つい勢いで後輩の童貞を奪っちゃうような女ですが、こんな私でも愛してくれるんですか?

春音優月

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【第二部】

73、そういうことじゃない

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 それから二週間ほど過ぎたある日の夜。
 
「今からご飯行かない?」
「いいよ。じゃあ、あっきーとか他の女の子も誘ってみんなでいこっか」
「二人で行きたい」
「ん~と、ごめんね。二人では行けないかな。彼氏が心配しちゃうと思うし」
 
 22時にバイトが終わって帰ろうとしたんだけど、スーパーの従業員用出入り口から出たところで藤田くんと会った。どうでもいい雑談をしていたらご飯に誘われて、二人で行くのは断ったんだけど、不服そうな様子。
 
 藤田くんとはあれから会えば話す程度でご飯に誘われることはなかったんだけど、最近になってまた誘ってくるようになったんだよね。断っても何回も誘ってくるし、正直ちょっと困ってる。
 
 みんなで行くなら全然いいんだけど、藤田くんはネックレスの件もあるし、男の子と二人でご飯行くのも慧に悪いし。 
 
「まだ付き合ってるの?」
「まだって。失礼だなぁ。私にしては珍しく続いてますよ~」
 
 冗談混じりにそう返すと、いきなり腕を掴まれる。
 
「本当に彼氏のこと好きなの?」
「好きだよ?」
「花音ちゃんも俺のことが好きだと思ったのに。何回もご飯行ったし、優しくしてくれた」
「あの、ちょっとよく分からないんだけど。とりあえず一回離して?」
「俺があげたネックレスもたまに付けてくれてるし。それって、そういうことじゃないの?」
 
 ええ……。それは好きなブランドのネックレスだし、売るのも捨てるのも申し訳ないし、使わないともったいないかなと思ってたまに使わせてもらってただけなんだけど。
 
 男の子からもらったアクセサリーをつける=好きってことになっちゃうの?
 
 やんわりと離してって言っても全然手を離してくれないし、真顔で迫ってくるし、軽く恐怖を感じる。
 
 藤田くんに絡まれて困っていたら、ちょうどその時従業員用出入り口から出てきたあっきーと磯川くんと目が合う。
 
「やめなよ、のんちゃん困ってる」
 
 目だけで助けを求めると、すぐに状況を察してくれた磯川くんが私の手を捉えている藤田くんの手を掴み、さっと離してくれた。
 
「普通に話してただけだよ」
「そんな風には見えなかったよ」
「まあまあまあまあ。藤田くん、俺とメシ行こっか」
「行かな———」
「いいからいいから。遠慮するなって。俺が女の子の落とし方じっくりレクチャーしてやるよ。女の子と付き合ったことないのにいきなり名人狙うなんて、命知らずにも程があるからな?」
 
 気まずい雰囲気だった私たちの間にあっきーが割って入り、嫌がっている藤田くんの肩に手を回して強引に連れて行ってしまう。
 
「大丈夫かな? あれ」
「あっきーにまかせとけば大丈夫だよ。ああ見えていいやつだから」
「だね」
「のんちゃんこそ大丈夫? 何があったのか知らないけど、さっきみたいなことよくあるの?」
「よくあるわけではないけど、藤田くんとは色々あって。私もいけないとこあったのかも」
「事情を知らないから何とも言えないけど、嫌がってる子に無理強いするなんてダメだと思うよ。大したことは出来ないと思うけど、何かあったら言ってね」
「ありがと、優しいね。浮気男なのに」
「きついね」
 
 さらっと毒を吐くと磯川くんは困ったように笑い、彼と目が合った私はペロリと舌を出す。
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