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◆独占欲
しおりを挟む俺様生徒会長受け
廣川虎太郎
不良系風紀委員長攻め
檜原渓
◇◇◇
俺様は、小さい頃から何不自由なく過ごしてきた。
私立兼餅学園はその名の通り、金持ちのお坊ちゃんたちが通う学校だ。この学園の卒業生には将来日本を背負う職業についたりと偉い人間が多い。
そんな学園の生徒会長は務めている俺様は、廣川虎太郎。古風的な名前だが気に入っている。
ちなみに俺様の家も金持ちだ。そして、この美貌を兼ね備え無敵な存在である。
いつものように放課後は、生徒会室で一人資料を確認していたら、コンコンとドアがノックされた。
まぁ、この時間に来るのはアイツにだな。
「虎、提出する資料は揃ったか?」
「虎って呼ぶな。会長と呼べ」
入ってきたのは想像通りの檜原渓。こいつは風紀委員長を務めているが見た目が不良過ぎて本当に風紀委員長か?と疑う。
耳には何個かピアスをしていて、髪なんて赤髪に染めてやがる。上には地毛で通っているらしい。
「虎は虎だろ?二人きりだし別にいいだろ」
「よくねぇよ。ここは学校だしやめろ」
どこの誰が聞いているかわからない。
ちなみに俺らは恋人同士である。もちろん、みんなには内緒で付き合っているのだ。
「俺は学校でもお前とイチャイチャしたい」
「俺様は無理だ。ほらこれ提出物。用が済んだらあっち行け、仕事の邪魔だ」
「チッ、つられないな。……あとで覚えてろよ」
その言葉だけ残し帰っていった。
やばいな…ちょっと優しく言えば良かったかもと後悔しても遅かった。
「…っ、く、や、め…っんぁ」
「俺に構ってくれなかった罰」
「…し、仕方ない…だろっ、んン」
その夜、帰宅途中の俺を半ば無理やり拉致して渓の家に連れ込まれた。
そして、額、瞼、頬、唇、首、胸といった順番にキスを落とすも首辺りからはキスというよりも噛みつかれた。
事を終えた後、鏡を見ると、首筋にくっきり見える位置にキスマークがあった。
最悪だ。
「見えるところは痕が残るからやめろって言ってるだろ!」
「お前は俺のもんだし、関係ないだろ。それに噛まれて感じていたのは虎じゃん」
「…そ、それは…!お前がしつこいから」
「はぁ虎は怒っている姿も可愛いね」
もう変態には付き合ってられない!
その日から痕が消えるまで、首元にマフラーをまわして過ごした。夏なのに。
「ねぇ~会長。なんで夏なのにマフラー?」
「ファッションだ。喋ってないで仕事しろ」
同じ生徒会の会計の小野坂朝夜にそう突っ込まれたがうまくかわした。
生徒会室には今、会長の俺様とこいつしかいない。
「ファッションって会長可愛い~!」
「だから喋るな。口塞ぐぞ」
「会長になら口塞がれたーい」
と、何やらキス待ちをする小野坂。
気持ち悪いな。
ここはスルーが一番と思い、やりかけの資料にサインをしようとした時だった。
「すきあり」
奴のその声と共に、唇にキスされた。
は?
「おい。てめぇふざけんなよ」
すぐ触れた唇を袖で拭った。
「会長が可愛いから悪いんじゃん!」
俺様のせいにするな!被害者だ。
こんなところをアイツに見られたりでもしたら俺様は終わりだ。
と、思った矢先。
「虎。あれはどういうことかな?」
その日の夜。
どこから見ていたのかわからないがすぐにバレた。
「あれは勝手にあっちからやってきたんだ。俺様は何もしていない。誤解だ」
「でも虎が唆したんだろ?こんな可愛い顔してさ」
「唆すってなんだよ。つか、俺様は可愛くねぇよ。かっこいいんだよ馬鹿」
「これだから…」
ため息混じりにそう言う渓。
不良なのは見た目だけじゃなくて、性格も鬼怖いから怒らせたくないんだよな。
「怒らないでくれ…。お、俺様がその…好きなのは…」
途中で言ってて、ハッとなった。
うわ、何言ってんだ。
恥ずかしさが襲う。
「なに?」
俺様の反応を見てか、奴はわざとらしくニタリと笑った。
「う、うるせぇな。何でもない」
ソファの上に置いてあったクッションを抱きしめ、奴から視線を逸らした。
すると、面白がって俺の横に座り、後ろから抱きついてきた。
「ふふ、わかっているよ。虎は俺のこと大好きだもんな」
「もうお前黙れ」
抱きしめていたクッションを奴の顔面に押し付けた。
「酷いな。でも他の奴に触れたのが許せない」
「んンっ」
ゆっくりと渓の唇が俺と重なった。
「マフラーなんかで隠すなよ。お前は俺のなんだから」
【檜原渓side】
俺の恋人は凄く可愛い。
一人称が俺様って可愛すぎでしょ。
はぁ…閉じ込めたいな。そしたら絶対虎怒るし…できない。
周りは敵だらけ。
俺が不安で心配になる。
生徒会室に秘密でカメラを設置していていつも監視している。
許せない、許せない、許せない。
俺の虎にキスしやがって。
殺したい。
虎は気付いてないだろうけど、無意識に人を虜にしていく。
近寄り難いという生徒会長って立場っていうのに、誰が近づいても警戒心ないとこが問題。
俺がどんだけアピールして、やっとのことで落としたのか絶対知らないだろうな。
「虎…っ、虎…とら、とら」
俺の横で眠る虎を抱きしめて名前を呼んだ。
俺でいっぱいになって。
俺がいないと生きれなくなって。
俺だけを考えて。
虎のことになると独占欲が強くなる。
虎は俺が大好き。
俺も虎が大好き。
虎と釣り合うのは俺だけ。
誰も入る隙間なんてない。
それを邪魔してくる奴は消せばいい。
これからもずっと、
絶対離さないし逃さない。
【完】
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