嫌われ者の僕

みるきぃ

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もしもの話

天山神影×佐藤あおい ⑥

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【神影side】



自分で言っておきながら後悔するなんておかしな話だ。本当に、俺様はあの地味のアイツのことを事故で忘れたのか?別に記憶が戻らなくても問題ねぇのに。

毎日学校生活を過ごしている中、何か物足りなさを感じた。前の俺ってどんな風に過ごしていたのか忘れたが、とても満たされていた気がする。



「…イライラする」

どこにこの感情をぶつけていいかわからなかった。





夕ご飯を食べ終え、ちょっとしたところで姉貴が話しかけてきた。


 「神影ちょっと、いい?」


「何だよ」



「…退院して落ち着いたから話すけど、少しは何か思い出した?」


「思い出したって何を?」


「あの子のこと」


「知らねぇ。別に思い出さなくてもいいだろ、あんな奴なんか」


思い出してどうなるんだよ。意味あんのかよ。



「ちゃんとあの子と話したの?」


「…チッ。うぜぇ、なんでこの俺様があんな奴と話しなきゃいけねぇんだよ!」


怒りが爆発した。自分でも訳わからないのに。まだ話しかける姉貴を無視し、自分の部屋に行った。

ベッドに横になるとある物が目に入る。テーブルの上に無造作に置かれているアイツから渡された。お守り。何度も捨てようと思ったが、なぜかできなかった。目に入れたくなくて、本を上に置き見えなくした。


「意味わかんねぇ…っ」


口を枕で覆い、声を押し殺した。











「…いた」


それから学校では、気づくと奴の教室を探していた。…どっちがストーカーかよ。なんで、アイツのいる教室を自分から探して会いに行くんだ。別に何も話すことなんかないのに。そのまま俺はあいつを一目見てすぐに自分の教室へと帰った。周りが騒ぎ始めてバレるのも嫌だし。



「やっぱ、俺…変だ」

お守りも捨てられない自分も、無意識にアイツのことを目で追って探している自分もすべてに対してむかついた。







そしてある日のことだった。この日、俺様はたまたま図書館に行った。そしたら奥の棚で本を整理しているあいつがいた。地味で存在感がないけど、目で追っていた自分にはすぐに気づいた。この図書館であいつのことを見るとなぜか懐かしい気持ちになった。

また俺は何を考えて…。

本当イライラする。


俺はこの後、怒りの矛先を悪い方向に向けてしまった。



ひとこと文句を言ってやろうと、あいつが掃除を終わるのを待った。最後の一人になっていた。俺はゆっくり近づき、そして奴は最後の一冊を棚に並べ終え、振り返った。



「わぁっ!」

俺を見て明らかに動揺しているのがわかった。


「と、突然、大声出してごめんなさい。み、神影…あ、じゃなくて、会長さんも図書館の掃除だったんですね」


名前で呼ばれた方がむかつくはずなのに、『会長さん』というのに、余計腹が立った。


…なんでだよ、俺を見て震えてんじゃねぇよ。


「お前、本当イラつく」


「あ、…っ、」


「姉貴もお前のことばかり言うし、意味わかんねぇ。大体何で同じ学校にいんだよ。マジ目障り」

「…っ、ご、ごめんなさい…」


顔をうつむける。棘のある言葉をぶつけては自分で後悔する。痛み付ける言葉が止まらない。


「お前なんか知らねぇし、知りたくもない。仮に忘れていても思い出したくもねぇ」


「っ、そ、そうですよね。ぼ、僕馬鹿だな…っ。今まで迷惑かけてごめんなさい…っ」


奴はそのまま頭を下げながら図書館を走って出た。溜まっていた怒り。原因のやつにぶつけて、すっきりするはずなのに。



「俺、…なにしてんだ」

また後悔している自分がいた。







次の日、あることが話題になった。

『なぁ、聞いたか?校舎裏の天使!』

『泣いてたみたいだぞ』


と話でもちきりだった。話をまとめると昨日、校舎裏で、泣いている天使がいたらしい。泣くって…まさかな。



「校舎裏か…」

なぜか行かないといけない気がした。そして放課後、校舎裏に行ってみることにした。



校舎裏に着くと頭に痛みが走った。


すると、あれ…?


『神影』


『ぼ、僕も神影のこと好きだよ』


『誕生日祝ってくれるの?嬉しい…ありがとう神影』



頭の中に忘れていた大事な記憶がはっきりと脳裏に現れる。

あ、俺…あおいのこと。



痛いほど記憶が次々に甦った。それと同時に俺は大事な人を傷つけた記憶が合わさって、胸を押さえた。


ここで、一人で泣いていたと思うと、余計に胸が苦しくなった。きっと、泣いていた天使って絶対あおいのことだ。



「俺、最低だ。…あおい。あおいっ!」

気づくと走り出していた。



何が幸せにしたいだ。

しかも大事なあおいの誕生日に俺は浮かれて事故にあって、目を覚ましたらあおいのこと傷つけることばかりしていた。



あおいがどんだけ傷ついたと思ってんだよ。


優しいあの子は、俺の身体のことを思って、何も言わなかった。

いくら記憶がないからって傷つけた。





急いであおいの教室に行くと、あおいの姿はなかった。聞いてみると、休んでいるみたいだった。

…俺のせいだ。





大好きな子に酷いことをたくさん投げつけた。


今、俺の顔見て、あおいは俺のことまだ好きでいてくれるだろうか。


最低な俺だけど、一刻も早く会いたくて、あおいの家に走って向かった。






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