嫌われ者の僕

みるきぃ

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腹黒副会長

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でも二人の様子からして付き合ってるとか絶対にありえない。



「言っとくけどあおいを好きなようにしていいのは俺だけだぞ!!だから大人しく俺に捕まれ!そしたら一緒にデートしような!一度もしたことがないからこの機会に派手にやろうぜ!」


と瑞希はゴミに向かって笑顔でそう言った。



「瑞希…騙されてます。前も言ったようにこのゴミは瑞希 を利用しているんです。私たちに近づくために」



そう、このゴミの目的はきっと生徒会。いや、私に近づくため。こんなにゴミに瑞希が利用されていることに早く気づいてほしい。






─ドンッ!

大きな音が響く。



と思ったら殺意を剥き出しにした瑞希が怒鳴り出した。




「ふざけんなッ!利用ってなんだよ!むかつく!!あおいは俺が大好きなんだぞ!お前らなんか眼中にないくらいにな!何回も同じこと言わせるとかありえないぞ!」



「み、瑞希…?」



まさか、だと思うけど瑞希が一方的に…いやいやそれはない。きっと勘違いしてるだけ。



「俺のためにプレゼントあげたことあるし、俺の前だと顔を赤く染めて照れたり、俺のこと大好き過ぎて素直になれないところがあったり…とにかくあおいはめちゃくちゃ俺が大好きなんだよ!」



そのあと、『これ以上はもったいないから言わないぞ』と口を押さえる。何ですか…その話。




ゴミが瑞希を、好き…?いや、それはありえません。だって、ゴミは生徒会に近づいて瑞希を利用して…。すると、瑞希はまるで私と神影がいないような雰囲気でゴミと話していた。




「すぐ捕まえてやるから逃げるなよ!捕まえたら俺のこと、花園くんじゃなくて…そ、その…瑞希って呼んでほしい」



「え、?」


「他にもいろいろお願い事があるけどありすぎてやばいぞ!それと俺、足には自信があるからな!」




二人だけの世界を作っている。…むかつく。自分でも自分の顔が曇っていくのがわかる。



「わっ、」

ゴミの驚いた声がもれる。




これ以上見ていられないので私は黙って歩き出した。手錠でお互いの片腕が繋がれているため、ゴミを引っ張る形になった。


 

瑞希がこのゴミを捕まえる気満々。何で私がこんなに嫌な思いをしないといけないんですか。



苛立ちが膨らんでいく。それにしても遅い…。逃げるのはいいですがこのゴミとてつもなく遅い。



「本当、鈍間ですね。何してるんですか?早く逃げますよ。あなたが瑞希に捕まったりでもして、瑞希とデートするなどと許しませんから全力で阻止します」



デートとか許しません。絶対に。手錠がお互いの手をつないでいるので私にまで逃げるのに影響する。こんな奴と一緒に逃げるなんてめんどくさい。隣を見るともう息があがっていて限界みたいだった。どんだけ体力ないんですか。呆れてため息すら出てこない。




「あー!朝霧様見つけたぞ!」


遠くから鬼になっただろう生徒の声が聞こえた。



「何してるんですか!早く逃げますよ!あなたルール聞いてましたか?鬼は捕まえたら好きに出来るんですよ」



「はぁ…っ、ごめんな…さいっ」



声を出すのも走ることも精一杯な彼。




「チッ。あなた自分が嫌われている自覚ありますか?捕まったら即死刑ですよ。まぁ、あなたがどうなろうと知ったことではありませんが私が捕まりたくないのでちゃんと逃げてください!」



そして私はスピードあげた。その時に手錠をされてる方の彼の手首が赤くなっているのに気づいた。なぜか胸が痛んだ。




─ぎゅっ

気づいたら彼の手を握っていた。自分が一体何をしたいのかわからない。 死ぬほど嫌いな相手なのに。手に初めて触れた。嫌なはずなのに体が勝手に動く。…手が小さい。見ていてわかっていたけど実際触れてみて改めてそう感じる。


こんなときに私の手にすっぽり収まるのがとても可愛らしいと思う自分がいて嫌になる。


 
「はぁ…っ、ふ、く会長…さ、ん?」



私が急に手を握ったから戸惑っている彼。

 

「…ったく、あなたは遅いんですよ。本当は死ぬほど嫌ですけど。いいから気にせず走ってください」



そう、別にこれはあなたのためじゃない。私が捕まりたくないだけ。仕方なく握っただけ。走りにくかったから。ただそれだけ。



────
──────

……。




なんとか私の運動神経の良さで上手く逃げ切ることができた。



逃げ込んだのは人気のない空き教室。空き教室に入るなり彼は崩れるように床に足がつく。息が乱れて全身の力が抜けているみたいだった。



「ちょっと勝手に座らないでください。手に響きます」



「ご、ごめんなさい…っ」



彼が腰をおろしたせいで手錠で繋がられている私まで引き寄せられた。




それにしても

「…まさか手を繋ぐはめになるとは。これが瑞希だったら最高だったんですけどね。こんな足手まといのゴミとペアになるなんて最悪以外ないです。それに手が汚ればい菌がつきました」



沈黙は嫌なので何か喋ろうとそんな不満な言葉をもらした。そして、彼に触れた手をゴシゴシと拭いていく。



「大体、何あれくらいで息あがってるんですか?足遅いし、迷惑かけるし、本当クズですね」



何か話さないと…。その一心で言葉が止まらない。口から出てくるのは全て彼を傷つける棘のあるもの。




「この際、聞きますけど瑞希に近づいたりして何が目的なんですか?」



「も、目的…っ?」



「はっ、とぼけるつもりですか。いいご身分ですね」



鼻で笑い、彼を見下ろして睨んだ。目的がなかったら瑞希といる必要ないじゃないですか。





「このまま黙って何も答えないという考えが丸見えです。 ……ねぇ、本当の目的は私なんでしょ」



私は屈んで、うつむく彼の顎を持ち上げ、顔をあげさせた。目と目が合う。震えているのがわかる。



「あなたが瑞希に近づいた理由は生徒会が目的、そうでしょ?忠告したのにも関わらず、まだ瑞希に執着してるってことはそれしか考えられません。利用するとか最低です」



「ふ、副会長さん…、言ってる意味が」


「わからないのですか?本当に馬鹿ですね。それともわからないフリをしてるんですか」




私がそう言えば、黙る彼。彼が何を言っても私が聞かないのを理解したのだろう。まあ、どうせ、今、私と二人きりになれて幸せとか考えているんでしょうね。だって、彼は私に好意があるのだから。そのことを考えていると、ふと、あることを思い出した。


瑞希が先ほど言っていたあれを。 イライラがまた募る。




「そういえば、瑞希とはもう友達ではないってことは本当ですか?」


「え、…あ」


「どうなんですか?」



「…は、はいっ」


ビクついて、今にも消えそうな小さな声でそう答えた。…むかつく。あなたは私が好きなんでしょ?



「…チッ。じゃあ瑞希が言っていたそれ以上の関係って本当なんですね。あなた一体何なんですか」



「ふ、副会長さん…?」



手錠で繋がれていないもう一方の手で彼の腕を強く握りしめる。その途端、彼の顔が痛みに歪む。




「本当は生徒会に好意があるくせに…っ。瑞希を脅して」


素直に私に会いに来ればいいじゃないですか。瑞希なんか利用しないで。更に握る力を強くする。すると彼の頬につぅ、涙が流れた。




動揺した。でも彼が瑞希と付き合っているとそう考えただけでむかつく。口が勝手に動いて、本当に止まらない。



「どうして泣くんですか?」

なぜか焦る私。まるで私が悪いみたいじゃないですか。彼の泣いている姿なんて別にどうでもいいはずなのになぜか嫌な気持ちになる。瑞希と、ただえさえ親しくしているのを見てむかつく相手なのに。




「ごめんなさい…。自分でも何で涙が…っ」


唇を噛み締め、涙を手で拭い必死にこらえようとしているのがわかる。彼を責めすぎたと思ってしまう。…私は悪くない。



「泣かないでください。困ります」



あなたが泣くとなぜか胸が苦しくなるから困る。一瞬、手が伸びそうになったのを引っ込める。泣かせるつもりなんてなかった。ただ私は。





「あ、あの…っ、少しあっちを向いてもらっても」


扉の方を指差す彼。泣いているところを見られたくないのか、わからないけど口を開いたと思ったらそんなことを言う。




「嫌です。なぜ私があなたの言うことを聞かないといけないんですか」


私はここぞとばかりに彼を目に焼き付けておきたいと考えてしまう。

手錠を通して、震えて怖がっているのが伝わってくる。




…涙を拭いてやりたい。

…彼を抱き締めたい。




あぁ…、自分が嫌になる。


『あーおーいーー!!どこだーーー!!!!俺が捕まえに来てやったぞ!』



近くの方で、瑞希の叫び声が聞こえてきた。





「…チッ」

こんな時に。愛しいはずの瑞希に対して邪魔をするなと思ってしまった。





「花園くんが近くに…っ」


「ほら、さっさと逃げますよ」


そう言って、私はまた彼の手を握り見つかる前に逃げることにした。瑞希に捕まるわけにはいかない。ここは一階の空き教室だったため、窓から何とか逃げ切ることができる。





…彼の手に触れている。それだけで心臓がおかしくなった。私っていつからこんなに余裕がない人間になったんでしょう。




____
_______

……。




彼の手を引いて、逃げた場所はあの場所だった。



…ここって、私が彼にオススメの場所と初めて会った時に教えたところ。彼との思い出の場所だった。



『じゃ、じゃあ…

本当の笑顔はもっと素敵なんですね』


『どちらもあなただと思うので、ぼ、僕は素直に素敵だと思いました』



そして、あの言葉を言われたところである。私としたことが何で、こんなとこに来てしまったんでしょう。嫌な場所でもあるのに。忘れたい記憶がまた甦る。





「はぁ…っ、ごめんなさい。あの少し休みたいです…」




「ここなら誰も来ませんから休めますよ」


これほどまでに体力がない人、初めて見た。私が何とかしなくちゃと思ってしまうじゃないですか。丁度、ここは花たちがカモフラージュしてくれるし、隠れる場所が豊富で、そして人気のない場所の一つである。こんな綺麗な花が咲いているのにこの場所を知っている人は少ない。



「ここって…あの時の」


すると、彼の口から予想もしない言葉が出てきた。何かを言いかけた。あの時の…?



「あの、今なんて…?」


最後までその続きを聞きたい。知りたい。



「あ、いえ、その…」


はぐらかそうとしている。そんなの許しません。



「あなた、まさか去年のこと覚えているんですか?」



そして、私のことも忘れてはいないのですか?彼は息をのみ、小さく頷く。


「お、覚えています…」



…嘘。彼は私のこと覚えていないなんて私の勘違い…?じゃあ、私は何のために彼をいじめのターゲットにしたのですか。彼が私のこと覚えてくれていると嬉しい反面、今までのことを思うと何も考えたくなくなる。



「どうして言ってくれなかったのですか。私はてっきり、あの時のこと忘れていると」



「そ、それはないです!入学式の時、あの時の人が副会長さんだったって知って…。それで皆から嫌われている僕が学園で人気のある副会長さんに言えるわけもなくて…。あ、あの時は本当にありがとうございました」


今までお礼も言わずにごめんなさい。と頭を下げる。




「別に気にしていませんから、顔あげてください」


一応、平然としているけど、内心、混乱している。彼が私のことを思って、今まで近づかなかったということになぜか心が騒めいた。




「嫌な記憶を思い出させてしまってごめんなさい…」


申し訳なさそうに目線を下に向いている。



「…っ」



私はそんな彼に対して何も言えなかった。嫌な記憶…。確かに私にとって、あれは最悪な出来事だった。いつも思い出すたびに苦しんだ。忘れたいと思っても勝手に私の頭の中に入ってくるし、イライラしたりもした。忘れるどころか余計考えてしまうばかり。あなた以外の誰かに夢中になれば絶対にこの記憶を上書きしてくれると思った。…だけど、だめでした。あなたに近づくもの全てにこう思ってしまう。




…私が最初だったでしょ。生徒会の誰よりも瑞希よりも私が皆より先にあなたを知っている。



私が先だった。1番は私。




…あーあ、プライドなんて捨ててしまいたい、





『あなたは、私に好意がある』


いや、彼を好きだったのは私の方だ。何で今になってこんな時に認めてしまうんだ。私は、あの時彼に一目惚れをした。声をかけてみたいと思った。


そして、実際話してみると健気で見ていると面白い。なぜか彼に惹きつけられる。今まで見たことないくらい地味なのに素顔は言葉でとても表せないくらい美しい。






そして、



『どちらもあなただと思うので、素直に素敵だと思いました』


どんな私でも受け止めてくれるそんな言葉を私にくれた。



今までにないくらい衝撃的で心の底から嬉しかった。だけど、私は自分の気持ちに反して別の行動をとってしまった。





私に声をかけて、といじめのターゲットとして彼に近づくけど…それでも彼は振り向いてくれなくて。心のどこかではわかっていた。彼は私を好きじゃない。



ずっと今までこう考えて過ごしてきた。『彼は私が好き』と。そう思わないと自分で自分がコントロールできない。


彼は本当に優しい。彼の隣にいるもの全てに嫉妬してしまう。





プライドなんて簡単に捨てていればきっと今、彼の隣で笑うことができたのだろうか…。






なんて、考えてしまっているほど彼が好きだ。今まで抑えていた好きが溢れてくる。だけど、今さらそんなの遅い。


彼は、私がいくら頑張っても



私を好きになんてならない。

私のものになんかならない。





「ははは…っ」


声が情けない。



「副会長さん…?」


急に笑った私に驚く彼。





…あー、ダサい。私に似合わない言葉。だけど、それが今の私。





「とりあえず、ここにいれば大丈夫ですよ」


話す言葉を探したけどこれぐらいの会話しかできない。



「あ、あの…っ、今日は本当に迷惑かけてごめんなさい。それに、も、もうすぐ終わりますね」



もうすぐ終わる…。


「…寂しいですか?」


「へ?」



「…いえ、何でもありません」


寂しいのは私だ。





「そうですか。…ぼ、僕なんかとペアでごめんなさい」



「何を今さら…。別に結果が良ければ大丈夫です」




あの時からどうしても忘れられるはずなかったあなたが今私の隣にいる。…すぐ近くにいる。彼が私のものにならないことはわかっている。



だから、この時だけ彼を私に。こうやって、ペアになれたのも何か理由がある。







ビクッ

「え、あの…っ?」



優しく彼の頬に手錠がされていない方の手を当てた。






「…目、閉じてください」



そう言ってゆっくりと、彼の唇に自分の唇をくっつける。口づけをした。






嫌いなんて、嘘。

興味ないなんて、嘘。




ゴミなんて言ってごめんなさい。

傷つけてごめんなさい。




私はたくさん嘘をつきすぎた。

そして、たくさん傷つけた。





このまま時が止まってしまえばいいのに。いけないことだって知ってる。勝手に彼の許可なく唇を奪ってしまった。





「んっ!」

彼の声がもれる。頬に当てていた手を後ろに回し、彼の後頭部を押さえ、深くキスをする。…私でいっぱいになって。離したくない。


でも、それは長くは続かず息が苦しくなったのか彼は私の胸を弱い力でとんとんとする。




「はぁ…っ」


「…ごめんなさい。今のは忘れてください」




彼の前だと正気になんていられない。瑞希を好きになればきっと楽になると思っていた。だけど、自分に嘘ついて楽になるはずない。こんなプライドなんて捨てたい。




そんなことを考えている時だった。すると、予想もしない事態がおきた。あと、もう少しで鬼ごっこは終了するはずなのに…。





「____捕まえた」



息が乱れている彼の頭にぽんっと誰かが手を置いた。





「、どうして?」


捕まえた相手を見て目を見開く。





「か、会長さん…っ?」


「俺様がお前を捕まえてやった」



意味ありげに微笑む神影。




『はーい!そこまで!!終了だよ~。皆お疲れ様ー』



そのタイミングで終了を告げる祥のアナウンスが流れた。




 
 
 
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