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◆女装してアイドル始めました。
しおりを挟む主人公受け(女装アイドル)
咲野初汰
攻め
霜崎桔平
幼なじみの女の子
橋本キユア
◇◇◇
最近、話題の女子高校生アイドルデュエット『ウイキュア』。SNSから始まって今じゃアイドルデビューを果たし、人気が出てきている。幼なじみの橋本キユアから『バズりたいから一緒にアイドルやろう』と誘われたのがきっかけ。キユアは明るくて流行りものが大好きな今どきの可愛い女の子。
最初、アイドルやらないかと言われた時はなぜ俺と?と思った。そしたら『私よりモテる女は嫌いなのよね。だから男であるウイにしか頼めなくて』とストレートにそう言われた。キユアは素直というか何というか。女装させられそうになったのでもちろん、最初は断った。
でもなんで結局今、女装してアイドルをやってるかって?
それは、『ふぅ~ん。そんなこと言うんだぁ?じゃあ、あのこと言っちゃうからね』や『あと私にいくら貸しがあると思ってんの?』とキユアに脅され、何も言えなくなった俺は強制的に女装してアイドル始めました。
ちなみに俺の名前は、咲野初汰。みんなからはウイと呼ばれている。キユアと二人で、名前をもとに『ウイキュア』と単純な名前でアイドル活動するようになった。
「みんな~元気?キユアだよ」
「ウイです」
「「二人でウイキュア!!」」
そんな感じで某番組に出たり、ライブしたりと引っ張りだこ。
「今日も疲れた~。ファンのみんな最高だった~」
ライブが終わった後、キユアは控え室に入るなり、倒れるようにソファにダイブした。
「キユア。俺、男だってバレないか毎日怖い」
「何言ってるの。大丈夫よ。絶対バレないから」
何を根拠にと思う。俺は、SNSくらいならまぁいいかと思っていたがこんなに人気になるなんて想像していなかった。
「バレたら生きていける自信ない」
だってみんなを騙しているから、バレたら地獄だ。『お金返せ』とか言われ、裁判になっているのを簡単に想像ができてしまう。
「大丈夫だって、ウイなら。それにバレたらバレたで面白そうじゃない」
と悪戯な笑みを浮かべるキユア。他人事だよな、もう。昔から俺はキユアに敵わない。ライブや番組に出たりと忙しかったが、握手会はこれがまた大変だった。
「キユアちゃん!大好きです!!」
キユアは女の子ファンが多く、俺はと言うと
「ウイちゃんはぁはぁ今日も可愛いね。」
「ウイちゃんおうちどこ?今度あそびに行ってもいい?」
変態の男ファンしかいない。
その中でも一番やばいのが
「ウイちゃん会いたかった!!!!俺と結婚してください!!」
手を握る力が相変わらず強い。
「は、はは…ありがとう!」
「俺、ウイちゃんのために毎日生きているもんだよ。そういえば俺の手紙読んでくれた?」
「え、っと…」
あの手紙ね…。ゾッと鳥肌が立つ。呪いの手紙かって思うぐらいやばかったあの手紙ね。丁度良いタイミングで『はーい、時間でーす』とスタッフの声と共に強制的に終了となり、助かった。
実はさっきの男のことを俺は知っている。
霜崎桔平。
実は同じクラスの同級生だ。霜崎は学校ではクールで、みんなから人気のかなりのイケメン。学校の時とギャップが違い過ぎて驚いた。いや驚きを超えて、気持ち悪い。最初握手会に来た時は『嘘だろ、もうバレた』と思い、死を覚悟した。まぁ、テレビで露出しても周りにバレないくらいだから、霜崎も俺だってわからなかったみたいだけど。
霜崎とはクラスは同じだが関わりがないし、もしバレたら学校で気まずい。でも霜崎のこのギャップは申し訳ないが気持ち悪い。ファンになってくれてありがたいが、ファンレターの内容がやばい。しかもプレゼントも毎回くれて、それが高級な物ばかり。もらうのが申し訳ない気持ちになるし、キユアから『愛されているじゃん!もらっときな』なんて言われ、断れない。
そして、無事握手会が終わって、控え室に行くと、ファンの子からの頂き物が置かれていた。
「あ!この香水欲しかったやつ!!なかなか手に入らないんだよね!」
キユアは嬉しそうにはしゃぐ。
「てか!ウイのファンの子、相変わらず、高級ブランドばっか寄越すじゃん!羨ましい!!!貢がれてる!!」
「興味ないし、どれも女の子ものじゃん。ゲームならいいけど…」
「贅沢なこと言わないの!じゃあ、いらないのは私がもらうね」
と、ほとんど使わないものはキユアに渡している。
「あ、そうだ!今日もイケメンの彼、来ていたわね!」
「あぁ…、そうだね」
「なんで、そんな嫌そうな顔しているの?いいじゃない」
「よくないよ。クラス一緒だし。そもそも学校の時と全然性格違うし怖い」
キユアとは違う学校に通っているため、もちろん霜崎のことは知らない。
「誰だってプライベートでは性格変わるもんでしょ。大目に見てあげなさい」
「そうかもしれないけど…」
仕方ないことだよな。霜崎は悪くない。騙している俺が悪いんだから。
毎日、アイドルの仕事が忙しくて、そんなこんなで本業の勉強をしていなかったせいか学校で居残ることになった。
「まさか全教科赤点とは…」
先週やったテストの結果を突き付けられた。元々頭は良くない方だったが今まで赤点はとったことなかった。ちなみに今回のテストでも一番良かったのは霜崎だったみたいだった。前も100点とかとってた気がする。嘘だろって感じだ。毎回俺たちのライブには欠かさずいるし、たまに地方行った時も毎回いる。いつ勉強してんだよ。逆に怖い。
ま、現実逃避はここまでとして。今、教室でその霜崎と机が向かい合わせで二人きりの状況だ。さっき担任が赤点とった俺の勉強相手に霜崎に頼んだみたいだった。霜崎も嫌なら嫌って言えばいいのに断らなかったため、俺が今更『無理ですごめんなさい』の拒否権はないということになっている。
「し、霜崎?ご、ごめんな…こんなことに付き合わせちゃって。嫌なら言っていいよ?」
「…別に嫌じゃない。この後予定なかったから気にしなくていいから。で、どこがわかんない?」
「あ、ありがとう。えっと、…ここが意味わかんなくて」
それから霜崎にわかりやすく教えてもらった。
「…本当にすごい。先生が教えるよりわかりやすかった。ありがとう、霜崎」
「…別にそんなことない。ねぇ、咲野」
「なに?」
「教えた代わりに、なんで女装してアイドルやってんのか教えて?」
「え…?」
今、なんて言った?
「咲野…じゃなくてウイちゃん」
「お、おま、知ってて…?」
「その様子じゃ、バレていないとでも思っていたんだ。ウイちゃんは可愛いな」
「な、何で最初に言わなかったんだよ」
お、落ち着け自分。こういう時、冷静になるのが一番だ。
「バレたくないみたいな顔していたからだよ。でも、俺本気でウイちゃんのこと好きなんだよね」
俺の手を恭しく握り、手の甲にキスを落とした。うわ…。男にそんなことしてもらっても気持ち悪いだけ。
「じょ、女装した俺が好きってこと?でも…俺だって気づいていたのになんで」
だっておかしいじゃないか。俺だって知っていたら幻滅するだろ。面白がっているなら、ライブに毎回来る必要なくないか?しかも高級ブランドのものとかプレゼントしなくても。あの気持ち悪い手紙は俺の嫌がらせで書いていたのか?もうよくわからない。
「俺はね、アイドルになる前からウイちゃんのこと好きだよ。急に好きな人が女装してアイドルになるからびっくりした」
「は…?」
「てことで、バラさないから俺と付き合ってよ、ウイちゃん」
「やだ。お前おかしい」
握られていた手をはたく。
いやいや本当におかしいよ。
「つれないね。でもこんなに近づける距離にウイちゃんがいると自制が効かないかも。アイドルのままだったら遠い存在だからまだ抑えられたけど。…ごめんね?」
最後謝っているわりには、ニヤと嫌な笑みを浮かべていた。
その後は、悲惨だった。
『人気アイドルのウイキュアのウイが体調不良により芸能人引退。早すぎるとの声が殺到しており……』
テレビから流れる自分のこと。
アイドルを始めたのは半ば無理矢理だったけど、意外と楽しかったあの場所。もうそこには戻れない。
「初汰…っ、そっち向かないでこっちに集中して」
無理矢理、霜崎の方を向かされた。
「…んぁっ、や、だ」
「俺だけの初汰。みんなにはもう触れさせない。俺だけのアイドル」
激しく揺さぶれる身体。強すぎる快感のせいで身体と頭がおかしくなった。
【完】
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