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しおりを挟む「そうだ。いいこと思いついた」
「いいことって?」
「もし今度、リアム様と話す機会があった時にさ、お菓子を作ってあげたらどうかな?」
マリーはお菓子作りや料理が上手でとても美味しい。男を落とすにはまず胃袋からって誰かが言っていた。
「いやよ」
「え?そ、そっか…」
まさか、断られるとは思ってもいなかったからびっくりした。でもどうしてだ?とても上手なのに…。
「あ、えっと、その違うの!あれよ、あれ!もっと上手になってからあげたいの!!もうアレンは女心をわかってないわね!」
「なんだ、そうだったのか」
なるほど、理解した。マリーは今でも美味しいのにさらに上手になってからだとはプロだな。絶対今の料理の実力でも大丈夫だと思うけどマリーが言うのなら仕方がない。
「あ、そうだ。オリバーとも話したよ。びっくりしていた」
もう無視しなくてもいいとマリーから言われたので早速話したことを伝えた。
「そ、そうなのね。今まで無視してたから驚くわよね」
「うん。絶対怒ってると思ったんだけど、優しくされちゃってつい泣いてしまったんだ…今思い出すだけで恥ずかしい…」
「ア、アレン泣いたの!?」
マリーが目を見開き心配そうな表情を浮かべる。
「大丈夫だよ。人の優しさに泣いてしまっただけだから。オリバーは本当優しいしマリーが好きになるだけあると思ったよ」
俺なんかボコボコにされてもいいくらいなのに優しくされたら泣いちゃうって誰でも。
「ごめんなさい、私、悪いことした。…それほど優しいアレンに無理をさせてしまっていただなんて」
「え!?マリー!?なんでマリーが泣くの!?」
マリーの頬からぽろぽろと涙が溢れ落ちる。
「私があんなわがまま言ってなかったら、こうならなかった…アレンが悲しまず泣かせずに済んだのに…っ」
「マ、マリー泣かないで!俺が全部決めたことだ!!マリーが謝る必要ないよ!泣いたのだって勝手に泣いただけだし」
優しくて嬉しくて泣いただけだから!
マリーは自分のせいだと思って俺のために泣いてくれている。
「アレンが一番大事なのに…。傷付けることしてごめんなさい」
「俺もマリーが一番だ!傷付いてないから…ほらマリー泣かないで」
「…アレンっ」
よしよしと泣き止むまで頭を撫でた。
マリーは俺が泣くってだけで怖いんだな。それほど俺を想ってくれて嬉しい。
マリーは俺を優先にしてしまうところがあるし、気になるあの四人よりきっと俺を真っ先に選んでしまって自分の恋路が上手く進まないかもしれない。
それについ最近俺たちはこの学園に来たばかり。
マリーは俺以外…いや違うな。俺と幼なじみのハリー以外の同じ年代とこうやって長く関わるのも初めてだ。ずっと家で大事にされて育ってきた。人間関係とか、いろいろ不安になるのは当たり前。
俺が誰かと仲良くなって一人になってしまうのが無意識に怖いと思っているかもしれない。
この学園は人が多い。人との付き合いなんて俺と二人で少しずつ慣れていけばいい。
一度しかない人生、楽しく学園生活を送りたい。
「マリー、落ち着いた?」
「うん…ありがと」
「そう言えばね、オリバーもマリーと今度一緒に遊びたいって言っていたよ」
マリーは一人なんかじゃない。
「そうなのね、嬉しいっ」
可愛い笑顔を見せてくれた。
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