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9、好きな人
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どこに行ったのか探すまでもなく、恭はすぐに見つかった。普段俺たちが使っている教室で自分の机に伏せっている恭に近づき、声をかける。
「恭?」
俺が声をかけると、恭は机から顔を上げたけど、恭の顔は涙でぐちゃぐちゃだった。映画を見た時のように鼻水は出してないけど、涙の跡で恭のかっこいい顔が大変なことになっている。
「はい。まずは顔ふいて」
「……ありがとう」
拒否られるかなって思ったけど、ズボンのポケットから出したハンカチを恭が素直に受け取ってくれて、少しホッとする。
「あのさ、恭。さっきの話なんだけど、」
「良典、俺は良典が好きだよ」
「うん?」
恭が顔を拭き終わったのを見計らい、話を切り出そうとしたけど、俺の言葉に被せるように恭が話し出す。
「最初は良典が告白してくれて嬉しくて付き合ったんだけど、すぐに良典のこと好きになった。良典のこと大好きなんだ。良典と別れたくない」
せっかく顔を拭いたのに、恭の瞳にはまた涙がいっぱいたまっていき、こんな顔をさせてるのは俺なんだって思うと胸が痛んだ。俺だって、お前と別れたくない。
「でも、良典が美穂のこと好きなら、」
恭は何かを言いかけて途中で辞め、辛そうにうつむく。そんな恭の隣にかがみ、椅子に座っている恭と目線を合わせてから、恭の顔を両手でつかみ、こちらを向かせる。
「聞いて、恭」
恭の目は相変わらず涙がいっぱいたまってたけど、それでも俺の目を見てくれたので、恭の目を見ながら、ゆっくりと話し出す。
「俺、本当は高島さんに告白しようとしてた。
でも、間違えてお前のロッカーに手紙を入れて、喜んでるお前を見てたら、間違えたって言い出せなくなって……」
そこまで言うと、辛そうに目を伏せる恭に胸が張り裂けそうになる。ごめん、恭。本当に俺って最低だよな。
「でもさ、付き合ってるうちにどんどんお前のこと好きになっていったよ。もし、恭が俺のことを許してくれるなら、俺はこれからも恭の彼氏でいたい。恭と別れたくない」
本当は、初めてデートをした日に俺は恭のことを好きになってたんだと思う。すぐ泣くし、思ったことそのまま口に出すし、俺の思ってた高田恭と全然違ってたけど、可愛くてかっこよくてめちゃくちゃいいやつで。
さっき階段で恭に話を聞かれて、もしかしたら恭とダメになるかもって思った時、恭と別れたくない。恭のことが大好きだって改めて思ったんだ。
目に涙をいっぱいためている恭を見ていたら、俺まで泣きそうになってくる。もしかしたら恭にフラれるのもって思ったら、声が震えてきてヤバかったけど、どうにかそこまで言いきると、恭はポロリと涙をこぼした。
「ほんと? 俺のことが好き?」
「うん、好き。大好き。お前しか好きじゃない」
真っ赤な目で俺を見ている恭の顔に自分の顔を近づけ、ちゅっと唇を重ねる。唇を離すと、恭はボロボロと涙をこぼし、すがりつくように俺の両肩に手を置いた。
「良かったぁ。じゃあ、俺たち別れなくていいんだね」
「う、うん。あのさ、怒らないの?」
涙ながらにそう言った恭の言葉に少しの違和感があって聞いてみたけど、恭は「何が?」と不思議そうに俺の顔を覗き込む。
「間違えて告白したとかふざけんな、とか、そういうのないの?」
「ないよ。良典が間違えてくれたおかげで、良典と付き合えたんだし。俺は良典が好きで、良典も俺が好きなら、何も問題ないよ」
きょとんとした顔をしながらも、恭ははっきりとそう言ってみせた。
「お前ってさ、なんていうか、いいやつだな……」
普通はキレてもおかしくないだろうに。
「え?」
「好きだって言ったの」
ま、そんなとこが好きなんだけど。
「俺も大好き」
満面の笑みを浮かべた恭と目が合うと、今度は恭の方からキスをしてきた。自分よりも大きな恭の背中に手を回し、恭のキスを受け入れる。大好きだよ、恭。
「恭?」
俺が声をかけると、恭は机から顔を上げたけど、恭の顔は涙でぐちゃぐちゃだった。映画を見た時のように鼻水は出してないけど、涙の跡で恭のかっこいい顔が大変なことになっている。
「はい。まずは顔ふいて」
「……ありがとう」
拒否られるかなって思ったけど、ズボンのポケットから出したハンカチを恭が素直に受け取ってくれて、少しホッとする。
「あのさ、恭。さっきの話なんだけど、」
「良典、俺は良典が好きだよ」
「うん?」
恭が顔を拭き終わったのを見計らい、話を切り出そうとしたけど、俺の言葉に被せるように恭が話し出す。
「最初は良典が告白してくれて嬉しくて付き合ったんだけど、すぐに良典のこと好きになった。良典のこと大好きなんだ。良典と別れたくない」
せっかく顔を拭いたのに、恭の瞳にはまた涙がいっぱいたまっていき、こんな顔をさせてるのは俺なんだって思うと胸が痛んだ。俺だって、お前と別れたくない。
「でも、良典が美穂のこと好きなら、」
恭は何かを言いかけて途中で辞め、辛そうにうつむく。そんな恭の隣にかがみ、椅子に座っている恭と目線を合わせてから、恭の顔を両手でつかみ、こちらを向かせる。
「聞いて、恭」
恭の目は相変わらず涙がいっぱいたまってたけど、それでも俺の目を見てくれたので、恭の目を見ながら、ゆっくりと話し出す。
「俺、本当は高島さんに告白しようとしてた。
でも、間違えてお前のロッカーに手紙を入れて、喜んでるお前を見てたら、間違えたって言い出せなくなって……」
そこまで言うと、辛そうに目を伏せる恭に胸が張り裂けそうになる。ごめん、恭。本当に俺って最低だよな。
「でもさ、付き合ってるうちにどんどんお前のこと好きになっていったよ。もし、恭が俺のことを許してくれるなら、俺はこれからも恭の彼氏でいたい。恭と別れたくない」
本当は、初めてデートをした日に俺は恭のことを好きになってたんだと思う。すぐ泣くし、思ったことそのまま口に出すし、俺の思ってた高田恭と全然違ってたけど、可愛くてかっこよくてめちゃくちゃいいやつで。
さっき階段で恭に話を聞かれて、もしかしたら恭とダメになるかもって思った時、恭と別れたくない。恭のことが大好きだって改めて思ったんだ。
目に涙をいっぱいためている恭を見ていたら、俺まで泣きそうになってくる。もしかしたら恭にフラれるのもって思ったら、声が震えてきてヤバかったけど、どうにかそこまで言いきると、恭はポロリと涙をこぼした。
「ほんと? 俺のことが好き?」
「うん、好き。大好き。お前しか好きじゃない」
真っ赤な目で俺を見ている恭の顔に自分の顔を近づけ、ちゅっと唇を重ねる。唇を離すと、恭はボロボロと涙をこぼし、すがりつくように俺の両肩に手を置いた。
「良かったぁ。じゃあ、俺たち別れなくていいんだね」
「う、うん。あのさ、怒らないの?」
涙ながらにそう言った恭の言葉に少しの違和感があって聞いてみたけど、恭は「何が?」と不思議そうに俺の顔を覗き込む。
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「ないよ。良典が間違えてくれたおかげで、良典と付き合えたんだし。俺は良典が好きで、良典も俺が好きなら、何も問題ないよ」
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「お前ってさ、なんていうか、いいやつだな……」
普通はキレてもおかしくないだろうに。
「え?」
「好きだって言ったの」
ま、そんなとこが好きなんだけど。
「俺も大好き」
満面の笑みを浮かべた恭と目が合うと、今度は恭の方からキスをしてきた。自分よりも大きな恭の背中に手を回し、恭のキスを受け入れる。大好きだよ、恭。
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