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◆ヒーローはお断り。
しおりを挟む敵役受け
まひろ
ヒーロー攻め
赤井
◇◇◇
世の中には、みんなから慕われるヒーローという正義の味方がいる。僕はヒーローなんて、いい顔して本当は悪い奴らだと思っている。外面だけいいだけ。
今は法律が変わって、ヒーローも悪者たちも皆仲良くという掟が作られた。僕はそれに納得がいってない。
何が、仲良くだ。
何が、平和で自由な世界だ。
…笑える。
「おい。インチキまひろくん」
「はは、そんなこといったら殺されちゃうかもよ」
と僕に向かって笑いだす。
差別なく、皆一緒にということで、『ピース学園』という変てこな学校がつくられた。そこには、ヒーローの子、またはその素質がある奴、悪者の子、一般民などの生徒たちがいる。僕の親は悪者だと言われてみんなから恐れられていて、そんな親の子である僕はもちろん皆からこの通り嫌われている。僕は生まれて17年、一度も友達はできたことがない。同じ悪者が学校にいるならできるって僕も最初の頃は思っていたよ。
だけど、僕の親は、僕の遺伝子を少しだけいじってしまった。それは決してやってはいけないタブー。そのせいで、僕はのけ者扱い。人間としてみてくれない。そもそも親は悪者の中でも下っ端くらいにしかすぎないだろう。別にタブーをおかしたくらいで捕まらない。ただみんなからの差別があるくらい。
いいんだ、もうこんなの慣れてるし。
別に親を恨んでいない。むしろ、大好きな家族だ。遺伝子をいじったせいか僕は運動神経も頭脳もずば抜けていた。逆に感謝だよ。そう考えて生きることにした。
「なぁ、赤井。」
「ん、なに」
「今日もまひろくんいじめる?」
赤井と呼ばれた男はニッと笑って、
「そのつもり」
と、不敵な笑みを浮かべた。
赤井と呼ばれる男の親はとてつもなく強いヒーローで誰もが憧れていた。そんな親からの血を受け継いだ赤井は純血の強い人間。僕は偽者の強い人間で、すべてが真逆。
「まひろ、ちょっと来い」
偉そうに足音を立てて僕に近づいてきたのは、赤井。
「やだね」
ケンカとかもちろん互角だ。僕も黙って殴られたくないからね。毎日そんなことやってなにが楽しいの。意味が分からない。できれば、赤井とは関わりたくない。
「チッ」
僕は断ったはずなのに、無理やり引きずられて屋上に連れて来られた。
「まひろ、好きだ」
「はっ、やめてよ。きもいから」
あぁ、今日はそうきたか。赤井が考えていることはよくわからない。俺を殴る日もあればこうやって好き好き言ってくる日もある。
「小さい頃からお前のことが好きなんだ」
「は?じゃあ何で殴るの?」
「だって、まひろが俺のことみてくれないし」
「そういうの困るから、じゃあ僕は教室に戻るね」
「待てよ!俺、本当にお前に惚れているんだよ。俺だけのものにしたいし、独り占めしたいんだ」
うわっ。よく冗談でもそんな気持ち悪いセリフが吐けるな。これ以上付き合ってらんね。
「いい?僕は悪者。お前はヒーロー。生まれた時から住む世界が違うんだよ」
「そんなの関係ないよ」
もうだめだ、勝手に戻ろう。僕は体の向きを変えて、扉を目指す。
ドンッ!
「っ」
油断していた僕は背後から、何やら堅いもので殴られそのまま気を失ってしまった。
「俺を見ないまひろが悪いんだよ…?」
最後にそんな声が聞こえた。
そして、僕はその日を境に監禁された。
もうどっちが悪役だかわからない。
【赤井Side】
まひろとは小さい頃からの付き合い。 とにかく、まひろは小さい頃からTHE美少年というほど美しく、性格もひねくれて見えるが実はホラーものが怖いとてもかわいい奴。それは俺だけが知っている。
もう我慢の限界。
気を失った、まひろの頬をなでる。
やっと手に入れた。
「俺たち、小さい頃からずっと一緒だよね。まひろは皆から嫌われて、俺は皆から愛された。そんなまひろを愛しているのは俺だけ。いや、俺しかまひろを愛しちゃいけない」
こんな無防備に寝っちゃってさ…、ひっそりと、まひろくん大好き同好会があるだなんて知らないだろうなぁ…。
まひろはもう俺の手の中。たまんない。誰に渡すものか。一生友達なんか作らさせないし、誰にも触れさせない。…そんなの俺が許すわけないだろ?
俺はまひろにとってはヒーローにも悪役にもなれる特別な存在で、唯一の理解者。
「…愛してるよ、まひろ」
これから俺たちの愛をここで育んでいこうね。
そして、眠っている横顔にキスを落とした。
【完】
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