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26話 嫌な予感
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それから、悠真の勧めで一成先輩と同じレンタルDVDショップでバイトすることになった。結局何で一成先輩と知り合いだったのか聞いてみても、のらりくらりとかわされてしまって、本当のところは分からない。
悠真は、私より少し前にゲームに入ってたとか?
それにしても、かなり親しげだったような。
少し気になったけど、それもどうでも良くなってしまうぐらいには、今は一成先輩攻略に夢中。
バイトの日以外は一成先輩に合気道を習いに行ってるし、だんだん距離が縮まってきた、かも?
花井さんじゃなくて、杏ちゃんって呼んでくれるようになったし。私も松永先輩から一成先輩呼びになった。
もしかして、けっこうイイ感じ?
ゲームの中とはいえ、学園みんなの憧れで正統派ヒーローの一成先輩と親しくなれるのは正直すっごくキュンキュンするし、毎日楽しい。
けれど、私には一つだけ心配なことがあった。
それは、潤くんのこと。
どれだけ避けていても、同じ学校に通っている以上は全く会わないというのも難しいし、どんな選択肢を選んでも好感度が上がっちゃう。
前回と違うルートをたどっているからか、今のところ告白はされてない。でも、好感度もだいぶ高くなってきたし、潤くんに会う度にヒヤヒヤしちゃう。
どうか何事もなく、無事に一成先輩を攻略できますように。そう思っていた矢先、事件は起きた。
ある日の放課後のこと。
一成先輩に合気道を教えてもらってから、一緒に下校していた。
「せっかく教えてもらってるのに、全然上達しなくてごめんなさい。運動音痴で情けないです」
攻略のついでに護身術でも身につけたいな、なんて思ってたけど、まるで身につかない自分が嫌になってきた。
「向き不向きがあるから」
一成先輩がすぐにフォローしてくれる。
優しい。運動音痴じゃないよ、とは否定してくれなかったけど!
「あの。私、迷惑になってますよね?」
一成先輩を見上げつつ、おそるおそる聞いてみる。
攻略のためとはいえ、一成先輩にお手間をかけさせるのがだんだん申し訳なくなってきた。一緒にいて楽しいの、私だけだったり?
「まさか」
一成先輩はにっこりと笑って、言葉を続けた。
「苦手なことでも一生懸命な杏ちゃんの姿に、いつも励まされてるよ」
ふああ……っ。好き。
一成先輩のさわやかスマイルもかっこよすぎるし、武道やってるところも素敵だし、優しいし、こんなの好きになっちゃうよ。
「一成先輩、私……」
まだ好感度は半分ぐらいだけど、思いきって私から告白しちゃおうか。そう思って、口を開く。
「ん?」
一成先輩が優しく聞き返してくれる。
その声も顔も全部優しすぎて、何も言えなくなってしまう。うう……、一成先輩、何で実在の人じゃないの?
いや、こんな完璧な人、現実にいるわけないだろうけども。
「最近よく一緒にいるみたいだけど、その男と付き合ってるの?」
道端でときめきまくっていたとき、突然後ろから低い声が。
これ以上ないくらいに嫌な予感がしつつも、私は後ろを振り返る。
悠真は、私より少し前にゲームに入ってたとか?
それにしても、かなり親しげだったような。
少し気になったけど、それもどうでも良くなってしまうぐらいには、今は一成先輩攻略に夢中。
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花井さんじゃなくて、杏ちゃんって呼んでくれるようになったし。私も松永先輩から一成先輩呼びになった。
もしかして、けっこうイイ感じ?
ゲームの中とはいえ、学園みんなの憧れで正統派ヒーローの一成先輩と親しくなれるのは正直すっごくキュンキュンするし、毎日楽しい。
けれど、私には一つだけ心配なことがあった。
それは、潤くんのこと。
どれだけ避けていても、同じ学校に通っている以上は全く会わないというのも難しいし、どんな選択肢を選んでも好感度が上がっちゃう。
前回と違うルートをたどっているからか、今のところ告白はされてない。でも、好感度もだいぶ高くなってきたし、潤くんに会う度にヒヤヒヤしちゃう。
どうか何事もなく、無事に一成先輩を攻略できますように。そう思っていた矢先、事件は起きた。
ある日の放課後のこと。
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「せっかく教えてもらってるのに、全然上達しなくてごめんなさい。運動音痴で情けないです」
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「向き不向きがあるから」
一成先輩がすぐにフォローしてくれる。
優しい。運動音痴じゃないよ、とは否定してくれなかったけど!
「あの。私、迷惑になってますよね?」
一成先輩を見上げつつ、おそるおそる聞いてみる。
攻略のためとはいえ、一成先輩にお手間をかけさせるのがだんだん申し訳なくなってきた。一緒にいて楽しいの、私だけだったり?
「まさか」
一成先輩はにっこりと笑って、言葉を続けた。
「苦手なことでも一生懸命な杏ちゃんの姿に、いつも励まされてるよ」
ふああ……っ。好き。
一成先輩のさわやかスマイルもかっこよすぎるし、武道やってるところも素敵だし、優しいし、こんなの好きになっちゃうよ。
「一成先輩、私……」
まだ好感度は半分ぐらいだけど、思いきって私から告白しちゃおうか。そう思って、口を開く。
「ん?」
一成先輩が優しく聞き返してくれる。
その声も顔も全部優しすぎて、何も言えなくなってしまう。うう……、一成先輩、何で実在の人じゃないの?
いや、こんな完璧な人、現実にいるわけないだろうけども。
「最近よく一緒にいるみたいだけど、その男と付き合ってるの?」
道端でときめきまくっていたとき、突然後ろから低い声が。
これ以上ないくらいに嫌な予感がしつつも、私は後ろを振り返る。
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