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18、お忍びデート
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お忍びで城を出て少し歩くと、すぐに城下町が見えてきた。道々にはレンガ作りの可愛いお店や建物が立ち並び、広場のようなところにはたくさんのテントや屋台があり、そこではアクセサリーや食べ物、果物などが売っている。
「わあ~!! にぎわってますね、ミアさまっ。可愛いアクセサリーやおいしそうなものもたくさんっ」
「これは……っ、う、浮かれるでない、リリス! 魔族が作ったものの方がずっと素晴らしいに決まっておる!」
魔界にはない可愛いレンガ造りの建物や賑わいを見せる広場の様子にミアも目を輝かせたが、すぐにハッとして浮かれるリリスに反論したが……。
「このお魚の形の飴、とってもおいしそうです~!」
「食べてみる? ここの名物なんだよ」
「よろしいんですかっ?」
ミアを無視して話を進め、アデルがリリスが気に入ったらしい飴を買ってやった。リリスは魚の形の飴が気に入ったようだが、そこの屋台には果物や動物など様々な形の飴が並んでいる。どれも繊細で丁寧に作られていて、とても美しい飴細工だった。
「こら、勝手に話を進めるでない! リリス、聞いておるのか!」
「はい、ミアも。おいしいよ」
「む……」
猫の形の飴を口元に押しつけられ、ミアはしぶしぶ口を開く。一口それを口に入れた瞬間、とろけるような甘さと幸福感がミアの口の中に広がっていく。
「どう?」
「本物のお魚にも負けないくらいおいしいです~!!」
「……うまいっ!!」
アデルが聞くと、リリスとミアはほぼ同時にそう言った。徹底的にこき下ろしてやろうと思っていたのだが、あまりの美味しさにさすがのミアも感動してしまったというわけである。
「他にはないのかっ!? 他のものも食べてみたいぞ」
「はいっ、ミアさま! 食らいつくしてやりましょう!」
先ほどまで人間の作るものなんてどうのこうのと文句を言っていた人物と同一人物とはとても思えない。
ミアは子どものようにはしゃぎ、次なる美味を求めて走り出す。そのあとをリリスが追っていった。
「ミア、あんまり大きい声出すと目立つから……って聞いてないよね」
暴走するミアを止めようとしたが、目を輝かせて屋台のものを物色するミアたちに苦笑いをこぼす。
「お嬢ちゃんっ、そこの可愛いお嬢ちゃん! ひとつどうだい? イキの良いうずまきケーキあるよ!」
物色している最中、恰幅の良い中年女性に声をかけられ、ミアたちを足を止める。女性の店には、うずまきの形状に丸められたパンケーキのようなものが棒にささっていた。どちらもうずまきの形状ではあるが、シンプルな丸型とハートの形のものがある。
「イキの良いケーキ……」
「では、丸い方をふたつもらおう」
リリスは女性の言葉に口を引きつらせたが、意外にもミアはそれを気に入ったようだ。ポケットからお金を取り出し、女性に手渡す。
「はいよっ、ありがとうね」
「ひとつ多いようだが?」
女性から丸型ふたつとハート型ひとつを手渡されたミアは、ハート型のものを女性に返そうとしたが、女性は受け取ろうとはしなかった。
「それはおまけだよ。向こうにいる彼氏と食べな」
「あ、あの男は彼氏などではない!」
少し離れたところで待っているアデルのことを言われているとすぐに気がついたミアは、真っ赤になって否定する。
「そうでございますよ~。あちらのお方は、婚約者さまでございますの」
「リリス!」
「おや、そうなのかい。それはめでたいねぇ。幸せになりな」
女性から優しい眼差しを向けられたミアは、似ても似つかぬというのに亡くなった母を思い出してしまい、少しだけ感傷的な気持ちになった。
「なぜ私は、下卑た人間なんかを崇高でお美しかったお母様と重ねてしまったんだ……」
「ミアさま? 何をおっしゃってるのですか?」
「……何でもない」
ぶつぶつ言っているミアをリリスが不思議そうに見つめていたが、そんな一言で一蹴してしまう。
「わあ~!! にぎわってますね、ミアさまっ。可愛いアクセサリーやおいしそうなものもたくさんっ」
「これは……っ、う、浮かれるでない、リリス! 魔族が作ったものの方がずっと素晴らしいに決まっておる!」
魔界にはない可愛いレンガ造りの建物や賑わいを見せる広場の様子にミアも目を輝かせたが、すぐにハッとして浮かれるリリスに反論したが……。
「このお魚の形の飴、とってもおいしそうです~!」
「食べてみる? ここの名物なんだよ」
「よろしいんですかっ?」
ミアを無視して話を進め、アデルがリリスが気に入ったらしい飴を買ってやった。リリスは魚の形の飴が気に入ったようだが、そこの屋台には果物や動物など様々な形の飴が並んでいる。どれも繊細で丁寧に作られていて、とても美しい飴細工だった。
「こら、勝手に話を進めるでない! リリス、聞いておるのか!」
「はい、ミアも。おいしいよ」
「む……」
猫の形の飴を口元に押しつけられ、ミアはしぶしぶ口を開く。一口それを口に入れた瞬間、とろけるような甘さと幸福感がミアの口の中に広がっていく。
「どう?」
「本物のお魚にも負けないくらいおいしいです~!!」
「……うまいっ!!」
アデルが聞くと、リリスとミアはほぼ同時にそう言った。徹底的にこき下ろしてやろうと思っていたのだが、あまりの美味しさにさすがのミアも感動してしまったというわけである。
「他にはないのかっ!? 他のものも食べてみたいぞ」
「はいっ、ミアさま! 食らいつくしてやりましょう!」
先ほどまで人間の作るものなんてどうのこうのと文句を言っていた人物と同一人物とはとても思えない。
ミアは子どものようにはしゃぎ、次なる美味を求めて走り出す。そのあとをリリスが追っていった。
「ミア、あんまり大きい声出すと目立つから……って聞いてないよね」
暴走するミアを止めようとしたが、目を輝かせて屋台のものを物色するミアたちに苦笑いをこぼす。
「お嬢ちゃんっ、そこの可愛いお嬢ちゃん! ひとつどうだい? イキの良いうずまきケーキあるよ!」
物色している最中、恰幅の良い中年女性に声をかけられ、ミアたちを足を止める。女性の店には、うずまきの形状に丸められたパンケーキのようなものが棒にささっていた。どちらもうずまきの形状ではあるが、シンプルな丸型とハートの形のものがある。
「イキの良いケーキ……」
「では、丸い方をふたつもらおう」
リリスは女性の言葉に口を引きつらせたが、意外にもミアはそれを気に入ったようだ。ポケットからお金を取り出し、女性に手渡す。
「はいよっ、ありがとうね」
「ひとつ多いようだが?」
女性から丸型ふたつとハート型ひとつを手渡されたミアは、ハート型のものを女性に返そうとしたが、女性は受け取ろうとはしなかった。
「それはおまけだよ。向こうにいる彼氏と食べな」
「あ、あの男は彼氏などではない!」
少し離れたところで待っているアデルのことを言われているとすぐに気がついたミアは、真っ赤になって否定する。
「そうでございますよ~。あちらのお方は、婚約者さまでございますの」
「リリス!」
「おや、そうなのかい。それはめでたいねぇ。幸せになりな」
女性から優しい眼差しを向けられたミアは、似ても似つかぬというのに亡くなった母を思い出してしまい、少しだけ感傷的な気持ちになった。
「なぜ私は、下卑た人間なんかを崇高でお美しかったお母様と重ねてしまったんだ……」
「ミアさま? 何をおっしゃってるのですか?」
「……何でもない」
ぶつぶつ言っているミアをリリスが不思議そうに見つめていたが、そんな一言で一蹴してしまう。
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