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無口ワンコ書記
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しおりを挟む【あおいside】
花園くんから親友の証のキスをされてしまってから数日が経った。
あのとき、最後に『二人きりの時に親友のキスしような!それと、これは俺以外にはするなよ!!』と言われた。
そ、そうなのかな?キスは好きな人同士がやるものだと思っていたから初めてそんなこと聞いて驚いてしまった。
し、親友の証…。ぼ、僕なんかが親友って、思ってて 、いいの、かな……?よくわからない。
でも、親友の証のキスって…最近では外国みたいに挨拶みたいな感じで友達ともキスをするんだ。
僕って時代についていっていないのかな。
「──あおい!!」
放課後の屋上。さっき来たばかり。座って空を見ながら、ぼーっとしていたら、花園くんが肩を揺すった。
「ご、ごめんね。どうしたの?」
「どうしたのじゃない!今から親友のキスしようぜ!!」
花園くんはニッコリしたまま、僕の髪をクシャ、と する。
「……え、えっ?、親友の証の…そ、そのキスは…一回だけじゃないの? 」
「あ、当たり前だろ!!本当は毎日やるんだぞ!」
「そ、そうなの!?」
ぜ、全然知らなかった…っ。そんなに頻繁にするものだとは考えもしなかった。
「な、なんだよ!あおいは親友の俺とするの嫌なのか!!!」
そう声をあげて僕の肩を掴みながら前後に何回も揺すった。
不機嫌になってしまった。それに前後に揺られて酔いそう…。
「え、っと、い、嫌というか……そ、その…キスはちょっと…、」
「なんで?」
無表情になる花園くん。いつも笑顔は絶えないのに…怒らせちゃったかな…。
で、でもやっぱりキスは…
「は、恥ずかしい…から…っで、できません…」
親友といってもキスはできない…。恥ずかしく赤くなって、目線をそらした。
できないとは伝えたけれど、花園くんの反応がない。そして、視線をまた花園くんに恐る恐る向ける。
花園くんは真っ赤に顔を染めてどんな表情をしているのかわからないけど手で口元を抑えていた。
「は、花園くん…っ?」
僕はが首を傾げる。どうしたんだろ…
「ん。ちょ、ちょっと、トイレに行ってくる…!反応しちまったじゃねぇか!じゃあ俺が来るまで待ってろよ!!」
「?わ、分かった」
花園くんは顔を赤く染めながら屋上のドアを乱暴に開けたかと思うと、バタン!と強く閉めて出て行った。
そんなに慌てて、我慢でもしていたのかな?僕は花園くんが出ていった扉を見る。
花園くんを待っている少しの間、寝ようかな…。
そう思うと僕は青空の下、壁に背中を預けてそのまま目を閉じた。
─────
───────
………。
ペロ ペロ
「…っ?」
寝ていたら、手に生温かいものが触れた。僕はなんだろうと疑問に思いながら目を開けた。
すると、僕の右手の所に
「っ、ね、猫?」
とても可愛らしい猫さんがいた。毛並みはサラサラで色は白。
「どこから来たのかな…?」
『ニャー』
そう鳴きながら、僕に身体をスリスリしてきた。
「可愛い。あ、あれ?」
よく見たらハートの形をした黒斑があった。
「珍しいね。おいで」
僕が手を広げると猫さんはジャンプして抱きついてきてくれた。
「君はどこから来たの?僕はね、今友達を待っているんだ」
返事はかえってこないとわかっていても話しかけちゃう。それにしても僕ってどのくらい寝ていたんだろ?花園くんはまだ来ていないみたいだし…。
そう考え事をしていたら、僕の膝の上に猫さんが丸くなっていつの間にか寝ていた。ふふ、猫ってよく寝るって聞くけど本当なんだね。思わず、笑っちゃう。
バンッ!
すると、突然扉から大きな音が聞こえたと思ったら花園くんが戻ってきたみたいだった。
猫さんはその音でビックリしてものすごい速さで逃げて行ってしまった。
「あおい!!遅れてすまんぞ!」
「だ、大丈夫だよ」
花園くんはそう言って僕の隣に来るとそのまま腰を下ろした。
「ん?あおい、足に白い毛ついてるぞ!」
「…毛?」
一瞬、どういうことかなと疑問に思ったけどさっきまで僕の膝にいた猫さんのものだとわかった。
「あ、これはさっき僕の膝に猫さんが乗っていてそれで多分ついたのかもしれない」
そう伝えると、花園くんは口を尖らしてムッとした顔になる。
「ふーん。猫のくせにあおいの膝に乗るなんて生意気だな!!俺だってないのに」
「え、っと…あ。でもね、その猫さんハート型の珍しい模様があったんだ」
「へー。いくら猫でも許せない。妬く」
「……?」
は、話が噛み合ってないような…?とりあえず花園くんの雰囲気が怖くて僕はそのまま黙り込んだ。
「あ!もう帰ろうぜ!!今度は俺を膝枕しろよ!」
「え、…?」
「…はい、は?」
「えっあ、はい」
よく、意味を理解していないけど頷いて、屋上を出ていく花園くんの後ろをついていった。
───────
─────
……。
寮へと戻る際、花園くんが『今日は俺のとこに泊まれよ!いやずっとでもいいから!』と言って僕の腕を離さなかった。
だけど、迷惑かけるからごめんねと言ったら腕を離してくれた。
花園くんって本当いい人だよね。僕なんか隣にいてもそんな良いことないのに…。
こうやって泊まりに誘ってくれるのは嬉しいけどやっぱり花園くんは皆から人気あるし僕なんかが泊まったりしたら周りが黙ってないと思う…。
結局僕は怖がってばかりの弱虫なやつ。
成長の欠片もない。
だめだな…と深くため息をついて机に鞄を置く。そして、リビングに行きソファに腰を下ろした。ゆうはまだ帰ってきてないみたいだ。さっき玄関の方に靴がなかったのを見たから。
そういえば、昔からあまり深く考えてこなかったけどゆうは僕なんかと一緒にいて本当に迷惑と思っていないのだろうか。
いつも隣で助けられてきた。
こんなダメ人間な僕を。
すごい勝手で考えたくないけどゆうが僕に対して不快に思っていたら嫌だな…。こうやって、マイナスなことしか浮かばない自分も嫌。
すると、さっきも寝たはずなのにまた眠気が襲ってきてそのままソファの上に横になり目を閉じた。
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