つい勢いで後輩の童貞を奪っちゃうような女ですが、こんな私でも愛してくれるんですか?

春音優月

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【第二部】

68、クリスマスプレゼント

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 ケーキまで全部食べ終わったところでまったりしていたけど、今のうちに渡しておこうと思い立ち、さっき買ってきたばかりのものを取り出す。
 
「はい、クリスマスプレゼント」  
 
 テーブルの上に袋を置くと、慧は私に断ってから包みを開ける。中から出てきたものを見た慧は、無表情でそのうちの一つを手に持つ。
 
「これを俺に使えと。自分が欲しかっただけなんじゃないですか」
「バレた?」
 
 私が選んだのは、猫の顔と耳がついたペアの可愛いマグカップ。自分がほしかったのもあるけど、慧の部屋シンプルなものばっかりだし、可愛いものがひとつくらいあってもいいんじゃないかなと思ったんだけど。
 
 てへと舌を出すと、慧はカップを二つ手に持って立ち上がる。
 
「ありがとうございます。使いますね」
「絶対使ってね」
 
 キッチンにそれを置きに行く慧に念を押してみたけど、それには無反応。本当に使う気あるのかなぁ。 
 
 コップを置いてリビングに戻ってくると、慧は引き出しから小さな箱のようなものを取り出してこっちに戻ってきた。
 
「俺からも」
「わあ~ありがと~。開けてもいい?」
「どうぞ」
 
 許可をもらったので開けてみると、箱の中には二つの指輪。両方とも指輪本体の真ん中がローズゴールド、両端がシルバーになっていて、小さい方の指輪だけ一部がリボンのデザインになっていた。
 
「可愛い……っ」
「前一緒に見に行ったけど、結局買わなかったじゃないですか。もう俺たちが付き合ってることはみんな知ってるし、いいですよね。気に入らなかったら返してこようと思ったけど、……大丈夫そうですね」
 
 すっごく好みのデザインでうっとりとそれを見つめていると、横から話しかけられてコクコクと頷く。
 
「私こういうの大好き。ありがとう慧」
「気に入ってもらえたなら良かったです」
 
 にこっと慧に笑いかけると、慧はわずかに視線を泳がす。
 
「つけてもいい?」
「うん」
 
 リングケースから大きい方の指輪をとって慧の右手の薬指につけると、慧も私の同じ指に指輪をつけてくれた。

 
「かわいい~」
 
 彼氏とペアリングなんて初めてだし、慧が買ってくれた指輪がすごく好みで、嬉しくて嬉しくて勝手に顔がニヤけちゃう。自分の右手の薬指についた指輪を見ていると、顔を傾けてきた慧に唇を押しつけられた。
 
「……いきなりだね」
「可愛いかったから」
 
 不意打ちのキスに驚いていると、そんなことをしれっと言われたので、ますます反応に困ってしまう。置き場のなくなった手で、慧の腕を掴むと、また顔を傾けて唇を重ねられ、軽く唇を吸われる。
 
「んっ」
 
 そのままキスが深くなる前に慧の胸を軽く押して、やんわりとその腕から逃れる。もちろん嫌なわけじゃない。けど、このまま本格的にえっちする雰囲気になる前に、今日は話しておきたいことがあった。
 
「慧に話したいことがあるの」
「何?」
 
 途中でキスを止められた慧は少し不満そうにしながらも、それでも話は聞いてくれるみたいだったので、二人でベッドの端に座って話すことにした。
 
「あれから就職のこと考えてたんだけどね、出来れば出版社に入りたいなって今は思ってるんだ」
「出版社ですか」
「うん、ゼミの先輩が出版社のインターンやってみない?って紹介してくれてね。色々話聞いてたら面白そうだし、文章書いたり読んだりするのは嫌いじゃないし、良さそうだなって」
 
 学部も文学部だし、ゼミだって社会系で社会のことや文学のことを勉強してきた。先輩が紹介してくれたとこは女性向けのソフトなとこだから、あんまりゼミの内容はいかせなさそうだけども。それでも、すっごくありがたい。
 
「今のバイトやめるんですか?」
「短期インターンだし、バイトやめちゃうと生活出来なくなっちゃうからやめないけど。でもなるべくインターンの方を優先しようかなって思ってる」
「いいじゃないですか。インターン行くと、多少は有利になるんですよね?」
 
 相槌を入れながら話を聞いてくれていた慧に、うんと頷く。
 
「多少はね。そこに就職出来るかは分からないけど、とりあえず目指してみるつもり。でね、最終的には独立して、フリーライターになりたいんだ」
「フリーライター?」
「うん。昔見た海外ドラマの主人公がフリーライターで、世界を旅しながら好きな時に仕事してたのに憧れがあったんだ」
「そういう働き方もありですね」
 
 現実はそんなに甘くはないんだろうけど、まあ一応それを目指す方向ってことで。考えてることを慧に話すと、慧も応援してくれるみたいな感じになったけど、本題はここから。
 
 これから私が言うことに、慧はどんな反応するかな。少し緊張してしまい、ひとつ息を吸ってから口を開く。
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