という奴とこのチャラ男を嫌でも近づけさせたくないようだ。



「なんだよ、それ!!下半身野郎とか失礼だ!」



「本当のことだろ!!」


ギャーギャー騒ぐバカ共。



「てめぇら静かにしろ。で、陸人は、なぜそこまで、その一年にかまう?」



たかが、庶民だろ?かまう価値がないことだ。



「う、うるせー!!」


陸人は、そう言ってまたボリボリとおかしを食べ始めた。


「つまり、陸人は、たまたま名簿で目にした岬くんとやらの写真を見て、一目惚れしまったってことですね」


「っ!」

肇は、頷きながら納得した表情をする。反対に陸人の方は、おかしをのどに詰まらせ、胸を叩いている。…図星か。




「まぁ、一応 言っとくけど、俺が先に目をつけたから、勝手に横取りしたら許さねぇから!」


きっぱりと言った陸人は、俺達みんなに、指をさしながら主張した。つか、は?横取り?そんなの知るか。



第一、俺様は、

「別に庶民なんかに興味ねぇよ。ましては、1年なんぞ」


誰が受け付けるかって話だよ。


「僕も帝に同感です。興味ありません」



肇も俺と同じらしい。



「なら、いいけど。あと惚れてもダメだから」


陸人は、またもや変なことを言う。惚れる…?この俺様が?はははっ。笑わせんな。



「そんなの世界が滅びるくらいありえないから」


惚れるなんぞ、馬鹿馬鹿しい話だ。逆に惚れさせてしまう。


「本当だな!それなら安心だ。あ、特に翼!お前も守れよ」



「なんで俺も?惚れることは、わからないけど横取りは……う~、保障できないしー。てか、俺も気になってるから」



「はっ!?ふざけんな」


また争う二人。コイツら、バカか。どうも俺には、しょうにあわない。




少し、落ち着いたところで

「でもさ、その姫の王子には、気をつけた方がいいんだろ?」


翼は、ふとそう言った。



「お、王子…?」


陸人は、その言葉を聞いて動きを止めた。




「うん。なんでも姫を溺愛しているみたいで、狙うやつは、容赦しないみたいって噂だけどね」


翼は、残念そうにそう言った。だけど、次の瞬間『まぁ、俺には、そんなの関係ないけどねー』とか笑いながら開き直った。さすが下半身野郎と言われるのわかる気がする。ふっ。別に俺にとっては、どうでもいい話だ。姫とか言われているからどうせブリッコかなんかだろ?興味ない。そういう奴に限ってこの俺様にすぐ墜ちるから面白くない。


ま、どうせその姫とやらも俺を見たら王子をよそにどうせ俺様に媚びをうる。何だって、俺は、完璧人間だから。まぁ、罪な奴とでも言おうか…。俺は、特定の奴は作らない主義だし自分から人に好意を持ったことなんて今までに一度もない。

毎日が退屈すぎる。






「あ、そういえば、帝」



肇が急に俺に話しかける。



「なんだ?」


「この資料を職員室まで提出お願いします」



ご丁寧に肇は、そそくさと俺にプリントを渡してきた。


「は?なんで俺様が…」



意味わかんねー。つか、んな面倒なこと誰も引き受ける訳がない。そう内心思っていたけど、肇によってすぐにそれは、崩壊された。



「何を言ってるんですか?ろくに生徒会の仕事もしないくせに、これくらいするのは普通ですよね。おかしなこと言わないで早く行ってください」



肇は、表情には出さないが声のハリがものすごく低くて、イライラしているように感じ取れた。しかも目を見ると、絶対に拒否することを許さないと言ったように妖しげで光っていた。



「あー、はいはい。わかったよ。だりぃ…」


俺は、トントンと机でプリントを綺麗に整え仕方なく承諾した。



―――――
―――――――
―――――――――

……。



で。ただいま、まだ俺は、さっきまとめたプリントを片手に職員室に向かっている。はぁー。生徒会室から、結構 職員室って離れた場所にあんだよな。



たくっ、面倒くせ。肇の野郎、わざとこんなの頼みやがって…。後で覚えてろとかイライラしていると、俺の前に小さな人影が目に入った。


あっ。

ふふっ。いいこと思いついたー。

この俺様は、誰が何て言おうと全校生徒に顔は利く。前の奴に、このプリントを俺の代わりに届けさせればいいんだ。それなら、わざわざ歩かなくてもいいことなる。


はははっ。やっぱ、俺って天才。




「おい、そこのチビ」

俺は、柄にもなく大声でそいつを呼んだ。この俺様が一般の奴に話しかけてやってるんだ、感謝しろ。



とか思っていると、するとそいつは、俺様の声がようやく聞こえたのかピタッと立ち止まる。だが、数秒後無視して、スタスタとまた歩き出した。



…は?アイツ、なめやがって!!この俺様を無視?そんなのありえるわけがない。さては、遠くからだったから、まだこの西園寺 帝様が声をかけているとは気づいてないな?それしか、ありえない。チッ、仕方ねぇ。まぁ、精々無視したことを後悔し驚くが良い。俺は、自分の運動神経をいかして、そいつがいるところまで走った。


「おい、チビ。止まれ」


そして、俺は、奴の肩を掴んだ。






つか、うわっ!?コイツ 肩細ぇ…。

驚かすつもりが逆に驚かされ少しイラッきた。そんなことを思っていたら、




パシッー

俺の手が虫を払うかのようにきれいに払われた。




は…っ?

俺は、何がおこったのか不思議で呆然としていた。




待て待て。今の状況…何だ?ま、まさか、こんな奴にこの俺様の手が払われたというのか!?ありえない!!まだ、俺に気づいていないのか?いや、この美しい声で普通は気づくはずだ。あぁぁあ?なんだ、コイツ。ムカツク野郎だ!!スルーは、するし、手は、払うし頭がおかしな奴だ。この俺様を怒らせやがって、一体、どの面してんのか。

俺は、拝もうとしてそいつの肩に再度手を置こうとしたらそいつは、クルッと俺の方に自ら振り向いた。





「っ!?」


文句の1つや2つを言おうとした時、俺は、目を見開いて、またもや驚いてしまった。


…んだよ、こいつ。だって、振り向いたチビの顔は、言葉では上手く表せたないほどものすごく綺麗に整っていて、めちゃくちゃ可愛かった。一瞬、女?と思ったけどさすがにここは、男子校。女がいるはずない。こんなやつ、いたか?

潤んだ目、俺との身長差があるせいか自然に上目使い…。誘ってんの?と思うくらい。つか、何。この可愛い生き物は。

俺は、不覚にもさっきのイライラなど忘れてしまい、見惚れて、話す言葉を失っていた。



「触んな。俺は、人を待たせてるんだよ!しかも俺にとってチビは禁句なのに……くそっ、死ね!!」


チビは、可愛い顔から想像もできない毒を吐いた。



……えっ。

チビは、そう言ってからまた歩き始めた。は…?俺は、急なことに唖然となって、その場で立ち尽くす。ちょっと待て。一回、整理させてくれ。皆の知ってのはず俺は、生徒会会長の西園寺 帝だぞ?


なぜ、今のアイツは、平気でいられて、挙げ句の果てにはあんな暴言を吐きやがった。慕われて、好かれているこの俺にだ!!俺様としたことが、油断していた。マジで、あのチビに目を奪われてしまったのは、確か。俺を見ても、驚きもしない。媚びを売らないなんて珍しい…。


あれは、お仕置きが必要みたいだな。普段思わないことを考えてしまい、自分自身驚いた。


ふっ…おもしろい。この俺様を知らないとしても顔を見れば、すぐに惚れてしまうほど美貌な俺に興味なしってことだよな?


俺は、初めて会ったアイツをなぜか知らんが………ものすごく知りたくて仕方がない。

だから自然に体が動いた。








【岬side】

俺は、職員室にちゃんとプリントを届けて、教室に戻ろうとしている時だった。一人の背が高すぎる美形な顔立ちをした男が現れた。でも、そいつは、俺をチビなどバカにしやがって思わず殺意が芽生えるとこだった。

だけど、俺は、我慢し毒を少し吐いてこの男に、これ以上関わるとろくなことがないと思い、無視してまた歩き出した。


だが、その願いは叶わなく



ガシッー


また肩を掴まれた。

それも、ものすごく強い力で。





俺は、恐る恐る後ろを振り向く。そこには、さっきの男。やっぱり、初対面で死ねと言ったのはまずかったか?それで、怒ってたり……。

ん?いやいや待て待て!俺は、悪いことなんてしていない。あぁキツく言ったのは、アイツが俺をバカにしたからだ。全てアイツが仕掛けたこと。


「何?いい加減、放してもらえると嬉しいんですけど」



俺は、何も喋ろうともしないコイツを睨んだ。マジで、早く教室に戻らないといけねぇのに。



「…お前、学年は?」

男は、やっと口を開けたと思ったらそんなことを言ってきた。


は…?学年?なぜ急に……あっ。もしかして、反省して謝ろうとしているのか?学年を聞いて、後からお詫びの品を届けるとか?それなら、俺が得するな。


まぁ、とにかく

「1年だけど…」


ひとことだけ、なるべく小さな声で教えてやった。

すると、聞こえたのかコイツは、何か知らんが目を見開いて変なものを見るかのように俺を見ていた。




「お前、1年ってことは…新入生だよな?」


なんか、当たり前のことを聞いてきた。





「それが何」

俺は、適当に答えて素っ気なく返した。言っとくけど、まだコイツに対しての怒りは消えていない。


「入学式で俺様を見なかったのか?」



すると、次は、唐突に質問してきた。入学式…?あ、そういえばそんなのあったね。でも俺、寝てたからなー。しかも何?俺様って。ま、どうでもいいや。


「入学式は、寝ました」


俺は、素直に答えた。だって、嘘ついて墓穴でも掘ったらやべぇじゃん!つか、急に眠たくなったし誰も睡魔には敵わない。


「(あんなにうるさかったのに寝てただと?…ますます面白い)」


なんか、俺の肩をまだ掴みながらニヤニヤしてぶつぶつ言ってるんだけど。でも全然、聞き取れなかった。なんか、怖い。



「もう、離せ」

俺は、無理矢理バタバタとやってみるがピクリともしなかった。


「おい、少し上を向け」

命令口調でそう言われた。






「は?またチビだというのか…」


すると、顎をクイッと持ち上げられた。



「俺様は、生徒会長の西園寺 帝だ。よく覚えておけ」

「誰が覚えるかって…はっ!?生徒会長だと?」




俺は、目を丸くする。



「やっぱり、驚いたか?お前なら、この俺様に惚れてもいいことを許してやるが…」

訳のわからないことを言う会長とやら。


「誰が惚れるか!俺は、生徒会なんて大嫌いなんだよ!!近づくな!」

コイツが自己中で自分勝手な野郎か。俺のことをチビと言ったくらいだし、やっぱり、腹立つ野郎だったか。


「ふっ…俺に向かってそんなことを言うとは、お仕置きだ」


そう言って、俺の顎を持ち上げていたのを更に上げ、気づいたときには、


「なにす………んんっ!」


遅かった。



俺は、目が一瞬、点になる。え?え?何で、クソ会長がこんなにもドアップで映っているんだ。なんか、唇に違和感が。そんでもって、俺の唇とクソ会長の唇がごっつんっこして…

は?はぁぁぁあー!?


「んんんっ…!!」

 
自然と変な声が漏れる。

こ、これは、まさか…キスされてんの!?What…!?What!?意味わからん!!この学園やっぱ、おかしい。

なぜ、平凡な俺に?いや、その前に男にこんなことすんなよ!あ、もしかして、さっき毒を吐いたのをまだ根にもって、嫌がらせしているのか!?

最悪だぁぁぁあ!!






つか、これ、俺の…

ふぁ、ふぁ、ファーストキスぅぅー!!


いきなりのことに頭がパニクって変になる。半泣きで、バンバンと会長の胸板を叩くが俺の後頭部をがっしり押さえていて離れないように固定している。しかも、口を開けさせようと舌で、こじ開けようとしてやがる。待って…本当、無理。

そう思った時だった。





ドカッー

ものすごい音がして、会長が離れていった。



…ひとまず、助かった。男…いや、あのクソ生徒会長に初めてのキスが奪われるなんて死にたい。俺は、長かったキスのせいで、酸素不足になり、地面に尻餅をついて息を整える。



「み・さ・きちゃん…?」



すると、頭上から俺の名前を区切りながら、ドスのきいた声が聞こえてきた。


ヒィッ!?

上を向くと、邪悪な顔の大悟様がいた。すると、手を引かれて、立たされたと思ったらすっぽりと大悟の腕の中におさまっていた。あのクソ会長は、というと大悟に蹴られたらしく飛ばされていた。


「バカ岬。俺、すっげぇ心配したんたけど…」



ぎゅっと抱き締められた。




「え、あ、ごめん…」


俺は、シュンとなって、謝った。大悟は、俺なんかのためになんかあったんじゃないかと心配したらしい。まぁ、実際なんかありまくりだけど!!


「岬というのか…。じゃあ、姫を溺愛している王子は、お前のことか」



大悟に飛ばされていたはずのクソ会長が急に立ち上がり、納得した顔で、平然と俺の横に来た。


「おい、お前。よくも岬にキスを…」

大悟は、そう言いながらブワッと黒いオーラを放ち、俺を自分の背中の後ろに隠した。



「俺様は、誰がなんて言おうと完璧人間なんだ。そんな俺にキスされて、さぞかし、喜んでいるはずだ」



ナルシスト発言を次々に言う。



「喜ぶ?はっ、誰が?逆に最悪すぎて、吐きそうだ!つか、俺の大事なファーストキス返しやがれぇぇえー!!」

俺は、嫌なことを思いだし睨み付けながら、叫んだ。は?つか、何が完璧人間だって?今すぐ撤回しろ。てめぇは、クソの塊にしかすぎんわ!俺は、心の中でコイツに対する怒りが治まらない。



「へぇ…俺とのキスがファーストキスねぇ…」



クソ会長は、何かを勝ち誇った顔をして、大悟を一瞬チラッと見た。


「さては、お前、俺をバカにしてんのか!?まぁ、確かに世間では遅いかもしんねぇけど、こんな形で…。あーもう、生徒会長だからって、調子のんなっ!」

怒りが爆発し、それをそのままぶつけた。すると、気づいたら大悟の真っ黒なオーラがより濃くなっていた。





「次、俺の岬に手ェ出したら、…殺す」 




大悟のあまりの形相に俺は、ゾクッーと鳥肌が立った。つか、え?俺、いつから大悟のものになったの?あ、奴隷?いやいやいやいや!ふざけている場合じゃない!この空気は、ヤバイ。俺は、本能的に危険だと身に感じ、一歩後ずさる。



「み・さ・きちゃん?」


急に振り向く大悟は、ニコニコと笑って、問いかけてくるが完全に目が笑っていない。





「な、何?大悟…」



今思えば、大悟は、怒っているとき俺をちゃん付けして呼ぶ。あと変な区切りをつけて。


「じゃあ、帰ろっか?」



大悟は、何事もなかったかのように、そう言った。



だけど、実際は、口角を上げて微笑んでいる。も、ものすごく不自然だ!え?何、俺…絶体絶命?

そうして、ここを後にした。





―――――
―――――――
―――――――――

………。




帰っている途中、俺たちは、まだ一言も喋っていない。この沈黙した空気が一番怖い。やっぱり…もしかしてさ、随分待たせたのを怒っているとか?

あー、大悟を敵に回すのと気まずくなるのは避けたい。てか、嫌だな。

「だ、大悟…その、長く待たせて悪かったな…。あと、助けてくれてさんきゅ」



俺は、小声で大悟に聞こえるくらいの声で言った。まぁ、助けてもらったし、礼をいうのは、普通だろ…。そう思っていたら、すると、前を歩いていた大悟がいきなり立ち止まり、俺を見ては?といった顔をする。


「どうも。てか、別にそれで怒ってないから…(まぁ、岬があの野郎にキスされたことに腹立っているだけ)」




「そ、そうなのか?」


じゃあ、あれは何で怒ってたんだ?疑問が生まれる。あ、それとも怒って見えただけだったり?

なんだ!俺の勘違いだというわけか!少し気持ちが晴れたとき、



「でも、1つ」


安心したのもつかの間、また妖しげな笑みを浮かべながら大悟はそう言った。

な、なんか嫌な予感…。



「俺との約束破ったよね…?」


悪魔降臨。今、まさに一番その言葉が思い浮かんだ。


つか、

「え…?やくそく?」

キョトンとなる。そ、そんなのしたか?覚えていなく、頭上には、ハテナマークがいっぱいだった。


「覚えていないのか?一人になると危険だから俺から離れるなって言ったじゃないか」



大悟は、ちゃんと聞こえるように俺の耳元で囁いた。



「はぁ?あれ約束だったのかよ!?つか、俺は、小学生じゃねぇんだから一人で何とかできる」



そう言い張った俺だけど、



「何言ってんだ。さっきまで、生徒会長の野郎に襲われかけてたじゃねーか」



大悟は、キレ気味に言ったがその言葉に、何も言い返せないのは事実。あと、襲われかけたは、余計だ。こんな俺に、襲う者好きは、いない。


「あ、あれは、少々油断してただけだ。これから気をつければいいことだろ?」



俺は、大悟に心配をさせまいと、何とか同意を求める。たくっ、大悟の優しさは、過保護も通り越して、お母さんになってるぞ。


「へぇー?み・さ・きちゃんは、キスまでされて、どうしてそんな余裕なこと言えるのかなー?」



なんか、逆効果だったみたいだ。口調は、優しいが顔は…何とも言えないほど悪で満ちていた。




あーもう、どうすればいいんだ?言い訳を考えてる暇がない。あ、そうだ!もうここは、大悟を俺のふざけた冗談で笑わせて話を変えよう!!俺は、のちにその考えに深く後悔するとは、知らずに



「あーぁ、お、男とキスするくらいなら、大悟とした方がよかったなー」



そう言った。もちろん、これは、笑わすための冗談なんだが。


『こんな時に何バカなこと言ってだー!怒っていたことを忘れちまったよ。あははは』というツッコミを待っていた俺…。なのに、


「それは、本当か?」



逆になんか、冗談を真に受けちゃってるんですけど!?いや、これは、笑うどころか怒っているのでは…?このままだと非常にヤバイな…。多分、きっと誤解しているに違いない。

まぁ、大悟には、冗談が通じないみたいだから、正直に言うか…。






「大悟…さっきのは、お前を笑わせよーとした冗だ……んんっ!?」



冗談と言おうと思っていたけど言えなかった。正確には、俺の口があるもので塞がれていて言葉を発せなかった。

なにこの、前にもあったパターン……

……ん?ちょ、えっ?なんで?俺は、目をガァッと見開きながらポカンとなる。大悟のイケメンの顔がなんで、こんなにも近くに……



「んっぁ…」

ちょっと待て。いや、冗談抜きで。俺、なんで大悟にキスされてんのっ!?しかも、痺れるように熱い…。マジ、ちょ意味がわからないって!!俺は、混乱しながらも必死に抵抗するが




「…ふっ…んぁっ」

噛みつくような激しいキスを落としてくる。自ら出ている変な声に羞恥を覚えてきっと俺の顔は、赤面だろう。




「ぁ…ん~っ!」


なんか、舌が入ってきてるんですけどっ!?そして、歯列を舐めてくる。次に無理矢理でも、俺の舌と絡めさせようとしてきやがる。や、やめろ!こんなの絶対おかしいから!そして、数分間に及ぶ長いキス。何度も何度も角度を変えられ、好き放題されまくってやっと気がすんだのか離してくれた。俺は、もう降参と言わんばかりにヘロヘロになって、足に力が上手く入らなく腰が抜けていた。



「おい!だ、大悟 何すんだよ!!」


俺は、息を整えた後で少々涙目になりながも大悟に怒鳴った。コイツ…本当何やってくれてんだ!!頭の中でありえないありえないと何度もリピートされる。



「何、言ってんだ。お前は、俺とキスしたかったんだろ?」


満足気味に、嬉しそうな顔をしながら大悟は、言った。は…?ま、まぁ、確かに男とキスするくらいなら、大悟した方がよかった的なこと言ったけどさ…誰も本気で大悟とキスしたいとは、言っていねぇよ!つか、どんな解釈してんだよ。その前にあれは、そもそも冗談だし。


「だ、大悟…よく聞け。ああ言ったのは、お前を笑わすための冗談だったんだよ。人の話を最後までちゃんと聞いとけば、こんなことにならなかったのに!!」



俺は、ギロッと鋭く睨み付けながらそう言った。男同士でキスなんて普通しないのに、何であんな頭に残ってしまう濃厚なキスしてんだよ!!


もう、最悪だ…。落ち込んでいると、隣で聞いていた大悟の様子がブラックになるのが見えた。


「へぇー?つまり、俺を騙したと?」

大悟は、そう言いながら、悶々と邪悪なオーラが大きくなる。え…?騙した?コイツ、何言ってんだよ、急に。



「だから、あれは騙したとかじゃなくて、冗談なんだって言ってるだろ?」


俺は、呆れた顔をしながら大悟に言い返した。つうかさ、何、騙されたとか言って、被害者ぶってんの?当の被害者は、この俺だ。男なんかにキスされてわーい、やったーとか喜ぶわけないだろ?




「冗談ねぇ…。岬は、約束も破って、嘘もついて……懲りない子だよね、本当」



口の端を上げながら言う大悟…いや、これは、悪魔だ。待て。その前に大悟は、そんなことを言うキャラだったか?あれ、絶対変だぞ!俺は、大悟が今も放っている恐ろしい殺気にビクッとしながら、動揺が隠せないでいた。


「あ、あー 俺、ちょっと用事思い出した!」


そう言って、気づかれないようゆっくり後ずさる。


「ふぅ~ん。また、嘘つくの?どうなるかわかんないよ?」



ニヤッと笑う。こ、コイツ一体、何考えてんだー!?

「う、嘘じゃねぇよ!」


俺は、頑張って言い張るが大悟の言う通りもちろん、これは、逃げるための嘘です。




「悪いこと考えている岬には、またキスが必要なのかな?(いくらでも塞ぐよ?)」



大悟の表情は、ニコニコ…じゃなくて、ニヤニヤ…違う!もう、あれは、ニタニタだ。てか、何またキスって!?もしかして、さっきキスしたのは、俺が約束破ったからだったのかよ!それより、悪いこと考えているのは、いかにもお前の方だろーが!


ツッコミ所が満載だ。



「お前、バカなの?約束破ったくらいで、俺を殺す気かよ!!…もう大悟とは、絶交だ!」




もう、口も聞いてやんねぇ。敵に回すくらい覚悟は、できている!…多分。でも俺も怒るときは、怒るんだ。

そして、言い逃げをしようと思ってすぐに走れるよう構えていたのに、背後から、俺のシャツの襟を掴まれて動けなかった。



「み・さ・きちゃん…?」


この声を聞くまでは。このあと、放心状態でちゃんと一緒に家まで帰らされた。…おまけに手まで繋いで。あー、はいはい大悟は、お母さんでしたね。忘れてました。はははっ…。

今日は、ファーストキス、セカンドキスまで奪われて、なんて日だよ…。このことは、俺の黒歴史に深く刻まれたというのは、言うまでもない話だ――……。







次の日、目が覚めると時計が7時を回っていた。



もう…朝か。早い…。昨日は、ぐっすり眠られるはずがない。だって、頭ん中色々と整理するのに時間がかかり、結構疲れたからだ。でも、ちゃんと整理してわかったことは、まず、大悟は、約束を破ると怒って、無理矢理でもキスを迫ったあと相手の気分を害させる。だから、これからは気を付けるよう、心に俺は決めた。もうあんなのは、2度とごめんだからな。



「よしっ、そろそろ準備すっか…」



体を起こして、パンパンと両頬を叩いて、さっそく学校へ行く支度をした。


――――
――――――
――――――――


………。




「岬、おはよう」


「あ、おはよう」


一緒に毎日学校に行くって約束してたんだっけ。危ねぇ…。約束破るところだった。大悟の様子は、そんないつもと変わらない。声も言葉も表情も。まぁ、俺なんて、昨日のコイツに対してのストレスが一気に溜まりすぎて黒い感情が溢れ出そうなんだけどな。でも相手が大悟となると、やっぱり恐ろしくて反抗する勇気がなくなる。

チ、チキンとか言うなよ!



「あ、そうだ。岬」


「ん?なんだよ」


「昨日、言い忘れてたんだけど、またもし、あんな無防備なことしたら、“アレ”より、それ以上のことしてやるからな?」


笑顔でそんなことを言う大悟は、どれほど怖い人物なのか想像ができる。アレって、もしかして、キスのことだよな?うわー、しかもそれ以上って……死あるのみみたいな感じだな…。



「ははは…」

俺は、大悟の言っている意味がわからなくなって、後は、笑って誤魔化した。


「…だから、その時は覚悟しろよ?」


ニッと笑いながら、そう言う大悟。



はっ

「か、覚悟だと…!?」

や、や、やっぱり次は、殺されてしまうのか――――っ!!!!


「あぁ、楽しみだな」

大悟は、またもや微笑む。一瞬、時が止まった気がした……。


「っ!」


大悟から出る鋭い目に、俺はただ見つめているだけ。圧力的な関係で何も言い返せなくてただただ手に力が入った。そのあと、俺は茫然と大悟と言う名の殺人犯(予定)にビクビクしながら学校に向かった。



――――………。


「俺の岬ちゃ~ん!」


ドンッー



「うっ…」


教室に入ると、急に何者かに正面から抱きつかれた。結構、痛いぞ…。

多分、俺にこんなことをしてくるのは、



「お、おい…金太郎、今すぐ離れろ」



コイツしかいないだろう。どこで間違ったスキンシップを覚えたか知らないがそのせいで被害に合う俺の身にもなれ。


「えーやだ!離れたくない~!だって、岬ちゃん、いつもすっげぇいい匂いするんだもん!癖になる」

すると、俺にスリスリとしてきた。


「ま、まじでやめろ。意味わからん」

つうかお前は、犬か。半分呆れていると、



「俺は、岬ちゃん不足なの~」


「いや、別にそんなのいいから」


「またまた、照れちゃって!可愛いな~大丈夫、俺は十分岬ちゃんの気持ちを理解してるから!」


「は?何言ってんだ」


俺の気持ち、全然わかってねぇだろ!嘘つきめ。


「あー、岬ちゃんが欲しくてたまんない」

ギューと、抱き締めている力が強くなる。

あっ、すいません。今、誰か暇ならまず110番してくれ!!心の中で助けを呼んでいると、背後から、そっと現れて



「おい、ハゲ。誰の許可なく岬に触れてんだ?」



ぶわぁっと、闇のオーラをまとって大悟は不機嫌にそう言いながら、俺と金太郎を引き離してくれた。


あー、やっぱり、いつもタイミングがいいよな…。今、ものすごく恐ろしい笑みを作っている大悟を見て、ふとそう思った。



「ハゲてねーし!つか、岬ちゃんは、お前のじゃないだろ。何、勝手に彼氏ヅラ、してんだよ!」





金太郎は、意味のわからない日本語を使って、大悟をキイッと睨んでいる。マジ、こいつ…バカだろ。

お前の頭はただの飾りかよ。はぁ、もうなんか疲れて俺までポカンとなっちゃうぜ。そんなことを考えていたら、大悟は堂々とした顔つきで


「まっ、いずれは俺のになんだよ。あと、岬のあの華奢な身体から溢れているあの香りは、生まれたときから俺だけのためにあんだ」


どんな宗教だよ。しかも微妙に爆弾…いや、変態発言しなかったか?


「何だよ、それ!岬ちゃんは、俺のだ」


「吠えてろ、アホ」


はぁ…この二人がケンカをし始めたら止まらない…。いつも意味のわからない言い争いを繰り広げて何が楽しんだ?俺には、さっぱり理解できねぇ。つか、何かしたくない。周りを見渡せばみんな大注目している。わぁ~…この空気いやだな。

よしっ。俺は、即座にスタスタと二人を置いて、自分の席に腰かけた。


…その途端に



「岬、俺から離れるなって言ったよな?」



「っ!?」



いきなり、聞こえた声にビクッと反応する。




え、ちょっと待って。何で、もう大悟が俺の横にいんだ?さっきまで教室の扉の方にいたはずだよね?なのに、今はちゃっかりと隣で拗ねた顔をしながら座っていた。…ある意味、ホラーに近い。そんなこんなでまた俺の一日が始まった。


――――――
――――――――
――――――――――

…………。



「これからHRを始める」


先生の声とともに、一時間目がスタートする。



「えぇ、急だが、明日新入生歓迎会をすることになった」



先生が発言した言葉に皆、一斉に『はっ!?』とハモる。ちょ、えっ…?新入生歓迎会だと…?




「あの、せ、先生…一体新入生歓迎会は何をするんですか?」

クラスメイトの一人がそう聞いた。




「あぁ、それはだな。この学園きっての伝統…鬼ごっこだ」




先生は、躊躇なく言った。そして、しーんと教室が静まり返った。えっ…。なぜに新入生歓迎会が鬼ごっこ!?しかも今の年齢でやれと!?おかしい…。




「先生、それは、小学生がやるものなんじゃ…」


俺は、声を落として恐る恐る問いかけた。いくら何でも、なー……?さすがに鬼ごっこは、ないぜ。


「伝統だ。それに杉本、お前は小学生に見えるから気にすることはない。堂々とやれ」


んだとぉぉぉおー!?ゴラッ!先生は、笑顔で嫌味を言ってきた。はぁ?何が気にするなだよ!?ふざけてんだろ、おい。地獄に墜ちてしまえ!!つか、この学園は、伝統にこだわりすぎなんだよ!


「…っ~っ!!」

と俺は、さすがに先生に向けて、そんなことは言えないのでギロッと歯を食い縛って睨んだ。先生だからって言って良いこと、悪いことくらい判別しろや、クソ。


「杉本、その目は誘っているのか?」

は…?さそってる?どこに?てか、こんなときによく呑気にそんなこと聞けるもんだな。




「なににですか?」


先生の唐突な質問に俺は、怒りを抑えつつも、素っ気なく返した。言っとくけど、俺一応さっきのことは、結構根に持つタイプだからな。


「お前は、見た目通り無垢な奴だな。いいか?誘っているということはだな…「先生、今は、保健の授業じゃなくてHRの時間ですよね…?」

大悟が怖い顔をしながら先生の話を途中で遮った。なんだよ。保健の授業って…。今は、そんなの関係ないと思うが。大悟は、よく変な例え方するからあんまり理解できない。




いや、それは、ひとまず置いといて今、気づいたがさそっているってもしかして、ケンカにってことの意味だったのかな?だって、俺さっきすごい目つきで先生睨んでたし。それでケンカ売っているように見えたんだな。うん、絶対それだ。もし、俺に対してまた失礼なこと言ったら完全殴っていたかも。あ、そしたら退学になるか…残念。


「岬ちゃん、本当かわい……」


前では、何やら妄想を繰り広げているバカがいた。俺が可愛い?眼科行けよ。



「よーっし。話を元に戻す。じゃあ、これから鬼ごっこのルールを説明しよう」


すると、先生は切り替えて、見覚えのあるボックスを教卓の前に出した。待て、嘘だろ…。


「鬼ごっこは、逃げる側と鬼がいるだろ?まず、それを今から決めたいと思う」




先生は、ニコッと笑いながらあの怪しげなボックスを得意気にバンバンと叩いた。


「まさか、またこれで決めるとか…」


「そのまさかだ」


先生は俺の声が聞こえたのか、すぐさま答える。


は?あ、ありえない。こんな決め方で決めるの本当好きだよな、この学園。俺がこーゆうの苦手なのを分かっての嫌がらせにしか思えない。


「よしっ。特別に委員長のお前から引かせてやろう」


あ、俺…委員長だったわ。もう正直どうでもいいやとか半分諦めかけてたけど最初に引けるならいいね。鬼ごっこで逃げる側は結構 体力使いそうだから、俺的、鬼になりてぇ。そして、ゆっくりなにもせずに休みたい。俺は、前に出てきてさっそくボックスに手を突っ込んだ。

…ん?なんか、触感は、紙とかそういうのじゃなくてボールが入っていた。ま、別にどうでもいいか。

俺は、ゴソゴソと掻き回して1つのボールを握りしめながら取り出した。一番最初に引いたんだから鬼を当たる可能性は大だ!




「おー、杉本は、逃亡者か。頑張れよー。よしっ次は、番号順に引いていけ」




…はっ。嘘だろ。取ったボールを確認したら『逃亡者』と表面に書かれていた。自分の運の無さに、呆れて物もいえない。なりたかった鬼ではなくまさかの逃げる側かよ。逃げるより追いかけたい派なんだよ!だって、逃げるとか負けと同然みたいでなんか嫌だ。もう…はぁ。意識を飛ばしていると



「岬ちゃん、そんな落ち込まないで。ちゃーんと俺が捕まえてあげるから」



金太郎は、そう言いながら俺の肩をポンポンと軽く叩いた。…ん?



「お、お前まさか…」


「そうだよー!俺、鬼」


引き終えたのであろう、金太郎は、スマイル顔で言う。う、嘘だろ…。神様は、俺よりコイツを選んだというわけか。……んで、コイツの味方してんだよ!神様の目は、節穴か!?絶対、俺の方が日頃良い子にしていると思うのによ。はははっ。あ、でも待て。まだ俺には、心強い大悟がいる!!


「だ、大悟。お前は何だった?」


大悟の方に駆け寄り、そう聞いた。


「あ、鬼だ」


たった今、ボックスから引いたボールには、でかく『鬼』と刻み込まれていた。


「………。」



なんつーか、言葉も出てこない。はははっ…。俺には、仲間もいない訳か…。ぼっち、かぁ~…なるほどね。きっと、神様は、楽しんでいるんだ。

俺が不幸になることに。




「もう、帰ってやる!!嫌だぁぁぁー」



俺は、これ以上不幸になることを恐れて大声で叫びながら教室を飛び出した。



「み、岬!!」

後ろで、大悟が呼んでいる声も耳に入らず、お構い無しに俺は、走った。





―――――
―――――――
―――――――――

……。




あー、やっちまった。俺は、先程の自分の行動に深く後悔していた。勢いよく、飛び出して来たため…



「ここは、図書館…なのか?」



いつの間にか、見知らぬところに迷いこんでしまっていた。俺、本当バカだろ…。しかも授業中に。ただ自分の嫌なことがあったくらいで抜け出すなんて、どう考えても幼稚すぎる…。まぁ、もう今、教室に戻ったって怒られるだろうし、今、俺の目の前にある図書館に入って見学でもしようと思った。

どうせ怒られるだろうし。大事なことなんで2回言いました。


ガラッー

ドアを開けて、中に入るとそこは、しーんと静まり返った空間。やっぱり、みんな授業中だしここには、誰もいねーよな。意外と一人図書館ってなんか不気味で怖いな…。いくつものズラーと並べられている本を見ながらそう思った。奥まで行くと、端にソファーが置かれており、その手前の数メートル先に机などが規制正しく並んであった。


「うわぁ~…なんか、豪華」

小さな声で言う。近くまで来て、まじまじと見てみると、このソファーは、かなりふかふかしていていかにも、高そうな感じが溢れ出ていた。



「べ、別に座っても大丈夫だよな…?」



俺は、キョロキョロと周りを見渡して、誰もいないのを確認したら恐る恐るソファーに腰掛けた。


や、やべぇ…


「なに、この肌触りの気持ち良さは…」

気づいたら俺は、腰だけではなく、身体全体凭れていた。





本当…ふかふか。俺は、スリスリとさせる。あー、なんか癖になるわぁ。やめられない止まらないみたいな感じの。す、少しだけこのままでいてもいいよな…?そんなことを考えていたら、すぅと眠気が襲ってきた。少しだけなら平気だし、きっと大丈夫…。


「少しだけ…すこし…」

俺は、そう呟いてゆっくりと目を閉じた。



【翼side】



俺は、生徒会書記の橋川 翼でーす。皆からは、よくチャラ男って言われてまーす。まぁ、それは、本当のことだから否定なんてしないけどね(笑)あと、暇な時は、ホストとか趣味でやってて、結構接客とか楽しんだよね。今じゃ、そのホストクラブのNo.1に輝いちゃってる俺だけど。ぶっちゃけ言うと最初は、遊び心で始めたんだけどね。もちろんみんなには内緒だけど。あー、よしっ。今日は、俺のテリトリーでも行ってゆっくり過ごそっと。

あ、なんかいいよね。生徒会ってさ。だって、授業免除っていう特権がついてるし、最高じゃん?遊べるし、ほぼ自由だよ?…あ、でも毎日がのんびりできる分、つまらない日が多いけどね。

そういや、今日占いで1位だったし、いいことありそう。そんなことを思い出しながら俺は、スキップであるところに向かった。



「ふぅ~…到着」


あれから、結構歩いて来てほっと息を吐いた。そして《図書館》と書かれたプレートを見て下の扉を開けた。…そう、ここが俺のテリトリー。



「どうすっかな…」


ひとまず、ゆっくり寝て自分を癒そうかな…?うん、そうしよう!今は、先生も生徒も授業に出ていてここに来るやつなんていない。だから、邪魔されず気持ちよく寝れるってわけだ。あっ、ちなみに言っとくけど俺、図書館では誰も抱いたことないからな?だって、俺ここ意外と好きだし、気に入ってるし第一、汚したくねぇから。まぁ、抱くとしたらやっぱり保健室だろ?つか、お決まりだし。はーい、正真正銘の下半身野郎でーす。俺って、チャラ男でも顔は美形だから皆に人気があるんだよねー。




テクニックさえあれば、どんな奴でもイチコロで落ちる。あ、男女問わずだ。ちょちょいと甘い言葉を囁けば、失神する奴数知れず。恋愛って、単純で簡単。手に入れたいものがあればすぐ手に入れる。俺にとっては、ゲームと一緒。それほど自分に自信がある。そんなことを考えていた時…。



「……ん…」


どこからか、声がした。


「もしかして、誰かいる…?」


うそ、マジかよ。ぐっすり寝れねぇじゃん。いつもなら、ここですぐ帰るが聞こえた声があまりにも可愛かったから、俺は、つい気になって近づいて覗いてみることにした。現金な奴とか言うなよ?そして、覗いてビックリ…。


「ひ、姫…?」

疑いたくなるが、でも目の前には、小さくソファーにうずくまって気持ち良さそうに寝ている仔猫ちゃんがいた。可愛い…もろタイプ。もしかして、この子…!皆が噂して、騒いでいた一年の姫…?俺は、しばらくじーっと見つめていた。だけど、寝ているのにこれ以上、なんか直視できなくなってバッと目を逸らしてしまった。自分でも本当、何やってんのかわからなくて…つか、今までにこんなこと一度もなかった。


「あっ、そういや…」


ふと、思い出す。



確か…陸人の話によると姫は、岬ちゃんって名前だっけ。前、俺が聞いたときに、口を滑らし、そう言ってたからな。岬ちゃんは、俺が先に目をつけたから横取りすんな的なことも言ってたな…。俺は、あっとなる。あんな必死ってことはつまり、本気ってことだよな?しかも写真の向こうの姫に一目惚れするほど。誰にも見せたくない、渡したくないと思う気持ちとかなんか、わかった気がしちゃうんですけど。俺も噂では、どんな奴だろう?とかで少し気になっていたけどこれは、予想以上に遥かに越えている。俺は、再び目線を姫に合わせる。


っ!!!?そしたら、猫のようにスリスリとさせているではないか!!し、心臓に悪い…。


それに無防備に寝ているもんだから自然と手が勝手に伸びてしまい気づくと俺は、姫の髪を撫でていた。サラサラしていて気持ち良い…。ずっと撫でたいって気分になる。また調子に乗って頬っぺも触ってみたりする。


なにこれ

「すげぇ、もちもち…」


白くて透き通った肌。感触なんて最高って言葉じゃ足りないくらいだ。俺は、自分でも知らないうちにこの子に夢中になっていた。 寝込みに襲うなんて俺にとっては日常茶飯事なことなんだけど姫相手だとなんだか調子狂う…。本当、女顔…いや、女よりも可愛すぎている。綺麗にパーツが整っていてこんなところでそんな風に寝てたら誰かが襲っている。まぁ、俺は図書館ではそんなことやらねぇって決めてるし。

…でも、まだ起きないよな?こんな人けもない所で寝ていて、見た人の第一の人声は『誘ってんの?』だよな、絶対。だから、少しくらい…少しくらい良いよね?俺は、そっと姫を上からたまらず抱き締めた。


「甘い匂い…」

香水とかそんなじゃなくてやみつきになる良い匂い。この匂い好き…。やっば。ただ匂いを嗅いでただけなのに俺の息子が反応しちゃった。はいはい、俺はどうせ変態ですよ!このままだと心臓がいくつあっても足りねぇかも。あと、理性を保つのもね。限界だなと思って離れたのに少し寂しさを覚えた。


声が聞きたい、話したい。笑顔が知りたい。次々に姫に対して欲が生まれてきた。あーもう、なんだよ!こんなの俺らしくねぇじゃん!一体、どうしたって言うんだよ。数分間、頭を押さえて気持ちを落ち着かせていた。もう一向に起きないこいつは、確実眠り姫に違いない。とりあえず、少し距離を置いて、深呼吸…。手で胸を押さえながら息をふぅと吐くと、あることに気づく。な、なんなんだ…俺。めちゃくちゃドキドキしてるじゃん…。

自分の掌からは、想像もしないようなものすごい速さで鼓動が波を打っていたことに驚いた。あ、ありえない…。俺は、バッと口元を押さえる。この俺に限ってそんなこと…。少しの間、男の事情というのと戦っていた。


―――――
―――――――
―――――――――

………。



あれから何分後か経って、自分を見失いかけてた時だった。


「ん~…ふぁあ~…」



可愛く欠伸をして、『よく寝た』と言いながら、さっきまで気持ちよく眠っていた姫が目を覚ました。まだ隣にいる俺のことに気づいていない。寝惚けている?姫は、半分しか目を開けきれなくって寝足りないという感じが伝わってくる。また、このまま寝てしまえば話すことができない。そんなの嫌だな。


よしっ!もうこうなったら!


「おはよー姫」


俺は、姫の顔の近くまで行き、体を揺すって起こす手段を選んだ。やっぱり、改めてじっくり姫の顔を見ると、男としての下半身事情がヤバくなるよな…。変態なことを考えてたら、俺の声に反応したのか、ピクリとなって姫は、目をガバッと思いっきり開いた。


「え…どうして俺」


起きたばかりだから、焦りと戸惑いが一気にきて、そわそわしている。なんつーか、…かわいー。

おっと、見惚れてる場合じゃない!



「なんで、姫がこんなところで寝ているのー?」



俺は、優しく接し笑顔でそう言った。…ん?あれー?この俺の笑顔を見たら、すぐ真っ赤になるのに姫は、逆に真っ青になってる気がするのはきっと気のせいだよね…?


「え、えっと姫って?あっ、あと勝手にここで寝たりしてごめんなさい…」


何やら反省して、しょぼんとなる姫は、見た限りじゃ小動物にしか見えなくて飽きない。


「ううん、大丈夫。それにここは、あんまり人が来ないから気にしないで?あ、それと姫の名前って岬ちゃんだったりする?」



「あ、ありがとうございます…。えっ?何で俺の名前を…。つか、さっきから姫って何?」



ペコリと頭を下げて、礼を言い俺が名前を知っていたことに姫は、疑問を抱いた。やっぱり、予想通りこの子が岬ちゃんか…。さっきまで、曖昧だったから分かってスッキリした。


「姫っていうのは、気にしないでー!あと岬ちゃんって言ったのは、よくいる名前じゃん?だから、適当に言って当たってたから驚いたよー」


姫に怪しまれないように笑って誤魔化す。




「よくいる名前なんですか…」


納得がいかない、腑に落ちないというような顔をしていたけど姫はそこまで深く考えなかったらしい。ふぅ~…ひとまず、大丈夫かな?



「あ、あの。あなたは一体…?」


安心したのもつかの間、急に姫から話を振られた。何か、つい嬉しくなり口元が緩む。


「あっ、俺は、生徒…」


生徒会と言おうとしたけど俺は、途中で止める。いや、待て。そういや、昨日帝のやつが言ってたな…。姫は、なんか生徒会を毛嫌いしているとかなんとか。まっ、どうせ帝が変なことしたからに違いないと思うけど。だけど、正確にはわからないし、生徒会と名乗るのはまずい…。ここで理由もなく嫌われるのは嫌だ。



「あ、あの…?」

姫は、不思議そうな顔をして俺に声をかける。


「あーごめんね。えっと俺は、2年の橋川 翼!よろしくね」


そう言って、手を前に差し出す。そしたら姫も


「あ、俺は、1年の杉本 岬です。先輩だったんですね」


そう言いながら、手を前に出して握手をしてくれた。うわっ、手細っ!!そーいや、俺。なーんか重要なこと忘れているよーな…。



『ガンッー』

すると、図書館の入り口の方から何かが壊れる音が聞こえてきた。途端に次に、ズカズカと何者かの足音がする。だんだんとここへ近づいてくるような…。隣で岬ちゃんも驚いていた。俺なんて、足元から頭まで全身にブルッと寒気がした。


「やっと見つけた…。み・さ・きちゃん?」



怖い顔をしたイケメンなやつが現れた。この時 俺は、自分の命が心配になってきた。



「だ、大悟…」


姫は、顔を引きつらせながら、そいつの名前を呼ぶ。あ、俺が忘れていたことはこれのことだったのか。そう。姫には、姫を溺愛している王子がいたってこと。


「ふーん。王子の登場ね…」


俺は、聞こえないくらい小さな声でボソッと呟く。


「み・さ・き?早くこっちに来て教室に戻るぞ」


「わ、わかってるけど…だ、大悟 お前動くなっ!」



「動かないと岬逃げるでしょ?」


「…っ!」



姫は、図星つかれたのか、何も言えないでそわそわしていた。本当、猫みたい…。すると、姫は次に驚くべき行動に出た。



「ひ、姫…?」

背中に冷や汗が流れる。何故かって?そりゃあ…俺の後ろで背中のシャツを掴んで隠れているのだから!!な、なんなのこれ。今絶対、走っているときより心拍数ヤバイよ…?それにプラス前で俺を敵視しながら鋭く睨んでいる奴がいるんですけど…。なんか、知らない内に絶体絶命ッスカ?


「お、俺…殺される」

姫は、震えた声で言った。いや…多分、俺が殺される。だって、怒りの矛先が俺に向いてるからな!だけど、俺だってここで引き下がる男じゃない!!姫に興味あるし、このまま王子になんて渡すような勿体ないことしたくねー!


「えーと、大悟くんって言ったっけ?」


 「どけっ。チャラ男」



む、ムカ~っ!人が親切にしてやってんのに…つか、人の話を聞け!!あー、もうこいつは、姫しか見えてねぇんだな。まさに盲目って感じか?うん。その言葉がこいつには、ピッタリだ。


「岬、早くおいで。皆 心配しているぞ」


王子は、知恵を使い始めて優しく言う。



「え…まじ?」


その途端に姫は、俺の横からひょっこり顔だけを出した。


「帰りにイチゴケーキ買ってやるから。ほら、行くぞ」



「あぁ、行く!!」


気づいたら、もう姫は王子の隣にいた。早っ!イチゴケーキという単語が出た瞬間に人が変わったようだった。現金な奴というか…単純というか…。それに、イチゴケーキが好きなのかな?かわいっ。俺が一人、心の中でニヤけていると低い声で王子が『近づくな』と言い、不適な笑みを浮かべながら姫を連れ拐ってしまった。てことは、それほど王子も余裕がないということか。

 
 杉本 岬…。

「今日は、おあずけか…」


静寂に包まれた図書館で一人口角を上げながら笑った。


【岬side】


もう日付は、変わり今日は、新入生歓迎会。昨日、図書館であったことは、大悟にこっぴどく怒られてしまった。理由は、あの翼先輩とやらに二度と近づくなって散々言われた。でもあの人、結構いい人だった気がしたんだよな…。だって、俺が勝手に寝てしまった時許してくれたし…悪い奴ではないと思う。てか、もう会うことは、きっとないだろう。まぁ、怒られるのは嫌だったけど、帰りに約束通りちゃんとイチゴケーキ奢って貰ったし別にどうでもいいや。と、投げやりにポジティブに考えた。


んだけど…。


「岬?俺以外のやつに捕まるなよ?」


今日、大悟にそう言われた瞬間、一瞬にして崩れた。自分の立場に絶望とする。あぁ…うん、そうだった。新入生歓迎会は、伝統とやらで鬼ごっこをすることになってたんだ…。そんでもって、俺は、その鬼ごっこで逃げるポジションにいる。正直、昨日のイチゴケーキくらいから今日の今まですっかり忘れてたわ…。はぁ…俺としたことが油断してた。あーぁ、やなこと思い出した。俺は、バンッと勢いよく机に顔をうつ伏せた。逃げるなんて、格好悪い。


つんつん

何やら肩に違和感…。俺は、顔を上げる。


「岬ちゃんは、俺が必ず捕まえてあげるからね」


急に金太郎が横から現れて人の肩をつついていた。ご丁寧に語尾に音符まで付けやがって。んだよ。そのやる気満々の顔はっ!!嫌味なのか?あぁ?内心気楽なコイツに殺意が芽生えそうになった。



「お前らは、いいよな。鬼で」

俺は、そっぽを向きながら、大悟と金太郎の二人にそう言った。周りから見れば、俺が八つ当たりしているように見えると思うけど、そんなのどうだっていい。

「えっ、岬ちゃん、鬼がよかったのー?」

いかにも金太郎は、意外だという目を向けてくる。



「ふんっ。当たり前だ。逃げるとかダせぇじゃん」


どうせ鬼は、俺に似合わないとか言いたいんだろ。ムカつく。それに、逃げるのは結構疲れるし、体力使いすぎるのが嫌だ。


「そうなのー?じゃあ、逆に逃げ切れたら、かっこいいってことになるんじゃない?」




「んっ!?」


俺は、かっこいいという言葉に過敏にピクッと反応した。今、確かに『かっこいい』と言ったよな?


「そ、そうなのか…?」

俺は、正しいかどうか知りたいため聞き直す。



「そうなると思うけど、やっぱり岬ちゃんは、俺に捕まるほうが合ってるよ!」

金太郎は、親指を立たせてgoodと言う。



「それは、絶対ない。ありえない」


断固拒否する。だが、そうか…逃げ切れるとかっこいいのか…。あんまり、かっこいいって言われたことないから頑張れる気がしてきた。それに、そう捉えることもできたのか。おぉ、なんかやる気出てきたぞ。


「なぁ…岬」


「ん?なんだよ、大悟」


「お前、鬼ごっこのルール知ってるよな?」



「あぁ!?当たり前に知ってるわ!」



そこまでバカじゃねぇよ、俺。なめられたもんだ。


「一応、言っておくけど、鬼ごっこは全校生徒でやるんだぞ?」



「えっ?1年だけじゃねーの?」



俺は、はっ?となる。そして目をぱちくり。



「やっぱ、それは知らなかったか。ちなみに、鬼に捕まれた奴はその鬼の命令を…」



「ちょっ、待て!大悟 それを詳しく!!」



遮って、俺は、ガバッと大悟の胸ぐらを掴んだ。



「やっぱり先生の話聞いてなかったのか…」


大悟は、呆れながらはぁ…とため息を吐き、やれやれとした表情をする。



「と、とにかく教えてくれ…」


俺は、胸ぐらを放して落ち着いた状況を作り、椅子に座った。それに先生の話を聞かないことはいつものことだ。


「まぁ、よく聞け。この鬼ごっこは、ちょっと普通と違くて、もし、そこら辺の小学生がやってるただの鬼ごっこをやるんだったら、皆つまらないだろ?」


「うん…確かに」


俺は、コクリと頷く。



「それでサボる奴とかが多くなる。…でも“賞品がつく”と聞くとどうなる?」



「そ、それは、ちょっと…目の色が変わっちまうかも…」



結構、俺って物で釣られるタイプだからそういうのに弱い。大悟は、話を続ける。


「ちなみに俺たち鬼は、捕まえた逃亡者の中から一人だけ命令ができるという特権がある」



わかったか?と念を押された。


だが…


「ナニソレ、ハツミミ…」



俺は、ポカンとしながら口をパクパクさせる。そ、そんな話俺は、聞いてねぇぞ!!ま、待て…。逃亡者は、ただ逃げるだけなのか…?賞品は?


「なぁ…大悟。じゃあ、逃げる側には、その鬼みたいな特権ねぇの?」



疑問を言う。もし、なかったら差別だ。


「もちろんある。けど、それは最後まで誰にも捕まれずに生き残ること。そしたら、自分が好きな願いを何でも叶えてくれるらしい」



「な、何でも…?」

俺の目がさっきと別人みたいに光る。



「あぁ、そうだよ」


「よ、よ、よしゃあー!!一年分のイチゴケーキ!!!!」



俺は、手でガッツポーズをキメながら大声で叫ぶ。その特権があるなら最初っから言えよな!もう、これだから大悟は、勿体ぶって…!



ポンッー

すると、大悟が喜んでいる俺の肩に手を置いた。


「岬。残念だがお前は、最後まで残れない。何せ、俺に捕まれるからな」


口の端を上げて妖しげに笑う。ヒィ…っ!!ふ、不吉なこと言うなっ!呪いの言葉みてぇだ。


「ふ、ふんっ。いやだね!俺は、イチゴケーキが好きなんだ!」


絶対、捕まれるわけにはいかない。


「あれ?前に言ったよね…?俺から離れるなって。だから大人しく俺に捕まりなさい」



「はぁっ!?それとこれとは別の話だろっ!?」

卑怯すぎる脅しにも程がある。


「岬ちゃん!俺とイチゴケーキ、どっちが好きなの!?」


「はっ?イチゴケーキに決まってるだろ、アホ」


急に割り込んできた金太郎に正直に答えたら教室の隅でキノコを栽培し始めた。

だって、イチゴケーキに勝てる奴なんて考えてみればいないことだ。

すると、周りがぞろぞろと移動していく。



「始まるみたいだな…。よしっ!早く行こうぜ」



すると、さっきまでキノコを栽培していた金太郎が急に来て



「もうそんな時間!岬ちゃん、絶対俺以外の男に捕まれないようにね!じゃないと俺…嫉妬しちゃうよ?」


ムッと頬を膨らませながら俺の両肩に手をぽんっと置き、妙に顔を近づけさせてそう言った。

意味はわからないが

「はいはい…」


適当に返事をして、離れた。つうか、誰かに捕まれたりするようなヘマ、俺がするわけないじゃん。




そんな甘く見られているとはな…。心の中で深く息を吐く。言っとくけど、こうみえて結構、逃げ足は速い方だ。自慢じゃないけど。


「岬…?すぐ捕まえてあげるからね」


「ヒィ…」


大悟は、ニコッと微笑みながら言った。その笑顔、俺から見ればブラック過ぎて怖ぇよ!!人が見るものじゃねぇ。恐ろしい。もう、まさに鬼じゃん!でも俺は、必ず誰にも捕まれずに生き残ってみせる!!そして、念願のイチゴケーキ一年分をGetしてやるぜっ。そしたら、俺かっこよさアップしちゃうよね?おっ、これは一石二鳥な話じゃねぇか!自然と口が緩んでしまう。いけねぇ、いけねぇ。

そして、俺らも皆に合わせて移動した。


―――――
―――――――
―――――――――

……。


「ハァハァ…」


息をあげながら走っている。完璧、甘くみていました。こ…こ、こんなの俺が知ってる鬼ごっこじゃなーい!!


《姫ー!!止まれー!》

《早く俺のモノになってー!!》

うおー!と馬鹿げたことを言いながら、背後から俺を追ってくる鬼さん。そう、お気づきかも知れませんがただ今鬼ごっこの真っ最中だ。かれこれ30分前くらいに始まって見ての通り俺は、全速力で鬼から逃げている。こんな鬼ごっこ…ありえない。さすがに全校生徒参加となると厄介だ。ただえさえ、鬼の獲物を追う目つきなんて、野生を越えている。それほど、迫力が半端ない。あと、さっきから『姫、姫』なんて聞こえてくるが、もしかして、逃亡者は、そう呼ばれているのか?



だとしたら、センスの無さにびっくりだよ。ほら、もっとこう…そう!!『勇者』とか言って欲しいよな…。あれ?勇者って響きなんか好きかも。断然、姫って弱っちー呼び方より、勇者の方が強くて偉大な感じがぷんぷんする。俺ってネーミングセンスだけは、考えるの上手いんだよな…。


…って!

そう呑気に考えてる余裕ねぇんだった!すぐさま鬼ごっこに集中する。



《岬ちゃーん!!やっと見つけたー!!》



大声で何者かが俺の名前を叫んでいる。



この声って、確か…


《正義の味方、太郎改め金太郎だよー!!》

ご丁寧に名乗りやがった。もう声でウザさがわかる。俺は、曲がり角を巧みに使い、使っていない空き教室へと入った。そして、念のために掃除道具がいくつか置かれているロッカーに急いで入り込んだ。




《あれ…?姫が消えた》


勇者だつーの。


《岬ちゃん!!どこー》


だんだんと聞こえていた声が遠くなっていた。ふぅ…。めちゃくちゃ疲れた。たくっ。あの金太郎の野郎!!何が正義の味方だっ!俺を捕まえる気満々だったくせに。あーもう、腹立つ。てか、俺は、鬼に捕まって命令という名のパシリみたいなのされるのは、本当ゴメンだ。男としてのプライドが潰れてしまう。さすがにそれは避けたい。はぁ…。つうか、それより、ずっとここにいては、きっとバレるのも時間の問題だ。早くどこかに移動しなくては。どこか…どこか人けのない所って…あっ!俺は、記憶の中を探してみるとあるとこに辿り着く。


一つ良いところあった!!

たった今、鬼から逃げるには最適な場所を思い出した。




「こうなったら、もう行くしかないな…」



小さく呟いてロッカーから出る。そして、向かう先の方へと足を進めた。


――――
――――――
――――――――

………。





ガラッー

着いた場所は、そうここ。図書館。無事に誰にも見つからず来れて安心した。もう、これで少しは休める。ここが一番、最適な場所だ!何だって、人の出入りが少なくて隠れる場所がたくさんある。前にここに迷いこんだ時は、あの翼先輩っていう人しか会わなかったしきっと大丈夫だろう。あぁ、俺ってこーいうの才能ある?逃げるのは、嫌だから隠れるっていうのが良いやり方だと思う。よしっ。早くどこかに隠れて置こう。もうこのまま鬼ごっこが終わるまで待機して方がいいかもな!そう考えてたら、俺が隠れるにはちょうどいい隙間があった。そこは、あのふかふかなソファーの隣の小さな隙間だ。死角になってるし、ラッキー!呑気そう思い、深く考えずそこに隠れた。そして、何十分もそこにいたせいか俺の悪い癖が出てしまった。




―――――
―――――――
―――――――――

………。


何がどうなってこうなった?自分が今、どういう立場にいるかわからない。だって、俺。誰かの肩に思いっきり担がれているからだっ!!え?もう一度言おう…。


「何がどうなってこうなった…?」

「あ、起きた…?でも今の状況に気づいていないみたいだね」


と、クスリと笑いながら、俺を地面へとゆっくり降ろした。そして、パチンとその人と目が合う。


えっ。


「つ、翼先輩…?」


そこにいたのは、昨日図書館で知り合った先輩だった。


「覚えててくれたんだ!すっごい嬉しい」



本当にものすごく嬉しそうに微笑んでいる。名前覚えてただけでそんな喜ぶ?失礼だけど、先輩…バカなのかな。つうか、昨日のことだし、そんなすぐに忘れるわけねぇだろ。なんて、言えないから話を変えることにした。


 

「あの、それより何で先輩が俺を…?」

担いでた理由が知りたい。



「じゃあ、俺たちって今まで何してた?」



「え?そりゃあ鬼ごっこ…」



「うん。でね、俺は鬼なんだ」



意味わかった?と言いながらニコッと微笑む。




「はっ?それはどういう…」


ちょっと待って。理解したくない。


「だから、姫は、俺に捕まれちゃったんだよー!もう天然?かわいっ」




…川井?誰だよ、それ。

その前に今、変なこと言わなかった?



「先輩…誰が誰に?」


「姫が俺に」


「姫って…誰?」


「岬ちゃんに決まってるじゃん!!」


決まってねぇよ。




「俺は、勇者なんで多分、人違い…」


「勇者?もうそうやって強がるところ、たまんないね。結構キタ」



「はっ…?」


先輩が言っていることは、さっぱり意味がわからない。



「よしっ!まぁ、そういうことだから体育館に行こっ?」



そう言って、俺に手を差し伸べる。何で俺が体育館なんかに行かないといけない。そのまま、じっとしていると




「俺が岬ちゃんを捕まえたから、行こっ?」



先輩は、再びそう言って、次は俺の腕を逃がさないように掴んだ。


「ど、どうやって…?」


「図書館で小さな隙間に隠れているところを見つけ、声をかけたけど返事がなかったから近づいて、気持ち良さそうに寝ているのを、そのまま連れ去ったわけ!あんな無防備にいるから俺に捕まえて欲しいのかな?って思っちゃった」


「はぁぁぁー!?」


長々と説明してくれたが思っちゃったじゃねーよ。それは、ただの勘違いだ。はぁ…。嘘だろ、おい。俺、また寝てたのかよ!?寝るのは、俺の悪い癖だ。絶対、治らないと思う。先輩の話からしたら、つまり俺って捕まったんだ…。やっと、ここで自覚する。


ガクリと肩を落とす。でも次の瞬間、ハッとする。ん?待てよ…。これは、きっと運良く誤魔化せるのでは?だって、翼先輩は俺が鬼とか逃亡者とか区別できないはずだから。



「先輩、何を言ってるんですか?俺、鬼ですよ?捕まえても意味ないです」



とぼけて、もうここは、最初っから“鬼”だったってことにしよう。その方が都合がいい。俺って頭良い。


「なーに言ってるのかな?隠れてたのに?」


バレバレだよと言った感じの表情をする。



「あ、あれは…寝てただけ!」


結構、鋭いとこ突くな。



「言い訳は、ダメだよ?実はね、鬼には、バッチが渡されているんだ。…それ、ちゃんと持ってる?」




先輩は、クスッと笑いながらポケットに手をいれ、鬼とか書かれたシンプルなバッチを取り出して俺に見せる。




「…っ!!」


オワタ\(^o^)/

バッチが配布されてるなんて聞いてない。そ、そんなの卑怯だ!俺は、何も言えず、黙って下を向いていると



「図星だね。じゃあ、行こっか」

そう言って、先輩は、俺を無理矢理、またさっきみたいに軽々と担ぎ出した。





「ちょっ!お、おろせー!!」


この体勢は、羞恥だ。担がれるって、ダサすぎるっ!学園中の笑い者になるのは、死んでも嫌だ。


「や、やめろ!頼むから!!」



俺は、足をバタつかせる。誰かに見られてしまったら、恥ずかしくて部屋から出れなくなる。


「我慢しようねー」

先輩は、キラッとした顔で紳士みたいな雰囲気を出している。…もう、引きこもり決定だ。そして、俺は、絶望してそのままの体勢で体育館に連れて行かれた。


放心状態になりつつも、なんとか着き、そんで、捕獲した逃亡者を受け付ける?所に勝手に人の名前を名簿に書かれた…。しかもこの名簿に名前を書いてしまうと、鬼の特権『捕まえた逃亡者、誰か一人だけに命令ができる』というアレ付きだ。



「せ、先輩…。他の逃亡者捕まえて、そいつに命令してください」

俺は、途中、死にそうな目をしていたに違いない。生きてる心地がしない。



「それは、やだ!もう決まったことだし、楽しみにしといてねー!」



先輩は、そう言い残して次に嬉しそうに手を振りながらどこかへ行ってしまった…。ちょ、最後まで話を聞いて。俺の…俺の…計画がっ!!あんなあっさりと終わってしまうなんて…。現実はこんなはずじゃなかった。…これは誰かの陰謀か?イチゴケーキの夢が…。くそぅ…っ。夢は儚く散り俺は、歯を食い縛りながら体育館の片隅で一人、暗く下を俯きながら鬼ごっこが終わるまで小さくうずくまった。






……――。


少し顔を上げて、周りを見渡すともう皆、集まっていた。そして、嫌なアナウンスが流れる。



《はーい!皆様お疲れです!ここからは、只今より今年の新入生歓迎会の結果を発表したいと思います》


マイクを通して言うから体育館全体に鳴り響いた。その声と共に生徒たちは、盛り上がっていく。


えっ。…ちょっと待て。結果を発表?一回、目をぱちくりさせる。み、み、皆の前で発表するのかっ!?そんなの聞いてない……聞いてないっ!!焦り出す。





すると、突然目の前が暗くなった。


「岬…どこに行っていた?」


そこには、どーんと仁王立ちしている大悟が現れた。もし、ここで黙っていたら、怪しまれる。


「べ、別にどこも行ってない」


それだけ言って目線を逸らしてしまった。顔、引きつってなかったよな…?捕まったことは、今は言わないでおこう…。はぁ、もう何が新入生歓迎会だ…。絶対、歓迎する気ないだろ。俺は、少しの間思考回路をストップさせる。





【大悟side】



俺には、昔っから勝てない最強のライバルがいる。そいつは、とことん岬に好かれていて生意気だ。それにプラス、岬の視線を独り占めにさせる。もう、ここまで言えばわかるだろう。


そいつの名前は……“イチゴケーキ”。

そう、コイツだ。




岬は、このイチゴケーキが関わると意地でも本気を出す。もう人のいうことなんて耳に入らないくらい。そして今は、新入生歓迎会というので鬼ごっこをしている最中だ。



「くそっ…見つかんね…」


さっきから、いろんな所を探しているけど岬の姿が見えない。またどこかで寝ていないだろうな…。心配でひやひやする。アイツは、どこでも寝る奴だから本当、手がかかる。あー、こうなるんだったら発信器でも付けときゃよかった。その後も、引き続き探してみるけど岬は、現れなかった。



――……。


もう、あれから鬼ごっこは、終わり、皆体育館へと移動した。結局、岬は見つけられなかった。体育館に着き、辺りを見渡す。

岬…岬!まさか…誰かに捕まったってことないよな?そうなってたら、確実…アイツは、命令される側にいるだろう…。はぁ…それは絶対嫌だ。くしゃと自分の髪を掴む。

ふと、隅の方に視線を向けると小さな人影が目に入った。…あれは、間違いなく岬だ!たくっ、無防備すぎだっつうの。急いで、岬の元へ駆け寄った。



「岬…どこに行っていた?」

そして、腕を組みながら岬を見下ろす。あれほど、離れるなって言ったのに簡単に離れやがって…。もっと、周りに警戒心を持ってほしいものだ。




「べ、別にどこも行ってない」


そう言いながら、俺から視線を逸らす。岬は、嘘が下手だ。まさか、俺に何か隠してる?


「念のために聞くが…まさか誰かに捕まっていないよな?」



「あ?あ、当たり前だ!そ、そんなことよりも大悟は、誰か捕まえたのかよ!?」



岬は、動揺しながら、俺に話を振る。つまり、これには触れるなと?ますます怪しい。




「俺が岬以外捕まえると思うとでも?……あと、本当のことを言いな?み・さ・きちゃん」

優しくニコッと微笑んだ。これで白状すると思ったけど上手くいかない。


「ほ、本当のことってなんだよ!?い、意味わかんねー」

岬は、挙動不審になりながら目をキョロキャロと泳がせている。こんなわかりやすい嘘、誰だってすぐ気づく。また、問い詰めようとしたら、


《では、結果発表をしていきたいと思います!》


絶妙なタイミングで、実行委員みたいな奴が今年の鬼ごっこの結果を報告する声が聞こえてきた。まぁ…岬が言うに誰にも捕まっていないというからには、結果なんてどうでもいい。


《今年は、あの生徒会の中から一人だけ参加している方がいます!!》

その途端に会場は『キャー!』や『わぁー!』の甲高い声に包まれた。



「へぇー、生徒会の中から一人だけ参加してた奴いたのかよ」


岬は、嫌な顔をしながら小さく呟いた。こんな嫌がるのは無理もない。だって、あの会長って奴に…あぁ!もう思い出しただけで腹立つ。でも、そのあとちゃんと消毒(俺の口で)したし…次、また同じことがあったら俺、殺人に走るかもしれない。あー、今はそんなこと考えないでおこう。まっ、岬のその様子からしたら鬼ごっこをしている時生徒会の奴らとは、関わっていないんだよな…?

ホッと息を吐きひとまず安心する。



《僕らも一度は遊ばれたい生徒会書記、橋川 翼様です!!翼様は、鬼として参加しておりました!》



ところどころで、うおー!という雄叫びが上がる。


「は…橋川…翼…?」


岬は、その名前を聞いて急に顔をしかめた。…確か、昨日図書館であの生徒会のチャラ男と会ってたな…。橋川 翼って今呼ばれてた奴と。参加してたのかよ。あのチャラ男と、この純粋な岬を会わせてしまったことは、俺の人生の汚点でもある。

でも次の瞬間、こんなことよりも更に後悔することになる。



《翼様が、なんと捕獲したのは、一年の姫……杉本 岬ちゃんです!!》


アナウンスしている奴は、ハァハァと息を上げながら興奮してやがる。そして、会場はさっきよりも倍にうるさく盛り上がる。


………………ん?

い・ま・な・ん・て・い・っ・た?



「ねぇ…。み・さ・きちゃん…どこ行くの?」



俺は、笑顔を崩さないまま、後ろから逃げようとしている岬に声をかける。そしたら、ピタッと止まった。


「ちょ、ちょっと…トイレ…」



「今、“杉本岬”って言われてたよね?どうゆうことかな。…ん~?」


「はぁ?あんなのただの同姓同名だろ。俺の名前は、よくある名前だって言ってたし!それに、生徒会には捕まってねぇよ!」

平気な顔をして言い張る。


「生徒会には…?てことは、誰かに捕まれたのは確実なんだね」


「…あっ」


しまったというような顔をする。一応、俺、今笑顔だけど許さないよ?


「あとね、一年の姫っていったら、岬しかいないじゃん。バカなの?ほら、言ってみ」


「バ、バカじゃねぇよ!つか、姫だと?お、俺は、男だ」


あぁ岬は、本当何もわかってない。


「とりあえず、岬を捕まえたのは、誰?」



俺がそう問いかけるとごくっと息を呑んで岬は決心した顔をする。



「こ、この前…図書館で会った先輩…。誰にも捕まってないって嘘ついたのは謝る!だけど命だけは…」

…これで辻褄が合った。ひとことで言うと最悪なパターンだ。


「あの先輩に近づくなって言ったよね?」


「お、俺から近づいてねぇよ!」


「言っとくけど、そいつ…生徒会だよ?」


「えっ…」

岬は、やっとここで気づいたようだ。




【岬side】



はっ…。What?意味わからん。俺は、たった今大悟が言った言葉に耳を疑った。



「何言ってんの…?」



そう言って立ち上がる。翼先輩が生徒会だなんてありえない…。


「もしかして、あのチャラ男…岬が生徒会嫌ってること知って、名乗らなかったな…」



大悟は、怖い顔をしながら顎に手をおき、ぼそぼそと呟いている。も、もし仮に…本当に翼先輩が生徒会だったとしよう…。じゃ、じゃあさ?今、呼ばれたのって…………俺っ!?嘘、嘘。マジ、ありえないって。誰か今日がエイプリルフールだと言ってくれ…。もう頭は、馬鹿みたいに回らない。パニックだ。


《では、お二人とも壇上に上がってくださいー!!!!》

またもや、災難が発生した。アナウンスは、早く早くと言わんばかりに促してくる。はっ…?こういう時に何言ってんだよ。わざわざ舞台の上にまで行って恥をさらせと?バッカじゃねーの。


そう思っていたら、急に舞台の方が『キャー』という叫び声で騒がしくなった。そして、必然的にそこを見る。一回目を擦った。………はははっ。そこに見えたのは、笑顔で手を振っている………先輩がいた。やっぱり、生徒会だったんだな。俺は、今起きてるこの現状に絶望する。おかしいと思ったんだ。



橋川翼とか杉本岬とかそんな簡単に同姓同名がいるはずないじゃん…。くそっ…。何か騙された気分になって無性に腹立つ。俺がイライラを募らせている時にのうのうと

《翼様が上がってきてくれました!!では、次に残るは岬ちゃんだけです!!》

アナウンスのアフロヘアーは、そう言った。なれなれしく、人の名前をちゃん付けすんなっ!ハゲッ!声なんて届くないはずないから睨んだ。……てか。上がらないといけないの?はっ、誰が悲しくて上がるかっての。


《おー!もしや、隅の方に王子といるのは、姫では!!!?》


えっ…。ちょ、やめ。

アフロが俺たちのいる方を指さしながら言った。そしたら、皆一斉にガバッと振り向く。え?なにこれ、怖い。俺は、大悟の後ろにすぐさま隠れる。あのアフロ…ガチ、ハゲろ。呪ってやる。悪の感情が溢れ出てきた。すると、急に大悟がクルッと方向を転換してこっちを向いた。


「岬……。俺、絶対あっちには連れて行かないから」

そう囁いて、俺に……世間で言う、“お姫様抱っこ”をしやがった。急なことだったため、俺はポカンと固まる。大悟は、前を向いて舞台に届くほどの声で



「すいません。…“これ”俺のなんで。」


そう笑顔で言ってそのまま俺を抱っこしながら体育館を後にした。



――――
――――――
――――――――

………。


公衆の面前で、男に抱っこされてるところを見られるとか一生の不覚。恥だ。今、さっきあった出来事にかなりへこんでいる。



「ねぇ…み・さ・きちゃん」

ニコリと黒ずんだ笑顔を浮かべてくる大悟。



「は、はい…」


怒りたいのは、俺の方だ。だけど、今はそんな気分じゃない。


「どうして、あんなチャラ男に捕まったのかな?」



「思い出したくない」



俺は、そっぽを向く。



「往生際が悪いね。…ちゃんと言わないと、ものすごく熱いキスするよ?」



そう言って、俺の顎をクイッと持ち上げる。



「わ、わかった!言うから、離れろ!」



ある程度の距離を保つ。




「と、図書館で寝ているところを捕まれました…ははっ」




俺は、正直に話した。



「…へぇ。寝てたんだ?」


「な、何回も言わすな」



俺は、大悟が一歩前に進むごとにそれに合わせて、後ろに下がっていく。




「今度、無防備なことしたら、キス以上のことするって言ったの覚えてる?」



大悟の口角が上がる。



「は、は…?」

無防備なことしたら…?別にした覚えないけど。でもそんなこと言ってたよーな。てかキ、キス以上ってなんだよ!?


「じょ、冗談だよね…?」


「これが冗談に見えるの?」




大悟の目を見ると本気だ。じゃあ何?俺、殺されるわけ!?いや、そんなん笑えないよ。まだ死にたくない。そう思っていたら、背中が壁についてもう下がることができなかった。そして、大悟は俺の左右横に両手を壁につけ、囲んだ。ナニコレ、逃げられない。


「…だから、覚悟できてるよね?」



「っ!?」

で、できてるわけねーじゃん!岬、ピンチです。



「もう逃がさないよ?」


俺の腰に手をおく。



「ま、待て!!俺がおじいちゃんになるまで待て!!」


その時だったら、命を差し上げる覚悟はできてるはずだから!今は、まだ若いんだし、少しくらい夢見させろよ!



「バカなの?そんなに待てるわけないじゃん。今、岬としたくてたまんないわけ。どんだけ焦らすき?」


俺としたい…?



「はっ…?まさかお前も死ぬ気なのか!?」



な、なるほど…俺を殺して、自分も死ぬという魂胆か。そんなのダメに決まってる!


「だ、大悟!!それは絶対ダメだ!早まるなよ!」



そして、俺を巻き込むな!

なんとか、大悟を説得させる。




「はぁ…。岬は、やっぱり俺が考えてることわかってないよね…」



「えっ…?」



ため息を吐きながら、やれやれと呆れた顔をする。俺は、何がなんだかわからなくて首を傾ける。


「じゃあ、今だけ我慢してあげる。その時まで覚悟しとけよ」

ん?これは、ひとまず解決したのか…?命が助かって本当よかった。



その頃、一方………。

俺たちがいなくなった後の体育館は、


《あー!!王子が姫を拐ってしまいました!翼様どうしましょう!?》




「面白い展開じゃん~……。ふふっ…。これで逃げたつもりだと思わないでね。鬼ごっこはまだまだ続くよ……………岬ちゃん」





また新たな面倒くさいことに巻き込まれているとは、俺はまだ知るよしもなかった……――――。



「あーもう、疲れたから大悟!一緒に帰ろうぜ」

笑ってられるのも今のうち。





次の日。


「もう岬ちゃん!!俺以外に捕まるなんて聞いてないよ!」


昼休み、朝からずーっとこの調子でご機嫌ななめな金太郎の話相手をして聞いている。


「俺も捕まれるなんて聞いてなかった…」


あぁ、俺はできるだけ昨日のことなんて思い出したくもないのに。

「なんで、そんなに岬ちゃんは冷静でいられるの!?あの生徒会の奴に何かとんでもない命令されちゃうんだよ!?」


金太郎は取り乱して俺の両肩を掴み前後に揺らす。逆に言いたいが何でお前は、冷静じゃないんだ。普通は、逆の立場。もしかして、心配してくれてんのか?でも朝からそれをずっと永遠に繰り返してるウザさは、半端ない。


「お前は、子供か!いい加減静かにしろ」



俺は、まだ両肩を掴んでる金太郎の手をはらってそう言った。本当頼むから大人しくしてほしい。


「あー俺が捕まえたかった。そしたら、あんなことやこーんなことまで出来たっていうのに…」



次は、しょんぼりとなった。もう…放っておこう。それが一番だと思い、金太郎から視線をずらした。そのずらした先には、今にも噴火寸前な山があった。


「岬。絶対あのチャラ男に近づくなよ?」

とりあえず、噴火はまぬがれたみたいだな…。しかし大悟の表情は笑顔だがドスのきいた声がマッチしてより恐ろしさを増している。


「あ、ああ…そのつもり」


もう図書館には二度と行かねぇし第一命令なんかされてたまるか。絶対、会いたくねぇ。まさか、翼先輩が俺が大嫌いな生徒会だったなんて聞いてなかった。あぁ、今思い出すと俺を騙して楽しんでやがったに違いない。くそぅ…。人で遊んだらダメって小学校で習わなかったのかよ。

すると、ズボンのポケットに入れていたスマホが振動した。こんな時間に誰だよと思いながら取り出して画面を確認する。メールだった。でも知らないアドレスから受信したものだった。



疑問に思いながらもメールを開く。


――――――――――

あっ、姫?

俺、翼だけど覚えてる?



急にだけど

午後の授業、仮病を使って

誰にもバレないように


保健室に来てね!


もし、誰かに…いや特に幼なじみに

バレたら


俺と一回キスね。

――――――――――


…はっ?ナニコレ。つか、何でこいつが俺のメアド知ってんだ。そうだ、ここは落ち着け。





―――――――


いや、無理っす。


―――――――



とりあえず、返信して丁寧に断れば大丈夫だろう。…そしたら、送った数秒後に物凄い早さでメールが届いた。




――――――――――

何言ってるのかな~?

確か
鬼ごっこの時俺に捕まったよね(笑)

あー、そっか。
姫はそんなに俺に迎えに来て欲しんだ。

公開プレイ(キス)もたまにはいいね

――――――――――



――――――――――

すぐに行きますので
待ってて下さい

――――――――――


神のスピードですぐ返事を送った。

な、なんてことだぁぁぁあー!?




なぜだ!なぜなんだ!もう最悪という言葉しか出ない。一応、態度に表さないように冷静を保ちながらスマホをポケットに突っ込む。さて、これからどうしようか…。戦いは、もうすぐそば。右隣にいる大悟を横目でチラッと見て様子を伺った。大悟にバレないようにって言っていたから……あーもうそれが厄介なんだよ!!どうする、俺。すぐに嘘を見破られるかもしれない。下手に仮病を使って演技したら絶対、保健室までついてくれるだろう。案外、大悟は、ああ見えてお母さんの心を持っているからな。




「おい、杉本。ちょっと前に来い」



すると、一つの救いの手が差し伸べた。


「な、何ですか!?先生」



呼んだのは、先生で俺は、このチャンスを利用しようと思って即座に前に行った。



「今日は、珍しく威勢がいいな。委員長の仕事として、次の授業で使うプリントを職員室まで取りに行ってくれ」

要するに先生は、わざわざ職員室までプリントを取りに行くのが面倒だから俺に頼んでるわけか。


「皆は、あともう少しで授業始まるから席について準備しろ。杉本、早く急げ」


いつもなら、キッパリ断るがここは、最高にちょうど良い!!


「取りに行ってきます!」


敬礼をし、教室を飛び出した。なんか、今日……運がちょっといいんじゃね!?

確か職員室は、保健室と近いよな?あーもう、ついでに行ける!!よしっ。俺急げ。





―――――
―――――――
―――――――――

………。





【保健室】

そのプレートがあった扉を開ける。


ガラッー



「誰かいますかー?」


しーん。


物音ひとつしないなんて、静かだな…。中に入りキョロキョロと周りを見渡す。先生もいないのかよ…。ありえない。


そして、ベットがある奥の方まで行くと、



『ぁんっ――……』


なんか、男の人の高い声が聞こえてきた。





ん?絶対、今の誰かいるよな?俺は、不思議に思って、カーテンを開ける。



「えっ」

そこには、想像も出来ない事態が起きていた。




「あっ、姫やっと来たね」


待ち構えていたかのように、にこっと笑って嬉しそうに俺を見る翼先輩…。いや、ちょ、それよりもこれは、一体どういう状態にいるのだろうか。なぜ俺は、男子二人の裸姿を目撃しなければならないのか。一人口を開けていると、翼先輩に押し倒されていたはずの男子が慌てて服を着て、顔を真っ赤に染めながら俺の隣を走って横切ってしまった。


「えっと…理解が少し…」


いや、かなりしづらい。




「あ、さっきの子は俺の親衛隊だよ」


そんなことは、別に聞いてないけど…親衛隊って確かファンクラブみたいな組織だったよな?




それは、わかったが


「なぜ裸…?」


そうなる必要があるのか?




「俺、よくここを使って欲を満たすんだよね」


だから先生も追い出しちゃったと後から付け足された。



「よくを…みたすって?」


具体的に教えてほしい。決して、俺が頭悪いからとかそういう問題ではないと思う。ただ、この人が難しい言葉を使ってくるだけの話。




「姫には、まだ早いかー。あ、でも俺が……“岬の初めて奪いたい――――”」


最後の方をやけに俺の耳元の近くで囁きやがった。てか、今“岬”って呼ばれた気がする。正直、鳥肌立ったわ。それに言葉に早いとか遅いとかねーつうの。 



「名前呼びしちゃった。ねぇ…ドキッとした?」


「いや、ゾクッてきた」


おかげで鳥肌が治まらない。



「もーつれないな。そんな即答しなくてもさ。でもそういう所も可愛んだよね」



そう言いながら、クスッと笑う。何かよくわからないけど…救いようのない人だ。





「とりあえず、服着て下さい」


今もまだ裸の翼先輩に言う。



ほどよくついた腹筋がさっきから目にチラついて、その体格そのものが俺をバカにしているようにしか見えないしなんか、物凄く不愉快極まりない。二文字で答えるとすると『いや』。


「もうそんな見られると、俺欲情しちゃうよ?」



翼先輩は、ニヤニヤしながらそんなことを言う。下半身部分は、運良く布団で隠れて助かるが、その姿勢で俺に近づいて来るのはやめてほしい。




「と、とにかく離れてくれ」


戸惑いながらもそう言ったがお構いなしに顔を寄せてくる。目の前、数センチに詰まる距離。



プツンー

俺の中の何かが切れた音がした。






「人の話を……聞けぇ!!」

苛立ちを募らせた余りその端整な顔を思いっきりグーで殴った。



「ってぇ!」


その途端に翼先輩の悲痛にもそう叫び、咄嗟に自分の頬を手で覆っていた。



「早く服着て、俺をここに呼んだ用件を吐け!」


明らかにこれは、コイツが悪い。そのあと、やっと理解した先輩はしぶしぶ服を着て俺をベットの上に座らせた。あ、そうだ。俺はあることを思い出す。



「そういえば、翼先輩。何で俺のメアド知ってたんですか」


教えた覚えはなかったし、これっていう接点がない。何?流出しちゃってるのとか冗談抜きね。




「あぁ、知らないのもムリないか。実は鬼ごっこの時、姫が寝てるところを素早くやったからね」


堂々と躊躇なく言う。つまり、勝手にってな訳ね。この場合、言い訳でも考えて欲しかったわ。




「…訴えていいっすか?」


これって、アレだよね。プライバシーの侵害。だって一応、個人情報だし、ある意味俺にとっては犯罪の分類にわけるね。



「そんな細かいこと気にしちゃだめだよ?あ、ちなみに登録よろしくね~」



「このタイミングでそれを言うか?」




いや、もはや普通じゃない。異常なレベルだ。もう、相手している暇はない。


「てなわけで、俺をここに呼んだ理由は?」


やっと本題に入る。迎えに来るとか脅されて、俺はわざわざここまで来たんだ。早く聞いて他の用事を済ませなくてはいけない。




「あ、えっと鬼ごっこで姫が俺に捕まれたじゃん?」



「それがどうした」


やっぱり、そうきたか。触れてほしくないことを。




「鬼の特権覚えてるよね?…命令できるっていう」



「はははっ、それが?」


笑って受け流そう。命令なんかされてたまるか。ここは、思う存分とぼけてそのことはなかったということにすればいい話だ。


「明日、土曜日で学校休みだし、だから一日俺と付き合ってよ。それが命令」


そう言って、にっこり微笑む。


「悪いが俺は、暇じゃないんでね」


せっかくの休日なのに付き合ってられるか。




「あーぁ。それは残念だ。…“イチゴケーキ”もあるかもしれないのに」


「んっ!?」


何!?今、こいつ…!イチゴケーキと言わなかったか!?



「せ、先輩…どういうことですか?」


まずは、落ち着いて話を聞こう。



「俺、実はホストやっててね。明日、客として姫に来てほしかったわけ」


「ホ、ホスト…?客…?」



一体、何だ?その得体の知れないホストっていうのは。



「え、もしかして知らないの…?」



翼先輩は、変なものを見るかように目を開いて俺を見た。なんか、それ俺が惨めになる。


「はっ?し、知ってるし。そのくらい」



本当は、知らないけどちょっと強がってみた。



「へぇ~じゃあ何?」


うっ…。ま、まさかそう聞き返されるとは…。





俺、考えろ。



ホスト…

ホースト…




ホースと…あっ!馬と?馬となんかするという意味か!


「あ、あれだろ…『馬と』みたいな?」



自信満々に答えてやった。



「クスッ…何言ってるの?」



すると、呆気なく予想を反し鼻で笑われた。う、うぜぇ…!!あっ、そういえばさっきイチゴケーキもあるとか言ってたよな?そして、客としてとかなんとか…あ~そうか、そういうことだったのかよ。なるほどね。俺ってば、何馬とか言ってんだよって話だ。




「つまり、客を幸せにするってことだろ?」



ケーキ屋さんみたいな感じの。俺なら、ものすごくhappyだね。


「多分、俺が思っていることに姫が想像してるのと、ある意味違うと思うけど…わかってるじゃん」


「マ、マジかよ!?」


俺は、また外れたのかとと思ったら当たっていたことに驚いた。天才過ぎだろ、俺。

まぁ、ハー○ードから誘いがくるだけのものはあるよ。…はい、ごめんなさい。嘘です。冗談です。調子乗らせていただきました。ただ一度は、言ってみたかっただけだから、本当。さっきのは、まぐれだ。


「そんでね、俺そこで働いてるんだけど……姫、客として来てよ」

甘える犬みたいにそう言ってくる翼先輩。




「で、でも…」


「イチゴケーキたくさんあるよ?…姫なら最高のおもてなししてあげる」


「あ、明日の何時からだっけ?」


「本当、可愛いね。まぁ命令だったし拒否権はなかったよ。連絡は、メールでするね」



翼先輩は、満足気に言った。単純って思われてもいい。それに俺にとって都合のいい命令とか存在するんだと思った。だって、イチゴケーキだぜ?もう最高じゃん。じゃあ、もう話は済んだし


「これで、俺は…」


そろそろ職員室にプリントを取りに行かなくてはならない。そしてベットから降りようとした瞬間、



ドサッー



「…――え?」


押し倒された。不意だったため、唖然と言葉も出ない俺。なぜか肩を両手でおさえられ、身動きが取れない。



「それより、姫ーっ。俺と今から寝てみない?」


翼先輩は、ニヤっと怪しげに笑ってそんなことを言った。



「いや、俺は、このあと授業があるんでムリっす」



寝るのは、大好きだけど今はそんな時間ない。



「じゃあ、今夜はどう?」



あまりにもしつこいんで



「一人で寝れねぇのかよ、ガキ」


そう言ってやった。ちなみに俺は、バリバリ一人で寝れる。年上なくせになんて子供みたいなんだ…。



「ねぇ、姫がここに来る前に俺がやっていたことを今したい」


「はっ?何を」




俺が来る前?確か…裸になってたよーな…。うわっ、ムリ。ゾクッと全身に寒気が。


「ちなみに、子供の作り方とか知ってるよね?」



急にまた変なことを言い出した。



「知ってるも何もあれだろ。コウノトリが運んでくるじゃねーか」


そんな一般常識知っても当然のことだろ。翼先輩の顔を伺ってみると、ポカンと口を開け固まっていた。



「どーしたんですか…」


不機嫌気味にそう聞いた。だって、さっきから先輩がバカみたいにピクリとも動かないんだもん。そりゃあ、俺だって嫌な気持ちになる。てか、そろそろ両手でおさえつけるのやめてほしい。じんじんしてきたし、いい加減解放してくれ。



「ね、姫…一応聞くけど、保健の授業受けたことある?」


突然、固まった顔でそう俺に聞いてきた。やっと、言葉を発したと思ったら質問かよ。つか、保健の授業?


「もちろん、あるに決まってんだろ」


そんなの当たり前だ。小学生だってやってるぜ。



だけど、まぁ俺は…先生が何を言ってんのか理解できねぇんだよな…いまいち。頭が悪い証拠でもあるが。きっと、教え方にも問題があるんだろう。でも何度か大悟に一日中耳を塞がれて授業した時もあったな…。大悟の権力で先生には怒られたりしなかったけど。あー、懐かしいー。ふと、昔の記憶に浸っていた。



「クスッ…姫がここまで無知だったとは想像もつかなかったよ」


またもや、笑い出す。


「は?んだよ、それ」


笑われたことに終始、腹が立った。



「コウノトリが運んでくるって誰に教わったの?(笑)」


何。その人をバカにしたような(笑)は。余計に気に触るんですけど。



「親戚の兄ちゃんだけど…何か文句でも?」


反抗的な態度をとる。ニヤニヤ笑うより、言いたいことがあったら直接面と向かって言えや。おっ。今の俺さ…なんて男らしいんだ。



「作り方もホストも何もかも知らないなんて、これは天然記念物だね」


「その例え方、気に食わない」


てか、何もかも知らないなんてそんなことねぇのに相手に失礼過ぎんだろ、おい。天然記念物ってそりゃないぜ。保護動物かよ、俺は。すると、空気が一転する。



「まぁ、それよりも俺ね…、姫をこんな間近で直視したら男としての下半身事情が物凄くヤバイんだよ?」


ねっ、わかる?と言って奴は俺の太ももあたりに膨らんだあるものを擦りつけた。


「こんなにも大きくなっちゃった」


ニコッと笑う。




「えっ」


な、なんだ…この物体。きっとアレだよな…?



「ねぇ今にもはち切れそうでしょ?」



翼先輩は、口の端を上げながらニヤニヤしている。

はち切れそうって…お前それは



「自慢ですか?」


俺は冷静に言った。昔、お父さんが言っていたことを思い出した。男は、ココがでかいほど格好いいとか立派とか…。要するに大人の仲間入り?みたいな。ちなみに俺のココは、いっこうに成長という言葉を知らない。だから、今。変なやり方で俺に自慢しているであろう先輩に殺意が芽生えたのだ。



「自慢って…姫。もう、なんでそんな可愛いのかな!?」


なぜか、先輩は興奮しており、俺を勢いよくガバッと強く抱き締めた。



「意味わかんねぇよ」

しかも耳元でハァハァうるさい。



「俺は、自慢なんかしてないよ?」



へらっと笑顔で言う翼先輩。とても信じられない。


「アレが自慢じゃなかったら何て言うんだ。俺は、アンタのよりはるかに小さ――……って!?何言わせてんだよ!?」



俺は、危うく自分のプライドを傷つけることだった。あ、危ねぇ…!



「あの行為は、自慢じゃなくて誘っているんだよ?それに姫の……小さいんだ」



「ち、ちげぇよ!!お前のよりちょっと小さいだけだ!誘っているってなんだよ」


こ、ここで見下されては、たまらない。てか、ん…?すると、太ももあたりに異変が。さっきから擦りつけられてたため、奴のがまた大きくなったのがわかった。



「強気なとこ…ますます理性を壊すね」



「はっ?」

壊す…?また訳がわからない言葉を使いやがった。





「…ねっ、俺が大きくする方法教えてあげようか?今ここで…」


「大きくする…方法だと?」



そんなんあるわけねぇだろ。考えてみれば。



「疑ってるの?姫だって、さっき俺のが大きくなったの知ってるでしょ?」


ふふっと不気味に笑いながら言った。た、確かに、少し大きくなったのは、わかったけどさ…。なんで、あの状況で?



よくわかんねぇけど

「お前って…まさか、魔法でも使えるのか?」



それしか頭に浮かばない。真面目に質問したのに、先輩は盛大に吹きやがった。イラッー。別にお腹を押さえてまで笑わなくてもいいだろう…。まぁ、これでやっと、手とか自由に動けるようになったけど…まずその前に俺に馬乗りすんのうざったい。イライラを募らせている俺と反対に先輩はニコニコ笑ってやがるし…。

ストレスの原因だ。



「魔法なんて使えるわけないじゃん!でも、俺のテクニックさえあればこの通り……」


「ひゃあっ!!」



俺は、思わず驚いて変な声を出してしまった。




「可愛い声…ちょっと触れただけなのに」


翼先輩は、俺の反応を楽しむかのように頬を赤く染めていた。



「んで、人の触んだよ!!」


大きさがわかっちまうだろうがっ!

つか、気色悪い。キモッ。そう、こいつは、男にとって大事なところを揉むように触っていたのだ。何がちょっと触れただけだよ!?マジふざけんな、外道。



「姫は、自分でシたりしないの?」


「何をだよ」


主語を言え、主語を。





「えー!?もしかして、一度もないとか!?」



だから何をだって聞いてんのに。そんな驚かれると、何か俺が時代遅れみたいじゃん。いちいち態度がイラつく奴だな。




「じゃあ、俺がもっとココ触ってもいい?」


またズボン越しに触ろうとする。





「バカっじゃねーの!?死ねよ」


ダメに決まってるだろ。バシッと叩く。もしこれが冗談だとしても笑えないし許さない。コイツ…人のを触る趣味あんのか?若干引くわ。



「もう暴力的だな~、まあ全然痛くないけど。可愛い顔して毒舌だし……あれ?なにこれギャップ萌え」


ブハッと鼻血を出しやがった。き、汚ねぇ…!もう、年上なんて関係ない。


「おい、変人。退けよ」



ただ1年先に生まれただけの話だ。敬なくてもいいだろう。





《キーンコーンカーンコーン》


すると、授業を知らせる鐘が鳴った。う、嘘だろ…。これは、早く戻らないと非常にヤバイ。



「ねぇ、このあと俺のためにサボってよ」


翼先輩は、気持ち悪いくらい甘えてくる。何か、吐き気が。うえっ。


「ムリです。俺、これでもクラスの委員長なんで」



キリッと自慢げに言ってみた。さすがに頼まれた仕事をすっぽかすようなことはしたくない。……本音は、ただ後が怖いだけだがな。



「委員長なんだ?」

「それがなにか問題でも?」



もしや、似合わないとでも言いたいのかい?別に俺だって、なりたくてなったわけじゃねぇよ。今ので完全拗ねた。



「それなら、しょうがないか。それにこれ以上嫌われたくないしね!」


そう言って、スッと上から退いてくれた。てか、もう俺、アンタのこと嫌ってるし。まぁ、今は、敢えて言わないでおこう…。面倒くさいし。やっと俺は、ベットから降りることができた。



「あっ、制服乱れちゃったね。…艶めかしくて、すっごいエロい。襲いたいぐらいホント可愛い。こんな姿誰にも見せたくない」


先輩は、そう発言したあと、


「ヒィッ!」



俺の首筋をぺろりと舐めやがった。そして、全身に鳥肌。



「今日は、このくらいで我慢してあげる。じゃあ明日楽しみにしてるね」


先輩は、不敵な笑みを浮かべ、『俺、これからトイレに行って処理してくるねー』と妙な一言を残して去った。マジ、もう絡みたくない。首筋の生々しい感触が気持ち悪い。ごしごしと袖の部分で拭く。それに最後に言ってた処理ってなんだよ。トイレで生徒会の仕事とかする気なのか?…キモいな。少し、ゾッとした。でも明日は、イチゴケーキ食べれるし、どうでもいいや。もう投げ出した。





あっ。それより、早く職員室だ!!俺は、ハッと我に返り急いでプリントを取りに行った。




――――――
――――――――
――――――――――

………。




挙げ句の果てに先生にこっぴどく怒られた。プリントを取るだけなのに非常に時間が掛かり過ぎだとね。こうなることは、予感してた。俺は、ため息を吐いて自分の席に腰を下ろす。




「岬、こんな遅くまで何してた?」



すると、隣から威圧を放つ大悟がめちゃくちゃ不機嫌なのが読み取れた。



「べ、別に何も。…ただ迷ってただけ」


無意識に目を合わさず言ってしまった。



「ふぅ~ん。俺、怒るよ?」


「はっ、なぜ」


特に、大悟に迷惑かけること してねぇのに。あ、もしかしてサボってると勘違いしてたり…。何か、大悟のことだからあり得る。つか、怒られるのは、先生だけで十分。二度目は、ゴメンだ。


「何もしてないはずなのに、どうして岬から、他の男の香水の匂いがするのかな?」


出た。大悟の顔は笑顔だけど、目が笑っていないパターン。あと、人の匂い嗅ぐなし。



「だから、別に何ともないって。大悟の鼻がおかしいだけだ」



「バカなの?俺、何年岬と一緒にいると思ってんの。他の奴と岬の匂いくらい簡単に区別できる」



そう言って、手をポキポキと鳴らしている。あ…これなんか、まずいかも。俺はそう察して、前の席の金太郎に助けを求めようとするが……あんにゃろう!!寝てやがる。全く使えん!通りで大人しいと思ったら…。こういう時に限って役に立たない。ぐっすり寝ている金太郎の背中を睨んだ。そして、再度隣を見る。



「岬、今すぐ俺と机をくっつけろ」


「はははっ…」


意味がわからないが断ったら断ったで後が怖そう。授業中にも関わらず俺は、笑うことしか出来なくて拒否権なしに言う通り机を寄せた。




「そして、俺に体を向けろ」


はいはい、と言ってしぶしぶ向けた。




すると、



ギュウー


「っ!?」


正面から抱き締められた。

ちょ、急に何!?





「おーい、そこ。人の授業でイチャつくなー」



先生の声に、クラスメイトの視線が俺たちに集中する。



「先生、これは緊急事態なんです」


大悟は、そう言って皆に見せつけるよう抱き締める力を強くした。



「ほぉ…。なぜ、緊急事態なのか分かりやすく説明しろ」



と、先生は、にんまりと笑みを浮かべ、そう聞いてくる。



「岬から、他の男の匂いがしたから」



大悟は、躊躇なくはっきり答える。



「それで、その匂いを消そうとしているのか…。でも杉本、それはどういうことだ?」



ギラッと視線が俺に向く。



「えっ…なにが」



不思議と、背中に冷や汗が流れた。


「さっきは、ただ道に迷っていたと言いながら、実は堂々と男と遊んでいたとはな」


黒い…黒いっ!それに早く言い訳を!!


「ほ、本当に迷っていただけなんです!…あ、多分匂いは、誰かとぶつかった時に…」



お願い、この嘘を信じてくれ。もうこれ以上、墓穴掘りたくないんだよ。先生は、『ふ~ん』と何か納得していないようだがもし、俺が翼先輩に会っていたことがバレたら………大悟に、キスされちまう!なぜなら、会うなって約束したし、破ったから平気でしてきそうだ。またそれに、プラス…。翼先輩にも、メールで大悟にはバレるなって言われてもし、バレたら一回キスとか脅された…。冗談でも、さすがに嫌だ。そんなキス地獄いらねぇよ。想像したら吐き気を催した。


考え込んでいたら、気づくと手前で大悟がポケットから自分が愛用しているであろう香水を取り出していた。



「ま、待って…。な、なにすんの…」



若干、顔を引きつる俺。



「何って……そりゃあ、消毒だよ」



口角を上げながら『最終手段』という始末。そして、俺目掛けてシュシュッと勢いよく香水をかけてきやがった。



「や、やめろって!」


こんなのただの嫌がらせだ。そんなにかけると気分が悪くなるだろうがっ!少しは、こっちの気持ちも考えろ…。大悟は、やっと満足したのか香水をしまってくれた。


「俺と同じ匂い…」


小さく微笑みながら呟いている。…そうだろうな。呆れてものも言えん。


「とにかく、二人とも。今は授業に集中しろ」


教卓の前では、先生が睨みながら注意してきた。


すると、肩にポンと手を置かれ



「…岬?後で、遅れてきた理由聞くから覚悟しててね」



ゾワッ

俺の体は、その言葉に震えあがった。相変わらず、殺気が半端ない…。だがな…大悟?俺には、『逃げ足の速さ』という素晴らしい特技が残ってるんだぜ?この授業が終った後マッハで遠ざければいい話だ。そしたら、当然理由を聞かれずに済む。やっぱ、俺って才能あるかも。

そうと決まればこの手で行こう。後何分で終わるかどうか確かめるべく、時計に視線を送った。げっ。後30分もあんのかよ…。俺的には、10分くらいだと予想してたのに、まさかそんなに残ってるとは、思ってもみなかった。…仕方ない。それまで、力を補給しとくか。別に少しだけだし大丈夫だろう。机にうつぶせて、寝る体勢に入った。30分だけだし……そう30分だけ…。心に念を押し、ゆっくりと目を閉じて眠りについた。





【大悟side】


俺は、毎日が不安で仕方がない。原因は、知っての通り岬だ。岬は、本当小さい頃から、性格だけは、強気でそんでもって危なっかしい。そして、今俺は先程からずっと貧乏揺すりをしながら岬が帰ってくんのを待っている。なのに、帰ってくる気配ゼロ。…心配だ。さっき、なんか先生に頼まれごとをされて走って教室から飛び出した岬。

そのあとを追いかけようとしたが運悪く、先生に『席につけー』と怒られしぶしぶ席に座るはめになった。でも、ありえない。こんなに遅いなんて。もう、鐘も鳴ったのになかなか戻ってこない。俺は、岬が隣にいないとどうも落ち着かないらしい…。


そして、ようやく鐘が鳴った5分後に岬が戻ってきた。無事に戻ってきたのは、いいがなぜ、他の野郎の匂いをおみやげとして持って帰る必要がある?本人は、ただ『ぶつかっただけ』と言っているがそう簡単にぶつかってあんなキツい香水の匂いはつかないだろう。


…誰かに抱き締められたのなら話は別だが。

岬の様子からしてあれは絶対おかしい。それに岬は、嘘がものすごく下手くそだ。何でも岬のことなら把握済み。まぁ、今は授業に集中しないと後々面倒くさくなるから詳しくは、後から岬に吐いてもらうつもりだ。横目で岬を見ると、予想を反して寝てやがった。……相変わらず、無防備つーかなんというか。もう、寝てしまったら俺の勝ちじゃん。




バカ岬。これじゃあ、起きたあとの反応が楽しみで仕方がない。だが、俺は現実を甘く見すぎたようだ…。授業が終わってもうすでに放課後になっている。

俺は、今自分が見ている光景に唖然とし、溜め息がこぼれた。



「岬、いい加減起きろ…」


俺は、やれやれと呆れ気味にそう言って肩を軽く揺すったが虚しくも反応なし。そう、岬が起きてくれないのだ。



…どうしようか。早く、理由を白状させるつもりだったが誤差が生じてしまった。そうかそうか…。


なかなか起きない岬を見て思った。こっち(現実)より、あっち(夢)の方がいいってわけか…。まさか、こんな頑固に育ってしまったとは。目を覚ましたら、お仕置き決定だ。某アニメに出てくるのび◯と互角の勝負ができる素質を持っている。俺は、困り果てて目線をずらしたら岬と同様で寝ている奴がもう一人いた。

俺が近々排除させたいと思っている野郎。太郎改め、金太郎というキモい奴。



もし、こいつが岬より早く覚ましてしまったら手を出すのは目に見えている。ややこしくなること極まりない。その前に岬をなんとかしないと埒が明かねぇ。



「岬、頼むから寝るのは俺だけの前にしてくれ」



耳元でそう囁くが見事、無反応を俺にお見舞いしやがった。分かりきってはいたが、スッと、かましてくれると苛立ちがよぎる。もう、これには…罰を与えないとな?口の端を上にあげると俺は、岬と自分の分の鞄を左肩にかけて準備を整えた。

もう、これしか方法はない。そして、そっと岬の華奢で小さな体を軽々と持ち上げる。


「ふっ…起きなかった岬が悪いよ?」


軽く笑みがこぼれ、次の瞬間には抱き締めるように岬を抱っこした。俺の右肩には、岬の顎がのる。これは、皆に良い見せつけとなる。そしたら岬を狙う奴が少しは減るだろ。いい考えを発見した俺は、そそくさと野郎(金太郎)が起きる前にクラスを後にした。




【岬side】



んー……。

なんだろう…体が浮いてるような感じがする。




あっ…でも、ものすごく温かい…。不思議とばかり、ゆっくり目を開けた。




「……っ!?」



えっ。ちょっと待てーい。驚きのあまり、体が大袈裟にもビクッとなった。何、この状況。声を発したくても叫びたくても全身に冷や汗が流れて感覚を麻痺させている。確か、教室で何かの目的のために力を蓄えようとして寝ていたはずだ。それなのに、なぜ俺は、抱き締められている状態で抱っこされているんだ?


この匂い…ぜってぇ大悟…ってあれ?

だ・い・ご…!?俺は、ハッと気がつく。


「顔見えてないけど、起きたみたいだね」




「っ!?」


なぜ分かる!?いや、これは多分なんかの罠かもしれない。寝たふりだ、寝たふり…。





「ちゃんと起きよっか。…岬ちゃん?」

顔が見えなくても恐怖が伝わってくる。




つまり、まとめると…俺は、どうやらやらかしてしまったようだ。


「ちゃんと理由を聞かせてもらうからね」



大悟は、まださっきのことを覚えているらしい。あー、理由って俺が遅れてきたやつのことだよな…はぁ。『実は、翼先輩と会って、おまけに命令までされちゃいました☆テヘッ』って、い、言えるわけねーじゃん!


「無理だから。本当にただ道に迷っただけだっつーの。何回も言わせんな」



ふんっと声を漏らし、なるべく平然を装う。




「嘘つけ、バカ岬」


「俺はバカじゃねぇよ!本当だ、アホ。それより、俺を降ろせ!」


抱っこされるのは、本当に勘弁。手足をバタバタとさせた。



「落ち着け、そんなに動いたら危ない。それにこれは、起きなかった罰だから家まで降ろさないよ」


「んだと~っ!」



冗談じゃないぜ。ただ、目を覚まさなかったくらいで、知らぬまに勝手に抱っこされてどうみても俺が理不尽じゃねぇか!!


「このままで我慢しろ。それとも理由言う気になったわけ?」


クソっ。人の弱みにつけこみやがって!いつも以上にタチ悪すぎる。もし、この状態で周りのやつ、もしくは知ってるやつに顔、見られたらバカにされちまう。



…ん?顔…?そうだっ!顔を見られなければ、抱っこされてるのが俺って誰もわからない!




「ふ~んだ!顔を隠せばこんなの恥ずかしくも怖くもねーわ!」



俺は、そう言って隠すように大悟の胸に顔を埋めた。バレなければ、むしろ、余裕だし!呑気にそんなことを考える。



「……岬って本当バカなの。可愛すぎだし、そんなのされたら、こっちがたまんないじゃん」



「は?」


小声でよく聞こえん。




「こんな無防備なこと、俺以外の前で絶対すんなよって言ったの。今は本人気づいていないようだから別にいいや」



「なんだよ、それ」

そんな言い方したら気になるだろうが。本当、大悟の言っていることが理解できん。俺、そろそろ勉強した方がいいんだろうか?



「あ、抱っこするその代わりに、絶対落とすんじゃねーぞ」



ちょっと顔を上げて、大悟に一応伝えといた。ほんとは、降ろしてほしいがそんなの許すはずがなさそうだし。すると、大悟は100点満点の爽やかスマイルでふんっと鼻を鳴らして笑った。


「おい、聞いてんのか?」


急に笑った大悟を不思議に思って聞き直した。さっきの笑い、なんか完全に俺をバカにした感じだったが気のせいだよな。そう思ったら、至近距離で目が合う。


「え、何…」


そんな顔を覗き込まれても困るんですけど…。


「そんな可愛いお願いされちゃあ、一生こうやって抱き締めていたくなる」


愛おしそうな目で俺を見る眼差し。きっと、女子が見たらイチコロなんだろうけど…男の俺からしたら正直、やめてほしいくらい。それにお前はバカか。


「こんな恥ずかしい格好一生できるかよ。今だけだっての。…ほら、こっちは我慢してんだから早く家まで送れ」


最後、命令口調になったが今はそんな気にしてるほど余裕がない。ただ珍しく人が通ってないだけ運のつき。


「はいはい、じゃあこのまま力強くしがみついとけ」



大悟は、嫌な光を宿してニヤリと微笑みながら言った。その笑みに内心ギクリと体を強張らせてしまった。


「嫌だ。大悟が俺を力強く抱き締めとけばいい話だろ」



そう眉を寄せて言うと、大悟は『天然…』と小さく肩を揺らしていた。


「?」



俺は、訳もわからず、首を傾げることしかできない。何で笑うんだ?俺は、ただのんびりしたいだけでそう言ったのに笑うとこないよな…?


「そういうの俺以外の前で言わないで」



『これ重要』と大悟が念を押す。




「は?」


「理解力ないってのが問題だよな…岬は」


なぜか、大悟は深くため息を吐いていた。



―――――
―――――――
―――――――――

……。




「もう少しで着くぞ」


大悟の声にハッと上を向く。危ねぇ…うっかりしてた。ガチでまた眠りそうだった。



「まじか。だったら早く降ろし「あら、大悟くんじゃない!」


突然、俺の言葉を遮る女の人の高い声。…あれ、この声確か…。聞いたことある声に耳を傾ける。


「おばさん、こんにちは。どこかお出かけでもしてたんですか?」



「ええ、そうよ。ちょっと近くのスーパーまでね」



「そうなんですか。相変わらず、お綺麗ですね」



「大悟くんたら、またそんなこと言って~、そういうとこ岬も見習ってほしいわ」


俺は、ハッと気がついた。この声は、間違えもなく




「んで、母さんがいるんだよ!」



顔を見なくとも絶対、母さんだ。



「どうして岬は、口が悪くなったのかしら。それにいつでも子供じゃないんだから大悟くんにそうやって甘えちゃダメでしょ?」





は?甘える…? 俺、大悟に甘えた覚えないんだけど。



「大悟くん、悪いわね~。ウチの岬が迷惑かけて」



「あっ、いえ大丈夫です。岬からのお願いだからどうしても断れなくて…」


困った顔をしている大悟。

おいおいおい。もしかして、この格好見て俺が甘えてると思ってんのか!?

チッ。


「大悟、勝手なこと言うな!!お前が無理やり抱っこしたんだろうがっ!いい加減、降ろせよ」




俺は、すぐさま怒鳴りつけるが



「こら、岬!友達になんてこと言うの!?」



なぜ、逆に俺が怒られる!?意味わかんねぇよ!ただ誤解を解こうとしただけだ。



「いいんですよ、気にしなくて。いつものことですから」



「あら大悟くんは、優しいのね…」



「そんなことないですよ」



ちょっと待てや、この野郎。大悟が優しい…?笑える。それに、気になっていたんだが大悟って俺の親の前だとキャラが変わる。…いい子ぶるな、このドS。俺は、毎回呆れてるのだ。

いつか、化けの皮を剥がしてやりたい。




「もうどうせなら、岬を嫁に貰ってくれないかしら」


「はっ!?」



母さんは、微笑みながらとんでもない発言をする。その途端に驚嘆してしまった。…な、なんてことを言う親だ。恐ろしい。すると、大悟はにんまりとした表情になる。


「おばさん……いえ、お母さん。ご安心してください。…そのつもりなので」


大悟までもが母さんのノリに乗る。そんなくだらないことスルーしてくれればいいのに。あ、そういえば、大悟って冗談通じないんだよな…。仕方ない、教えてあげよう。


「こら、大悟。母さんの変な冗談に乗るな」

やっぱ、素直に教えてあげる俺って優しいよな(照)


「なんか勘違いしてるようだけど、俺はいつだって本気だよ?あっ、もう話しているうちに岬の家到着」


ピタッと大悟の足が止まる。何か、ウケ狙いで本気って言っているが無視しよう。だって、余計変な方向に行きそうだし。…しかしっ、やっと、着いたか~マイハウス!あぁー解放される。自然と自分の顔が緩むのがわかった。



「よし、ご苦労だった大悟くん。俺は、そろそろ地面に足をつけたいのだ」


俺の偉そうな態度にぶつぶつなんか言ってたみたいだがでもちゃんと降ろしてくれた。おぉ、あいらぶ地面。これほどまでに地面を恋しがったことはないぞ。そして俺は、笑みを浮かべ大悟に『じゃ!』と手を振りクルッと体を玄関の方へと向けて歩き出した。


「もう、岬ったら失礼な子ね!こんな子に育てた覚えはないわよ。あーもう…大悟くん、まだ時間があるならウチにあがっていって?」



母さんの言葉に今、玄関の扉を開けようとしていた俺の手が止まった。


「はい、喜んで」

背後で、大悟の嬉しそうな声が響いた。ちょ、嘘。


「えっ…大悟帰んないの?」


俺は、後ろを向き念のため確認をとる。



「せっかくだし……ね?」




ゾワッ。最後の『ね?』にヒヤリと鳥肌が立った。そのあと、大悟は『失礼します』と礼儀正しく家にあがりこんでしまった。まだ玄関の外にいる俺。



「なぜ、こうなる…?」

…嫌な予感しかしない。



「岬の部屋、久しぶりだ」


部屋に入った途端大悟は、躊躇なくベットに近寄って腰を下ろした。

お前は遠慮というのを知らないのか。




「…勝手にくつろぐな」


母さんめっ。外見しか見ないで、ほいほいと危ない奴を入れるな。被害に合うのは俺なのに!とりあえず、机の上にカバンを置いてなるべく大悟との距離をとる。


「なぜ、そんなに離れる?」



ギクリッ。

勘の鋭い大悟は、もう気づいたみたいだ。


「い、いやそんなつもりはないけど…なんとなく」



おい、俺。いつもの強気はどこ行った?旅行か?



「ふ~ん…まぁいいや」


その言葉を聞いてホッと肩を撫で下ろす。特に気にしてないみたいだな…ふぅ。でも、ジロジロこっちを見んな。


「…それより」


帰ってきたばかりだから、窓も閉まってるのでいつも以上に静まり返っていた部屋にさっきとは、明らかに大悟の声のトーンが低くなったのがわかった。



「え…なに?」

冷や汗を流しながら恐る恐るたずねる。それに急に、声が低くなるとかおかしくね!?殺気?っていうのかな…めっちゃ、なんか怪しい空気を纏ってるんですけど!


「俺…岬にどうしても聞かなきゃいけないことがあるんだよね」



ニッコリ。と、俺の苦手のあの笑みをされた。


「へ、へぇ。そんなんだ~。そういえば、飲み物持ってくんの忘れてた。今から持ってくる」


ははっと苦笑いをして、逃げるように部屋の扉の方に歩いた。



ガシッー



「え。」

なにこれ前に進めない。


「…逃げるの?」


耳元にそう囁かれた。ふと首だけ後ろを向くとそこには、あの笑みのままで俺の手首を掴んでる大悟の姿があった。


「だ、大悟なに言ってんの?逃げるなんて…んなわけのわからねーことしねぇよ」

今にも震えそうな声を押さえて冷静を保ちながら言い張った。



「本当?」

怪訝そうな顔の大悟。疑り深いやつめ…。納得していないようだからちょっと危ない感じ。


「そ、そんなの当然だ。ちょ、わかったんなら…少し離れてくれる?」

俺は、いつの間にかなぜか壁ドンされている。そして、顔近い。やめて。逃げないから。



「さっきから思ってたんだけど、どうして岬は俺から離れようとするの?」



「はっ?」

急にそんなマジな目で言われるとさすがの俺でも戸惑う。言っとくが離れたいと思う理由は簡単。“怖い”からだ。それ以外なにがある?…大悟。頼む、自覚してくれ。俺の口からは、決して言えないし。


「…何?言えないこと?」


「…っ!?」



心を読まれた感覚に陥り、ハッと目を見開いてしまった。その様子を見てか大悟は、


「へぇー、図星なんだ?」



と言って、次の瞬間身動きの取れない俺をまた抱っこ(次は姫抱き)してベットの上におろした。



「えっと俺、まだ寝るきねぇけど…」


妙な行動に出た大悟にそう言った。




「違うよ?頑固な岬を素直にさせることするんだよ」


ブラックの笑みでにこ~とする大悟。これは一番、アカンやつだ。経験済みなのでよくわかる。


「まあまあ落ち着け、大悟。俺はいつだって…素直だ」



決して嘘ではない。だって俺は、素直でできてる男なんだから。ここはまず落ち着かせるのが一番だ。チラッと大悟の顔を覗くと、先程と変わらず曇っていた。さては…話通じなかったか?仕方ない…もう一度言っておくか。


「あいあむ素直。おっけー?」


日本語が通じないみたいだから、あえて英語で言ってみた。ちょっと英語話せることを自慢。すると、その直後にクスッと大悟が笑う。



「…余裕だね」



なぜか馬乗りして見下ろされている。つまり、俺は、ベットと大悟の間に挟まっている形。



「え…?」

スッと、制服のシャツの牡丹に手をかけて丁寧に一つずつ外していく大悟。


「ちょっ何してんだよ!?」

もちろん…脱がされているのは、俺の制服で。




「見てわからないの…?」


大悟は、クスッと余裕な笑みを溢す。見て…?そりゃあ、見てわかるから聞いてんだろうがっ!!



「着替えくらいな、自分でできる!幼稚園児でもあるまいし。余計なお世話だ!!」



怒りをぶつける。その後『言っとくけど俺は、高校生だぞ!!』そう重要とばかり強調しながら付け足した。






「馬鹿。」


カッチーン。また気に触ることを。


「馬鹿にすんなっ!」



本当頭にきた。いつも大悟は、上から目線。なんとかしてほしい。



「言ったでしょ?素直にさせるって」



大悟は、何かを企んでる顔をしている。そんな言われたって知るか。つか、よく考えたら普通、制服を脱がして素直になる奴いるか?大悟でも馬鹿な発想を思いつくってわけか、と心の中で少し優越感に浸る。


「ちなみに“お仕置き”ってやつだから」



ん…?大悟が次に発した言葉を聞いて俺はピタッと体が固まる。お仕置き…?


「イタズラってことか?」



俺は首を傾けたまま、そう聞いた。


「…そんな可愛いもんじゃないよ」


悪魔が降臨してしまった。とりあえず、無視してズボンのポケットに入れてたスマホを取りだし、すぐさま“お仕置き”という言葉を調べた。





――――――――――

【お仕置き】

意味:見せしめ。体罰を与えること。

使い方:お仕置きとして押し入れに閉じ込める。

――――――――――



「……。」



嘘だろ。思わず、画面を二度見した。体罰?…お、押し入れ?ちょっと待て…。だったらこいつ、そんな危ないこと考えてたことか!?真実に驚愕する。するとスマホとにらめっこしていた俺を見て



「これ、没収ね」


と、大悟は言って俺の手からスルリとスマホが消えたのがわかった。


「か、返せよ!」


ハッと我にかえり、強気で言う。




「無理」


そしたら、あっさり拒否された。スマホをとられた俺は、つまり最後の連絡手段を失ったことになる…。あ、よし…。まずは落ち着くんだ…俺。考えろ。お仕置き=体罰ってことは、きっとものすごく痛いと思う。…痛いのは嫌いだ。暴力反対。こうなったら一か八かで説得させよう。これしか残ってない。


「大悟、よくわからんが俺は、いつも素直に生活を送っている。だからそんなのしなくても支障はない」


ちなみに暴力では、何も解決はしないってテレビで言ってた。お前は…それを知らないのか!!そういう意味を込めて目で訴えた。



「そんな目しても俺の気持ちは変わらないよ」


こうして俺の必死の説得?は簡単にも流されてしまった。



「はっ!?」


もう気づけば、シャツのボタンは、綺麗に全部外されている。



「相変わらず、きめ細かくて白いね…岬は」



なぜか、俺の上半身をうっとりした様子で見る大悟に危険を示す赤信号が出ている。


「だ、大悟…きもい」


若干引いた気味に呟いた。勝手に脱がそうとするな。冗談ならまだしも、全部ガチに見えて大悟じゃないみたいだ。



「ふっ…褒め言葉どうも」


大悟は、笑みを浮かべながらそんなことを言う。



「褒めてねぇよ!!」


慌てて口からツッコミが出る。どうやったら、そう間違える!?お前の耳は!貴様の鼓膜はポジティブ変換なのか?おい。全く何を言うかと思いきや、バカげたこと言いやがってさ。おかげで、俺の目が驚きのあまり宇宙までぶっ飛んで圧で目玉焼きが作れそうな勢いだったわ、危ねぇ…。

つか、そんなことより呑気に考えてる場合じゃねぇッ!!お、俺…俺さ…。これからお仕置きというのをされちまうんだろ…?そう、つまり命がかかってるのだ。もう、大悟は俺の説得なんか耳に入れてくれないだろうし…。黙って痛めつけられる前に、



「頼む、大悟。遺書くらいは書かせてくれ…」



俺の声は、徐々に弱々しくなる。儚く願う。あぁー、人って、本当に命の危機が迫ると弱くなる生き物なんだな…。と少し実感したが、ふと、思った。


俺は人と違う。『But, my heart is strong』という英語で書かれたポスターを見て力を発揮した。ちなみにこのポスターが貼られているのは、壁ではない…。天井だ。今、仰向けになっている俺しか見えないのだ。ちなみにお母さんから聞いたんだが訳は『しかし、俺の心は強い』というものだ。まさに、今の俺にピッタリな台詞じゃん。

いつも、朝起きたらこの英語が最初に映るせいか結構俺は、かっこいい男に育ってきてるだなって思う。



まぁ、遺書には『大悟が犯人です。動機は、俺が素直じゃないからです』的な軽い感じに書いてやる…。インパクトある方が男らしくていいだろう。


どうだ?俺の頼みは、大魔王に伝わったか?確認のため、恐る恐る見上げた。



「…岬は、俺になにされると思ってんの?」


は?と間抜けな顔している。予想にも、呆れた様子だった。





「ふんっ!今さらとぼけても無駄だぞ。俺は、“お仕置き”ということを知っている!!」


はっきりと言い放った。なんせ、調べたんだから。

すると、大悟はキョトンとした顔で


「え?もしかして、岬。俺以外の男にお仕置きされたとか言わないよね?」



俺を鋭く見つめた。…は、なぜそうなる?



「ちげーよ。意味だよ、意味。お前に取られた俺のスマホで調べたんだ」


俺がそう言ったら『…そっか』と大悟は、安心したかのようにホッとした表情になった。何?もしかして、自分の下僕を他の野郎に使わせたくないわけ?たく、大悟は鬼だな、本当。俺がそんな簡単に誰かにお仕置きされるわけねぇだろ。


ふふふっ。あ、そうだ!

「大悟、よく聞け!お前は残念なことに俺にお仕置きができないぜ」


ドヤ顔で、大悟を下から睨んだ。




「…へぇー興味深い。言ってみ」



言ってみ…ってなんつー態度だ、ゴラ。まぁ、いい…。そうやって、余裕に笑ってられるのも今のうちだ、アホ。



「なぜなら、押し入れの中は、荷物で埋めつくされているのだから!!もう俺が入るスペースはない」


わーいと心の中でポーズをきめる。そしたら、閉じ込められなくてすむし。だって、ちゃんと書いてあったろ?使い方は、お仕置きとして押し入れに閉じ込めるとかなんとか。押し入れさえなければ、この方程式は成り立たないということに短時間で俺は気づいた。やべっ。俺マジ天才。


「押し入れ?」


ニヤニヤとしている俺をよそに大悟は意味がわかっていなく、頭上にハテナマークを浮かべながらそう言った。


「押し入れに閉じ込めるつもりだったんだろ?」



俺は、口の端を上げながら言ってやった。だが、それはもう無理だよ。スペースがないのだから!



「岬の言っている意味がわからないから、ケータイ借りるね」


大悟は怪訝な表情でさっき取り上げられた俺のケータイを取りだしさっそく何かを調べ始めた。…おま、ちょっ。意味わかんねぇってなんだよ。少し驚く、俺。そして、数秒後。



「あー、岬が言っている意味はこれね」


頷きながら納得した顔をする大悟。ふっ。やっとわかったか。バカめ。人をバカにする前にまず自分を見直せよって話だ。心の中で、とてつもない毒を吐きスッキリした。あっ。とりあえず、脱がされたシャツを着なくては。いや、待て…。その前に


「大悟…。お前もわかっただろ?ほら、俺の上から退けよ」


早くしろと言わんばかりに促した。そう、こいつは無理とわかっていてまだ俺の上に跨がっているのだ。


「岬は、なんで俺がこんなことするか考えたことないの?」


急に問われた質問。

 

「え?」


そりゃあ、あれだろ。



「俺が素直じゃないから?」

そう言ったら、大悟はクスッと笑みを溢した。


「…そうだよ。大当たり」



大悟は、低い声でそう言った。そして、だんだんと大悟の顔が俺の首へと近づいた。


「ちょ、大悟何する気だ……ヒィっ」


大悟が俺の首に顔を埋めた途端、鳥肌が立った。こ、こいつ…今俺の首を舐めやがった!?



「…こうやってされたの?」


はっ?


「…お前何言って」


俺は、咄嗟に離れようと抵抗するが大悟の力が強くて、手なんかもう頭の上に持ち上げられ固定されている。



「ちゃんと素直に言ってごらん。そしたら許してあげないこともないよ」



「はい…?」

いやいやいや。そもそも俺、悪いことしてないし、許す許さないとか訳がわからない。さっぱりだ。


「急に変なマネするな。大体お前が何がしたいか意味わかんねぇ…」


首を捻る言い方で言った。





「意味がわかってないから、行動にあらわしてるんだよ。」



大悟は、ニッとまた口の端を上げて笑みを浮かべる。あーー!もうだから何が言いたいかわからね。自分でも頭悪すぎて、本当理解力がないことはちゃんと分かってるつもり。しかし、大悟の場合説明不足なんだよ。よくわからなくなり、イライラで頭がこんがらがった。


とりあえず、整理してもらう。



「この俺がわかるように手短に説明してくれ」



もう考えるのはギブアップだと思い諦めてそう言った。すると、大悟は余裕な感じで


「お仕置きだよ」


と俺を見下ろしながら言う。…は?確かに手短にとは言ったけど、いくら何でも短か過ぎだろ。それに、お仕置きは押し入れが必要なんだろ?無理だろ。諦めの悪いやつめ。心の中で悪態ついて、俺はため息を吐きながら言った。




「もう一度言うが、お仕置きはできない。検索でお前も見ただろ」




ネットは、嘘をつかないのだ。大悟はなぜ、同じ過ちを繰り返そうとするのだろうか。そんなに自分の醜態を晒したいのか…?クスッ。俺は、バカにしたようにあわれみ笑う。属にいう憫笑ってやつ。少し間を置いて大悟がはいはいと舐めたように



「あーあらね。あれだけじゃ説明不足」


と、ハハハと笑いながら手を横に振っている。


おっ。

「お前ケチつける気なのか?」

なんてやつだ。大問題。


「別にケチつけるとかそんなんじゃないよ。ただ岬には、俺だけを見て欲しいだけ」



え?

「お前何言ってんの」


もう、とっくに見てるだろうが。目の前にいるんだし。急に変なことをいう大悟に疑問になる。


「まっ、どうせ、分からないようだから、少しずつわかっていけばいいよ。ゆっくり時間をかけて…ね?」


「はいはい。どうせ分からないですよーだ」

不貞腐れた返事を返す。ゆっくり時間かけてって言われてもそんな面倒くさいこと俺は、引き受けないと思う。


「…で、本題に戻るけど」


「ん?」



大悟の顔が怪しく光る。


「俺達の仲に、隠し事はなしね」


にこ~っと笑ってる。不自然過ぎて怖い。しかも俺達の仲ってなんだよ、まじ。てか、ぜってぇ隠し事ってアレのことだよな…。昼休み俺が戻るのが遅かったことと、香水の匂いのこと。あのチャラ男(翼先輩)、キツい香水なんかつけてくんじゃねぇよ。おかげでこのありさま。もう、大悟はこういうことに関してしつこいんだ。



「岬、黙っちゃってどうしたの?」



「べ、別に!てか、俺…隠し事なんか」


「言えないこと?」


「だから「もう黙って。少し痛いけど我慢してね」



言葉を遮り、その声と共に俺の首筋に


チクッ

先ほどとは、断然違う痛みが生じた。



「ってぇー!!」



涙がでるくらい、痛くて悲痛のあまり叫ぶ。なぜ、犬みたいに噛むんだ!?しかも、首に!!



「何すんだよ!バカ」


結構、マジいてぇ…。


「ちょっとした虫除けだよ」


「ふざけんな!こんな赤くなるまで噛みやがって…むしろお前が虫だ、虫!!」



「そんなに痛かったの?」


「いてーよ!!血が出てるだろ?」


「大げさな」


「大げさじゃねぇよ、マジだ!つか、なんで俺がこんなことされなきゃなんねぇんだよ」



ケンカ売ってんのか?あぁ、買ってやろうじゃねーの。売られたケンカは買うのがルール。俺は、イライラと奮闘していた。


「じゃあ、“誰の香水”だったのか教えてごらん」


大悟は、さっきと言い方をかえて、聞いてきた。…んだよ。んだよ。なんで、全部、大悟に話さないといけないんだよ。俺に黙秘権は存在しないのか?もちろん、大悟が昔からお母さんみたいな過保護さがあるのは知っている。だがらと言って、そこまでしてする必要ねぇだろ…。




「…に」


「ん?なに」


「お前に…大悟に…かんけーねぇだろ!!」




とうとう怒りが爆発した。それと共に俺の声が部屋中に振動が立つ錯覚のようなものが響いた。シーンと静まりがえる。大悟は、急な俺の態度に驚いてピタッと固まっている。……ハッ。そこで、とうとう俺は、過ちに気づいた。そう我に返ったのだ。ちょ、待って。や、やべぇ…。相手はあの大悟だぞ!?怒らすとまた面倒なことが待ち受けている。勝ち目なんかほぼゼロに近い。いや確実ゼロ。むやみに啖呵切って出る所じゃないのに俺ってば…命知らず!だから大悟が言葉を発するまで体を身構えておいた。



そして、少ししてから『そっか…』と寂しげに呟く大悟。その姿は、ものすごく傷ついたように見えた。あれ…?想像していたのとは、違って逆に俺が驚いていた。


「そうだよな、俺には関係ないことだよな…」


「え…ちょ、」



いつもは、こんな簡単に納得などせず、嫌でも理由聞いてくんのに。なのになんだよ、コレ…。

いつもと様子が違う。調子が狂うというかどう反応したらいいのか俺だってわからない。別に怒られたいとかいうわけじゃない。ただいつもの大悟と少し違うことに違和感を覚える。確認するが決して俺は、Mではない。



「俺、今日は帰るわ。ごめんな…」

大悟は、そうひとこと残して俺の上からあっさりと退いた。そして、右肩にゆっくりと自分のカバンを持って部屋から出ていった。その出ていく大悟の後ろ姿が一段と暗く感じた。


「え…?」

これは、もしかして怒らせるよりも傷つけた…?今まであんな大悟を見たのは、初めてかもしれない。傷ついた表情なんて見たことなかった。




「なに…この変な感じ」

俺の首を噛んで怒らせた大悟が悪いはずなのに…なんで俺がこんな複雑な気分にならなきゃいけないんだ。俺にだって、非があるのはわかっている。よくよく考えてみれば、少し言い過ぎたかもしれない。そして、かなり酷い言い方した。あっちは、ただ俺のことを心配してくれただけ。なのに、関係ないとか怒鳴りつけて…一方的に大悟を傷つけたんだ。俺も大悟に同じこと言われたらショックで落ち込みそう…。隠し事は確かに嫌だ。

あぁ、こんな首の痛みなんか犬に噛まれたと思って放っとけば良かったんだ。赤くなっている首筋に触れながらそう思った。大悟がしつこいのは、もう昔から変わらないことで理解していたけども…なんか、なんか…ああして引き下がった大悟に、こう、モヤモヤしてくる。これって、言った後悔っていうやつかな?それともいつもと違う大悟に戸惑ってるだけ?はぁ…どっちにしろ俺のバカやろう。俺は、数時間もずっと大悟が出ていったドアを見つめてた。…もしかしたら『さっきの冗談』と笑って戻ってくるかもと思いながら。 でも、そんなことなくて気づいた頃にはもう夜になっていた。あのまま日付が変わって、土曜日。昨日のことで、よく眠れなかった俺は苦手な早起きをし、スマホの画面をタッチする。やっぱり、早く謝って俺のこのモヤモヤをなくしておきたいと思ったからである。こんな嫌な気持ちのままでは、じっとしてられなくてすぐさま、連絡を取りたくなる面倒くさい性格だ。すると、スマホを操作してた俺は、メールが1件届いていたことに気づいた。…もしかして、大悟!?きっと、メールの相手は大悟だと思って大急ぎでメールを開く。



――――――――――

From 翼先輩

やっほー
今日のことだけど覚えてる?


忘れたとか言わせないよ~


何せ俺が働いてるホストクラブに

姫が客として
来てくれるんだもんねー


昨日からドキドキで
眠れなかったよ(^з^)-☆


――――――――――



俺は、このメールの内容を見て唖然となる。…あ、そうだった。そんな約束してたわ。少し、期待していたのが外れたのと最後の顔文字に俺は、若干引きつった。あー、あとこれも思い出した。内容を一からまとめてみると、俺にこうやって悩みを提供させたのは全部こいつ(翼先輩)のせいだ!!まず、急に保健室に来いとか言って命令して香水をつけたの全部こいつが原因。そして、あとから大悟が疑い始めて俺がカッとなり大悟にあんな顔させてしまった。なにが、眠れなかったよ、だ。こっちも、違う意味で眠れなかったんだよ、あほ。ムシャクシャした感情が沸々とわきあがる。でも、しかしあれだ…。翼先輩は、俺がこうやって悩んでいることを知るはずない。八つ当たりしてもカッコ悪いだけだ…。それより、大悟に嫌な思いさせてしまったし、俺が呑気にホストクラブ?という所で遊んでいるわけにはいかない。つか、今全然そんな気分じゃないし、第一ノリ気でもない。翼先輩には、申し訳ないけどここは、断ろうかな。



――――――――――


ごめんなさい。

今日は家でゆっくりしたいのです。


だからまた今度ということで。



――――――――――



よし、送信っと。ふぅと、息を吐いて数秒後にピロリーンと受信音が鳴った。





――――――――――

ノー、ノー!

もう予約いれちゃったし
今からキャンセルできません\(^o^)/


それに、命令を断るなんて

いけない子だなぁ~


昼の12時に

○○駅の前で待ち合わせね!


遅れたらキッスを
プレゼントしちゃうぞ~


じゃ、またあとで(^з^)-☆


――――――――――



スマホを握りしめながら終始固まる。…嘘だと言ってくれ。これでわかった。俺は心底ついてないらしい。何があっても、絶対行かないと思っていたけどそれはどうも無理っぽい。そういう気分じゃなかったけどもうキャンセルできないらしいし、迷惑かけることになるからそれは、免れたい。

仕方なく出かける準備をした。キッスを貰いたくなかったのでちゃんと時間通りに間に合うように家を出た。足取りは相当重い…。 はぁ、とため息をひとつ溢した。この用事が済んだら速攻で大悟の家に行くと決めた。



――――
―――――――
――――――――――

……。


多くの人が行き通ってく様子を背後に約束の時間に○○駅の前に無事着いて俺の第一声の声がこれだった。


「はぁ~?今、なんて言った?」


目の前で悪戯っぽく笑う翼先輩を睨み付けながら聞き返した。



「だからさぁー、俺の仕事、客は女性限定なんだよね~。てことで、女装よろしく」



面白そうに子供みたいな好奇心旺盛な顔をしている。


「は?」

女装だと?俺の顔が徐々に険しくなっていく。翼先輩の話はこうだった。その仕事、所謂ホストってやつは、女性しか受け付けないということらしい。そうしないと念願だったイチゴケーキが食べられないと脅された。



「でも、それってさ。無理ありすぎだし。俺、男だぜ?」



「あー大丈夫大丈夫。それは全然気にしないでいいから。姫は、そのままでもOKだけど一応念のためってやつがあるじゃん?だからそんなこと心配しなくてもいいよ」



「ああ?無理だし、うんこ」


遠回しに…いや、完全に俺のことバカにしてるよな?俺ってば優しいから“クソ”じゃなくて“うんこ”という表現でオブラートに包んであげた。小さい声で『せめて、伏せ字を使おうよ…』と言う翼先輩の声は無視する。てか、いくらイチゴケーキが好きな俺でも今回ばかりは引き受けるわけにはいかない。“男”としてのプライドを捨てたくない。まぁ、今までにプライドは傷つけられたが…な。まだ諦めてねぇんだよ、俺は。ごめんな…イチゴケーキ。頭にイチゴケーキを思い浮かべてながら儚く思っていると。



ガシッー


「っと。え、ちょっおい!!」


考え事をしてた俺は、急に手を引っ張った翼先輩のせいで体がよろける。




「時間なくなっちゃうから、急ぐよ」



まだ了解したわけでもないのにどんどん話を進めていく翼先輩。待て待て。どう考えても無理だから。ったく。翼先輩は、人の言うことが聞けないみたいだ。


「おい。いい加減、手を放せ」



「ムリムリ~」


サラッと受け流す先輩に殺意を覚えた。本当…この人が考えることなんて想像もつかないほどウザい。

そのあと何回もはなせと言ったが、俺の言葉は、呆気なく吹く風とともに消え去った。…え、それより、今どこに向かってんの?



――――
――――――
――――――――


……。


それから数分歩いていると、ピタッとある店の前で急に翼先輩が足を止めた。




「うわっ!」


俺は、前を見ていなくて、急に止まった翼先輩の背中に顔をぶつける。




「姫大丈夫?」


「急に止まるなよ!バカ!!」



痛いつーの。おかげで鼻の方が少しじんじんしている。



「ごめんね。でも目的の場所にもう着いちゃったから」


「目的の場所…?」



俺は、翼先輩が向いている方向に視線を向ける。



「っえ!?」



俺は、目を擦る。そこには、なにやらオシャレな建物が。



「ここどこだよ」

俺は、さっきからウザいくらいキラキラと光を放っているオシャレなお店を指差しながら言った。…ここがあれか?ホストクラブっていうとこか?にしても、なんつー、こう輝いてるんだよ。洒落てるな。



「ここでね、姫を女装させるんだよ」


「はっ!?」



おいおい、どの口が言ってんだ。


「さっきも話した通り、俺の仕事、客は女性限定じゃん?だから姫、女装しないとね!」


「いやいやいや。それはさっき、きちんと断りました!」


なんで、俺がいちいち女装なんてしなくちゃいけないんだ。いやだ。いやだ。いやだ。断固拒否。もう、黒歴史に何も刻みたくない。



「ダメだよ。ちなみに、ここで姫を変えてもらいまーす!」


「ま、待てよ!勝手に話を進めんな。ここ、お前が働いているホストクラブってとこか?」


「あ、違うよ~。ここは、ただのメイクリストやスタイリストとか揃ってる所謂、美容院ってとこかな?」




「え…」

話の展開が早すぎる。


「ホストクラブは、少し暗くなってからだから時間はまだたくさんあるから安心して」




「てことは、まさか…」


「そのまさかだよ!ここに来たのは、姫を女装させるため」


「はあああー!?それなら俺、帰る」



くるっと方向を転回させる。けど。



「往生際が悪いな~もう。…キッスしちゃうぞ」


急に、翼先輩の手が伸びてきておまけにキモいことを耳元に囁かれた。その言葉に硬直する。


「よし、いい子いい子。てことで入るよー」




俺の頭を撫でながら翼先輩は、遠足前の小学生みたいなテンションでお店の中に入っていく。ちなみに俺の手を引っ張りながら。だから周りから見れば憐れに引きずられていただろう。ということで。俺は半ば、いや完全に無理やり連行された。


マジ、俺気の毒で可哀想。乙。そんなこんなで強制的にお店の中へ入った。…マジ、待てや。俺、まだウンともスンとも言ってねぇしッ!!何で俺がこんな羽目に合わなきゃいけないんだよ。人としての人権は、誰にだってあるってテレビで言ってたぞ。それを完無視かよ。今なら、はっきり言える…。俺の自由、カムバック。



「あ、先輩。後で覚えてろよ」


そう言って、にこにこ嬉しそうな翼先輩を睨んだ。



「えー?何、ちゅーしてくれんの?」



「………。」


どうしよう 。

こ い つ 日 本 語 通 じ ね ぇ 。


もういい。仕返ししてやるから。聞いて驚くなよ?俺の復讐ってのは、怖いんだ。なんだって、悪戯メールを何件も送るんだからな。そして、電話がかかってきても『田中です』って嘘ついてやる。結果、精神的に追い詰めることができるだろう。ハハハ今に見ておけ。チャラ男!!翼先輩は、俺が密かにそんな計画を立てているのは知るはずない。てか。放心状態であまり見ていなかったせいか、この店の中、豪華過ぎだよな…?シャンデリアが何個もあるし、オシャレで皆輝いている…。えっ?もしかして、なになに俺、結構…場違い?…もういや。色々とショックでガクッと肩を下ろしていると、階段の方からバタバタと慌てて降りてくる綺麗なお姉さんが見えた。見えたと思ったらそのお姉さんは、走って俺と翼先輩がいるとこまで来たら、足を止めた。


「お、遅くなってごめんなさいね」

申し訳なさそうに翼先輩に謝っているお姉さん。この二人、知り合いなのか?


「大丈夫だよ~、俺たちも今来たとこだから」


「そう…なら良かったわ。それより翼くんが言っていた子ってこの子かしら!?」


急にお姉さんを視線が俺に。



「え…っと何ですか?」


俺の存在に気づくと、お姉さんは、息を荒くさせながら興奮した状態で見ている。間近でそんな見られるとさすがに照れる。しかも綺麗なお姉さんに。ここ重要。




「そうだよ、でも俺のだからあまり近づかないでくれる?」



スッと翼先輩が俺とお姉さんの間に割って入ってくる。そして、いつの間にか翼先輩の後ろに隠された。そのせいで俺は、また翼先輩の背中と二度目のごっつんこをくらってしまった。またかよ…。これ、結構ガチで痛いんだ。


「いいじゃない!何で隠すのよ」


「あげませんよ、絶対」


「あら、いつからそんな独占欲強くなったの?」


「姫は俺の大切な子だからね~」


「珍しいことを言うわね。男女遊び激しいあなたが」


「博愛主義者と言ってくれよ!でも姫は特別だけどね」





なにやら、前の方で二人が話しているみたいけど、俺はそれどころじゃない。…鼻の次は、おでこがいてぇ。なんか、このチャラ男…体、固い。ムカつくけど鍛えてるのか?別に羨ましいとか思ってないからな。それより、二人はどんな会話してんだ。疑問に思ったので、そっと、翼先輩の横から顔を出して覗いた。



「あっ!それより、その子を私に変えさせてほしいって頼みだったわよね?」


お姉さんは、話に入るけどって言いながら思い出したような顔をする。お姉さんが言っているその子とは、きっと俺のことだろう。なにせ、こっちをキラキラした目で見てるから。しかも変えるって…あぁ、女装の話か。はぁ。女の人に女装させられるとかなんという屈辱。俺は、もう嫌だと言わんばかりに肩を竦めた。



「うん。そうだけど、やっぱり咲さんに頼むの心配になってきた」


翼先輩は、不安気味にそう言った。お姉さんの名前、咲さんって言うんだ。俺も岬(みさき)だし、一応、同じ“さき”があるから妙に運命感じる。



「どうしてよ~?」


「まぁでもしょうがないか…。あっ姫、また顔をぶつけちゃってごめんよ~」



翼先輩は、しゃがんで俺のおでこを触りながら謝った。語尾伸ばすな。ムカつくから。


「痛かったぞ、アホ」


「だからごめんってば~」



謝ってるわりには、なんでそんな笑顔なんだ。こいつ、反省の欠片もない。

「コラ、そこイチャつかないの!」


咲さんの急な意味不明の言葉に俺は、え?となる。そして、そのままの状態で咲さんは、俺に近づいてきて


「あ、それより自己紹介まだだったわよね。初めまして私、有岡咲です。よろしくね、姫ちゃん?」




と、眩しい笑顔で自己紹介をされた。ヤバイ…。久しぶりに母さん以外の女の人と話すから緊張する。


「お、俺は、杉本岬っていいます。ちなみに姫じゃないです。それはコイツが勝手に呼んでるだけなんで気にしないでください」



ぺこりと頭を下げ、落ち着いて俺も自己紹介した。



「岬ちゃんっていうのね。可愛い名前!どうぞ、よろしく」



咲さんは、そう言って俺の前に手を差し出す。



「あ、よろしくお願いします」


握手する。



「ねぇ、さっきから聞きたいことがあったんだけど、岬ちゃんってホントに男の子?…アレがついてるようには見えないけど」



納得していない顔をしながら、俺に問う。………え。ちょ、今、なんて。真剣な顔をした咲さんの口からとんでもない一言が。


「俺もね、最初は女の子だと思ったけど、触ったらちゃんとアレはついてたよ。ちっちゃいけど」



「ちっちゃくないわ!」


翼先輩が軽々と俺の羞恥を晒す。何勝手に言ってんだよ!しかも女の人の前で余計なことを!男としてのプライドがぁぁ…。


「岬ちゃん、ちっちゃいのね!可愛いわ」


「や、やめてください…」


もう恥ずかしさのあまり、顔が真っ赤だろう。すでに、目眩がしてるぜ。いろいろ傷ついたところで


「よし、これで謎は解けた!そして岬ちゃんは、私に任せなさい」



パンと手を叩き、自信満々に咲さんはそう言った。




「じゃあ、準備が終わったころにまた伺うね~。姫の女装…あぁ想像しただけでも鼻血が」



「さっさと散れ、カス」


「姫冷たい…」


なぜか、泣いているふりをしている。



「今更かよ」



俺は、早く帰れと言わんばかりにしっしっと追い払う。演技は、俺に通用しない。



「迎えに来るから大人しくしているんだよ?」


「わかった、わかった」



ほら、見ろ。嘘泣きだ。そのあと、いちいち翼先輩は、俺に向かって投げキッスしてお店から出ていった。まぁ飛んできたハートには、上手く交わしたから大丈夫だ。



「さてと、岬ちゃん。私に着いてきて!」


残った俺は、咲さんの誘導で二階に移動した。はぁ。もうホントにやだ。着いた先には、洋服やメイク道具がたくさん置いてある部屋だった。生まれて初めて見る光景だ…。



「メイクやコーデは、任せておいてね!」

きゃぴきゃぴと喜んでいる咲さんは、可愛いけど反対に俺は、どんよりしていて曇っている。




「はい…」

そう返事を返して俺は、放心状態となる。そのあと、咲さんのされるがままに。翼先輩に鬼ごっこで捕まったのが過失でしかない。終わるまで耐えるんだ、俺。そうおまじないをかけるみたいに何回も何回も心の中に暗示をかける。


「岬ちゃんには、姫カットでパッツンが合うわね。あ、このウィッグが丁度いいわ!」

咲さんは、興奮していて楽しそうに鼻歌を歌っている。…怖い。ヘルプミー。



―――――
―――――――
―――――――――



俺の助けてという願いは儚く散り、咲さんに、着せ替え人形のように試着を何回もさせられ、とうとうそれが終わった。なんてこった。



 「岬ちゃんってば、こんなに可愛いなんて女の敵よ、もう」

咲さんは、そう言いながら俺を鏡の前に立たせる。




「ははは…」


鏡に映っている自分に苦笑い。シフォン地の白のふんわり可愛いフリルが付いている膝上のワンピースを着せられた。おまけにばっちりナチュラルメイクというものをさせられ、パッツンと姫カットが組み合わされているウィッグまで被せられた。俺に…なんてことしやがったんだ!泣きたい。帰りたい。でも別に咲さんは、悪くない。悪いのは俺にこんなことをさせたアイツだっ!現在、この場にいない翼先輩に対して苛立ちを覚える。



「今度、スポーティーとかフェアリーファッションもさせてね!」




「…」


咲さんがもう何言っているか、わからない。ただ一つ言えることはもう、今度はしたくありません。断じて。はぁ…。つか、それにしても、腰から下のスースーするこの無防備な感覚?には、いつまで経っても慣れない。俺がガクリと下を向いていると咲さんは、ニヤニヤした表情で



「ねぇ…ちょっと聞きたいことがあるんだけど」


と言って俺の肩を掴んだ。




「え…?聞きたいことですか?」


何か、怪しく笑う咲さんに俺は首を傾ける。



「岬ちゃんの首に付いている“キスマーク”一体誰がつけたのかしら!」


キスマーク?


「何ですか?それ…」


シールの種類のなにかか?





「あら、キスマーク知らないの?」


なぜか、驚き気味の咲さん。俺、こういう顔されるの本当にいやだ…。教科書くらいちゃんと読んでるのに。ペラペラと捲ってさ。


「ご、ごめんなさい。…わかりません」


俺は、素直に言った。女の人の前ではなぜか、見栄がはれない。


「もう岬ちゃん可愛すぎるわ!今どきこんな純粋な子いるの!?」



「え、俺に言われても…」


意味がわからないし返答に困る…。



「じゃあ、私が教えてあげる!あっ、その前に、最近誰かに首とか噛まれたりしなかった?」




急な質問。え、最近誰かに首を噛まれたり…?そんなことあったっけ。


「…あ」


「心当たりがあるのね!」



嬉しそうに微笑む咲さん。俺の脳裏に昨日のことが甦る。そういや、大悟に強く噛まれたや…。痛かったけど、結果大悟を傷つけるようなこと言っちまったし…。でもそれと、なんの関係が?


「た、確かに昨日…幼なじみに噛まれましたけど」


「きゃー!やっぱり噛まれたのね!岬ちゃんも隅に置けないわ~」


騒ぐ咲さんの横で俺の頭は、ハテナマークがいっぱいだった。


「あの、キスマークっていうのと何の関係があるんですか?」



話がよく見えなくて眉を寄せる。



「もちろん関係あるわ!キスマークっていうのは、マーキングみたいなのと同じよ」



「まー…きんぐ?」

やばい余計わからなくなってきた。語彙力無さすぎなのか…俺。


「そう、マーキング。『俺のもの』っていう印のことで、愛情の証!」




「え。お、俺のもの!?」



その言葉を聞いて俺は、目を見開いた。俺のものって…奴隷としか見てねぇってことか!?それに愛情の証みたいな要素は、ぜってぇ入っていないと思う。痛かったし。



「所謂、独占欲の塊ね!他には、浮気予防って意味もあるらしいけど」


「ま、まじですか…」



なるほどな。自分の奴隷を他の奴には使わせたくない魂胆なのか…。性悪すぎる!なんて恐ろしい。意味を知れば知るほど怖くなっていく。あ、でも咲さんがただ言ってるだけだし本当かどうかはわからない。そうだ。そう考えよう。ここは、ポジティブに思うことにした。



「あ、そういえば、その幼なじみってどんな子なの?」


咲さんは、目を輝かせ、興味津々に聞いてくる。



「どんな子って…男ですけど。でもイケメンでムカつきます」



俺がそう告げたら、咲さんは、目を見開いた。



「あら!相手男なの!?こりゃ岬ちゃんも大変だわ。女より、男の独占は強いものだから」



「え?あ、はぁ…そうなんですか」



とりあえず、頷いておく。これ以上、咲さんに面倒くせぇ奴って思われたくない。


「あっ、安心して!ファンデーションで隠しておいたから大丈夫よ」


「あ、なんか、色々ありがとうございます…?」




隠す意味がわからないが一応、お礼を言っといた。…どうしよう。今さらかもしれないが、俺、本当のバカかもしれない。もちろん、頭脳的な意味で。いや、少し理解不足ってとこだろう。精神的には普通だけどな。




♪~♪~



「あっ」



この音楽、俺の携帯の着信音だ。さっき着替えてそのまま放置していた。慌てて脱いで畳んでおいた俺のズボンのポケットからスマホを取り出した。そして画面を確認すると、“橋川 翼”の文字。




チッ。

こいつか。心の中で舌打ちする。よし、例の復讐をさっそく始めるか。




「もしもし、田中ですけど、どちらさん?」

どや。田中ですけど?攻撃。




『田中?いやいや、その可愛い声は姫だよね。まさか、俺のいない間に他の野郎と結婚届けを出して苗字変わったとかないよね?それだったら本気で怒るよ』



…あれ?なんか、こ い つ 危 な い  。





「…はい、杉本です」


俺は、もう諦めモード。素直に名乗る。…復讐は、失敗だ。くそ。


『やっぱり、騙してたんだな~。そうだよな、姫は、田中より“橋川”だもんな。うんうん』


はいはい、俺は、何も聞いてないし、何も聞こえてません。




「で?何」



『照れてるのか。あ、そろそろそっちに着くから、お店の入り口で待ってて』 




「へーい。わかりやした」


俺は、口を尖らせながら適当に返事を返す。


『くれぐれも誰かに声かけられても無視するんだよ?』



「は?ここには知り合いいないから大丈夫だけど…」



『そうじゃなくて、絶対ナンパされんじゃん。俺がそれ嫌なの』



「は、はぁ…」



『おっと、その反応は理解してないな。とにかく守ってよ!あぁ姫の女装…なんか鼻から赤い液体が』


ブチッ。ごめん。切っちゃった。俺、多分これ以上、聞いてたら完全携帯壊してたかも。



「岬ちゃん、誰からだったの?電話」



咲さんがそう言いながら、オシャレな紙袋らしきものを持ってきた。




「あ、翼先輩からです。咲さん、今日はありがとうございました。そろそろ来るみたいなんで俺、行きますね」



実際は、もう家に帰りたいくらいだけどしょうがない。





「そうなの?あ、でもちょっと待って」



咲さんは、『はいコレ』と言いながら先程のオシャレな紙袋を俺に渡す。




「何ですか?これ…」



「ショップ袋。まぁここは、美容院だけど、それ私の持参。これに脱いだ荷物とか入れてね」



っ!な、なんて気が利く人なんだ!俺、今気遣いに感動している。日本人最高。つっても、俺もジャパニーズだけどね。えへへ。



「あ、ありがとうございます!!」


そう礼を言って荷物をその袋に詰める。咲さん、まじ女神。絶対、彼氏いるよな…。美人さんだもの。はぁ。遠い存在だし、どう見ても俺とじゃ不釣り合いだな…。嬉しくなったり、落ち込んだり、俺のテンションの差がおかしくなっていた。ま、でも咲さんにまだ彼氏がいるかどうかわからない。そうだ。真実を知らなければ落ち込まなくて済むではないか!そう明るく?考えて、そして、荷物を全部詰め終えた。



「あ、咲さん!今度会うときは、俺が女装していたことを誰にも言わないでくださいね」 


これだけは、ちゃんと伝えておかないと。




「岬ちゃんの頼みだから、約束するわ」


咲さんは、微笑む。なんて、話のわかる人なんだ。翼先輩の知り合いとは、到底思えない。


「じゃあ、俺もう行きますね」



咲さんと別れるのは、寂しいけど運命でまた会えるかもしれない。



「気をつけてね。変な狼に襲われないように!」



咲さんは、心配そうに言う。




「よ、よくわかりませんが、それではまた」


そう言って、頭をペコリと下げた。そして、左手に荷物が入っている袋を持って出ていこうとしたその時だった。



「うわッ!」


前から衝撃を感じ、そのせいで無惨にも地面に尻餅をついてしまった。…な、なんなんだ。どうやら俺は、また誰かとぶつかったようだ。ちくしょう。今日は、とことんぶつかる日なのか?厄日でしかない。後ろの方では咲さんが『大丈夫?』との優しい声が聞こえた。俺は、ぶつかった相手を睨むように下から拝見する。


睨んだ先には、ハーフの顔立ちをした男がいた。…くそ、これまた美形かよ。そこには、どっかのお城に住んでいる王子様みたいな奴がいた。印象は、周りに花びらが飛んでるように見えるから余計腹立つ感じ。文句の1つや2つ言ってやろうと思ったけどこれは、すでに顔負けしてる。

だから、その場で威嚇をしていたらスッと、ハーフ野郎が屈んできて俺の前に手を差し伸べた。


「大丈夫ですか?あまりにも小さくて見えなかったので気づきませんでした」



…………はっ?小さくて…だと?笑わすぜ。とんでもない発言しやがる。一応、言葉は丁寧な敬語だけど初対面のくせに。絶対、調子乗ってる。沸々とイライラしてきた。


「失礼な野郎だ。まず、謝れコラ」

俺は、差し伸べられてる手を払いのけ、自力で立ち上がる。さっき、顔負けしているとか言っていたけど、そんなのどうでもいい。きちんと人が成っていない奴に、俺、全然負ける気しねぇ。
 


「口の悪い女ですね。しかし、初めて見る顔だ。咲さんの知り合いでしょうか?」


「それでも謝罪なしか。つか、そんなのお前に関係ねーだろ」




どうだっていい話。今、こいつの目に女装している俺は、“女”として認識されてるようだ。まじ俺、惨めすぎて最悪…。俺の気持ちとは裏腹に奴は、笑みを浮かべてやがる。


「…おもしろい。ところで、君の名前は?」



「は?」


ハーフの野郎は、突然俺の名前は何かと聞いてくる。…てめぇには、今さっき関係ねーって言ったばかりだろうが。人の話、聞けよ。



「あ、人に名を尋ねるときは先ずは自分から名乗るでしたよね。 申し遅れました僕の名前は、紺野 肇といいます。君の名前は?」



「ははは…」


紺野 肇かあ。で、なにこの人勝手に自己紹介してくれちゃってんの。流れ的に、俺もしなきゃいけない感じじゃねーか。それに絶対、この格好で人と関わりたくないし、どうしても会ったばかりで知らない奴にそう簡単に名前を教えたくない。俺は、知恵をしぼってどうにか考えた挙げ句、出した答えが後ろにいる咲さんだ。そして振り向いて、心の中でSOSをテレパシーで送る。どうも俺一人じゃ、紺野って奴を相手にすることができないらしい。いや、無理だ。面倒くさいし。だからそのためには、助っ人が必要なのだ。



「あ、そうそう!忘れてたわ。この子、私の親戚の姫ちゃんっていうの!可愛いでしょ」


咲さんは、俺のテレパシーを読み取ったなのか、慌てて助太刀に入ってくれた。あ~まじ、俺の女神。俺は、咲さんの親戚の位置に昇格した。杉本 岬は、嬉しさと喜びで10レベルUPした。



「え、咲さんの親戚ですか…?小学…いえ、中学生なんか居ましたっけ?」


「あら、いたわよ。もう肇くんたら!ちなみに姫ちゃんは高校生よ」

~っ!…くそハーフ。なめやがってッ。今、小学生って言いかけただろ!丸聞こえだぞ。よって杉本 岬は、10のダメージを受けた。




「ほぉ~、この生意気女が高校生なのですか…」



「んだよ」



上から下まで見られ、疑いの目を向けられた。ふん、なんとでも言え。バカだの、アホだの言われたってちっとも痛くねぇし。俺は完全に拗ねている。すると、握りしめていたスマホが震動した。画面を見ると、そこにはまた“橋川 翼”の文字。次は、着信ではなくメールだった。開くと『もう着いたよ』って書いてある。…あっそうだ。俺、翼先輩にお店の入り口の方で待っとけって言われてたんだ。

それを思い出すと、


「じゃあ、急いでるんで」


と言って、この場から出ようとした。だけど、紺野が道を通せんぼして塞いでるから通れない。


「邪魔だ。どけ」



俺は、睨み付けながらここを通せと言った。




「そんな格好して、もしかして彼氏とデートですか?それに人に頼む時は、ちゃんとした言い方ってものがあるでしょう」


「ちょっと、退いてくれませんか?」



あと彼氏とデートは絶対ない。無視をした。


「棒読み…まぁ仕方ありませんね」



まだ何かぶつぶつ言っているみたいだが道をあけてくれた。チッ。面倒くさい奴。


「あ、咲さん。またねバイバイ」



咲さんに笑顔で手を振り、俺は、飛び出した。あとは、咲さんに任せた。真っ先にそのままお店の入り口に向かう。






―――俺が咲さんに向けた笑顔を見た紺野が見惚れていたということは知らない。



―――――
―――――――
―――――――――


……。


入り口に着くともうすでに翼先輩が待っていた。でも翼先輩は、さっきのラフな格好と違って黒いスーツで身を包み、髪をキレイにセットされていた。





「遅くなってすまん」


俺は、謝りながら翼先輩の隣に駆け寄った。しっかし。近くで見ると雰囲気が大人っぽくなったよな…。凄い変わりように俺は翼先輩を見ていた。




「……~っ!」



翼先輩は黙って俺を凝視している。やばい。これは、傍(はた)から見たら見つめ合ってると誤解されちまう。フイと目を逸らすと、翼先輩の両手が伸びてきて頬に優しく手を当てられ、もう一度、目を合わされた。


「な、なに…?俺、何か変?」



首をコテンと傾ける。翼先輩の瞳が揺れてる気がするのは見間違いか?



「姫。その顔反則だよ!」


翼先輩は、鼻血を出しながら興奮気味にそう言って俺をギュウと抱き締める。




「ちょ、やめろ!」

ちょっと待って、ここ外。公衆の面前だし!てか、顔に反則って…ある意味、悪口だぞ。心の中で舌打ちをした。その瞬間、翼先輩が抱きつくのをやめて次に俺の格好をつま先から頭のてっぺんまで熱い視線を送ってきた。…次はなに。じろじろ見んな。




「て、天使みたいなコーデなんかしちゃって!俺をきゅんきゅんさせたいの!?」



「はい?」

俺は、今きっと間抜けな顔をしているだろう。



「あぁ、マイエンジェル。 ゴクン…姫の生足に細い肩。すっごいエロい…。舐め回したい。すべすべだしつるつる。なにこれ、死ねる!」




「うん、死んで。あと、さりげなくお尻触らないで。」



俺はそう言って翼先輩の手を払う。ちなみに『死んで』の方をめっちゃ笑顔で言ってやった。俺、怒らすと恐ろしいぜ。



「あ、バレたか~。本音言うともっと触りたかった」



バレたかじゃねーよ。しかも本音って…


「もう変態じゃん」

キモすぎて鳥肌立ったわ。引く。俺って、本当厄介な相手に関わってしまったなと残念な気持ちになった。


「とりあえず、車の中に入ろうか」

翼先輩は、そう言ってさっきから不自然に止まっていたベンツを指さした。え?嘘。言葉も発せないくらい驚いていると、翼先輩が微笑んで無理矢理俺の右手を取って握った。


「行こうか。姫」

「ちょ、おい!」


痺れを切らしたのか引っ張られて俺は、ベンツに乗り込みことになった。



―――………。



そして、中に入る。うひゃあ…。俺、初めてベンツ乗ったよ。何で、こんな高級車…あぁそっか。生徒会は、全員金持ちでしたね。嫌みかっての。庶民で平凡な俺は、二度とこういうことは味わえないだろう。なんて、車内を見ていたら


「本当、可愛いね。同じ男だとは思えないよ」


翼先輩そう言って隣でにやにやしていた。



「それ文句だろ」

はぁ、とため息を溢す。


「褒めてるんだよ!あーでも、誰にも見せたくないな。ねぇ、見せないでよ」



「お前がこんなことさせたんだろが」



なんて、バカなことを言いやがるんだ。そんなこと言うくらいなら俺にこんな恥ずかしい格好させないでほしい。すると、翼先輩は『姫!』と言ってぎゅっと俺の両手を掴む。


「いっそのこと…このまま結婚式あげちゃおっか」



「黙れ。」


俺を変態にさせる気か。女装趣味とか勘違いされたら、大変だ。


「もう、姫。そんな冷たく突っ込まないでよ」


「うるせ、放せよ」


俺は、翼先輩の手を払って窓の方を向く。早く、終わらないかな…。そんなことを思いながら窓の方を見て貧乏揺すりをしていると。






「あ、そだ。」

翼先輩が何か思い出した声を出す。




「急にどうしたんだ?」

気になって、翼先輩の方を振り向き問う。


「姫さ、もしかしてハーフみたいな男見なかった?」




「え…?」

ハーフみたいな…男?もやもやとある記憶が蘇る。あぁ、あのむかつく野郎ことか。


「見たぜ。でも何で知ってるんだ?」


「やっぱりそうか。近くにアイツのB○Wの車が止まっていたからな」


「BM○!?」


その言葉を聞いて、俺は目を見開きながら驚く。○MWとは、これまた高級車だ。なにそれ、まじ見たかった~!俺、こう見えて車好きである。でもやっぱり、一番好きなのはフ○ラーリ。だって、かっけぇもん。実は小さい頃から、父さんの趣味で車のことを色々教えてもらったことがあって、だから今じゃ、すぐに見分けがつけるくらいまで発達した。しかし、あのハーフ野郎…いや紺野という奴BM○なんて乗りやがって金持ちか?本当、何から何までイライラするな。


「それより姫、何もされてないよね!?」

翼先輩は、慌てたようにバッと俺の肩に手を置く。



「いや、別に何もされてねぇけど…知り合いか?」



ただし、腹立つこと言いやがったけどな。


「なら良かった…。あ、知り合いっていうか…アイツ、俺と同じで生徒会だよ。ちなみに副会長」


「…は?」


目が点になる。



「姫?」


「あーあー聞こえない」



耳を塞いで『あーあー』と叫ぶ。そうだ。俺は、何も聞いてない。


「現実逃避しちゃだめだよ」



「はぁ…」


こうもあっさり、現実に引き戻された。嘘だろ…。アイツ…生徒会だったのかよ!?しかも俺女装姿見られたし!最悪の漢字二文字しか見つからない。まっでも、少しの救いが途中、咲さんがフォローしてくれたことだ。



「姫、落ち込んでる?」


「そりゃあ落ち込むって…」



生徒会だぞ?俺、嫌いだし、なんかややこしくなりそうだからイヤ。


「え、もしかして接近したの!?」



「ただ、ぶつかっただけ」


俺はガクリと肩を落とす。


「でも名前とか教えてないよね?」



「うん。そこは咲さんが助けてくれた」



「そっか。てことは、あっちは姫を女だと思って誤解してるよね…。よし、なら別に問題ないか!」




他人事のように聞こえる翼先輩を殴りたくなる衝動が起きた。とにかく、もう二度と会わなければ済む。もし、学校で俺だと気づかれてバレたら絶対に女装趣味だと勝手に勘違いされるよな…。挙げ句の果てには全校生徒に暴露されて…

ゾクッ。

それは非常に困る!俺は、しばらくの間頭を抱えていた。



―――……。



そんなこんなで車に揺られて数分が経った。


「姫、もう着いたよ」

そして翼先輩が俺の肩をとんとんしてきた。




「え?」


もう、着いたのか?せっかくベンツに乗っているのに全然ノリ気じゃなかった。俺の気持ちはまだ晴れていない。 まぁ、あのハーフ野郎(紺野)に会わないことだけを祈ろう。そう心で頷き、頭の中を整理して、車から降りようとしたら翼先輩に呼び止められた。


「あ、そういえば、姫に俺からのプレゼントがあるんだ」

そう言って何やら、箱を取り出した。



「は?な、なんだ、それ…」


指差しながらそう問うと翼先輩は、嬉しそうにその箱の中から女姓が履きそうなピンクの靴を出した。


「このパンプス可愛いでしょ。姫に絶対似合うと思って選んできた」



「パンプ…ス?」

俺は、聞き覚えのない言葉に首を傾げる。


「ミュールやハイヒールも考えたけど、やっぱり丁度いい高さのパンプスに決めたんだよ~」



『俺、まじ紳士』って聞こえたけど無視した。ま、説明してくれたのはありがたいが何を伝えたいのかわからない。そう、意図が読めないのだ。それに色々と考えてくれたみたいだが



「俺、自分のこのスニーカーでいいや」



悪いが結構ですと言って、断った。だけど、そんなの簡単に通じるはずもなく




「お、おいっ!」


翼先輩は、鼻歌を口ずさみながら俺の靴を外し、靴下までも脱がされてさっきのピンクのパンプスというのを無理やり履かされた。もう、本当勝手だ!!


「うん!ぴったり」



「ぴったりじゃねーよ!何勝手に履かせてんだよ」


俺を息を荒くさせ、ビシッと怒鳴る。しかも、これ女もんだろ。女装もさせて、次はこれか!?バカじゃねぇの!いきなりの出来事に脳を落ち着かせるため、フル回転させる。そのためいつも以上に酸素を必要とするので心臓が激しく動き息が荒くなったりしている。俺、怒ってばっかでこの勢いでは高血圧になりそう。


「なんか、シンデレラみたいだね。ガラスの靴とかも履かせてみたい」


俺の心境とは逆に好奇心で満ちた目をしやがる。


「……」


なんつーかうん、言葉もでない。何言っても無駄みたいだ。俺は、もう諦めて車から、降りた。


「うわっ」

なんだ、これ。歩いてみて気づく。



「っ歩きにくい!」

バランスをとるのに難しい。


 

「姫大丈夫…?でも結構、身長詐欺れるでしょ」

 
「嫌みか!余計なお世話…って、おっと」



「おっ危ない。あ、ヒールのおかげでぴったり俺の胸に閉じ込められるね」


待て待て。助けるふりして、さりげなく抱きつくな。とにかく、抱き着いてる腕を振りほどく。


「うぜぇ。てか、さっきから気になってたんだけど、お前のその格好なに?」


今さらだけど聞いてみた。




「え、なになに?俺に興味津々って感じ?気になるの?知りたい?」



「そこまで言うなら知りたくもない。」


ムカついたので聞くのをやめる。






「仕方ないな」


「結局言うのかよ」

もう、こいつの性格苦手だ。はぁ、とため息を吐いてると




「まぁ、詳しくは店の中で。さぁ、店へどうぞ!!ご案内します~」


とそう言われて俺は、目の前にキラキラ豪華に建っている建物の中へと背中を押された。そして無理矢理店内へ。


「そ、そんな押すなって!」


逃げはしないんだから。転びそうになりながらも店の中へ入って行く。ここがイチゴケーキのあるホストクラブという所か…。到底、ありそうには見えないが、反対に怪しすぎる匂いがぷんぷんしてくる。

なんか、…大丈夫か?俺。


―――
――――
―――――




不安なままホストクラブに入ると店内の入り口付近には、目立つところに翼先輩の写真が大きく飾られていた。うわ。なんか、やべぇな。その横にも他の男の写真とか飾られてある。…あれ?俺は、ふと一つの写真の前で立ち止まる。



「姫、どうかしたの?」


翼先輩は、急に足を止めた俺に不思議そうに聞いてきた。翼先輩の写真の横にある写真に写ってるのって…淳兄…?嫌な予感がゾワッとつま先から上がってくる。この写真に写ってる人物は間違えなく淳兄だ。



「なぁ、もしかしてこの人、蒼野 淳って言わねぇか?」


念のため確認をとる。



「え?何で知ってんの!?」


翼先輩は、俺の言葉に驚いた顔をする。…つまり、本当というわけか。




「淳兄は、俺の親戚だ。」


突然かもしれないが俺がそう告げると翼先輩は、ポカンと口を開けて放心状態。淳兄は、俺が小さい時からいつも一緒に遊んでくれて頼れる兄ちゃん。だけど、ある日俺が大悟と遊んでるのを見てめっちゃ怒っていた記憶しか残ってない。怖い兄ちゃんでもある。


「姫の親戚なの!?」

翼先輩は、我に返ったのか少し遅れて反応した。




「うん、そうだよ」

あっ、もしかして、淳兄は、カッコいいから本当に血の繋がりがあるか疑ってんのか?べ、別に気にしてないし。



「そうなんだ、驚いたよ。でも蒼野さんは、俺の次に人気だよ?俺の方がNo.1なの。そこ覚えといてね!」


何を競ってんだ。



「俺、早くイチゴケーキ食べて帰る」



淳兄に怒られるのは、本当勘弁。だから早く用事を済ませて大悟のところにも行かないといけない。つか、なんで淳兄は、こんなとこで働いてんだ?


「よし、気をとり直して店内へどうぞ」

疑問を持ちながらも奥まで誘導された。





「いらっしゃいませ~」



店内に入ると、明るい声が飛び交う。そして、翼先輩同様でスーツをかっこよく気崩した男の人、数人がお出迎えしてきた。うわ、なんなんだ。しかし、店内は薄暗く、置いてあるものが全てがゴージャスさを漂わせていく。



「あれ?翼じゃん。遅刻かよ」



一人の男が翼先輩に話しかける。



「悪い悪い。ちょっとね」


翼先輩は、笑いながら謝っている。



「ん?あれ、そこの可愛い子ちゃん誰!?紹介してよ」


「もしかして彼女?」


「小動物みたい…」




チラチラこちらを見ながら次々と翼先輩に質問攻めしてくる男たち。翼先輩は、それに対して『秘密~』とか言っていた。俺は、初めてのことでキョロキョロと周りを見渡す。待って、マジお客さん全員女しかいないじゃん。てか、何で俺…女装しているんだっけ。あ、そっか。これも全部イチゴケーキのために我慢しているんだ。




この時、俺はイチゴケーキに現を抜かしていて狂気な目でこちらを見ている黒い影に気づかなかった。




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