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【第一部】
20、そういう関係にはなりたくない
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「慧と付き合ったら、きっと楽しいよね。
一緒にいて楽しいし、そっけなく見えて慧は優しいし、慧の彼女になれる子はすごく幸せだと思う」
「じゃあ、」
慧と一緒にいたらお酒を飲まなくても楽しいし、慧はすごく優しくて誠実だから、付き合ったらきっと大切にしてくれると思う。でも、だからこそ私は———。
握られた手をさりげなく外し、何か言いかけた慧に被せるように言葉を続ける。
「でも、ごめんね。慧とは付き合えない」
「理由を聞いてもいいですか」
慧と寝た翌朝と同じことを言われ、思わず苦笑いを浮かべる。
寂しいのは嫌い。彼氏がいないのも苦手。
もし付き合おうと言われたのが慧じゃなかったら、迷いなく頷いてたと思う。
でも、慧とは付き合いたくない。下手に付き合って、今の関係を壊したくないの。
真面目で誠実な慧と付き合っても、どうせ幻滅してすぐにフラれるのがオチだろうし、慧と付き合って慧のことを本気で好きになって———また失敗するのが怖い。
「慧とはそういう関係になりたくないから。良い友達でいたいの」
「友達?」
その言葉に眉を寄せたあと、慧は納得出来ないというような表情で私の言葉を繰り返す。
そうだよね。さっきまでは恋人みたいにいちゃついてたくせに、付き合うのは無理です友達でいたいって意味分からないよね。
「上手く言えないんだけど、なんていうか……そうだ、彼女が欲しいなら誰か紹介しようか?」
「そういうことじゃないです」
だよね。どうにか言い訳を探してみたけど、下手な提案をばっさりと切り捨てられてしまった。
「俺は———」
「うん」
「彼女が出来たら、他の女の子とは二人きりで遊びません。彼女にもそうしてほしい」
射抜くような目でまっすぐに見つめられ、思わず息をのむ。そっか、慧に彼女が出来たら、今みたいには会えなくなっちゃうんだよね。
それは寂しいけど、でも、やっぱり無理だ。
だって、今改めて思ってしまった。
私と慧は絶望的に合わない、って。
私は、きっと慧が望むような彼女にはなれない。
私みたいないい加減でだらしない女が慧みたいにちゃんとした人と付き合って良いわけがないよ。そんなことしたって、慧を不幸にするだけ。
慧と目を合わせると、やっぱり慧はまっすぐに私を見つめていて、いたたまれなくて乾いた笑いをこぼす。慧のその目が大好きだけど、大嫌いだよ。
「うん。慧なら、性格も良くて可愛い彼女がすぐに出来ると思う」
無理矢理笑顔を作ると、慧は何かを言いたそうに口を開きかけたけど、結局何も言わずに唇を噛み締める。
ごめんね、慧。
慧に彼女が出来るまでは今のままの関係でいたいけど、慧が望んでくれるような関係になることが出来ないのなら、今すぐに二人で会ったりすることもやめるべきなのかな。この関係を手放すべきなのかな。
「あのね、慧、」
何も言わなくなってしまった慧に言葉をかけたかったけど、何も言葉が見つからない。しばらく二人とも無言で気まずい時間が流れたけど、意外にも先に口を開いたのは慧の方だった。
「……さっき俺が言ったことは気にしないでください。ちょっと言ってみただけで、深い意味はなかったんです」
「そ、そうなんだ」
とてもそうは思えないけど、重々しい口調でそう言った慧に一応頷いておく。
「それより、ゲームでもしませんか?」
「する~!」
雰囲気を変えようとしてくれてるのかな。
ゲーム機を引っ張り出してきた慧に私も精一杯の笑顔を作る。
私は、慧に酷いことばかりしてるよね。
でもね、どうすれば正解なのか分からないの———。
一緒にいて楽しいし、そっけなく見えて慧は優しいし、慧の彼女になれる子はすごく幸せだと思う」
「じゃあ、」
慧と一緒にいたらお酒を飲まなくても楽しいし、慧はすごく優しくて誠実だから、付き合ったらきっと大切にしてくれると思う。でも、だからこそ私は———。
握られた手をさりげなく外し、何か言いかけた慧に被せるように言葉を続ける。
「でも、ごめんね。慧とは付き合えない」
「理由を聞いてもいいですか」
慧と寝た翌朝と同じことを言われ、思わず苦笑いを浮かべる。
寂しいのは嫌い。彼氏がいないのも苦手。
もし付き合おうと言われたのが慧じゃなかったら、迷いなく頷いてたと思う。
でも、慧とは付き合いたくない。下手に付き合って、今の関係を壊したくないの。
真面目で誠実な慧と付き合っても、どうせ幻滅してすぐにフラれるのがオチだろうし、慧と付き合って慧のことを本気で好きになって———また失敗するのが怖い。
「慧とはそういう関係になりたくないから。良い友達でいたいの」
「友達?」
その言葉に眉を寄せたあと、慧は納得出来ないというような表情で私の言葉を繰り返す。
そうだよね。さっきまでは恋人みたいにいちゃついてたくせに、付き合うのは無理です友達でいたいって意味分からないよね。
「上手く言えないんだけど、なんていうか……そうだ、彼女が欲しいなら誰か紹介しようか?」
「そういうことじゃないです」
だよね。どうにか言い訳を探してみたけど、下手な提案をばっさりと切り捨てられてしまった。
「俺は———」
「うん」
「彼女が出来たら、他の女の子とは二人きりで遊びません。彼女にもそうしてほしい」
射抜くような目でまっすぐに見つめられ、思わず息をのむ。そっか、慧に彼女が出来たら、今みたいには会えなくなっちゃうんだよね。
それは寂しいけど、でも、やっぱり無理だ。
だって、今改めて思ってしまった。
私と慧は絶望的に合わない、って。
私は、きっと慧が望むような彼女にはなれない。
私みたいないい加減でだらしない女が慧みたいにちゃんとした人と付き合って良いわけがないよ。そんなことしたって、慧を不幸にするだけ。
慧と目を合わせると、やっぱり慧はまっすぐに私を見つめていて、いたたまれなくて乾いた笑いをこぼす。慧のその目が大好きだけど、大嫌いだよ。
「うん。慧なら、性格も良くて可愛い彼女がすぐに出来ると思う」
無理矢理笑顔を作ると、慧は何かを言いたそうに口を開きかけたけど、結局何も言わずに唇を噛み締める。
ごめんね、慧。
慧に彼女が出来るまでは今のままの関係でいたいけど、慧が望んでくれるような関係になることが出来ないのなら、今すぐに二人で会ったりすることもやめるべきなのかな。この関係を手放すべきなのかな。
「あのね、慧、」
何も言わなくなってしまった慧に言葉をかけたかったけど、何も言葉が見つからない。しばらく二人とも無言で気まずい時間が流れたけど、意外にも先に口を開いたのは慧の方だった。
「……さっき俺が言ったことは気にしないでください。ちょっと言ってみただけで、深い意味はなかったんです」
「そ、そうなんだ」
とてもそうは思えないけど、重々しい口調でそう言った慧に一応頷いておく。
「それより、ゲームでもしませんか?」
「する~!」
雰囲気を変えようとしてくれてるのかな。
ゲーム機を引っ張り出してきた慧に私も精一杯の笑顔を作る。
私は、慧に酷いことばかりしてるよね。
でもね、どうすれば正解なのか分からないの———。
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