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【第一部】
37、どんなノリでいけばいい?
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部室に来たのはいいんだけど、なんだか慧と目が合わせられない。誰にも見つからないように隅っこの方に一人で座り、ひたすら存在感を消す。
「こんなとこで何してるの? 練習しないの? 今空いてるみたいだけど」
「練習する。でもちょっと待って。今慧に近づかないようにしてるから」
ベースを背負った一花に声をかけられて小声でそう囁くと、一花は怪訝そうな表情を浮かべる。
「なんでよ。あ、告白どうなったの?」
「付き合うことになった。で、今日サークル終わった後にデートいこうって」
「やっとくっついたか。良かったね」
「良くない~。気まずくて死にそう。一花も一緒にきて」
「は?嫌だよ。私が行った方がよっぽど気まずいでしょ」
「え~三人でご飯行ったことあるじゃん。何でダメなの?」
「初デートに私がついてきたら、慧は嫌だと思うよ」
「そう思う?」
「うん、確実に」
「そっかぁ、そうだよね」
「がんばれ。何かあったら電話して」
そんな話をしながら部室の隣の部屋の移動すると、すでに練習を始めてるとこもいくつかあった。部室にもちょこっと楽器は置いてあるけど、こっちは丸々練習だけに使っていて、ドラムみたいな大きい楽器は全部こっちに置いてある。
「うちらも学祭で演奏する曲そろそろ決めなきゃ」
「だね」
一花に話しかけられて相槌を打つと、キーボードをセッティングしているみくちゃんと何かを話している慧が視界に入った。
慧は……、やっぱり学祭もみくちゃんたちとやるみたいだね。
別に学年混同でバンド組んでもいいんだけど、長くやってるともうすでにメンバーが決まってることも多くて、結局二年は二年、一年は一年で組むことが多かった。
「慧と一緒にやりたかった?」
「ん~。一緒にやりたかったような気もするけど、それはそれで気まずいから別で良かったのかも」
「それもそうだね」
こそこそと耳打ちされたことにそう返すと、一花も納得したように頷く。
それから学祭で演奏するメンバーで集まって、その日は曲決めだけで練習が終わった。
*
「行きます?」
練習が終わった後一花と少しだけ話してから部室を出ると、廊下のところで慧が待っていてくれた。
う~……なんかこういう付き合ってるぽいのすっごく久しぶりっていうか、思い出せないくらい前に感じて、どんなノリでいけばいいのか分からない。
「う、うん。どこ行く?」
「どこでも。とりあえず昼メシですよね」
「大学の近くのファミレスは?」
「いいですけど、そんなとこでいいんですか?」
伺うような目で見られる意味が分からなかったけど、ひとまず頷いておく。そんなとこって、何気に失礼じゃない?
そんなことを思いながらもファミレスに行くことになったんだけど、店の前で慧はこちらを振り返る。
「本当にここでいいんですか? 初デートだし、もう少し雰囲気の良いとこでも」
なるほど……、そういうことね。
だから、ファミレスって言ったら微妙な反応だったんだ。そういうの、何も考えてなかった。
「といっても、今日付き合うことになるとは全く思ってなかったので、俺もどこに行くか思いつかないんですけど。気が利かなくてすみません」
「え、そんな、私の方こそいきなり告白しちゃってごめんね。とりあえず告白しようって思って勢いでしちゃったから、そのあとのこととか何も考えてなかった」
「いや、それは嬉しかったです。嬉しすぎて、今俺おかしくなってます」
「そ、そっか。全然そんな風に見えないけど、そうなんだね」
真顔でおかしくなってるって言われても本当かなあって思っちゃうんだけど、そんな嘘ついても仕方ないし、慧がそう言うんだから、たぶん本当なんだよね。
店の前でそんな押し問答をしていたら、いつのまにか周りの人から注目を集めちゃってることに気がつく。
「店の前まで来ちゃったし、とりあえず入る?」
「そうですね。雰囲気の良い店に行くのはまた今度で」
また今度……。普通の会話なのかもしれないけど、やっぱり付き合ってるって感じだよね。 なんかこういう風に彼女扱いされるのはガラじゃないっていうか、むず痒い感じ。嫌な感じはしないけど、なんかこうムズムズするっていうか。
一人で微妙な気分になってたら慧がドアを開けてくれたので、そのままファミレスの中に入ることにした。
「こんなとこで何してるの? 練習しないの? 今空いてるみたいだけど」
「練習する。でもちょっと待って。今慧に近づかないようにしてるから」
ベースを背負った一花に声をかけられて小声でそう囁くと、一花は怪訝そうな表情を浮かべる。
「なんでよ。あ、告白どうなったの?」
「付き合うことになった。で、今日サークル終わった後にデートいこうって」
「やっとくっついたか。良かったね」
「良くない~。気まずくて死にそう。一花も一緒にきて」
「は?嫌だよ。私が行った方がよっぽど気まずいでしょ」
「え~三人でご飯行ったことあるじゃん。何でダメなの?」
「初デートに私がついてきたら、慧は嫌だと思うよ」
「そう思う?」
「うん、確実に」
「そっかぁ、そうだよね」
「がんばれ。何かあったら電話して」
そんな話をしながら部室の隣の部屋の移動すると、すでに練習を始めてるとこもいくつかあった。部室にもちょこっと楽器は置いてあるけど、こっちは丸々練習だけに使っていて、ドラムみたいな大きい楽器は全部こっちに置いてある。
「うちらも学祭で演奏する曲そろそろ決めなきゃ」
「だね」
一花に話しかけられて相槌を打つと、キーボードをセッティングしているみくちゃんと何かを話している慧が視界に入った。
慧は……、やっぱり学祭もみくちゃんたちとやるみたいだね。
別に学年混同でバンド組んでもいいんだけど、長くやってるともうすでにメンバーが決まってることも多くて、結局二年は二年、一年は一年で組むことが多かった。
「慧と一緒にやりたかった?」
「ん~。一緒にやりたかったような気もするけど、それはそれで気まずいから別で良かったのかも」
「それもそうだね」
こそこそと耳打ちされたことにそう返すと、一花も納得したように頷く。
それから学祭で演奏するメンバーで集まって、その日は曲決めだけで練習が終わった。
*
「行きます?」
練習が終わった後一花と少しだけ話してから部室を出ると、廊下のところで慧が待っていてくれた。
う~……なんかこういう付き合ってるぽいのすっごく久しぶりっていうか、思い出せないくらい前に感じて、どんなノリでいけばいいのか分からない。
「う、うん。どこ行く?」
「どこでも。とりあえず昼メシですよね」
「大学の近くのファミレスは?」
「いいですけど、そんなとこでいいんですか?」
伺うような目で見られる意味が分からなかったけど、ひとまず頷いておく。そんなとこって、何気に失礼じゃない?
そんなことを思いながらもファミレスに行くことになったんだけど、店の前で慧はこちらを振り返る。
「本当にここでいいんですか? 初デートだし、もう少し雰囲気の良いとこでも」
なるほど……、そういうことね。
だから、ファミレスって言ったら微妙な反応だったんだ。そういうの、何も考えてなかった。
「といっても、今日付き合うことになるとは全く思ってなかったので、俺もどこに行くか思いつかないんですけど。気が利かなくてすみません」
「え、そんな、私の方こそいきなり告白しちゃってごめんね。とりあえず告白しようって思って勢いでしちゃったから、そのあとのこととか何も考えてなかった」
「いや、それは嬉しかったです。嬉しすぎて、今俺おかしくなってます」
「そ、そっか。全然そんな風に見えないけど、そうなんだね」
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「店の前まで来ちゃったし、とりあえず入る?」
「そうですね。雰囲気の良い店に行くのはまた今度で」
また今度……。普通の会話なのかもしれないけど、やっぱり付き合ってるって感じだよね。 なんかこういう風に彼女扱いされるのはガラじゃないっていうか、むず痒い感じ。嫌な感じはしないけど、なんかこうムズムズするっていうか。
一人で微妙な気分になってたら慧がドアを開けてくれたので、そのままファミレスの中に入ることにした。
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