40 / 96
【第一部】
40、もう限界です
しおりを挟む
キスされる、そう気づいた私はとっさに顔を背けてしまった。もう一度キスしようとしてきたのも避けると、不満そうな顔をした慧と目が合う。
「何で避けるんですか」
「緊張しちゃって」
てへ、と愛想笑いを浮かべると、慧はますます不満そうな顔で私を見る。
「また? 今さらじゃないですか」
「今さらなんだけど! 今さらなんだけどさ、なんかダメなんだよ。おかしいと思うかもしれないけど、友達の時は普通にキス出来たんだよ? でも、ダメなの。今目の前にいる人は私の彼氏で、私の好きな人なんだって思うと、なんか……」
もうダメ。何言ってるか分からないし、この状況がほんとムリ。彼氏とキスって、どうやってするんだっけ。
恩田先輩と別れてからはなんとなく付き合って、時には付き合わずにえっちしたりってことばっかり繰り返してたから、こういう甘い時間は久しぶりでどうしたらいいのか……。
「花音先輩でもそんな風になるんですね。まさかそんな可愛いこと言ってもらえるなんて思ってもみませんでした」
そんな言葉と共に、うつむいてる私の頭にポンと慧の手が乗せられる。うぅ……、絶対顔上げられない。
顔を真っ赤にしてうつむいている私の頭を慧はずっとヨシヨシしてくれていたけれど、しばらくして顔を上にあげさせられ、両腕を掴まれる。
「意識してくれてるのは嬉しいんですが、じゃあこれからずっとキスもセックスも出来ないんですか?」
目が合った慧は怒ってはいなさそうだったけど、困ったような顔をしていて、なんだか申し訳ない気持ちになった。
「そんなことないよ。私もしたいし。
でも、もうちょっと待って。あ、そうだ。私からさせて。私のタイミングで一回しちゃえば、たぶん大丈夫だと思うから」
「……分かりました」
慧は私の腕から手を離し、目を閉じる。
……。こういうのは、一回しちゃえば平気になるはず。
何もキスするのが初めてなわけじゃないし、何回もしたことあるんだから。今さら恥ずかしがる必要なんてない。そうだよ。……よし。
覚悟を決めて慧に顔を寄せ、唇を重ねようとしたけれど、やっぱり出来なくて身体を離す。
慧からしてもらった方が良かったかも?
自分から言い出しといて何だけど、なんかこういう「さあどうぞ」ってお膳立てされた状況でキスする方が逆に恥ずかしい気がする。
「まだですか?」
そんなことをごちゃごちゃ考えていると、うっすらと目を開けた慧と目が合った。
「い、いま出来そうだったのに。もうちょっと待っててってば。慧が目開けたから、またやり直しだよ」
「やり直しって……。いつまで待てばいいんですか」
文句を言いながらも、慧は再び目を瞑ってくれた。
うん、さすがにいっとこう。
タイミング逃すと永遠に出来ない気がするし、下手したらこのまま夜が明けそう。
そう思って顔を近づけるんだけど、やっぱり出来なくて、顔を引っ込めては近づけての繰り返し。
「———もういいです。俺からします」
「え、ちょ、……ん」
いつまでも私からキス出来ないでいたからかな。焦れた慧にぐいっと身体を引き寄せられ、止める暇もなく唇を重ねられる。
「ん、んんっ」
後頭部を押さえつけられ、舌で乱暴に口をこじ開けられ、中を暴かれる。
今までに慧としたキスよりも衝動的で、ちょっと強引だったけど、でも慧が私を強く求めてくれていることが伝わってきてすごく嬉しくて、ドキドキする。
「けい、すき……」
キスの合間にうっとりと慧を見つめると、ベッドに押し倒されてしまった。服をぐいっと上に持ち上げられ、ブラの上から胸を揉まれる。
どうしよう。私に触れる慧の手が、私を見つめる慧の目が熱くて、どうしようもなくドキドキしておかしくなりそう。
「あ、ま、……まって。やっぱりちょっと待って」
今さら純情ぶっても仕方ないけど、恥ずかしくて死にそう。
性急に事を進めていく慧を止めようと手で押し返したけど、その手を掴まれてベッドの上に縫いとめられる。どうしようもなくなって慧を見上げると、真剣な目をした慧と目が合った。
「待てない」
「あの、」
「俺がどれだけ花音先輩のことが好きか、花音先輩は全然分かってないんだ」
「え~っと……慧?」
切羽詰まったようにそう言われ、どうすればいいのか分からなくなって、とりあえず笑っておく。
「真面目に告白しても何回もはぐらかされて。それでも諦めきれなくて。俺がどれだけこの日を待ったと思ってるんですか」
「慧……」
告白じゃないと思って流しちゃったけど、そういえば慧は初めてえっちした日の朝にも付き合おうって言ってくれてたんだ。それからも何回も言ってくれて。その度に私はそれをはぐらかしてたけど、それでも慧は私を好きでいてくれて……。
「もう限界です。抱かせてください」
「……、はい」
言葉以上に熱いその目から慧の気持ちが伝わってきて、気が付いたら私はそう口にしていた。
「何で避けるんですか」
「緊張しちゃって」
てへ、と愛想笑いを浮かべると、慧はますます不満そうな顔で私を見る。
「また? 今さらじゃないですか」
「今さらなんだけど! 今さらなんだけどさ、なんかダメなんだよ。おかしいと思うかもしれないけど、友達の時は普通にキス出来たんだよ? でも、ダメなの。今目の前にいる人は私の彼氏で、私の好きな人なんだって思うと、なんか……」
もうダメ。何言ってるか分からないし、この状況がほんとムリ。彼氏とキスって、どうやってするんだっけ。
恩田先輩と別れてからはなんとなく付き合って、時には付き合わずにえっちしたりってことばっかり繰り返してたから、こういう甘い時間は久しぶりでどうしたらいいのか……。
「花音先輩でもそんな風になるんですね。まさかそんな可愛いこと言ってもらえるなんて思ってもみませんでした」
そんな言葉と共に、うつむいてる私の頭にポンと慧の手が乗せられる。うぅ……、絶対顔上げられない。
顔を真っ赤にしてうつむいている私の頭を慧はずっとヨシヨシしてくれていたけれど、しばらくして顔を上にあげさせられ、両腕を掴まれる。
「意識してくれてるのは嬉しいんですが、じゃあこれからずっとキスもセックスも出来ないんですか?」
目が合った慧は怒ってはいなさそうだったけど、困ったような顔をしていて、なんだか申し訳ない気持ちになった。
「そんなことないよ。私もしたいし。
でも、もうちょっと待って。あ、そうだ。私からさせて。私のタイミングで一回しちゃえば、たぶん大丈夫だと思うから」
「……分かりました」
慧は私の腕から手を離し、目を閉じる。
……。こういうのは、一回しちゃえば平気になるはず。
何もキスするのが初めてなわけじゃないし、何回もしたことあるんだから。今さら恥ずかしがる必要なんてない。そうだよ。……よし。
覚悟を決めて慧に顔を寄せ、唇を重ねようとしたけれど、やっぱり出来なくて身体を離す。
慧からしてもらった方が良かったかも?
自分から言い出しといて何だけど、なんかこういう「さあどうぞ」ってお膳立てされた状況でキスする方が逆に恥ずかしい気がする。
「まだですか?」
そんなことをごちゃごちゃ考えていると、うっすらと目を開けた慧と目が合った。
「い、いま出来そうだったのに。もうちょっと待っててってば。慧が目開けたから、またやり直しだよ」
「やり直しって……。いつまで待てばいいんですか」
文句を言いながらも、慧は再び目を瞑ってくれた。
うん、さすがにいっとこう。
タイミング逃すと永遠に出来ない気がするし、下手したらこのまま夜が明けそう。
そう思って顔を近づけるんだけど、やっぱり出来なくて、顔を引っ込めては近づけての繰り返し。
「———もういいです。俺からします」
「え、ちょ、……ん」
いつまでも私からキス出来ないでいたからかな。焦れた慧にぐいっと身体を引き寄せられ、止める暇もなく唇を重ねられる。
「ん、んんっ」
後頭部を押さえつけられ、舌で乱暴に口をこじ開けられ、中を暴かれる。
今までに慧としたキスよりも衝動的で、ちょっと強引だったけど、でも慧が私を強く求めてくれていることが伝わってきてすごく嬉しくて、ドキドキする。
「けい、すき……」
キスの合間にうっとりと慧を見つめると、ベッドに押し倒されてしまった。服をぐいっと上に持ち上げられ、ブラの上から胸を揉まれる。
どうしよう。私に触れる慧の手が、私を見つめる慧の目が熱くて、どうしようもなくドキドキしておかしくなりそう。
「あ、ま、……まって。やっぱりちょっと待って」
今さら純情ぶっても仕方ないけど、恥ずかしくて死にそう。
性急に事を進めていく慧を止めようと手で押し返したけど、その手を掴まれてベッドの上に縫いとめられる。どうしようもなくなって慧を見上げると、真剣な目をした慧と目が合った。
「待てない」
「あの、」
「俺がどれだけ花音先輩のことが好きか、花音先輩は全然分かってないんだ」
「え~っと……慧?」
切羽詰まったようにそう言われ、どうすればいいのか分からなくなって、とりあえず笑っておく。
「真面目に告白しても何回もはぐらかされて。それでも諦めきれなくて。俺がどれだけこの日を待ったと思ってるんですか」
「慧……」
告白じゃないと思って流しちゃったけど、そういえば慧は初めてえっちした日の朝にも付き合おうって言ってくれてたんだ。それからも何回も言ってくれて。その度に私はそれをはぐらかしてたけど、それでも慧は私を好きでいてくれて……。
「もう限界です。抱かせてください」
「……、はい」
言葉以上に熱いその目から慧の気持ちが伝わってきて、気が付いたら私はそう口にしていた。
0
あなたにおすすめの小説
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。
専務は御曹司の元上司。
その専務が社内政争に巻き込まれ退任。
菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。
居場所がなくなった彼女は退職を希望したが
支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。
ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に
海外にいたはずの御曹司が現れて?!
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。
絶対に離婚届に判なんて押さないからな」
既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。
まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。
紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転!
純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。
離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。
それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。
このままでは紘希の弱点になる。
わかっているけれど……。
瑞木純華
みずきすみか
28
イベントデザイン部係長
姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点
おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち
後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない
恋に関しては夢見がち
×
矢崎紘希
やざきひろき
28
営業部課長
一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長
サバサバした爽やかくん
実体は押しが強くて粘着質
秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる