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しおりを挟む「ほれ、爺さん特製のハーブティーじゃ」
「ありがとうございます」
はぁ~落ち着く。ヘンリ爺さんの作るハーブティーはいつも美味しくてすぐ飲み干してしまう。…って違う!ヘンリ爺さんのペースに惑わされてはいけない。そんなくつろいでいる場合じゃないのについ浸ってしまった。
「で、話とはなんじゃ?」
こちらは今すぐにでも質問攻めしたいし、聞きたいことが山ほどあるっていうのにと思っていたらヘンリ爺さんからの方から聞いてきてくれた。
「はい。今日森でアキレアを回収してきたのですが…」
無事本題に入ることができ、モーリュの件を含めて、かくかくしかじかと説明していった。
「ほほぉ。アキレアとはなかなか良いものを見つけてきたんじゃな。それよりモーリュとはまたそんな伝説の植物を見つけたとは…ほほほっ。ルアンも冗談を言うようになったんじゃなぁ」
おい感心するなよ。違うから。
せっかくアキレアという良いものを見つけたのに、エイデンがそれを超えてきた。ヘンリ爺さんの様子からしてモーリュのことは信じてなさそうだった。確かにそんな貴重なもの易々と手に入るわけがないと思うのが普通だ。俺だって信じない。でも見てしまったんだよ。
「だけど本当なんです。ほら、エイデン証拠だしな」
指パッチンをかっこよくキメその合図でエイデンはこれですと、サラッと出した。一応丁寧に扱ってね、エイデンさん。
「おぉこれはなんと!い、一体どこで手に入れたんじゃ?」
アキレアとは違って目の色を変えた。まじまじとモーリュを観察し驚いていた。わかる人にはわかる植物だからね。それがどんなにやばいのかわかるともう大変だから。
「それはこっちが聞きたいですよ。エイデンが言うにはヘンリ爺さんがどっかのダンジョンへ連れって行った時に見つけたらしいですよ、それ。一体どこのダンジョン潜ったんですか」
俺の問いにヘンリ爺さんは首を傾げる。
「はて…どこじゃったかのぅ…寄り道もたくさんしたし、その時に言ってくれればわかったんじゃがのぅ」
「そんな…!」
何やってんだ、ヘンリ爺さんよぉ。まったくもう。一瞬にして手がかりが消えた。自分の手で掴み取りたかったモーリュ…。でもまぁ仕方ないことだ。困難であるほど自分で在処を見つける達成感は強いからそれはそれでいいか。
「ルアンごめんね、俺が見つけた時にヘンリ爺さんに言っていればこんなことには…」
「何言ってんだよ、別にどうでもいいし」
エイデンは謝ることなんてない。逆に貴重なものを見せてくれて感謝したいくらいだし。
「Sって出てたからすごいものだとはわかったんだけど、一番最初にルアンに見せたくて…喜ぶかなと思って」
「…っ!」
なんていい子なんだよ…!俺なんかどうでもいいだろ!その優しさに涙が出ちゃうぜ。
シュンとなるエイデンに気にするなと言いたいがどう声をかけたらいいか正解がわからない。
「ま、アレだな。今度一緒にまた探そうぜ」
「え、ルアンと一緒に…いいの?」
「あぁ。だから手伝えよな」
「もちろんだよ!!」
勢いよく俺の手を握り、先ほどとは違って目を輝かせた。こ、こんなんで良かったのか?とりあえず機嫌が良くなってよかった。
「ま、何はともあれ大事に使うんじゃぞ」
はい、この話おしまい!とでも言いそうなヘンリ爺さん。おい逃げようとするな。
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