どんな選択肢を選んでも失敗エンドを迎える現代学園物乙女ゲームのヒロインになりましたが、ハッピーエンドを目指したいと思います!

春音優月

文字の大きさ
上 下
27 / 44

27話 どんな関係?

しおりを挟む
 そこには、予想通り虚な瞳の潤くんがいた。
 
 こ、これは、マズイ。
 私を刺した時の潤くんだ。

 どうにかしなきゃって思っていたら、またいつものテキストボックスが表示される。

→そうだよ。だから、もう付きまとわないで。
 一成先輩とは付き合ってないし、何とも思ってない。
 どっちだと思う?

 えーと、えっと。一番目を選びたいところだけど、今それを選んだら確実に刺されるよね。

 そうなると、二番目。
 あ、でも、これって、もしかして、一成先輩の好感度も変動する? 二番目を選んだら、一成先輩の好感度が下がったりするのかな。

 それは嫌だから、思わせぶりな三番目?
 いや、でも、……。

 どれを選ぶかしばらく考えていたら、テキストボックスの表示が突然パッと消える。

 ええっ!? なに? 時間切れ?
 そういうのもあるの?

 一人でアワアワしていたら、いつのまにか潤くんが近くにいた。

「杏ちゃんも俺を裏切るんだね」

 ひっ! このセリフは、刺された時と同じやつ。
 裏切るも何も、今回は付き合ってないんだけど!

 潤くんがさらに距離をつめてくる。
 さ、刺される!?

 思わず、ぎゅっと目を瞑る。

 刺されるのを覚悟していた。
 けれど、一向に痛みは訪れない。

 どうなってるのかな?
 おそるおそる目を開けてみる。

 すると、潤くんの振り上げた手を一成先輩がねじっていた。

「なんなの、アンタ。杏ちゃんの彼氏なの?」

 潤くんが顔を歪め、忌々しそうに言う。
 
「違うよ」
「だったら、」
「杏ちゃんは大事な後輩だし、友達だ。だから、守るのは当然だよ」

 一成先輩は潤くんの腕を掴んだまま、きっぱりと言ってくれた。その横顔がすっごくかっこよくて、ドキッとする。

 こんな時にそんなこと思ってる場合じゃないけど、でも、でも、かっこいい~……! 一成先輩、完全に乙女ゲームのメインヒーローじゃない?

「あーあ、だる」

 しばらく硬直状態だった潤くんが舌打ちして、一成先輩の手を振り払う。そして、背を向けて去っていく。

 諦めてくれた?
 ううん、潤くんのことだから、油断はできないよね。

 でも、ひとまずは助かった。
 今回はバッドエンドを迎えずに済んだんだ。

 安心したからか、足から力が抜けていく。

「おっと。大丈夫?」

 一成先輩が私の腰を支え、抱きとめてくれた。

 ……たぶん、今、私の一成先輩への好感度は限界を突破してると思う。

「あ、あの、ありがとうございます。その、色々」
「全然。大したことしてないから」

 一成先輩が、さわやかに笑う。
 大したことですよ……!

「さっきの男、知り合い?」

 私の体勢を直し、身体を離してから、一成先輩はそんな言葉を投げかける。

「え~、知り合いというか、……」

 元彼? でも、このルートでは付き合ってないし、それに一成先輩に潤くんが元彼って知られたくない。

 じゃあ、友達? 友達っていうのも、なんか違うような。

「はい、知り合い、ですね」

 結局知り合いとしか表現しようがなくて、苦笑いで答える。

「そっか……あいつと……」

 一成先輩は何かを考え込むようにうつむく。
 
 しばらくして顔を上げたと思ったら、一成先輩は真剣な表情で私を見据える。

「俺からも、杏ちゃんにつきまとわないように一度話してみるよ」
「えっ? そんな、そこまでして頂くわけには。私の問題なので」

 手を前に出し、あわてて断る。
 
 本当は、すっごく嬉しい。けど、一成先輩は彼氏でもないんだし、さすがにそこまでしてもらうのは悪いよね。

「自分でなんとかします」
「大丈夫なの?」
「はい」
「もしまた付きまとわれて困ってたら、いつでも言って」

 ぎゅっと両腕を掴まれ、私はコクリと頷く。

 優しい……。本当に好きになりそう。
 
 私を助けてくれるのは、後輩だからなのかな。
 それとも、少しは意識してくれてる?

 一成先輩の胸の辺りをチラリと見ると、ハートは半分ほどピンク色に染まっている。
 
 半分かぁ。微妙なとこだよね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

彼女がいなくなった6年後の話

こん
恋愛
今日は、彼女が死んでから6年目である。 彼女は、しがない男爵令嬢だった。薄い桃色でサラサラの髪、端正な顔にある2つのアーモンド色のキラキラと光る瞳には誰もが惹かれ、それは私も例外では無かった。 彼女の墓の前で、一通り遺書を読んで立ち上がる。 「今日で貴方が死んでから6年が経ったの。遺書に何を書いたか忘れたのかもしれないから、読み上げるわ。悪く思わないで」 何回も読んで覚えてしまった遺書の最後を一息で言う。 「「必ず、貴方に会いに帰るから。1人にしないって約束、私は破らない。」」 突然、私の声と共に知らない誰かの声がした。驚いて声の方を振り向く。そこには、見たことのない男性が立っていた。 ※ガールズラブの要素は殆どありませんが、念の為入れています。最終的には男女です! ※なろう様にも掲載

処理中です...