12 / 42
◆貧乏少年の苦悩
しおりを挟む貧乏受け
神山悠馬
変態攻め
大岩智希
◇◇◇
神山悠馬。
19歳。大学一年生。
現在の所持金なんと204円。
いくら数えても204円なのだ。
この金額はさすがにやばい。
俺は生まれながらの貧乏一家に育った。
兄弟は俺を合わせて5人いる。
その兄弟の中でも一番上である俺は今まで我慢して育ち、家から一刻も早く抜け出したくて家から離れた大学を選び一人暮らしを決めた。
もちろん、
お金がないので奨学金を借りている。
しかし、奨学金は学費と家賃を払うための金額しか借りてないのでむやみに触らない。
なので
生活費は働いて稼がないといけないのだ。
…それなのに今の俺はなんだ?バイトなんてしていない。
「お腹すいた…」
講義が終わって机に顔をつける。
昨日から何も食べていない。
このままでは身が持たない。
そう思った矢先、嫌な気配がした。
「やっほ。悠馬」
うつぶせになっている状態の俺の背後から
誰かが抱きしめた。
…面倒くさいのがきた。
「悠馬…っいい匂い」
「…ぁっ、や、やめろ!」
体を起こし訴える。
なんだ、こいつ!人の、ち、乳首触りやがって!
「もしかして、感じた?」
ふざけるな。その笑みむかつく。こいつはいつも俺を触ってくる。
「離れろ!よるな」
俺がそう言ってるのにも関わらず、ぐいぐい寄ってくる話の通じないアホ。
「悠馬、元気ないね大丈夫?」
「この状態みて大丈夫なわけないだろ」
この男の名前は大岩智希。
見ての通り変態だ。
ちなみに俺と違ってお金持ちらしい。
容姿はむかつくほどの美形だ。
俺たちの出会いは
まあ…思い出したくないな。
いいから金持ち、俺にお金を恵んでくれ。
なんて、心の中で叫んでも当たり前に通じるわけもなく。
「はぁ…。バイト、なんでかしんねーけどいつもクビになる」
どうしてかな…。
俺何も悪いことしてないよな?
「悠馬が俺のこと見ないからクビになるんじゃない?」
「馬鹿か!そんなことあってたまるか。1週間もしないうちにクビとか意味わかんねぇ…」
「…へぇ、それは災難だったね」
他人事みたいに言うこいつがむかつく。
まあ、ほんとに他人事だけどむかつく。
「おかげで俺は生活もギリギリのところきてるし…。はぁ、これじゃあ実家にいる時とあんまかわんねぇ」
「何なら俺の家に来なよ」
嫌味か。
「もう放っておけ」
「ふふ、俺が悠馬を放っておけるわけないでしょ」
そう言いながら、俺のお尻を揉み揉みする。
「あの、さりげなく…いや堂々と人のケツ触んないでくれますか?」
「えー、やだよ」
こいつみたいな金持ちはやっぱり嫌いだよ。特に生まれながらの金持ち。
きっと貧乏人の気持ちなんてわからないだろうな。
いまだに人のお尻を揉むこいつを無視して、
寝る体勢にはいる。
「また、バイト探さないとなー…」
今度こそ、すぐクビにしないところを。
このままじゃ俺死ぬ!
「よかったら、バイト紹介しよっか」
「へっ」
大岩の一言に俺はバッと体を起こす。
これは藁にもすがる思いだ。
大岩は信用なんねぇけど、こいつは金持ちだ。きっと優遇があるバイトを紹介してくれるはずだ。
「しょ、紹介してくれんの」
「うん、もちろん。悠馬のためだったら何だってするよ俺は」
「た、頼む。ありがとう大岩!」
ぎゅっと感謝の気待ちを込めて普段なら嫌だけどこいつを抱きしめた。
「悠馬…っ!」
するとすぐに抱きしめ返され、すぐに手を解きたかったけど仕方なく、これもバイトのためだと思いながら抵抗をやめた。
まさか、こいつのこと神に見える日がくるなんてな。
まあ、今だけだ今だけ。
俺にはお金を借りる友人もいない。
まあ、いても借りないけど。
大岩みたいなやつがいつも俺の周りをうろちょろしているから誰も俺に話しかけるやつはいなかった。
本当、いい迷惑野郎だと思っていたが案外、役に立つやつであることがわかった。
「悠馬、今お腹空いてるでしょ」
「そりゃあ、もう…かなり」
「じゃあ、俺のこのパン食べていいよ」
「っんむ」
無理やり口の中に押し込まれたパン。
「えろっ…」
大岩が何考えてんだか知りたくないけど
命拾いした。
携帯のカメラ機能でカシャカシャと俺を撮影していたけど今の俺はそんなこと気にしていられない。
…この野郎!なんていいません
これ、美味しい。
「大岩、パンさんきゅーな」
「どういたしまして。じゃあ、バイトの件は明日連絡するね」
「おう」
手を振って、大岩の背中が遠くなっていくのを見送った。
…が。教室から出る前に振り返ってまた俺のところに戻ってきた。
「悠馬…っ、俺、キスしたい」
「黙れ年中発情期」
残念なイケメンだ。
───
─────
───────
……。
えー、日付は変わり次の日になりました。
ちょっといいか。
「おい、大岩どういうことだ」
「さぁ、あがって」
俺は今すごい豪邸にいる。
…ま、待て。
確かにバイトは引き受けるとは言った。
「おい。もう一度聞く。どういうことだ」
「見てわかんない?悠馬はこれからずっと俺だけの世話係」
「そんなの知るか!!お前、俺をバカにしてるのか」
殴る勢いで拳を作る。
こっちは、真剣に!真面目に!
バイト探してんだ!
それを何だって?
お前の世話係だと?
ふざけるな。
これほど屈辱的なことあるか。
やっぱり、こいつに頼った俺が一番のバカであったことを胸に刻み込む。
「もういい。冗談言って面白がる奴と一緒に居たくねぇ。もうお前なんか嫌いだ!俺に二度と近づくなっ!」
そう怒鳴ってくるっと来た道を戻る。
すると、
ガシッー
腕をすぐに掴まれる。
「ちょっと悠馬。待って」
「嫌だ!はなせ!!俺は怒ってんだ」
「俺が言っていることは冗談なんかじゃない。本気なんだ。悠馬のことになると俺はいつでも本気。お願い、俺から離れないで」
「本気だと?世話係がか」
今さら言い訳しても遅い。
もうこいつと二度と顔を合わせたくないし、喋りたくもない。
わざわざこいつの家に来るためにバス代で160円使ってしまった。
くそ!!
コンビニでおにぎり買えたのに。
「そうだよ。俺は隣に悠馬がいてくれて俺の世話をしてくれるだけで本当にいいんだ。昨日、嬉しそうな悠馬を見て俺まで嬉しくなって…。まさか、悠馬がこんなに怒るなんて考えてなくて…」
「大岩は本当にバカだ!俺はてめぇの世話係なんてしねぇよ。友人からお金なんて俺はとらない」
そう言って、奴の手を振り払った。
「っ!ゆ、悠馬…待って」
「じゃあな」
俺は奴の声を無視して歩き出す。
「待って…待ってって言ってるじゃん!!!!」
ドシンッ!
後ろから勢いよく床へと倒された。
「~っ、イッテェ!何すんだ…てめ…っんん」
口を奴の手で塞がれた。
「悠馬、悠馬悠馬悠馬悠馬悠馬。お願い、行かないで。俺を嫌いなんて言わないで。悠馬は友人からお金がとれないって言っていたけど…じゃあ、俺たち付き合おう?恋人同士だったらいいでしょ。ふふ、嬉しいな悠馬と恋人なんて」
「…っ、意味わかんねっ、」
何でそうなるんだよ。こいつ頭大丈夫か
「なんで?時給高いよ。俺が悠馬を養ってあげる」
いい物件でしょ、と笑うこいつの顔面をめがけて殴ってやりたい。
「っ、だ、黙れ!」
「…逃がさないよ」
ぞくりと全身に鳥肌が立つ。
俺は初めてこいつに恐怖を抱いた。
これは危ない。
「お、大岩…?」
もう俺が知っている大岩ではなかった。
───
─────
───────
『ニュースが入りました。○月△日、○×地区に住んでいる神山悠馬さん(19)が行方不明となって2週間が経ちました。未だ足取りは掴めずーーー…』
「……っん、はぁ…やめて…大岩っ」
「…ったまんない悠馬好き愛してる俺だけの悠馬、可愛い…ちゅっ」
「…んんっふ、あ、」
奴は腰を振り、止まることを知らない。
もう何回、イッたかわからない…っ、
「悠馬の中、気持ちいいっ、俺の子、孕まないかな」
「ぁ、…んぁ!や、やめ…」
「俺、またイく!悠馬…んっ!」
またこいつは俺の中で欲を出した。
しかも生で。
何回も、何回も…。
「悠馬、ちゅっ」
キスを口以外にも体を全身に落としていく。
「か、えりたいっ…」
涙が溢れでてくる。
「悠馬泣いてるの?可愛い。それに悠馬の家はここでしょ。ふふ、面白いこと言うね」
「大岩、俺、お前に酷いこと言ったのは謝るからお願いここから出して」
「謝らなくてもいいよ。俺は悠馬のそういうところも全部含めて大好きだから。………もう帰る場所なんてないよ、ここ以外」
「…やだ。帰して、お願い」
「ごめんね。いくら悠馬のお願いでも俺にもできることできないことがあるんだ」
ごめんね、と言って俺の頬に手を当て撫でる。
「悠馬、俺が一生君を大切にする」
だから、悠馬も約束してね?
と俺の薬指にキスを落とした。
どこから間違った?
こいつにバイト話した時…?
いや、違う。
こいつと出会ってしまったところから全部、狂い始めたんだ。
「悠馬、愛してるよ」
“助けて”
もう俺の声は誰にも届かない。
【完】
21
お気に入りに追加
685
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
幼馴染は俺のかみさま
八
BL
主人公と一緒にいること意外全部どうでもいいと思っている無口無愛想幼馴染の世話を焼いてばかりの主人公くんだがしっかり幼馴染に依存して崇拝しているお話し。
◻︎執着無口幼馴染と世話焼き主人公くん
R15は保険です。
「食欲と快楽に流される僕が毎夜幼馴染くんによしよし甘やかされる」と同一世界ですが単品でお読みいただけます。
pixivにも投稿しています。
嫌われ者の僕
みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈学園イチの嫌われ者が総愛される話。嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。
※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。改行多めで読みにくいかもです。
BLゲーに転生!!やったーーー!しかし......
∞輪廻∞
BL
BLゲーの悪役に転生した!!!よっしゃーーーー!!!やったーーー!! けど、、なんで、、、
ヒロイン含めてなんで攻略対象達から俺、好かれてるんだ?!?
ヒロイン!!
通常ルートに戻れ!!!
ちゃんとヒロインもヒロイン(?)しろーー!!!
攻略対象も!
ヒロインに行っとけ!!!
俺は、観セ(ゴホッ!!ゴホッ!ゴホゴホッ!!
俺はエロのスチルを見てグフグフ言うのが好きなんだよぉーー!!!( ̄^ ̄゜)
誰かーーー!!へるぷみぃー!!!
この、悪役令息
無自覚・天然!!
周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)
ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに
ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子
天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。
可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている
天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。
水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。
イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする
好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた
自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い
そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語
BL漫画の世界に転生しちゃったらお邪魔虫役でした
かゆ
BL
授業中ぼーっとしていた時に、急に今いる世界が前世で弟がハマっていたBL漫画の世界であることに気付いてしまった!
BLなんて嫌だぁぁ!
...まぁでも、必要以上に主人公達と関わらなければ大丈夫かな
「ボソッ...こいつは要らないのに....」
えぇ?! 主人公くん、なんでそんなに俺を嫌うの?!
-----------------
*R18っぽいR18要素は多分ないです!
忙しくて更新がなかなかできませんが、構想はあるので完結させたいと思っております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる