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19話 ヤンデレ彼氏
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◇
それから数日ほど経ったある日の放課後。今日は潤くんに用事があるらしく、一人で下校していた。
一人で電車に乗り、自宅近くの駅で降りる。
「あ」
「悠真?」
改札口を出たところで、悠真とばったり会った。
「今日は彼氏と一緒じゃなかったの?」
定期券を制服のポケットにしまいながら、悠真がこちらに近づいてきた。
「用事あるみたいで、今日は一人なんだ」
「連絡してくれたら良かったのに」
当然のことのように、悠真はそう言った。私はとっさに苦笑いを返す。
「それなんだけどね、あとでちょっと話せる?」
潤くんの様子がおかしいことを悠真に相談したいけど、もうすぐ家に着くし、道端で出来る話でもないよね。
「家行けばいい?」
「うん、お母さんに言っておくね」
後で会う約束をして、悠真とは家の前で別れた。
悠真が家の中に入るのを見届け、私も自宅に入ろうとしていた時だった。
「杏」
聞き覚えのある声で呼びかけられ、後ろを振り向く。
「……潤くん」
予想通りの姿を目にし、震える声で名前を呼ぶ。潤くんはそれには反応せず、虚な目で私を見ている。
「用事あるんじゃなかったの?」
「用事なんてないよ。あいつと会ってるかどうか確かめるため」
「それって、……」
つけてきたってこと? そう聞きたかったけど、私は言葉の続きを呑み込む。
潤くんの左手にナイフが握られていることに気がついてしまったから。
「杏も俺を裏切るんだね」
鈍く光るナイフを握ったまま、潤くんがゆっくりと近づいてくる。待って、何する気? まさか……。
「ちょ、ちょっと待ってよ、潤くん。裏切ってなんかない。悠真とはバッタリ駅で会っただけで、それで」
必死に弁解しても、潤くんの耳には私の言葉が届いていないみたい。
「と、と、とりあえずそれ、しまわない? 一回落ち着いて話し合おう!?」
自分でももう何を言ってるのか分からなくなってきた。その間にも、潤くんとの距離がどんどん狭くなっていく。
逃げなきゃって思うのに、恐怖で足がすくんで動かない。
足を動かすことも、大声を上げることもできないまま、潤くんがナイフを振り上げるのが目に入った。
「きゃあああああ!!」
Bad End no.427~ヤンデレ彼氏~
それから数日ほど経ったある日の放課後。今日は潤くんに用事があるらしく、一人で下校していた。
一人で電車に乗り、自宅近くの駅で降りる。
「あ」
「悠真?」
改札口を出たところで、悠真とばったり会った。
「今日は彼氏と一緒じゃなかったの?」
定期券を制服のポケットにしまいながら、悠真がこちらに近づいてきた。
「用事あるみたいで、今日は一人なんだ」
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当然のことのように、悠真はそう言った。私はとっさに苦笑いを返す。
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潤くんの様子がおかしいことを悠真に相談したいけど、もうすぐ家に着くし、道端で出来る話でもないよね。
「家行けばいい?」
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後で会う約束をして、悠真とは家の前で別れた。
悠真が家の中に入るのを見届け、私も自宅に入ろうとしていた時だった。
「杏」
聞き覚えのある声で呼びかけられ、後ろを振り向く。
「……潤くん」
予想通りの姿を目にし、震える声で名前を呼ぶ。潤くんはそれには反応せず、虚な目で私を見ている。
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「用事なんてないよ。あいつと会ってるかどうか確かめるため」
「それって、……」
つけてきたってこと? そう聞きたかったけど、私は言葉の続きを呑み込む。
潤くんの左手にナイフが握られていることに気がついてしまったから。
「杏も俺を裏切るんだね」
鈍く光るナイフを握ったまま、潤くんがゆっくりと近づいてくる。待って、何する気? まさか……。
「ちょ、ちょっと待ってよ、潤くん。裏切ってなんかない。悠真とはバッタリ駅で会っただけで、それで」
必死に弁解しても、潤くんの耳には私の言葉が届いていないみたい。
「と、と、とりあえずそれ、しまわない? 一回落ち着いて話し合おう!?」
自分でももう何を言ってるのか分からなくなってきた。その間にも、潤くんとの距離がどんどん狭くなっていく。
逃げなきゃって思うのに、恐怖で足がすくんで動かない。
足を動かすことも、大声を上げることもできないまま、潤くんがナイフを振り上げるのが目に入った。
「きゃあああああ!!」
Bad End no.427~ヤンデレ彼氏~
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