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幼少期
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しおりを挟むそれから季節は夏。9月の中旬頃。この時期になると俺の血が騒ぎ、燃え出す。
その理由は、運動会という一大イベントがあるからだ。運動会という言葉を聞くだけでうずうずする。もはや病気だ。
スポーツ大好きな俺にとっては楽しい日々の始まりでしかない。授業も必然的に運動会のための予行練習とかで組み込まれるため、最高だ。
隣で『あついしいやだな~。クーラーにあたっておきたい』なんて言う現代っ子な櫂。まったく、甘い!そんな考えじゃだめだぞ、櫂!一日一日が大切なんだ。継続は力なりっていうだろ?努力は必ず報われるんだ。それに運動会で目立つくらいしないと碓氷陽月には到底勝てないぞ!
「ちょっとみんな聞いてくれ!」
休み時間、俺は教卓の前に立ち、クラスメイトに言い放つ。
「俺はみんなと一緒に運動会で優勝したい!!だから休み時間とか放課後を使って練習したいと思っているんだ!運動苦手な子も得意な子もみんなで一緒に頑張ろう!」
俺の意気込みがみんなに届いたのかはわからないがみんな笑顔で快く協力してくれた。優しいな、ほんとに。クラスには良い奴しかいない。恵まれている。
『わたし、じつは運動苦手でふあんだったの!だからゆうせいくんがみんなにそういってくれてたすかった!ありがとう』ってクラスの女の子に感謝されたので俺のやる気は一段にあがった。負けてられない。
その日の放課後、練習に付き合ってくれたクラスメイトの男の子の一人が走って転んで膝を擦りむいてしまった。
「おい。大丈夫か!すぐ保健室に行こう」
俺はその子をおんぶして保健室まで連れて行った。
「ごめんね、ゆうせいくん…、ぼくが足を引っ張って」
「なに言ってんだよ。俺の方こそ、無理に付き合わせてしまってケガさせてしまうなんて申し訳ない、ごめんな」
「いや、ちがうよ!むりにつきあっているとかじゃないから!ぼくだって運動会でかつやくしたいし、ぼくのいしで練習しているんだよ!それにケガしたのもじゅんびたいそうをしていなかったから…。だからその、ゆうせいくんは何も悪くないよ」
「ふふ、お前優しいな。ケガは本当に大丈夫か?」
「うん!ちょっと、すりむいただけだからだいじょうぶ!いたくないよ」
「良かった。あまり無理はするなよ。運動会では俺もフォローするし、まだまだ時間がある。それまで一緒に頑張ろうな。だから今日はこのまま帰って休んでな。復活したら一緒に練習しようぜ」
「…っうん!ありがとう、ゆうせいくん!」
その子を手当したあと、それから俺はみんなところに戻った。
戻ると隅っこでいじけている櫂の姿があった。
「櫂?どうしたんだ?」
「運動会なんてぜんぜん楽しくない!!!ゆうせいのばか!!」
え…?櫂?
そう言って走り出す櫂を追いかけた。
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