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もしもの話
新條ゆう×佐藤あおい
しおりを挟む【もしも二人がお風呂一緒に入ったら】
小学5年生の頃の夏休みのある日。僕は幼なじみの新條ゆうとプールに遊びにきていた。夏休みなのに、いつも僕たちが遊びに来るときは、なぜか貸し切り状態であり、他の人は誰もいなかった。
「あおい、今日も誰もいないね」
嬉しそうに微笑むゆうを見ると僕まで嬉しくなる。
「うん!ラッキーだね!」
もし、他に人がいたら、僕なんか『出て行け』なんて言われそうだ。誰もいなくてよかった。
「俺の手に掴まって」
「う、うん…」
ゆうの手を借りながらゆっくりプールに入った。不安だったけど、ゆうのおかげでプールに入れた。
「いつも学校ではプールに入れていないから気持ちいい」
冷やりと冷たさが伝わる。僕は泳げないので、浅いところで体につかっている。ちなみに学校のプールは深いから僕が溺れるかもしれないと、ゆうが心配してくれて先生にも話してくれた。学校では一度も入ったことない僕のため、気分展開で夏休みに数回ゆうがプールに連れてってくれる。
僕は、早速相棒のビート板を持ち、ゆっくりと浮いてみる。隣にゆうがいてくれるから安心だ。それから何時間か練習したけど、やっぱり僕は泳げなかった。
「ゆう、ごめんね。ぼ、僕なんかに付き合わせちゃって…」
結局、泳げないまま終わってしまった。
「また次頑張ろ。今日は頑張ったね」
練習していても泳げない僕にゆうは文句の一つも言わず、優しい言葉と頭は撫でてくれた。
「ありがとう。次は頑張るね!」
「うん。一緒に練習しようね」
ゆうは本当に優しい。その上、頭も良いし運動もできる。水泳だってすごく速く泳げるし、尊敬しかない。
「あ、僕ビート板片づけてくる!」
と、急いでプールサイドの通路で走ったのが運の尽き。
「わぁっ…!!!」
「あおいッ!」
つるっと、滑ってしまい、背中とお尻を打ってしまった。
「あおいッ!大丈夫?どこか痛いところは?!」
「だ、大丈夫だよ。ご、ごめんね、心配かけちゃった」
心配かけまいと、すぐに立ち上がった。打ったけど、そこまで痛みはなかったので特に大丈夫だった。それでもゆうは何度も『大丈夫か?』と心配してくれた。
その日の夜は、ゆうの家でお泊まりをした。
「あおい。お風呂に入ろっか」
「うん!」
僕は前もって持ってきた着替えを手にゆうと一緒にお風呂に入る。ゆうが後ろから抱きしめるかたちでいつものように浴槽につかった。
「…やっぱり」
「どうしたの?」
「背中が少し赤くなってる。多分今日打ったとこかも」
ゆうが僕の背中を優しく撫でる。
「く、くすぐったい。でもどこも痛くないよ?」
「今は痛くないかもしれないけど、もしものことがあったら心配だ」
「ふふ、ゆうは大袈裟だなぁ。平気だよ」
「でも心配だ…俺がいながらごめんね」
「僕が勝手に転んだせいだから謝らないで!!」
「痕が残ったら責任とるから。…残らなくても責任はとるつもりだから」
そう言って優しく抱きしめてくれた。
それから僕は、高校一年生になった。
ゆうから、『久々に一緒にお風呂に入ろう』と言われたので、一緒にお風呂に入ることになった。
小学生以来、一緒にお風呂に入らなくなったから、久々だった。ゆうは、筋肉が程よくついて成長していた。それに比べ、僕はひょろひょろしていて自分が恥ずかしくなり、タオルで身体を隠した。
「なんで、タオル巻いているの?」
「は、恥ずかしくて…」
「恥ずかしがらなくてもいいよ。せっかく久々にお風呂一緒に入るんだし、タオルはそこに置いておいで」
「わ、わかった」
ゆっくりとタオルを置き、昔みたいに一緒に浴槽につかった。そして、昔の話になった。昔プールサイドで僕が転んだときのこと。
「そんなことがあったね、あの時、ゆうがものすごく心配してくれて嬉しかった」
「あおいのことならなんでも心配するよ。でもよかった。痕が残らなくて」
僕の背中をさすった。
「ゆうは本当優しいよね。いつも僕なんかのことを心配してくれてありがとう」
「これからも何かあったら俺があおいのこと守るからね」
そう言って優しく後ろから腰に手を回され、僕は不覚にもドキドキした。
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