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爽やかストーカー
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しおりを挟む【中野side】
部屋の中で君のコレクションを眺める。
「ふははっ」
君とまた話すことができた。放課後、君があまり人が通らないところから帰るのは知っていた。あの不良に誰とも目を合わすなとか命令されているのももちろん知っている。
待ち伏せして、ぶつかった時ほんのり香る君の匂い。俺の好きな君の匂い。
懐かしかった。
また君に触れることができた。
おかしくなりそうなほど全身がゾクゾクした。
しかも久しぶりに会ったのに俺のことをちゃんと覚えててくれていた。
まあ、忘れてたら許さなかったけどね。
俺何していたかわからないし。
「中野くんだって…ははっ、ニヤける」
まあ、会った時最初は優しい雰囲気で頑張ったけど俺としたことがまたいじめたくなる衝動にかられて敵わず、酷いことを言ったし、水で溺れさせるようなマネをしてしまった。君を目の前にすると、我慢できなかったみたいだ。
ああ、水に濡れる君もエロかったなぁ…。
どうして君はこんなに愛しくて可愛くて可愛くてたまらないんだろう。
すっごく、俺を楽しませてくる。
もっともっともっともっともっと苦しんで俺だけを考えて俺無しじゃ生きていけなくなるようになって欲しい。
ポケットから携帯を出す。
携帯であの時何枚か撮った写真を見る。
また増えた君との思い出。
「はぁ…やっぱりたまんないよ」
こんなレア写真…すぐイッちゃいそうだよ。
可愛いな…食べちゃいたいな…。
俺にバケツの水に何回も押さえつけられて意識飛ばしそうだった君。たまらなくなって携帯の画面を舐める。こんなに可愛いから変な虫がたくさんついちゃうんだ。でも、駆除するためにスプレーはまいといた。会計や会長が君のこと騙していること。書記と副会長が君のこと嫌っていること。
半分本当で半分嘘。
君の中からあんな虫軍団を消してやりたい。
そして再度、嫌われ者だと教えてやった。改めて自覚させると泣きそうな顔してた。
これこれ。
これが見たかったんだよ。
今すぐでも押し倒してやりたかったけど我慢した俺は紳士。
だけど、あの最強の厄介者である幼なじみのことは触れてない。
なぜかって?
アイツはとにかく危ない奴だって俺は知っているから。
ゆっくり、ゆっくりアイツの恐ろしさをあおいちゃんに教えればいいんだ。
今まで近くいて優しい優しい幼なじみの豹変ぶりに絶望するあおいちゃんも見てみたいしね。
「はははっ!!」
いつか、俺が君を助けてあげるからね。
お気に入りのあおいちゃんの写真を片手に優しくキスをした。
次の日。
俺はある計画を立てていた。
『佐藤へ。今日の夜8時に体育館倉庫の掃除を頼む』
という差出人不明の手紙をこっそりあおいちゃんの靴箱にいれた。あおいちゃんは頼まれると断れない性格だって知ってるからわざとそう書いた。君は本当に優しい。優しすぎるのも痛い目みるってこと俺が教えてあげないといけないって思った。
…読んでくれたかな。
まるでラブレターを渡したみたいな感覚だ。
興奮が止まらない。
あと、何で体育館倉庫にしたのかというと、理由は簡単。体育館倉庫の鍵は俺が所持しているから。だから都合よく自由にできるってわけ。
俺はこういうの考えるの得意だし頭の回転早い。
できると判断したのは全て成功する。
スポーツと同じ。
タイミングとコツさえ掴めばこっちのもん。
楽勝だ。
あおいちゃんと約束の時間までまだまだ時間はあるから俺はその間重要な準備をしないといけない。
それは、倉庫の中に見えないようにカメラを設置すること。
「…よし、隠れているな」
完璧だ。
倉庫内でさっそくバレないように設置する。
このカメラ結構高かったんだよね。
暗闇でもくっきりうつすやつで超高画質。
ナイトビョンカメラといって俺的には結構写りかたエロいと思うんだよねコレ。これであおいちゃんを撮影すると考えるともう本当にそれだけで幸せ。
あと、あおいちゃんの恐怖に歪む顔を撮影したいしね。
「楽しみだなぁ… 」
また、コレクションが増える。
そろそろコレクションじゃなくて本物が欲しい。
俺は頭の中で何度も君を──。
─────
……。
あれからあっという間に時間が経ち8時になった。
俺は倉庫近くの壁のところに隠れてあおいちゃんを待つ。
すると、あおいちゃんが電灯を灯しながら倉庫の前にいるのが見えた。
ちゃんと、キテクレタ。
…一人で来るなんて偉い偉い。
これも予想の範囲内。あおいちゃんは周りに掃除なんて手伝わせない。全部一人で頑張ろうとする子だから。将来の彼氏としてこれくらい知ってて当然だよね。
あと、偉い子にはご褒美をあげないと。
それから、あおいちゃんの様子を伺い、あおいちゃんが倉庫の中に入って行くのが見えた。
今だ。
俺はチャンスとばかりにそれを見た瞬間、走り出しすぐに倉庫の扉を閉めた。
ガシャン──ッ
しっかりと鍵をかける。
計画は順調だ。
『だ、誰かいませんか?』
ドンドンと扉を叩く音が聞こえ、声も震えているのがわかる。
焦りと恐怖が伝わってくる。
あぁ、素晴らしい。
俺を刺激してくる。
そう思いながら俺はあと一ヶ所の入り口からこっそりと中へと入る。
実は体育館倉庫にはあと一つ入り口がある。
まあ、ボール数えているときにたまたま見つけちゃっただけだけど。
ガタンッ
バレないよう音を立てずに入るつもりだったが近くにあったバスケットボールを入れる籠に足が当たってしまった。
仕方ない。
ハプニングはつきものだとそう考える。
『─だ、だれ?』
あおいちゃんの可愛らしい怯えた声が聞こえた同時に、
バタンッと音がし、
電灯がその拍子に地面へと転がっていった。
多分、あおいちゃんは怖くなって腰が抜けたんだと思う。
こんな夜の学校、しかも倉庫に一人だけって考えるだけで怖いよね。
あぁ、暗くてよくわからないけどきっと可愛い表情してるんだろうなぁ。
怯えているあおいちゃんを他所に俺はあとでカメラを確認しないといけないとそればかり考えていた。
それと顔がバレるといけないから前もって準備していた覆面をポケットから取りだした。
強盗のやつがよく被ってるのと同じやつ。
目と鼻と口はあいている。
それを被って準備が整い、隅の方に置いていたガムテープを取り、ゆっくりとあおいちゃんに近づく。
「だ、誰ですか…?」
喋ったらバレるから無言を通す俺。
転がった電灯を拾い灯りを消す。
「ッ!…い、いるなら…ここから出る方法を、教えてほしいです…っ鍵が開かなくて…」
そんなのダメに決まってるじゃん。
突然消えた灯りに驚いているみたいだ。
精一杯、声を振り絞っているのがわかる。
少しすると、暗闇でも目がなれてきた。
俺はあおいちゃんの肩に手を伸ばす。
「…っ!」
触れた瞬間、ビクッと震えだした。
俺、あおいちゃんに触れてる。
俺の手があおいちゃんの肩に触れてる。
そう考えるだけで興奮してきた。
君の可愛さは俺だけが知っていればそれで良い。
他の誰も君の良さなんて知らなくて良い。
ううん、知ってちゃダメなんだよ。
ねぇ、分かった? という気持ちを込めて俺はあおいちゃんの首筋に柔く歯を立てた。その瞬間、あおいちゃんの小さく零した甘い声に、俺は目を瞠りゴクリと息を呑み込んだ。
…はぁ、な に こ れ た ま ん な い 。
「や、やめ…っ」
やめてと俺を拒否しようとしてくる。
悪い子だなと思ったけどきっと俺以外にやられてると思って不安なんだよね。
でも安心して、と言わんばかりに俺はそこを何度も舐めては甘く噛みを繰り返して紅く色づくまで愛撫を施した。
「…っ、や…っ」
すると、あおいちゃんはヒクッと涙を零し泣いてしまった。
これくらいで泣いて可愛いなぁ。
でも君は本当にダメな子だ。
泣いたって許されない。
俺以外の奴に言葉を惑わされたりしたら、次こそ本当に許せなくなる。
だからあんな変な虫がたくさんつくんだ。
いわゆるコレは調教。
「…ゆ、ゆう…助けて…」
ボソッとあおいちゃんの口から溢れた。
……今、なんだって?
さっきまで一人でちゃんと来て偉くてご褒美をあげないとって思ったけど今のでどうでもよくなった。
他の男の名前呼ぶなんてむかつくなぁ。
今のは確実許せない。
「…んぐっ!」
持っていたガムテープを切って口をきつく塞いだ。
くくっ
どう苦しい?
「…ん、んっ!」
これじゃあ他のことなんて考えられないでしょ。
他の男の名前なんて呼ばせない。
聞きたくもない。
ここで俺の名前を呼ぶのが普通だ。
なのにあおいちゃんは。
俺を嫉妬させるのが得意。
もしかして、わざとやってる?
ははっ、だとしたら成功だよ。
俺、メチャクチャ妬いてる。
むかつくほどにね。
ここに呼んだのは掃除なんかのためじゃない。
ただ二人きりになるために呼び出しただけ。
まさかこんな上手くいくなんてな。
日頃の行いがいいから神様も俺に味方してくれる。
小さく笑みを溢し俺はガムテープを床に置いて、あおいちゃんの顎をクイッとあげた。
ガムテープ越しに軽くキスをする。
ガムテープで口を塞ぐ前にキスしとけばよかったと後悔する。
俺って先走るとこうなる。
やっぱ、冷静が一番だと思った。
でも直にしてたらしてたで理性が保てない自信がある。
冷静さどころじゃない。
とにかく、慎重が大事だ。
「…んっ、ふ」
苦しそうなあおいちゃんの声が倉庫内に響く。
また俺を興奮させてきた。
この子は、俺を惑わすのが上手いな。
責任とってもらわないと。
さっき冷静や慎重が大事とか思ったけどあおいちゃんが目の前にいるだけでどうでも良くなってしまう。
一秒でも早く俺のものにしたいって思ってしまう。
…限界。
その言葉が俺の脳内を駆け巡る。
人間って限度ってものが存在する。
それ以上になるとコントロールが不可能。
まさに、今がそれ。
ゴクンと息を呑む。
…もう俺さ、あおいちゃんにふさわしい男になれたよね?
我慢できずにふさわしい男になった俺はあおいちゃんのシャツに手を伸ばしゆっくりと脱がしていった。
露出される肌。
震える小さな体。
まるでいけないことをしてるみたいだ。
もっと明るいところでじっくり見たかったと考えていたら弱い力で抵抗された。
…何で拒むの?
俺、今まであおいちゃんのために頑張ったのに。
弱い力が可愛いとか考えてる場合じゃない。
抵抗するその態度にも腹が立ち、床に置いていたガムテープを再度取ってそれをあおいちゃんの両手にくるくると巻いた。
「んっ!ふ、」
泣いても無駄無駄。
俺って抵抗されたり泣かれるほど更にものすごくいじめたくなっちゃうんだよね。
だからね、あおいちゃん…逆効果。
あおいちゃんの脱ぎ終わったシャツを遠くに投げる。
はあ…今まで妄想とかでしかあおいちゃんの肌に触れたことなかったけど生はやっぱりやばいね。想像以上にすっごいエロい。
また息を呑み、ピンク色の可愛いぷっくりした乳首に触れる。
「っ!」
あおいちゃんはビクッと体を震えさせる。
反応までいちいち可愛い。
もうこれ確信犯でしょ。
「ん…ぅっ」
口を封じるプレイもなかなか俺好み。
でも楽しい時間はそう長くは続かなかった。
俺があおいちゃんのズボンに手を伸ばした丁度その時だった。
ガシャン──!
倉庫の扉が開いた。
「コラ!そこの君何をやってる!!」
眩しい光が照らされたと共に警備のおじさんの声が響いた。
光が照らされてはっきりとあおいちゃんの体が露になって見える。
…なんで?
警備のじじぃが?
倉庫なんていつも見回りしないくせに。
頭が上手く回らない。
一体どうなってるんだ。
「あおいっ!」
俺の愛しい人の名前を呼んでまた誰か入ってきた。
っ!
俺は目を見開き固まった。
なんでバレタ…?
あおいちゃんの幼なじみである一番危険な奴。
すると、あおいちゃんはそれを見て安堵したのか気を失った。
幼なじみは俺が投げ捨てたあおいちゃんのシャツを拾って近づいてくる。それも恐ろしいほど真顔で。
あともう少しだったのになんで邪魔するんだ。
まずい…今までの計画が壊れる、壊れていく。
「あおいを返してもらうよ」
壊れた。
奴はそう言ってあおいちゃんの口元のガムテープをとり、上半身にシャツを上から被せてあおいちゃんをお姫様抱っこした。
あおいちゃんに相応しい男は俺なのに…。
俺のあおいちゃんを汚い手で触るな!
なんの努力もしてねぇ奴に簡単にあおいちゃんを奪われたくない。
一番あおいちゃんの近くにいただけの存在なくせに。
「君ちょっと来なさい」
警備のじじぃが俺の腕を掴もうとする。
それを強く払いのけた。
「うるさい!!俺の…あおいちゃんをとるな!!」
さっきまで俺の腕の中にいたあおいちゃんがいない。
「あおいは君のものじゃないよ。……それとも自分に価値があると思ってんの?死ねよ」
突然、態度が豹変する。
やっぱり、こいつ危ない奴だ。
こんな奴にあおいちゃんは渡せない。
突き刺さる視線には殺意がうかがえる。
今にも俺を殺しそうな勢い。
「覚悟できてんだろうな?…ま、どうせ君は明日からこの学園にいられないけどね」
怪しく口の端をあげて笑い、それだけを言い残して倉庫からあおいちゃんを抱えて去っていった。
「ッ待てよ!!」
明日からこの学園にいられない?
ふざけんな。
もし、この学園にいられなくなろうとも俺は必ずあおいちゃんを手に入れる。
第一、顔だって覆面してバレてないから俺だってわからない。
「君、中野健太くんだよね?」
警備のじじぃにそう言われる。
はっ…?
今…なんて。
「君が中野健太くんだってことはわかってるんだ。かなりのストーキングといじめ、いじめの度が過ぎて殺人未遂、また今の強姦未遂」
「やめろ!俺は違う!!」
なぜだ。
なぜ気づかれた。
計画は完璧なはずだった。
俺はいつだって冷静で物事を考えて行動するタイプだ。
「君がしてきたことは許されるものではない」
「うるせぇ!じじぃは引っ込んでろ!!」
俺は警備員を強く押し払いのけ、倉庫から飛び出した。
「あおいちゃん…あおいちゃん、あおいちゃん…あおいちゃんあおいちゃん…っ」
こんな危険なところから一緒に逃げよう…?
最初からそうすべきだった。
すぐにあおいちゃんのあとを追うがどこにも見当たらない。
「クソッどこに行った!!」
そんな時間も経ってないし遠くに行ってないはず。
クソッ。
いつか…いつか…
俺が絶対助ける。
それまで待ってて。
俺、また相応しい男になって戻ってくるから。
絶対ね。
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