魔王の娘としては大変不本意ではございますが、勇者と結婚することになりました。

春音優月

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6、初夜

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「何をする気だ!」
 
 ベッドに沈められたことに動揺したミアは、懸命にアデルの手を振り解こうとする。そこまで強い力で押さえつけられているわけでもないのに、ミアは上にいるアデルを一ミリも動かすことが出来ない。
 
(この私が、こうも容易く抑え込まれている、だと……?)
 
 ミアは悔しさから目を吊り上げるが、ミアの怒った顔でさえアデルの瞳には可愛らしくうつる。
 
「夫婦の営みです」
 
 ミニ丈のネグリジェから剥き出しになったミアの白い太ももをなぞりながら、アデルはさわやかな笑顔を浮かべた。
 
「な……っ、ふ、ふうふ!? 結婚式は一ヶ月後だ。私たちはまだ正式な夫婦ではない」
 
 とたんミアは赤面し、ますます抵抗が激しくなるが、アデルはお構いなしにミアの太ももをさすっている手を上の方に動かしていく。
 
「いずれ結婚するので、問題ありませんよ」
「私は人間のお前に抱かれる気など、……んっ!? んん~~!!」
 
 反論しようとした口をアデルの唇で塞がれ、ミアは驚いて目を見開く。ミアにとって初めてのキスだったが、容赦なくアデルの舌が入り込んできて、ミアは息苦しさと身体の火照りに息を荒くした。
 
「何をする!」
「こんなに可愛いお召し物を着ていらっしゃるので、ミアさまもその気なのかと」
 
 ミアがアデルの胸元をどんと叩くと、アデルはミアが身にまとっている赤いネグリジェの裾に触れた。
 
 ミアが着ている前開きタイプのネグリジェはシースルーになっていて、ミアの白い肌が透けて見える上に胸元が強調されるデザインだ。レースのついた丈もお尻をギリギリ覆うぐらいの長さのセクシーなもの。
 
「これは私の寝間着だ。断じてお前のためではない!」
 
 ミアがキッとアデルを睨みつけると、アデルはそうなんですかと興味なさげにつぶやく。そして、再び笑みを浮かべてミアを見下ろした。
 
「どっちでも良いですよ。私は今夜ミアさまを抱きます」
「勝手なことを申すな。私はそんなことを許した覚えはない」
「いいえ、ミアさまはお許しになられましたよ。好きにしていいって、先程おっしゃられましたよね? ご自身がおっしゃられたことをもうお忘れになったのですか? あなたは、私のしもべなんです。ミア」
「あ……」
 
 覆い被さられたまま耳元で名前を呼ばれ、ミアの全身にゾクリとしたものが走った。
 
(敵わない。私は、この男に敵わないんだ……)
 
 所詮人間、優男だと見くびっていたのに、しもべにするどころか圧倒的な力の差を見せられ、しもべにされてしまった。
 
 目の前にいる男は、圧倒的強者。自分を喰らう雄。
 
 ミアを押し倒せる力と勇気がある者は魔界にもいなかったのに、初めて押し倒されたのが人間だなんて悔しくてたまらない。しかし、ミアは心のどこかでは自分を屈服させ、組み伏せる強い男が現れることをずっと待ち望んでいたのだ。
 
 待ち望んでいた男の登場にミアの胸はときめき、頬も紅潮するが、やはりずっと見下してきた人間に抱かれるのは抵抗がある。目の前の男が魔族であったならば、ミアも素直に体を許すことが出来たのかもしれないが……。
 
「ま……待て! 何をしている!」
 
 ミアの心中に複雑な思いが渦巻いている中、アデルによって胸元のリボンをほどかれ、大きな白い乳房が露わになってしまう。ミアは慌てて手でそれを隠そうとしたが、それよりも早くアデルの大きな手が彼女の膨らみの一つを覆った。
 
 柔らかいふわふわの胸を揉まれ、ミアは羞恥と屈辱に顔を赤くする。アデルの指が硬くなり始めたミアの乳輪の先を捉えると、ミアは大きな瞳に涙をいっぱい浮かべた。
 
「もうやめっ」
 
 アデルの大きな手に、そしてその長い指に触れられるたび、ミアは全身がゾクゾクするような妙な感覚に包まれる。処女のミアにとってはそれが何か分からず、快感が恐怖に変わり、ミアは身を震わせた。
 
 身を震わせるミアの乳房からアデルは手を離したが、赤い瞳に涙をいっぱい溜めてこちらをじっと見つめているミアを見て、アデルは息をのんだ。
 
 シースルーのネグリジェから見える真っ白な肌は赤く火照り、小柄な身体に似つかわしくないほどに大きな乳房の先はピンと尖っている。 
 強情で人間嫌いでプライドが高いくせに、愛らしい顔を歪ませて涙ながらに訴えかけるその姿はとても淫らで、アデルの欲情を煽った。
 
 アデルは宙にさまよっていた右手をミアの頭に置き、涙目になっているミアをあやすように彼女の頭を優しく撫でる。
 
「ミアさまが悪いんですよ。本当は結婚式まで待つつもりでした。今夜もご挨拶に伺っただけで、このようなことをするつもりはなかったんです」
「いきなり攻撃を仕掛けた私のことを怒っているから、こんな嫌がらせをするのか?」
「それもありますけど、それよりも……」
 
 アデルはミアの頭を撫でていた手を彼女の頬にやり、そっとその頬を撫でて顔を近づける。
 
「ミアが可愛いから」
 
 そう言った後、アデルはミアの唇に自らの唇を重ねた。戸惑っているミアの舌を優しく吸いながら、アデルはミアのネグリジェの裾から右手を忍ばせる。そのままミアの履いていた下着を手探りでおろし、ミアの秘部の入口を指でなぞった。
 
「……んんっ」
 
 すでに濡れていたソコに指をわずかに入れられたミアは、いやいやと首を横に振る。ミアから抵抗されたアデルは、塞いでいた唇を離し、顔を上げる。
 
「そこはダメだ……っ。アデル」
「怖い?」
「……怖くなど、ない。ただ、人間風情に触られたくないだけだ」
 
 ぷいっと顔を背けたミアに、さすがのアデルもカチンときた。
 
「そう。でも、残念だったね。
ミアは俺のしもべだから。ミアが嫌がっても、俺はミアを抱くよ」
 
 敬語をやめたアデルは小さく息をつき、目を細める。その顔はやけに扇状的で、ミアは思わず息をのんだ。
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