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27話 どんな関係?
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そこには、予想通り虚な瞳の潤くんがいた。
こ、これは、マズイ。
私を刺した時の潤くんだ。
どうにかしなきゃって思っていたら、またいつものテキストボックスが表示される。
→そうだよ。だから、もう付きまとわないで。
一成先輩とは付き合ってないし、何とも思ってない。
どっちだと思う?
えーと、えっと。一番目を選びたいところだけど、今それを選んだら確実に刺されるよね。
そうなると、二番目。
あ、でも、これって、もしかして、一成先輩の好感度も変動する? 二番目を選んだら、一成先輩の好感度が下がったりするのかな。
それは嫌だから、思わせぶりな三番目?
いや、でも、……。
どれを選ぶかしばらく考えていたら、テキストボックスの表示が突然パッと消える。
ええっ!? なに? 時間切れ?
そういうのもあるの?
一人でアワアワしていたら、いつのまにか潤くんが近くにいた。
「杏ちゃんも俺を裏切るんだね」
ひっ! このセリフは、刺された時と同じやつ。
裏切るも何も、今回は付き合ってないんだけど!
潤くんがさらに距離をつめてくる。
さ、刺される!?
思わず、ぎゅっと目を瞑る。
刺されるのを覚悟していた。
けれど、一向に痛みは訪れない。
どうなってるのかな?
おそるおそる目を開けてみる。
すると、潤くんの振り上げた手を一成先輩がねじっていた。
「なんなの、アンタ。杏ちゃんの彼氏なの?」
潤くんが顔を歪め、忌々しそうに言う。
「違うよ」
「だったら、」
「杏ちゃんは大事な後輩だし、友達だ。だから、守るのは当然だよ」
一成先輩は潤くんの腕を掴んだまま、きっぱりと言ってくれた。その横顔がすっごくかっこよくて、ドキッとする。
こんな時にそんなこと思ってる場合じゃないけど、でも、でも、かっこいい~……! 一成先輩、完全に乙女ゲームのメインヒーローじゃない?
「あーあ、だる」
しばらく硬直状態だった潤くんが舌打ちして、一成先輩の手を振り払う。そして、背を向けて去っていく。
諦めてくれた?
ううん、潤くんのことだから、油断はできないよね。
でも、ひとまずは助かった。
今回はバッドエンドを迎えずに済んだんだ。
安心したからか、足から力が抜けていく。
「おっと。大丈夫?」
一成先輩が私の腰を支え、抱きとめてくれた。
……たぶん、今、私の一成先輩への好感度は限界を突破してると思う。
「あ、あの、ありがとうございます。その、色々」
「全然。大したことしてないから」
一成先輩が、さわやかに笑う。
大したことですよ……!
「さっきの男、知り合い?」
私の体勢を直し、身体を離してから、一成先輩はそんな言葉を投げかける。
「え~、知り合いというか、……」
元彼? でも、このルートでは付き合ってないし、それに一成先輩に潤くんが元彼って知られたくない。
じゃあ、友達? 友達っていうのも、なんか違うような。
「はい、知り合い、ですね」
結局知り合いとしか表現しようがなくて、苦笑いで答える。
「そっか……あいつと……」
一成先輩は何かを考え込むようにうつむく。
しばらくして顔を上げたと思ったら、一成先輩は真剣な表情で私を見据える。
「俺からも、杏ちゃんにつきまとわないように一度話してみるよ」
「えっ? そんな、そこまでして頂くわけには。私の問題なので」
手を前に出し、あわてて断る。
本当は、すっごく嬉しい。けど、一成先輩は彼氏でもないんだし、さすがにそこまでしてもらうのは悪いよね。
「自分でなんとかします」
「大丈夫なの?」
「はい」
「もしまた付きまとわれて困ってたら、いつでも言って」
ぎゅっと両腕を掴まれ、私はコクリと頷く。
優しい……。本当に好きになりそう。
私を助けてくれるのは、後輩だからなのかな。
それとも、少しは意識してくれてる?
一成先輩の胸の辺りをチラリと見ると、ハートは半分ほどピンク色に染まっている。
半分かぁ。微妙なとこだよね。
こ、これは、マズイ。
私を刺した時の潤くんだ。
どうにかしなきゃって思っていたら、またいつものテキストボックスが表示される。
→そうだよ。だから、もう付きまとわないで。
一成先輩とは付き合ってないし、何とも思ってない。
どっちだと思う?
えーと、えっと。一番目を選びたいところだけど、今それを選んだら確実に刺されるよね。
そうなると、二番目。
あ、でも、これって、もしかして、一成先輩の好感度も変動する? 二番目を選んだら、一成先輩の好感度が下がったりするのかな。
それは嫌だから、思わせぶりな三番目?
いや、でも、……。
どれを選ぶかしばらく考えていたら、テキストボックスの表示が突然パッと消える。
ええっ!? なに? 時間切れ?
そういうのもあるの?
一人でアワアワしていたら、いつのまにか潤くんが近くにいた。
「杏ちゃんも俺を裏切るんだね」
ひっ! このセリフは、刺された時と同じやつ。
裏切るも何も、今回は付き合ってないんだけど!
潤くんがさらに距離をつめてくる。
さ、刺される!?
思わず、ぎゅっと目を瞑る。
刺されるのを覚悟していた。
けれど、一向に痛みは訪れない。
どうなってるのかな?
おそるおそる目を開けてみる。
すると、潤くんの振り上げた手を一成先輩がねじっていた。
「なんなの、アンタ。杏ちゃんの彼氏なの?」
潤くんが顔を歪め、忌々しそうに言う。
「違うよ」
「だったら、」
「杏ちゃんは大事な後輩だし、友達だ。だから、守るのは当然だよ」
一成先輩は潤くんの腕を掴んだまま、きっぱりと言ってくれた。その横顔がすっごくかっこよくて、ドキッとする。
こんな時にそんなこと思ってる場合じゃないけど、でも、でも、かっこいい~……! 一成先輩、完全に乙女ゲームのメインヒーローじゃない?
「あーあ、だる」
しばらく硬直状態だった潤くんが舌打ちして、一成先輩の手を振り払う。そして、背を向けて去っていく。
諦めてくれた?
ううん、潤くんのことだから、油断はできないよね。
でも、ひとまずは助かった。
今回はバッドエンドを迎えずに済んだんだ。
安心したからか、足から力が抜けていく。
「おっと。大丈夫?」
一成先輩が私の腰を支え、抱きとめてくれた。
……たぶん、今、私の一成先輩への好感度は限界を突破してると思う。
「あ、あの、ありがとうございます。その、色々」
「全然。大したことしてないから」
一成先輩が、さわやかに笑う。
大したことですよ……!
「さっきの男、知り合い?」
私の体勢を直し、身体を離してから、一成先輩はそんな言葉を投げかける。
「え~、知り合いというか、……」
元彼? でも、このルートでは付き合ってないし、それに一成先輩に潤くんが元彼って知られたくない。
じゃあ、友達? 友達っていうのも、なんか違うような。
「はい、知り合い、ですね」
結局知り合いとしか表現しようがなくて、苦笑いで答える。
「そっか……あいつと……」
一成先輩は何かを考え込むようにうつむく。
しばらくして顔を上げたと思ったら、一成先輩は真剣な表情で私を見据える。
「俺からも、杏ちゃんにつきまとわないように一度話してみるよ」
「えっ? そんな、そこまでして頂くわけには。私の問題なので」
手を前に出し、あわてて断る。
本当は、すっごく嬉しい。けど、一成先輩は彼氏でもないんだし、さすがにそこまでしてもらうのは悪いよね。
「自分でなんとかします」
「大丈夫なの?」
「はい」
「もしまた付きまとわれて困ってたら、いつでも言って」
ぎゅっと両腕を掴まれ、私はコクリと頷く。
優しい……。本当に好きになりそう。
私を助けてくれるのは、後輩だからなのかな。
それとも、少しは意識してくれてる?
一成先輩の胸の辺りをチラリと見ると、ハートは半分ほどピンク色に染まっている。
半分かぁ。微妙なとこだよね。
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