悪役令嬢の双子の兄

27

「あ、マリー。ちょうどよかった。一緒に帰ろう」


俺は何事もなかったかのように、ここから早く立ち去りたかったためマリーの背中を押そうとするが、マリーは不審に思い前へ進もうとしなかった。

で、ですよね～。


「待って。なんで二人が一緒にいるの？しかも二人で顔を見つめ合ったと思ったら、アレンが嫌いじゃないからって言ってたし…なんで？」


待ってそれは誤解だ。嫌なところを見られてしまったみたいだ。

明らかに不機嫌なマリー。非常にまずい。



「今日、授業が早く終わってマリーを驚かせようとクラスへ行ったら、この人にぶつかってしまって」


「で、何で見つめ合っていたの？」


「見つめ合ってはいないよ。ただ目の色が見たいと言っていて…」


横目でレオナルド・ベインを見ると、呑気に俺たちを見てニヤッと笑っている。何で俺が責められないといけないんだよ、お前が説明しろよ。事の発端はお前だろ！

マリーは、お兄ちゃん大好きっ子であり、お前は一応、マリーに気に入られている婚約者候補の一人でもあるんだぞ。マリーは繊細だからいろいろと不安になるんだよ。


…はぁ、今すぐ平穏を取り戻したい。



「ふーん。だったら何で嫌いじゃないからって言ったの？」


一番ツッコまれたくなかったやつだ。嫌いじゃないからは嘘なんだ。本当は嫌いなんだよ。なのに、取り消せとうるさいから仕方なく折れたのに、また次の問題が生じてしまうなんて想像つかないじゃん。


本当のことを言うべきか。

うん。素直に言おう。





「実は…うわぁっ」

本当のことを打ち明けようとしたら、隣で聞いていたレオナルド・ベインが慌てて近寄ってきて俺の口元を押さえた。何すんだ、こいつ！また人の邪魔をしやがって。

すると、『俺が言うからお前は黙っておけ』と耳元でそう言われた。うざい極まりない。見てください、この鳥肌。自分の立場が危うくなったら出てきやがって、本当都合がいい。

ふっ。まぁ到底言えないよな、マリーに嫌いって言われたみたいで拗ねてましたなんてさ。


「俺から言うが…「汚い手でアレンを触らないでよ！」


マリーは、レオナルドの話を遮ってそう怒鳴った。


え…？


これからレオナルドの恥ずかしい話での公開処刑の始まりだったのに。



「もう聞きたくない！行こ、アレン」


レオナルドの呪縛から解け(口元を押さえられたことを大袈裟に言った)、マリーが俺の腕を引いて、いつものカフェに連れてこられた。


これは非常にまずいのでは…？うん、これは死亡フラグがたちました。


シーンと重たい空気が流れる。



さて、この状況はどうしようか…。最悪だ、これも全部アイツのせいだ、全くもう。

アイツのせいで、俺とマリーの絆にヒビが入ったら許さないからな。絶対恨む！



マリーは一向に一言も話さないので俺から話し出すことにした。





「…マリー、ごめんね。俺のせいで、レオナルド・ベインにあんなこと言わせてしまって…」


本当は言いたくなかっただろうに。

俺を助けるとはいえ、気になっている人にあんなこと言ってしまって、マリーは今きっと後悔しているに違いない。