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1、シンデレラ代わってくださいと言われましても
EP5 初めての舞踏会
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すっかり暗くなった夜道を馬車に揺られ、ほどなくしてお城についた。
門番は私の姿をひとめみると深く敬礼し、身元を確められることもなく、お城の中へと通される。
お城の中はどこを見ても夢のように美しく、キラキラと輝く天井のシャンデリアは宝石のよう。初めてのお城に戸惑っていると、何やら注目を浴びているし、ヒソヒソと囁かれている。
「ねえご覧になって、とても美しい方よ」
「それにあのドレス......、きっとどこかの国のお姫様に違いないわ」
門番も含め誰もが私のことをどこかの国の姫だと思っているようだな。このドレスではそう思われるのも無理もないが……。
いくら舞踏会に行くためとはいえ、このドレスはさすがにやりすぎだったのではないか?
とても着心地が良いグリーンのドレスは、私には身分不相応なほどに美しく、落ち着かないくらいだ。
いつものズボンとは違い裾がふわふわと広がって歩きづらいし、それにヒールの高い靴はどうも履き慣れないな。ヒールの高いガラスの靴は、中々合う靴がないほど小さな私の足にあつらえたようにぴったりだったが、慣れないためにふらふらしてしまう。
慣れない靴を履き、裾を踏まないためにぎこちない歩き方になってしまう。それに加えて私は幼い頃から男装騎士として振舞うことを求められていたため、女らしい歩き方や仕草振る舞いなど身につけているわけがない。
外見だけはどこかの姫君のようでも、中身は所詮一介の貧乏騎士だ。初めは羨望の眼差しで見られても、このままではすぐにボロが出るだろう。
他の方からは高貴な身分だと思われているだろうに、実際の自分はひどくみすぼらしく、それが余計にみじめに感じるな。
華やかな見た目とは逆に内心ひどくみじめな思いをしていると、遠巻きに私をちらちらと見ている人の中に母上と妹たちを見つけ、ギクリとした。
段の私からは想像もできないこの姿では、さすがにすぐに私だと気づかれないだろうが、もっと近くにこられたらきっと気づかれてしまうだろう。
末妹を哀れに思い、一晩だけの約束で女に戻ったが、男装の騎士として生きる私がドレスを着て着飾るなど、たとえ一晩だけでも許されることではない。
母上たちにばれないよう、従者に持たされていた扇子で顔を隠しながら、ぎこちないながらも早足でその場から離れる。
とにかく人の群れから離れなくては……。
王子様たちと出会わなければいけない、という本来の目的さえも忘れ、ただひたすらに足を動かしていると、バルコニーのようなところに出た。
暗い中でも美しい庭園が見えるそこは、人が三人も入ったらいっぱいになってしまうくらいに小さなバルコニーだった。
幸いにも誰もいなかったその場所で、ようやく私はほっと息をつく。
王子様とまではいかなくても、あわよくば高貴な身分の方に見初められたい、と思っているだろう他の娘たちはもちろんこのような静かな場所にくるわけもないだろう。もう少しここで時間を潰させてもらおう。
王子様と恋に落ちてお世継ぎを、などとシンデレラはずいぶんと無茶なことを言っていたが、あれだけ人がいては、見初められるどころか王子様と話すことさえも叶わないだろう。そもそも、どなたが王子様かも存じ上げない。
シンデレラには悪いが、はなからシンデレラの言うようにするつもりはなかった。
それにしても、お城の中も夢のように美しかったけど、庭園までもが美しい。お城の中からわずかにこぼれる明かりでさえこんなにも美しく見えるのだから、太陽がのぼっている時に見たらどれだけ美しいのだろう。
一介の貧乏騎士である私がお城に招かれることなんて、これから先の人生ではきっともうないだろうから、今のうちに目に焼き付けておこう。
門番は私の姿をひとめみると深く敬礼し、身元を確められることもなく、お城の中へと通される。
お城の中はどこを見ても夢のように美しく、キラキラと輝く天井のシャンデリアは宝石のよう。初めてのお城に戸惑っていると、何やら注目を浴びているし、ヒソヒソと囁かれている。
「ねえご覧になって、とても美しい方よ」
「それにあのドレス......、きっとどこかの国のお姫様に違いないわ」
門番も含め誰もが私のことをどこかの国の姫だと思っているようだな。このドレスではそう思われるのも無理もないが……。
いくら舞踏会に行くためとはいえ、このドレスはさすがにやりすぎだったのではないか?
とても着心地が良いグリーンのドレスは、私には身分不相応なほどに美しく、落ち着かないくらいだ。
いつものズボンとは違い裾がふわふわと広がって歩きづらいし、それにヒールの高い靴はどうも履き慣れないな。ヒールの高いガラスの靴は、中々合う靴がないほど小さな私の足にあつらえたようにぴったりだったが、慣れないためにふらふらしてしまう。
慣れない靴を履き、裾を踏まないためにぎこちない歩き方になってしまう。それに加えて私は幼い頃から男装騎士として振舞うことを求められていたため、女らしい歩き方や仕草振る舞いなど身につけているわけがない。
外見だけはどこかの姫君のようでも、中身は所詮一介の貧乏騎士だ。初めは羨望の眼差しで見られても、このままではすぐにボロが出るだろう。
他の方からは高貴な身分だと思われているだろうに、実際の自分はひどくみすぼらしく、それが余計にみじめに感じるな。
華やかな見た目とは逆に内心ひどくみじめな思いをしていると、遠巻きに私をちらちらと見ている人の中に母上と妹たちを見つけ、ギクリとした。
段の私からは想像もできないこの姿では、さすがにすぐに私だと気づかれないだろうが、もっと近くにこられたらきっと気づかれてしまうだろう。
末妹を哀れに思い、一晩だけの約束で女に戻ったが、男装の騎士として生きる私がドレスを着て着飾るなど、たとえ一晩だけでも許されることではない。
母上たちにばれないよう、従者に持たされていた扇子で顔を隠しながら、ぎこちないながらも早足でその場から離れる。
とにかく人の群れから離れなくては……。
王子様たちと出会わなければいけない、という本来の目的さえも忘れ、ただひたすらに足を動かしていると、バルコニーのようなところに出た。
暗い中でも美しい庭園が見えるそこは、人が三人も入ったらいっぱいになってしまうくらいに小さなバルコニーだった。
幸いにも誰もいなかったその場所で、ようやく私はほっと息をつく。
王子様とまではいかなくても、あわよくば高貴な身分の方に見初められたい、と思っているだろう他の娘たちはもちろんこのような静かな場所にくるわけもないだろう。もう少しここで時間を潰させてもらおう。
王子様と恋に落ちてお世継ぎを、などとシンデレラはずいぶんと無茶なことを言っていたが、あれだけ人がいては、見初められるどころか王子様と話すことさえも叶わないだろう。そもそも、どなたが王子様かも存じ上げない。
シンデレラには悪いが、はなからシンデレラの言うようにするつもりはなかった。
それにしても、お城の中も夢のように美しかったけど、庭園までもが美しい。お城の中からわずかにこぼれる明かりでさえこんなにも美しく見えるのだから、太陽がのぼっている時に見たらどれだけ美しいのだろう。
一介の貧乏騎士である私がお城に招かれることなんて、これから先の人生ではきっともうないだろうから、今のうちに目に焼き付けておこう。
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