王宮お抱えのエセ魔術師ですが、冷淡な第三王子様に溺愛されてたみたいです

春音優月

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 宰相令嬢さまの愛猫、ミーシャさま。どこへ行ってしまわれたのかな。

 これまでの経験や知識を総動員させ、猫が行きそうなところを考える。

 昨日からいなくなったということは、まだそんなに遠くには行っていないはず。そうすると、王宮の近くを探した方がいいのかな。

 場所は――子どもの頃に住んでいた村の猫たちは、人があまり来なくて、狭くて暗いところが好きだった。普通に村を歩いていることもあったけど、びっくりするようなところに隠れていることもよくあったなぁ。

 高貴な方の飼い猫さまといっても、猫は猫。もしかしたら、ミーシャさまもどこかの隅に隠れているのかもしれない。



 一度自室に戻って本を置いてから、ある程度目星をつけて猫探しを始める。

「ミーシャさま?」
「ミーシャちゃん」
「ここかなー?」

 なるべく人気|《ひとけ》がなくて、静かで、狭いところ。裏庭のベンチの下、地下室、柱の裏。あちこちのぞいてみるけれど、ミーシャさまがいる気配はない。

 本物の白魔術師なら、猫の行方もパパッと占えるのかもしれない。少なくとも、今よりはずっと効率良く探せるはず。だけど、私には自分の足で探すほかなかった。

 実を言うと、白魔術は一つも使えないの。ひょんなことから魔術の才があると勘違いされ、エセ魔術師をやっています。

 王宮の方々を騙すのは心苦しいけれど、今さら『実は、白魔術は使えません』なんて打ち明けられるわけもない。嘘をついている分、せめてみなさまのお役に立てるようにがんばらないと。

 失せ物探しを依頼されれば、足を使う。恋占いを頼まれれば、どうにかして相手の方のお心を聞き出す。毎回魔術関係なしで、ご依頼を自力解決していた。けれど、魔術は使えなくとも、私は幸運の星の下に生まれたのかもしれない。

 だって、いつエセ魔術師だと気づかれるのかヒヤヒヤしながら過ごしているのに、もう八年もバレずにいるんだから――。

「何してるの?」
 考えごとをしながら身を屈め、第二書庫の本棚の下を覗き込んでいたら、緑色の瞳と目が合った。
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