魔王の娘としては大変不本意ではございますが、勇者と結婚することになりました。

春音優月

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24、救いの手

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「猫のことより、ご自分のことを心配なされた方がよろしいのでは?」
 
 そう言った神父が目で合図すると、神官二人がミアを両側から取り抑えた。無理矢理ミアを膝立ちの体勢にさせると、正面に来た神父がミアのドレスの胸元に手をかけ、下着ごとドレスを引きちぎる。
 
「な……っ! ぶ、無礼者っ!」
「あなたたち、やめなさいっ! ミアさまの美しく気高いお身体に触れることが許されるのは、アデルさまだけなんですよ!」
 
 大きな乳房が露出し、ミアとリリスは同時に叫ぶ。しかし、ミアは神官二人に、リリスはメイドにしっかり抑えられているため、もがいても一向に状況は好転しなかった。
 
 それどころか、神父はさらにミアのドレスの裾から股の部分まで豪快に破っていき、今度はミアの白い太ももがあらわになる。
 
 小柄で細身なのに豊かな乳房、透けるように白い肌、美しい赤髪。神聖な花嫁衣装を破られ、愛らしい顔を紅潮させたミアは聖職者たちの劣情を誘った。
 
「魔族を犯す趣味はありませんでしたが、貴方様は格別に美しい……」
「……く、くるなっ」
「ミアさまっ、ミアさま~!」
 
 瞳をぎらつかせながら忍び寄ってくる神父を見たミアはこれから何が起こるのかを察し、懸命に首を横に振る。リリスもメイドの腕の中でバタバタともがくが、メイドの腕からは逃げ出すことが出来ず、ミアを助けることが出来なかった。
 
「申し訳ございません、ミアさま。この機を逃せば、姫君を犯せる機会なんてございませんので。魔力を供給するだけの塊になる前に、私たちが可愛がってあげますよ」
 
 神父の言葉を合図に、欲にまみれた神官たちの手がミアの両の乳房に伸び、痛いぐらいに強く揉みしだく。
 
「やっ……、アデルっ」
 
 ミアは涙を流してアデルの名を呼ぶが、もちろんアデルは助けには現れない。
 
「アデルさまはお眠りになられたと申し上げたはずです。助けには来られませんよ」
 
 冷酷な言葉をかけると、神父はミアの両足の間に入り、レースの下着を下ろそうとした。それを見たミアは絶望し、ぎゅっと目を強く瞑る。
 
 ミアとリリスがこの後起きる最悪の事態を覚悟した時だった。バァン!と大きな音を立てて、ドアが開き、誰かが中に入ってきたのである。
 
「バカな! 何人たりともこの部屋のドアを開けることは出来ないはず……あ、あなたは……っ」
 
 ドアにかけたはずの光魔法を破られ、神父たちは動揺していたが、入ってきた人物の顔を見てヒュッと息をのむ。
 
 輝くような金色の髪、空のように青い瞳を持つ人物は、まさに勇者の血を引く王子アデルその人であった。
 
「アデルさま~!! きっと助けにきてくださると信じておりましたわ!」
「アデル……っ」
「なぜここに……あと二時間は目覚められないはず……い、いや、その、アデルさま……あの、その、これはそのぅ……」
 
 アデルの顔を確認したリリスは泣いて喜び、ミアは安心して気が緩んだのかぽろりと涙をこぼす。そして、ミアを犯そうとしていた神父たちはしどろもどろで言い訳していたが、男たちにドレスを破られ、その大きな乳房と白く美しい脚をあらわにされたミアの姿をアデルの目が捉えると、一瞬でアデルの頭に血が上った。
 
 まだ動揺している男たちに反撃する隙さえ与えず、剣を抜いたアデルがその場を制圧するまでは三十秒もかからなかった。
 
「ミア!」
「アデル……!」
 
 神父たちを気絶させたアデルはまだ床にへたり込んでいるミアの元に駆け寄り、ミアも足に力を込めてどうにか立ち上がる。二人の手が間もなく触れ合うという時、物陰に隠れていたメイドがアデルの背後から木魔法を放とうとしていることにミアは気がついてしまった。
 
 メイドの手から放たれた木魔法は、鋭く太い木の枝のような形状となって、アデルの背を貫こうとする。
 
「させぬ!」
 
 しかし、その瞬間ミアが素早く闇魔法を放つと、それはメイドの方に飛んでいき、一撃で彼女を吹き飛ばしてしまった。
 
「きゃあああああ!!」
 
 どんどんステータスが減少していく細工をドレスに施されていたはずのミアが魔法を打てたのは、ウェディングドレスが破られたことにより効力が薄れたのか。それとも、愛の力だったのか。
 
 それは分からないが、ミアの闇魔法はメイドを倒し、同時にメイドから放たれたはずの土魔法はアデルの背中を貫く手前で空中に霧散した。
 
「よかっ……た……」
 
 しかし、やはりミアの魔力と体力は限界だったらしい。アデルの無事を見届けた瞬間、ミアは意識をなくし、後ろに倒れてしまった。
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