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36話 試合観戦
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三日後の土曜。
広夢くんの出る試合を見るため、私は休日の学校にきていた。
全然関係ないなのに試合を見にくるのもどうかと思ったんだけど、せっかく誘ってくれたんだし。うん。
そう自分に言い聞かせながら、校庭まで歩いていく。
休日の校庭には、男子サッカー部以外の部活の人もけっこういた。
野球部、陸上部、ハンドボール部。
それから、女子サッカー部も。千夏ちゃんいるかな?
赤色のユニフォームの女子サッカー部の中から千夏ちゃんを探しているうちに、男子サッカー部の試合が始まった。
広夢くんは、すぐに見つけることできた。
だって、広夢くんは誰よりも輝いていたから。
相手チームから素早くボールを奪い、広夢くんはゴールを目指す。チーム内でパスを回しながらも、広夢くんは広いフィールドを駆ける。
広夢くんはクラスの人気者で、いつだって輝いている。
だけど、サッカーボールを追いかけている広夢くんは、教室にいる時よりも、もっともっと輝いていた。
すごいな、かっこいいなって、ただだた引き込まれる。
広夢くんを目で追っているうちに、いつのまにか試合が終わっていた。
いったんお昼休憩に入ったのか、男子サッカー部員の人たちがバラバラに散っていく。
広夢くんは、一人で運動場から校舎に向かって歩いていた。
さっきの試合、かっこよかったよ――広夢くんにすぐに伝えたくて、彼の後を追いかける。
後ろから広夢くんに声をかけようとしていたとき。
「広夢!」
千夏ちゃん?
反対側から千夏ちゃんが走ってくるのが視界に入り、とっさに校舎の裏に隠れる。
別に隠れる必要なんてなかったかもしれないけど、つい隠れてしまった。千夏ちゃんの顔があまりに必死だったというか、焦って見えたというか、とにかくいつもの千夏ちゃんと全然違っていたから。
「さっきのケガ、大丈夫?」
千夏ちゃんは広夢くんに近づきながら、早口で話しかける。
「よく見てるね」
苦笑いを浮かべる広夢くん。
ケガ……? なんてしてたの?
全然分からなかった……。
「大丈夫。ちょっと足首をひねっただけだよ」
「そうやって無理してたら、またサッカーやれなくなるからね?」
またって……?
「分かってる。ありがとう、千夏」
「分かってないでしょ……」
千夏ちゃんは呆れたような目で広夢くんを見て、ため息をつく。しばらくして諦めたのか、千夏ちゃんはこちら側に向かって歩き出した。
……や、やばい。
逃げようと思っても逃げる場所なんてどこにもなく、千夏ちゃんと鉢合わせてしまう。
「杏? 来てたの?」
私を見つけた途端、千夏ちゃんは目を丸くした。
「あー……、えっとーっ」
「広夢でしょ? 向こうにいるから、声かけてあげなよ」
千夏ちゃんが広夢くんのいる方を指差す。
「最近のあいつ、杏の話ばかりでさ。絶対杏のこと好きだよね」
「え? いやー……」
まだ好感度半分だし、それはないと思うけどな。
なんてことはもちろん言えず、曖昧な返しをしていると、「早くいってきなよ」と背中を押される。
勢い余って、広夢くんのいる場所にまで移動してしまった。
「杏ちゃん? 来てくれてたんだ!」
広夢くんの顔がぱぁっと明るくなる。
同時に胸のハートのピンク色部分もぐーんと増えた。
あ、好感度半分超えた。
喜ぶべきなのかもしれないけど、私はさっきの千夏ちゃんと広夢くんの会話が気になり、それどころではなかった。
広夢くんと千夏ちゃん、思っているよりもずっと
仲良いんだね。
それに、広夢くんのケガにもすぐに気がついて、千夏ちゃんって本当に良く広夢くんを見てるんだなーって。
本当にケガしてたとしても、大したことなかったとしても、どっちにしても気がつかなかった。
ただ広夢くんがかっこよくて、キラキラしてて、それだけだった。だけど、千夏ちゃんは違うんだね。
千夏ちゃんと広夢くんって、何かあるのかな?
広夢くんの出る試合を見るため、私は休日の学校にきていた。
全然関係ないなのに試合を見にくるのもどうかと思ったんだけど、せっかく誘ってくれたんだし。うん。
そう自分に言い聞かせながら、校庭まで歩いていく。
休日の校庭には、男子サッカー部以外の部活の人もけっこういた。
野球部、陸上部、ハンドボール部。
それから、女子サッカー部も。千夏ちゃんいるかな?
赤色のユニフォームの女子サッカー部の中から千夏ちゃんを探しているうちに、男子サッカー部の試合が始まった。
広夢くんは、すぐに見つけることできた。
だって、広夢くんは誰よりも輝いていたから。
相手チームから素早くボールを奪い、広夢くんはゴールを目指す。チーム内でパスを回しながらも、広夢くんは広いフィールドを駆ける。
広夢くんはクラスの人気者で、いつだって輝いている。
だけど、サッカーボールを追いかけている広夢くんは、教室にいる時よりも、もっともっと輝いていた。
すごいな、かっこいいなって、ただだた引き込まれる。
広夢くんを目で追っているうちに、いつのまにか試合が終わっていた。
いったんお昼休憩に入ったのか、男子サッカー部員の人たちがバラバラに散っていく。
広夢くんは、一人で運動場から校舎に向かって歩いていた。
さっきの試合、かっこよかったよ――広夢くんにすぐに伝えたくて、彼の後を追いかける。
後ろから広夢くんに声をかけようとしていたとき。
「広夢!」
千夏ちゃん?
反対側から千夏ちゃんが走ってくるのが視界に入り、とっさに校舎の裏に隠れる。
別に隠れる必要なんてなかったかもしれないけど、つい隠れてしまった。千夏ちゃんの顔があまりに必死だったというか、焦って見えたというか、とにかくいつもの千夏ちゃんと全然違っていたから。
「さっきのケガ、大丈夫?」
千夏ちゃんは広夢くんに近づきながら、早口で話しかける。
「よく見てるね」
苦笑いを浮かべる広夢くん。
ケガ……? なんてしてたの?
全然分からなかった……。
「大丈夫。ちょっと足首をひねっただけだよ」
「そうやって無理してたら、またサッカーやれなくなるからね?」
またって……?
「分かってる。ありがとう、千夏」
「分かってないでしょ……」
千夏ちゃんは呆れたような目で広夢くんを見て、ため息をつく。しばらくして諦めたのか、千夏ちゃんはこちら側に向かって歩き出した。
……や、やばい。
逃げようと思っても逃げる場所なんてどこにもなく、千夏ちゃんと鉢合わせてしまう。
「杏? 来てたの?」
私を見つけた途端、千夏ちゃんは目を丸くした。
「あー……、えっとーっ」
「広夢でしょ? 向こうにいるから、声かけてあげなよ」
千夏ちゃんが広夢くんのいる方を指差す。
「最近のあいつ、杏の話ばかりでさ。絶対杏のこと好きだよね」
「え? いやー……」
まだ好感度半分だし、それはないと思うけどな。
なんてことはもちろん言えず、曖昧な返しをしていると、「早くいってきなよ」と背中を押される。
勢い余って、広夢くんのいる場所にまで移動してしまった。
「杏ちゃん? 来てくれてたんだ!」
広夢くんの顔がぱぁっと明るくなる。
同時に胸のハートのピンク色部分もぐーんと増えた。
あ、好感度半分超えた。
喜ぶべきなのかもしれないけど、私はさっきの千夏ちゃんと広夢くんの会話が気になり、それどころではなかった。
広夢くんと千夏ちゃん、思っているよりもずっと
仲良いんだね。
それに、広夢くんのケガにもすぐに気がついて、千夏ちゃんって本当に良く広夢くんを見てるんだなーって。
本当にケガしてたとしても、大したことなかったとしても、どっちにしても気がつかなかった。
ただ広夢くんがかっこよくて、キラキラしてて、それだけだった。だけど、千夏ちゃんは違うんだね。
千夏ちゃんと広夢くんって、何かあるのかな?
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