つい勢いで後輩の童貞を奪っちゃうような女ですが、こんな私でも愛してくれるんですか?

春音優月

文字の大きさ
上 下
3 / 96
【第一部】

3、さすがにそれは酷いんじゃないですか

しおりを挟む
「頭いた……」
 
 目を覚ますと軽く頭痛がして、完全に二日酔いだなんて思ってたら、自分が何も着ていないことに気がつく。あれ、何で私……。
 
「おはようございます」
 
 ベッドの上で上半身を起こすと、みんなが散らかしていった缶やお菓子の袋を片付けてくれてた慧と目が合う。その瞬間、ようやく昨日のことを思い出した。
 
 慧はもう服着てるけど、私は全裸だし、何より断片的ではあるけど記憶だってはっきりある。うわ、やらかしたやつじゃんこれ。
 
「おはよ。片付けてくれてたんだ? ありがとう」
 
 身体を隠すように布団をたぐり寄せ、苦笑いを浮かべると、慧は気まずそうにうつむく。
 
「いえ。あの、昨日は……」
「あ! 昨日ね。なんかごめんね。本当に申し訳ないです」
 
 伏し目がちに何かを言おうとした慧の言葉を遮り、両手を合わせて頭を下げる。
 
「や、それはいいんですけど……」
「ほんと?」
「はい。あの、」
「ん?」
 
 珍しく言い淀んでいる慧に首を傾げると、慧は何かを決意したように口を開く。
 
「俺たち、付き合います?」
「……え?」
「だから、俺と付き合いますか?」
「あ、うん。それは聞こえたんだけど。え、ちょっと待って。何で?」
 
 言われたことがすぐに理解出来なくて、二回も聞き直してしまった。
 
 どういう流れでそうなったんだろ。
 たしかにえっちはしたけど、お互い好きだったわけじゃないし、もし責任感じさせたのなら申し訳ない。
 
「何で、って逆にこっちが聞きたいですよ。何で付き合わないんですか」
「ええ? ごめん、ちょっとよく分からないんだけど。付き合わ、ない」
「そうですか。理由を教えてもらってもいいですか」
「慧はかっこいいしちゃんとしてるし、私みたいないい加減でだらしないダメ女とわざわざ付き合わなくても、もっといい子と付き合えると思うよ」
「それは、俺と付き合わない理由にはなりませんよね」
 
 真剣な表情で詰め寄ってくる慧に違和感を感じ、口元に浮かべていた笑みを引き攣らせる。
 
 え、待って。私のこと好きなわけじゃないよね。慧って執着しなさそうだし、ここまで食いついてくるのは正直意外。
 
 しちゃったから付き合わなきゃいけないとか、そういう感じなのかな。
 
「理由……っていうか。慧と私はそういう関係じゃないじゃん。こういうことしといていうのも何だけど、昨日のはなんていうか、流れ? ほら、よくあることだよね?」
「よくあること?」
「あ、慧は初めてだったかもしれないけど。でもさ、慧も結局流されてえっちしちゃったわけだよね。付き合ってなくても好きじゃなくても出来ちゃったわけだし、別に特別なことじゃなかったでしょ?」
 
 愛想笑いを浮かべながらそう言うと、慧の顔からどんどん表情が無くなっていく。
 
「さすがにそれは酷いんじゃないですか」
「え、と、……慧?」
「帰ります」
 
 慧はカバンを持って玄関に向かい、一度も振り返らずに出て行ってしまった。静かに閉められたドアが閉まる音がやけに耳に残り、後には後悔だけが残る。
 
 あれ? もしかして私、盛大にやらかした?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...