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幼少期
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しおりを挟むとりあえず、絢斗は親しみやすくていい奴だった。
それから、新学期初日は給食はなく早めに帰ることになった。すでに櫂のクラスは俺のクラスより早く終わっていて、待ってくれていた。
「じゃあ、ゆうせいくん!また明日ね~」
「おう!またな」
帰り際、絢斗に別れを告げ、俺はさっきから待ってくれている櫂のところへ行った。
「櫂、待たせてごめんな」
「ゆうせい…っ」
櫂は目に涙を溜めており、今にも溢れ落ちそうだった。その理由はちゃんとわかってる。
「あ~…えっと、ごめんな。約束したのに休み時間、櫂のところに行けなくて…」
実際は行ったが櫂はクラスの子たちと話していたため声がかけれなかった。でも約束は約束。だから櫂が怒っても無理はない。
「ううんっ、ちがうんだ…っ、ぼく、ほんとは知ってたんだ…っ、ゆうせいがクラスに来ていたこと」
「え?そ、そうだったのか」
「いじわるしてごめんなさい…っ、先生にゆうせいと引きはなされた時、ゆうせいがすぐに行っちゃったから…それがいやで、いじわるした…っ」
「それで泣いているのか?」
頷く櫂。
櫂がそこまで俺と離れたことが嫌だったと知った。
意地悪というのはあれか。他の子と楽しく話をして俺を入れさせないようにしたというわけか。仲間外れみたいな。そんな意地悪されている感覚はなかったから、正直驚いた。
でも、ちゃんと謝って素直に俺に話してくれている。
いい子じゃないか、俺の推しは。
「櫂、泣くなって。俺は大丈夫だよ」
「ほんとにごめんね…っ、ゆうせい、ぼくのこときらいにならないでぇっ!」
「これくらいで嫌いになんてなるわけないだろ」
「ほ、ほんと…?じゃあ、ぼくのこと、す、好き?」
「当たり前だろ。櫂の良さは長年一緒にいるんだからわかる」
「ゆうせい…っ、大好きっ」
「おいおい、みんなが見てるぞ」
教室の目の前に加えて、泣いているため余計に目立っていた。
「ぼく、やっぱり、ゆうせいとはなれたくないよぉ…っ」
泣きながら抱きついてきた櫂。そんな櫂を泣き止むで俺は頭を撫で続けた。
約束守らなかったから絶対怒られると思っていたから、まさかこんな展開になるなんて想像しなかった。
泣き止んだ櫂と、そのまま俺たちは手を繋いで仲良く帰った。帰りながら、今日のことを二人で話していた。
「ゆうせいとクラスはなれたのはほんとにくやしいんだ。だけどね、決めた。これも訓練だと思ってぼく強くなる!泣いてばかりじゃ、なにかあった時ゆうせいを守れないし」
「ふっ、なにそれ」
守るって悪の組織か何かからか?
別に襲ってくる敵なんていないから大丈夫なのに、かっこいいこと言うね。
昨日テレビでやっていたヒーローアニメの見過ぎではないかと思った。
「笑わないでよ!ぼく本気だよ!!」
「悪かったって。櫂偉いぞ!大人になったみたいだ」
「えへへ。そしたらたくさんぼくのことほめてね」
大人になったのかと思ったら、すぐに褒めて欲しいと言ってくる櫂はまだまだ子どもだと感じたのだった。
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