嫌われ者の僕

みるきぃ

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自己中な不良くん

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【あおいside】


こ、この状況は一体どうなっているんだろ…。さっき笹山くんたちにいろいろ言われてた時、突然現れた生徒会のメンバーの会計さん。



な、なんか怒ってる様子だった。もしかすると、僕を連れ出したのは花園くんのことを聞くためかもしれない…。突然消えた花園くんをさがしているとか…。だって花園くんは人気があって生徒会の皆様にとても好意を持たれている。それを僕なんかのせいで…。どうしようといろいろ考えていると、連れて来られたのはクラスから離れた旧校舎。今は不良さんとかがたまに集まるくらいなところで実際には使われていない。僕はそのまま手を引かれて、会計さんは古びたドアを開けて中へと入っていく。そして、一番奥の部屋の中に入った。





「あんたってバカなの」



ビクっ

「っ!」



急に話しかけられて驚いてしまった。そんな直球で言われるとは思っていなかった。





な、なんて言えばいいんだろ…、また僕なんかが口に出したら怒られそうで怖い…。


そのまま黙っていると、なぜかにっこり微笑む会計さん。





「ごめんね。驚かせちゃったね~」


「えっ、いや、ぁ、あ…の」



「そんな怯えなくてもいいよ。一応ね、助けたつもりなんだけどな~」


「…え?」



た、助けた…?

ぼ、僕なんかを…?


不良さんたちからってことかな?よくわからないけど…




「ぁ、ありがとう…ございます」


まさか、会計さんに助けてもらうなんて考えもしなかったけど調子のっちゃだめだ。きっと僕に聞きたいことがあるのかもしれない…。だって僕は、助けられるほどの価値はないし…。





「いいよ、好きで助けたから。…あ、そうだ。ねぇ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ」



「き、聞きたいこと…ですか?」



僕はゴクリと、息をのむ。聞きたいことって、きっと花園くんのことをだよね?



ど、どうしよう…なんて言ったら。僕のせいで花園くんは傷ついて…っ。




「いつもあんなことされてんの」



「えっ、?」



花園くんのこと…じゃないの?想定外の質問に頭に入ってこなかった。




「何驚いてんの?」



「ぁ、いや、えっと…」



言葉がうまく出てこない。




ど、どうしよう…ちゃんと聞いていなかった。何も喋らない僕に痺れを切らしたのか



「不良たちにいつもあんな変なことされてるのかって聞いてんの~」



会計さんはため息をついてもう一度聞いてきた。




「へ、変なこと…ですか」



「膝の上に乗ってた」


会計さんは、ムッと口を尖らせながらそう言った。




「それは…今日が初めてです…」


いつもはパシリか、暴力、罵られるかなのに今日はいつもと違かった。膝に座らされたり、首を舐められたりして…普段なら絶対僕のこと触ろうしないのに。…怖かった。


暴力は痛くて辛いけど今日は本当に何をされるかわからなくていつも以上に怖かった。不安と恐怖でいっぱいいっぱいだったとき会計さんが来たのだ。






  「……本当、危なっかしい。ねぇ、嫌ならちゃんと言わないとダメだよ~。じゃなきゃ俺がムカつくから」



「…っ、」



…自分でもわかってるつもり。会計さんの言っていることはよく分かる。だけど、弱虫な僕は何も言えないんだ。逃げてばかりで受動的な態度しか取れない。だって怯えてばかりで恐れてるから、前へ進む勇気すら出せない。もし、言ったら何されるかわからない。その恐怖で従うまま。…そう、自分が可愛いんだ。殴られたくないから従う。自分の意志なんて弱いからいつも後回し。この性格だから、いつまでたっても何も変わらないってこと知ってる。最悪だ…僕って…。周りをイラつかせてばかりで…。





「ねぇ、ちょっとさっきムカついたから、こっち来て」



会計さんはイスに座り、その隣にあったもう一つのイスに座ってと促す。





「ご、ごめんなさい。失礼…します」


僕は顔を俯けながらゆっくりと隣に腰かける。

ムカついたって…ことはまた僕自分でも気づかないうちに嫌な思いをさせたんだ…。









どうしたら、いいんだろ…。



「さてと、まずは俺が来る前、アイツに何されたから教えてね」



会計さんは、足を組んで僕をじっと見つめる。




「え?」


「だーかーら、アイツに何されたの」



「さ、笹山くんにですか…?」



「そう」



な、何されたか…何で聞きたがるんだろう…。答えないでこのまま黙っていちゃ何も始まらないよね…。




「ぁ、えっと…膝に座りました…」



「それは分かる。他は?」




「か、…髪とか触られたりとかです…」



「他は」


「えっと…」





「あ、ごめんね。あんまり思い出したくないよね。ゆっくり話して」


「あ、はい…」




ほ、他は…あっ、匂い…とか嗅がれちゃったり、そういえば首舐められたりも…。ど、どうしよう。こんな恥ずかしいこと言えない…。




「ん?あれー、もしかして顔赤くなってる?」



「へっ!?」



ビクッ!

会計さんが僕の頬に手を添えた。

きゅ、急にびっくりした。僕…絶対、変な顔してる。





「何その反応。えっ、まさか恥ずかしいことされたわけじゃないよね?」



会計さんに顔を手で固定されたまま、問われる。目線が合ってしまう。





「は、…恥ずかしいことというか…ただ、ちょっと匂いを嗅がれたり…く、首を舐められたり…そ、それだけです…っ!」



視線が怖くてぎゅっと目を閉じた。





「…危機感無さすぎ」


「いっ!」



痛みが走ったと思ったら会計さんにそのまま頬をつねられていた。





「ご、ごめんなさい…っ」



…どんな顔すればいいんだろ。



ただ、謝ることしかできない。…頬がじんじんと痛む。





「はぁ…」


会計さんは深いため息を吐いた後、ゆっくりと頬を離してくれた。

まだじんじんする…。




ただえさえ、会計さんとこうやって話しているのが不思議で…それに僕を汚いと思っているのに僕の頬に触れたことに驚いた。







「…あのさ、同じことしちゃだめ?」



「え?」


い、今なんて…。同じこと…?




「俺も髪触りたいし、いろんなことしたい」


会計さんは、にこりと微笑みながらそう言った。




いろんな…こと。想像したら恐怖が襲ってきた。も、もしかしていつものようにいじめるってことかな…。そ、そんな…怖い。返す言葉が見つからず、そのまま目を下に向けた。手が震えているのがわかる。

お、おさまって…。紛らすためにぎゅっと手に力を込めた。緊張と恐怖が僕を襲う。





「ま、待って。もしかして勘違いしてるでしょ」



少し焦った様子の会計さんが僕にそう言ってきた。か、勘違い…?僕は恐る恐る顔をあげた。





「まあ、無理ないか…。そんな反応するのは俺が今までしてきたことにあるせいだし」



「あ、あの…っ」

よくわからないけど僕のせいで会計さんが落ち込んでいる。こういう時ってどう言えばいいのかわからない。人とあまり関わってこなかったから言葉を発するだけで精一杯で考える頭がない。





「俺が悪かった。いきなり、ここに連れてきて理解できないよね」



「あの…」


ど、どうして僕なんかに…謝ってるの?





「ほら、泣きそうな顔して…俺のこと怖いでしょ」




ビクッ。

「あっ、」


するりと会計さんの手がのびてきて僕の眼鏡に手をかけた。



視界が急にぼやける。そこで眼鏡が外されたことに気がついた。



「め、眼鏡…!っ」



すぐに返してもらおうとしたが会計さんの人指し指が僕の唇に当てられた。




「…お願いだ。そのまま聞いてほしい」


真剣な顔でどこか切ない目をしていた。か、会計さん…?僕はどうすることもできなくてゆっくりと頷いた。





「…俺は今までお前にとても酷いことをしてきたし、傷付けた。許されるものじゃないのはわかってる」



「え…」


僕は今の状況に頭が混乱した。きゅ、急にどうしたんだろう?





「俺は本当最悪の人間だ。だけど…お前に許してほしいと思ってる。嫌わないでほしいと思ってる」


会計さんは自分の前髪をくしゃりとかき上げながら言った。



な、何を言っているの…?最悪の人間は僕の方なのに、




「ははっ、おかしいよな…俺超自分勝手。今までしてきたことを棚にあげて言いたいこと言ってる」




「え、あの…そ、そんな…っ」


言葉が上手く出せない。ど、どどどうすればいいの。会計さんは、悪くない…。周りをイラつかせる僕のせいだ。

責任は僕の方にある。こんな弱虫でウジウジしている性格だから悪いんだ…。

こんなの今まで経験したことがないからどうしたら会計さんを切ない顔させずに済むんだろう。







「だけど、ちゃんと謝らせて。…今までたくさん傷付けて本当にごめん。俺、もっとお前のこと知りたい」


会計さんは、申し訳なさそうに頭を深々と下げた。




ど、どどどうしよう。会計さんが僕なんかに頭を下げている。い、今までしてきたことを謝っているんだよね…。

なのに何も反応できない。僕は何言われても別に平気だからそんな…謝らないで。と、途端に申し訳ない気持ちになった。




「か、顔あげてくださいっ」


とりあえず僕は慌てながらもすぐ顔をあげてもらった。

次はなんて言おうかと戸惑っていた時、会計さんは椅子から立ち上がり僕の前に来てそのまま無言で抱き締めた。





「え、…?」


すると、ぎゅっと抱き締める力が強くなる。ど、どうしたんだろ…?



「…何で俺より申し訳なそうにしてるわけ」


会計さんの声がだんだん弱々しくなる。




「え、えっと…それは」


あの生徒に大人気のある会計さんに僕はこんなことを言わせてるし…本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。




それに



「会計さんは、悪くないです…。ぼ、僕が弱虫でウジウジしているせいなんです。だから…っ」


そんな思い詰めたようにしないでほしい。






ぼ、僕なんかに謝ってくれるなんて…良い人なんだと思った。






すると、ぽんと頭を撫でられた。



「…そんなネガティブなところ好きだよ。俺、ずっと不安だった。お前に嫌われるって想像しただけで辛かった。…まあ、嫌われることした俺が言えたことじゃないけどね」



会計さんの声は酷く辛そうだった。
 



「き、嫌うなんて…ありません」



嫌うわけない。そんな権利、僕にはないから…。逆に僕が嫌われてるってならわかる。






「…なにそれやばい。嬉しくて俺、調子のるよ」


会計さんはゆっくりと立ち上がり、小さく笑顔を見せた後、隣の椅子に戻った。




「でも本当に今までしたきたことは悪かった。俺はもうお前をいじめたりしない。…図々しいけど仲良くなりたい」


会計さんは、いつもとは違う真剣な顔だった。



仲良くなりたいと、もし嘘であってもそう言われたら素直に嬉しいと思った。








ぽろっ頬に何かが伝った。





「え、な、なな泣いてる!?ごめん大丈夫?!」


会計さんは目を丸くしたまま、僕を見て焦った。一瞬どうしたんだろうと疑問に思ったけどすぐわかった。ほ、本当だ…、僕泣いてる。でも勝手に次々と溢れてくる。でも多分、この涙は…。




「だ、…大丈夫です。い、今までそんなこと言われたことなかったので嬉しくて…ご、ごめんなさい!…み、見苦しいものを」




すぐさま顔を隠そうとしたけど、会計さんに腕を掴まれ、阻止された。





「もっとよく見せて。…あの、我慢しないでもっと泣いていいよ」



「え、…」


「意地悪なこと言うけど、俺を思って泣いてくれてると思うとなんか心から嬉しくてさ。だからもっと見ていたい」



「…そ、そんな…変なんで、見ないで…ほ、ほしいです」



そんなメンタル強くない。泣き顔をそんな見られると恥ずかしくてたまらない。変な顔が泣き顔のせいでもっと変になるからできれば晒したくない。





「ごめんごめん。全然変じゃないよ。もういじめないって言ったばかりなのに意地悪してごめんね?……ほら、俺の袖で」



会計さんは、少し微笑んで自分の袖で僕の涙を拭った。


僕なんかに親切にしてくれた。今日は本当に驚かせてばかりだ。







「ご、ごめんなさい…袖を濡らしてしまって…」



「気にしなくていいよ。レアなもの見れたし」


「レ、ア…?」



「ううん。何でもなーい」



と、クスッて笑みをこぼし、会計さんは人指し指を立て自分の顔の前にもってきて秘密と、口パクで言った。一体、レアって何なんだろうと思いながら、そんな姿まで絵になる会計さんはすごいと感じた。



「あ、それより、前にも言ったと思うけど、会計さんじゃなくて祥って呼んでほしいな」


ダメか?と言いながらお願いする。



そ、そう言えば前にもそんなことを言われたような気がする。…だ、だけど、恐れ多い。仲良くなりたいと思ってるけど僕なんかがって思ってしまう。



そ、それにゆう以外の人の名前なんて今までに呼んだことがない。





「えっと、それは…ちょっと恐れ多い…です」



やんわりと断ったが


「じゃあ、一回だけ」


どうしてもと粘る会計さん。





「で、でも」


本当に呼んでもいいのか悩む。


僕なんかがこうやって近づいているのも身の程を弁えろって感じなのに、名前まで呼んだら会計さんの親衛隊さん達に確実殺されるのが目に見えている。




「別に困らせるつもりはないんだ。ただ一度だけでもいいから名前呼んでほしくて。…ねぇ呼んで?祥って」



「え、えっと… 」



「ほら、ここには誰もない。俺とお前だけ」




そうだ。今ここには会計さんと僕だけ。親衛隊さん達はいない。そもそも今は授業中であり、ここはもう使われていない旧校舎。当たり前に人がうろつくなんてことない。





「ほ、本当に…呼んでも?」


「もちろん。呼ばれたい」



僕はごくりと息をのむ。ごめんなさいと思いながら決心した。



「しょ、祥さん…っ」


やっとのことで出た言葉。恥ずかしさと申し訳さが僕の中で混ざり合う。僕はどうしていいか分からず、会計さんに背を向けた。





ぎゅっ、

途端に後ろから抱き締められる。





「…どうしよう。俺、今まで一番幸せ」



僕の耳元近くでそう囁いた。擽ったくって耳が赤くなる。






「お、大袈裟…です」


そう言うと、会計さんは背を向けていた僕の向きを元に戻した。そして目が合う。





「かもね」


そう笑う会計さんは、とても幸せそうな顔をしていた。




じ、自意識過剰だと自分でも思うけど僕が誰かにこんな顔させてると思うと心が温かくて気持ちが良い。今までは僕のせいで皆に嫌な顔しかさせなかった。



それはとても多く見てきた。

…怖いほど。






それとはまた違って、そんな嬉しそうな顔されてるとこっちまで嬉しくて照れてしまう。



また泣きそうだ。


だけど、我慢した。





「あぁ、ご褒美もらったからこれで今はとても十分。これ以上困らせたくないから俺と、もっと仲良くなってからまた呼んでよ」



それまで会計さんって呼ばれるのも嬉しいから、と言ってくれた。





「…は、はいっ」



少しずつ、僕も変わりたい。








そう心に思った時だった。そうだと会計さんは、何か思い出したかのような反応を見せた。僕はどうしたんだろうと見つめる。




「これ、返すの忘れてた」



会計さんはポケットから取り出し、眼鏡を渡してきた。





危ない。

ぼ、僕自身忘れかけていた。




「あ、ありがとうございます…」



受け取って、すぐに眼鏡をかけた。

…やっぱり眼鏡は落ち着く。







す、素顔を晒したまま泣いたりしてきっと酷い顔してたんだろうな…。また一つ、醜態が増えたと残念に思い、心の中でため息を吐いた。






そ、そう言えば会計さんって僕に花園くんのこと聞かないのかな…?だって、好きな人が突然いなくなったら不思議に思うよね…。花園くんはとても人気だ。明るくて優しい。そんな元気な彼が見えなくなったら絶対気になるはずだよね…。







…あ、謝ろう。

僕なんかのせいで花園くんは傷ついた。







「あ、あの…会計さん。花園くんのことは聞かないですか?」



勇気を振り絞って恐る恐る尋ねてみた。


すると、

一瞬だけ会計さんの体が固まった。






「…は?なんで」


急に不機嫌になり会計さんから笑顔が消え、歪んだ。あと、若干声も低くなっている気がした。



 


な、なんでって言われても


「え、えっと…」



そう、かえってくるなんて想像してなかった…。





も、もしかして余計なお世話だったのかな…。多分、怒らせてしまった。だとしたら僕本当最悪だと自分が心底嫌になった。





ガタンー



すると、会計さんは立ち上がり僕の前に立って手を伸ばしてきた。




な、殴られる…っ、ぎゅっと目を瞑り身構えた。









ぽんっ、



…え?

あ、れ






「贅沢なこと言うけど…今、俺以外の男の名前呼んでほしくない 」


優しく頭を一回撫でられた。





 




「ご、ごめんなさい…」


力が抜けた。



いつものくせで殴られるとか何勘違いしているんだ…。





 

「…まあ、確かにうちの副会長は探してたみたいだけどね~。何かアイツが消えたのって理由でもあんの?」



「そ、それは…僕のせいなんです」


「なんで?」



「は、花園くんとの約束、僕が破ってしまって…そのまま花園くんを傷つけて…学校に来なくなりました…っ。ぼ、僕最低な奴なんです」



口に出してて、すごく僕が酷いやつだって思い知らされる。




「ほらそんな顔しないで、ね?」



普通なら絶対、僕のこと責めたいはずなのに…こうやって優しくしてくれる。




ちゃんと、謝らなきゃ。





「そ、その…僕、謝りたくて…。ごめんなさい。生徒会の皆様にとって大切な花園くんを傷つけてしまって…」




僕なんか優しくされる価値なんてない。そう思えば思うほど胸が痛くなった。






「俺から見たら君が傷ついているように見えるよ」




 …え?、


僕が?




「自分ばかり責めたらだめだよ。多分、そこ君の悪いところ」



人指し指で額をつんとされる。





「ぼ、僕なんかより花園くんが…っ」


「ほーらそれ。“僕なんか”って自分を卑下したらだめだよ」



「で、でも…」


本当に悪いのは自分だ。 




「それに約束破るなんて俺、何回もあるよ?てか、約束は破るためにあるとか言うじゃん」



「そ、そうなんですか…?」


聞いたこと…ない。




「そうそう。あー、なんか、アイツのためにずっと悩んでるって俺が嫌だから言うけど、仲直りって方法あるじゃん」



え、

「な、仲直り…?」


「仲直りしたらいいと思うよ。そして悩まないで」




仲直り…。どうしてそれが思い浮かばなかったんだろう。多分、自分に自信がないからだ。




許されるはずない。傷つけた。最低な僕は人に関わると周りを不幸にする。これらがずっと頭の中で回っていたから仲直りってそんなことも出てこなかった。







そっか…仲直り。

誰かに言われて気づくなんて。




「か、会計さん…ぼ、僕ダメ元でも花園くんとの仲直り頑張ってみます…。教えてくれてありがとうございます」




会計さんのおかげで勇気が出た。花園くんはこんな僕でも親友って言ってくれた。 




今度ちゃんと会ったら花園くんに謝って仲直りしたい。





「あーぁ俺、なんか余計なこと言ったかも。…まあ、いいや頑張ってね」



「は、はい!」



会計さんからまさか頑張ってなんて言われるなんて思わなかった。誰かに応援?されるってこんなに自信がつくなんて考えもしなかった。





それに、花園くんが僕のこと許してくるかわからないけど





きちんと自分の気持ちを伝えないと相手にも届かない。もう傷つけたくない。仲直りしたい。






「ねぇ、そんなことよりも、もっとあおいに俺のこと知ってもらいたい」



──えっ、い、今、初めてあおいって名前で呼ばれた。不意に言われたからびっくりした。か、会計さん僕の名前知ってたんだ…。






「ねっ、聞いてる?」



びくっ

「え、あっ…は、はい!ごめんなさい聞いてます!い、いいんですか?」



「当たり前だよ~。てか、知ってほしい」




知ってほしい…か。



こういう時どう言えばいんだろう…。






「ぼ、僕で良ければ…教えてください」



きちんとした日本語になっているかわからないけど伝わっているか心配だ。






「あぁやば…、俺、死ねる」


「え!?そ、そんなだめです!」



まさか、僕また変なことを口走ったりしたのかも。動揺を隠せなくて頭を抱え込む。






「ははっ、うそうそ冗談だよ。死ぬほど嬉しかったって意味だから」



会計さんはまた笑い出す。

 


え、っと冗談…?ほ、本気にしてしまった。少し恥ずかしくなった。




「…か、勘違いして申し訳ないです」

 



「もしかして俺のことまだ怖い?」


「え?」



「ちょっと聞きたくなった」





た、確かに前は怖かった…。


前までの会計さんは僕の存在すら否定していて目が冷たく言葉に棘があった。でも今はこんな僕に今までのことを謝ってきて温かい笑顔が向けられ、優しい言葉をかけてくれる。





「こ、怖くないです…。あの、僕…人と関わるのが下手で緊張してしまうんです。その上手く言葉にするのが難しくて…混乱するというか…そんな感じです」



「へぇ、また一個あおいのこと知れた」



そ、そんなこと言ってくれるなんてとても嬉しい…。




「…今の会計さんはとても話しやすい…です」




…ハッ。言ってすぐ思った。調子乗ってしまった。ほら、会計さん黙ってしまったし…。








「…何それ。超嬉しい」



会計さんを見てみると口元を手で覆い顔が赤くなっていた。

う、嬉しい…?












「あぁちょっと待って俺今情けない顔してるかも。…じゃあ今度は俺のこと教えてあげる」





それから何時間か会計さんは僕にいろいろ話してくれた。


 
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