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44話 ハッピーエンドフラグ?

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「杏ちゃん」

 体育館を離れ、一成先輩が見えなくなったところで、広夢くんが当然足を止めた。
 
「?」
「手が……」

 広夢くんは苦笑しつつも、自分の手の方に視線を向ける。……? ああ!

「あっ。ご、ごめんね」

 手を繋いだままだったことにようやく気がつき、パッと手を離す。必死過ぎて気がつかなかったよ~。

 恥ずかしさから、ついうつむいてしまう。

「そのままでも良かったんだけど」

 そんな言葉をかけられ、私はパッと顔をあげる。

 少しはにかんだような笑顔を浮かべている広夢くんと目が合う。好感度ゲージは、すでに半分を超えている。

 これって、ものすごくいい感じ?
 このままハッピーエンド迎えられるんじゃ?

「それとも、誤解されたら困る人でもいるの?」

 そう言われて、悠真の顔が思い浮かぶ。
 ……いやいや。悠真はお助け役の幼なじみなんだから、誤解も何もないのに。
 
「そんな人いないよ」

 浮かんだ悠真をかき消すように、首を横に振る。

「悠真はただの幼なじみだから」
「悠真って?」

 キョトンとした表情を浮かべる広夢くん。

 し、しまった。つい……。
 墓穴掘った?

 好感度は下がってないみたいだけど、どうにか切り抜けないと。こんな時に限って選択肢は出てくれないし……!

「広夢くんこそ、そういう人いないの? 千夏ちゃんとか……」

 何を言ったらいいのか分からなくなって、聞き返しちゃった。

 なんか、どんどん状況が悪化してる気がする。
 相変わらずの残念なコミュ障ぶり。


「……。千夏は友達だよ」

 妙な間があったあと、広夢くんはそう言った。

「そうなんだ」
「うん」

 ちょっと引っかかるんだけど、友達だって言われた以上、深くは追求できないよね。

 私も潤くんとか、一成先輩とか、色々と微妙な関係の人がいるし。フラグ立てたそばから壊しちゃったからなぁ。

 なんとなく気まずい沈黙を破ったのは、広夢くんの方だった。

「杏ちゃんに伝えたいことがあったんだ」
「何?」
「明後日の文化祭が終わってから、屋上に来てくれない?」

 →分かった。
 無理かな。
 考えておくね。

 私が答えるよりも早く、選択肢が出てくる。

 えーっと。一番上かな。

「分かった」
 
 どうやら正解だったみたいで、広夢くんのハートのピンク色部分がぐぐっと上がる。

 明後日の金曜日は、文化祭最終日。

『その日に告白して成功したら、ずーっと一緒にいられるってジンクスがあるでしょう?』
 
 柚ちゃんから言われたことを、ふと思い出す。

 目の前の広夢くんは、やっぱり少し照れたような、けれど嬉しそうな顔をしている。
 
 もしかして……?

 あんまり期待し過ぎも良くないけど、期待しちゃうよね。なんて思いつつ、その日は二人で教室に帰ったんだ。
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