悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ

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俺は、アレン・ワグナー。現在生まれて経った5ヶ月。それなのに全て思い出したのだ。『魅惑のプリンセス』という乙女ゲームの世界に転生してしまっていたことを。



転生する前は日本という国に暮らしていて、どこにでもいる普通にゲームが好きな男子高校生だった。

RPG、STG、ACG、ADV、PZLなど色んなゲームに手を出してきたが唯一、SLG(所謂シミュレーションゲーム)はやったことがなかったため、やっと乙女ゲームにまで手を出した。どう攻略するかを考えるのはとても大変だったけど思いの外、面白くて案の定ハマってしまった。今でもとても印象に残っているくらいだ。この乙女ゲームは学園が舞台で結構大人気の作品である。


俺はゲーム上、ヒロインになりきって攻略対象を片っ端に攻略してきた。中でもリアム様は推しキャラだ。優しくてイケメン過ぎた。

…て、今はそんなことどうでもいい。


先程も冒頭で名乗ったがアレン・ワグナー、それが俺の名。よりによって、悪役令嬢の双子の兄に転生するってどういうことだ!?


前の世界の最後の記憶では、猫を守り車に轢かれて死んだ俺。猫を助けたのになぜ悪役側に転生するんだって話だ。

どういうことだよ、って冷静にツッコんだ俺を褒めて欲しい。せめてさ、勇者とかヒーロー系の主人公に転生させてくれ。


ああ、神よ。本当、酷いことをしてくれるじゃないか…。でもいくら悪役に転生したからって中身は俺だ。それは変わらない。



すると、俺の顔に柔らかい誰かの手が当たる。

ちらっとそこを見ると、現在赤ん坊である俺の隣で寝ているもう一人の赤ん坊がいた。


あ、うん。こいつ、知ってる。絶対双子の妹だ。可愛らしく寝ているが将来悪役令嬢になる予定で、マリー・ワグナー。


このゲームは、15歳の学園に入学してからスタートする。それまでにマリーは立派な悪役に育ち、俺もその妹マリーの悪に手を貸す奴になる。


簡単に言うと、ワグナー兄妹は本当に性格の悪い双子だ。


妹は、攻略対象である王の息子リアム・サイラス(俺の推しキャラ)に恋をしてヒロインちゃんをとことんいじめる。兄である俺は妹に手を貸しつつ、何だかんだでヒロインちゃんに惚れているため、攻略対象を殺しバッドエンドしかむかえないキャラである。確か死ルートもあった気がする。



とりあえず、悪役ではあるがこの双子は誰もが羨む超絶美形兄妹だ。

絶世の美少女マリーに、絶世の美少年アレン。


綺麗な金髪に白く透き通った肌。

マリーの瞳の色はサファイアのように青く、アレンである俺の瞳はエメラルドのようにとても綺麗な瞳をしていた。


これで性格が良かったらまじ最強だ。



侯爵であるワグナー家。悪いことをしても権力やお金で解決。世間からはあまり良いイメージはないも実力は凄かった。俺たち双子は甘やかされ、そうしてわがままな人間に育っていくというのが本来ゲーム上の設定。





そして、俺とマリーはすくすく育ってあれから月日が経ち5歳になっていた。





「アレン、わたしとあそぶの!!」


俺はあれから一つだけ決心したことがある。


それは俺の可愛い可愛い妹のマリーを幸せにすることだ。5年間でまぁ、俺もこの可愛いマリーに骨抜きにされました。


だって、前の世界でこんな子俺の周りにいなかったんだよ!


妹推しである俺は、どうしても悪役になってほしくない。

どうか、どうか幸せになってほしい。



1歳くらいから『よし、決めた。俺がマリーを変える!』と決心し、現在に至る。



「アレン?」



「ごめんね、マリー。遊ぼっか」



「うん!」


花のように笑い、嬉しがるマリー。




あぁ、幸せだ。

こんな可愛い子を悪役には俺がさせない。

させるものか。




そう心に誓ったのであった。




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