2 / 91
嫌われ者
1
しおりを挟むお日さまの日差しが差し込んできて、朝目を覚ました。
僕の名前は、佐藤あおい。
昔から体力がなくて、その上頭も悪い…。まさにイイトコなしのダメ人間。
だけど、そんな僕には唯一自慢できるお兄ちゃん的存在の人がいる。
「あおい、おはよう」
「お、おはよう!」
この人がそう…。僕は慌てて返事を返す。そしたら、にこって微笑んでくれた。
優しい声に、優しい表情…。その落ち着いた感じが紳士っていう言葉が似合う。
彼の名前は、新條 ゆう。一つ年上で、本当性格が良くて、容姿だってそこらのモデルよりズバ抜けてかっこいいと僕は思う。
おまけに何でもこなすし、完璧って言った方がいいかもしれない。
それとは、また別に僕はチビで容姿だって言葉もでないくらい残念だ。こんな形で生まれてきたんだから今さら恨んでもしょうがないことだと諦めている。だから、平気。
ちなみに僕とゆうは、咲紅学園の生徒で今いるところは、2年生が使用している寮でゆうの部屋。
僕は、こうやって毎日ゆうの部屋に泊めてもらっている。荷物だってほとんどこっちに置いてある。
ゆうは、成績優秀者で部屋は一人。この学園は、優秀な生徒などには一人部屋が用意されている。
僕だって、自分の部屋は一応ある。けど、僕はもちろん優秀でも何でもないから一人部屋ではない。同室者がいてその人は、ものすごく僕を嫌っている。
というか…その人以外にも、ほぼ全校生徒に嫌われてるって言った方が分かりやすいかもしれない。
クラスの人達からは、罵声を浴びせられたり、机に悪口を書かれたりと…いじめに合っている。
さすがにこのいじめのことは、ゆうは知らないと思う。というか、知ってほしくない…。
もし、知ったらゆうは優しいから、僕のことを心配してくれる。迷惑なんてかけたくないし…第一、嫌われたくない。またそれとは違った方向にいじめられている僕を軽蔑するかも。
ゆうまで離れていってしまったら、もう僕には孤独という道しか残ってない。
「そろそろ食堂行って朝食をすませようか」
準備が終わったみたいなゆうは、制服を着こなし、いつでも出れる状態だった。
「う、うん。わかった!ちょっと待って」
それから僕は、大慌てで支度をした。
「あ、眼鏡はどうしたの?」
いつも眼鏡をかけてるはずの僕がしていないことに気づいたゆうは、そう言った。
「え?あ…その…。じ、実は眼鏡壊れちゃったから、今日はこれで…」
眼鏡なしで頑張るしかない。うっかり、地面に落とし踏んづけて壊してしまった。
「……そんなのダメに決まってるでしょ?」
「え…?」
ゾクッと寒気のようなものが走り、不覚にも一瞬だけ、ゆうが怖く見えてしまった。
「それだったら、何も見えないでしょ?俺、あおいのお母さんから予備の眼鏡預かってるからそれ使って」
今度は、いつも通りのゆうに戻った。
「よ、予備の預かってくれてるの…?」
「そうだよ。俺の机に置いてあるからそれ取っておいで」
それなら、とても助かる。
「ありがとう!」
言われた通り、ゆうの机には僕が昨日まで使っていた同じ瓶底眼鏡が置かれてあった。それをすぐさまかけた。
何で僕…、あの時ゆうが一瞬だけ怖く見えたんだろ…。不思議に思いつつも、ゆうがいる所に戻った。
実は、ものすごく目が悪くてこういうレンズが厚いものじゃないとしっくりこなくてボヤける。周りからみたら、地味でダサい。
コンタクトにしようと一度は思ったけどゆうにそれはオススメしないと言われ、ずっと、こんな感じの眼鏡にお世話になっているのだ。
それに、なんかコンタクトって怖くて挑戦できる気がしない。
僕は、再度お礼をして一緒に食堂に向かった。
食堂に着いて、デカイ扉みたいのを開けると……
「キャー!!新條様、今日もカッコいいです!!」
「てか、またあのダサいのいるし」
「新條様に付きまとうな!」
黄色い声の中から、僕に向けての罵声が聞こえた。ちなみにこの咲紅学園は、男子校である。
当たり前に男子しかいないせいか、恋愛対象も同性になってしまうんだって…。そんでもって、ゆうは、この学園じゃ有名で人気者。
だから皆、その人気者とこんな取り柄もない僕が隣にいることを許さない。
「あんなのは、気にしなくてもいいからね?ほら、行こう」
「う、うん…」
相変わらず、ゆうは優しい…。人気が出るのもわかる気がする。
「メニュー何にするか決まった?」
とりあえず、空いているところに座ってゆうが僕に問いかけた。
「う、うん。僕は、サラダで…」
僕は、いつも朝はサラダしか食べない。
「わかった。じゃあ、注文するね」
ゆうは、テーブルに置かれてるパネルをタッチして僕の分まで注文してくれた。ここの注文の仕方は、豪華なことにタッチパネル式で、そう決まっている。
そしたら、早くも注文したものが運ばれてきた。
「お待たせいたしました。こちらがご注文されたサラダです」
ご丁寧に若いウェイターのお兄さんが僕の目の前に置いてくれた。
「い、いつも…ありがとうございます…」
僕は、ペコリと頭を下げお礼を言った。
ウェイターさんは、すごいや。誰に対しても平等で優しく接してくれる。そんなことを考えていたら、本日2回目の甲高い声が鳴り響いた。
「キャー!!生徒会よ」
「美しすぎます!!」
「抱いてくださーい!!」
あちこちでそう言った言葉が聞こえてくる。
…せ、生徒会…?僕が一番、恐れている集団だ。
この男子校では、当たり前に人気があって、親衛隊が百越えって聞いたことがあるくらい慕われている。
この学園のリーダーの位置にいて、生徒会メンバー全員お金持ち。
いつも退屈だからと言って、よくターゲットを決めては、遊んで楽しんでいる。
その遊びは、もちろん……いじめ。そして僕は、そのターゲットになってしまった。
ここにいる生徒のほとんどが生徒会のいうことをきく。逆らう人なんて、いないと思う。
「おい、神影。あっちにあのダサい根暗くんがいるぜ?」
「はっ?庶民の分際で、のうのうと食事してやがる」
生徒会の皆が僕を見ながら怪しくクスクス笑う。別に僕は、なんて言われようがどうだっていいんだ。
…ただ、暴力うけるより、まだマシだ。言葉だけなら痛くもかゆくもない。全然…平気。
気にせずにさっき注文したサラダを一口食べようとした時だった。
ドンッ
ガタンッ
僕達の近くまでやってきた生徒会は、テーブルを思いきり蹴った。その拍子に、上にのっていた僕のサラダが無惨にも床に落ちてしまった。
「おら、どけよ。根暗」
テーブルを蹴ったのは、会長だった。天山 神影。2年生の生徒会長。
「ゆうもおかしいよ?こんな幼なじみと食事なんかしちゃってさ」
次に会計。チャラ男で有名な來城 祥がゆうにそうを言った。
75
お気に入りに追加
1,897
あなたにおすすめの小説

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です

笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。


普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。

兄弟がイケメンな件について。
どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。
「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。
イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる