シンデレラ代わってくださいと言われましても

春音優月

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3、愛してくださいと言われましても

EP19 理想論と現実

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「アンディとシンデレラはよく似てるけど、君の方が遠慮がないよね。シンデレラももっと何でも言ってくれていいのに。まだ遠慮してるみたいなんだ」
「私はお役目を全うしてるだけのつもりです。それに、シンデレラは女ですから。
ただでさえ身分差もございますのに、ましてや女の身で殿下に何かを申し上げるなど恐れ多いことが出来るはずもございません」
 
 本来であれば一介の騎士である私も王族の方に意見できるような立場ではないが、エリオット様があまりにも自由奔放でいらっしゃるから……。護衛兼見張り役としては、小言のようなことを申し上げる機会が多くなるのも仕方がないというもの。
 
「でもさ、僕たちは夫婦なのに、どちらかが遠慮してるなんてさみしいよね」
「そう、でしょうか。私には分かりかねますが……」
 
 シンデレラの話をしているというのに、私に語りかけるように見つめられ、曖昧に言葉を誤魔化すことしかできない。
 
 実際にはシンデレラではなく、私の話であるわけだが、しかし……、ああもう頭が混乱してきた。やはり一人二役は無理があるんじゃないか?
 
「女だからとか、男だからとか、生まれた身分がどうとか、色々面倒くさいよね。
貴族でも騎士になりたくなければならなくても良くて、貴族じゃなくてもなりたい人が騎士になればいいのに」
「恐れながら申し上げますが、殿下がそれをおっしゃるのは道理が通らないのではございませんか。王族の方々が国の仕組みを決め、私たち下の者はそれに従うしかないのですから」
 
 殿下のお言葉には思うところがあり、反論のような言葉が勝手に口をついてしまったが、さすがに出過ぎたことを申し上げたとすぐに気がつき、あわてて口をつぐむ。しかし殿下はお怒りになっているご様子もなく、穏やかに笑みを浮かべていらっしゃった。
 
 森の木々の隙間から溢れる日差しを浴びて、髪がキラキラと輝いていらっしゃる。こんなところにお忍びでいらしても、やはり気品のある王子様であらせられるな……。
 
「アンディの言う通りだね。やっぱり君には敵わないよ。
じゃあさ、もし誰でも好きな職業につくことが出来て、能力次第で身を立てることが出来る未来がきたらどう思う?」
 
 忌避のない意見をと殿下から問われ、真剣に考えるが、どう考えても実現は不可能なようにしか思えない。
 
  すでに高いご身分の方はその地位を手放そうとはなさらないだろうし、変革を嫌がるだろう。その方々の反対を退けて改革するとなると……。
 
「やはりそれは難しいと存じます。
殿下のおっしゃることは理想論です。ですが、……素敵ですね」
 
 エリオット様のおっしゃることはいつも突拍子もなく、現実的でないことも多々あったが、私にはそんなエリオット様がとてもまぶしかった。
 
 もしも騎士になることが定められていなければ、私も好きに生きることが出来たのだろうか。出来るのだろうか。
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