どんな選択肢を選んでも失敗エンドを迎える現代学園物乙女ゲームのヒロインになりましたが、ハッピーエンドを目指したいと思います!

春音優月

文字の大きさ
上 下
15 / 44

15話 そんなに簡単じゃない

しおりを挟む
 ◇
 
 その日以降、補習が終わってから毎日潤くんは私の家まで送ってくれた。

 夜は必ず電話かメッセージをくれるし、これってかなりいい感じ? 好感度も半分ぐらいまで上がってきたし、私の自惚れじゃない……よね?
 
 ハッピーエンドを迎えなきゃという使命よりも、純粋に今の状態がすごく楽しい。気になってる男の子と付き合う一歩手前の状態って、こんなに楽しいんだ。
 もうゲームクリアとか再就職とかどうでもいいから、潤くんとこの世界にずっと一緒にいたいな。
 
 そんなことを思ってしまうくらいには、今の私は浮かれてたんだと思う。
 
「毎日補習しかやってないわりには、ずいぶん楽しそうだね」
 
 補習が始まってから五日後の登校時、電車の中。冷ややかな目でこちらを見てきた悠真に嫌味を言われてしまうくらいには。
 
「実は、補習の時に知り合った人と仲良くなったんだ」
 
 悠真への報告は補習終わってからでいいかなぁと思ってたけど、そろそろいいよね。ほぼほぼ潤くんルートで確定だし。
 
「誰?」
「吉川潤くん」
 
 当然のように聞き返されたので、潤くんの名前を教える。悠真は一度「吉川潤ね」とつぶやいてから、スマホで情報を検索していた。
 
「すっごく優しくて、いい人なの」
 
 悠真は、じっくりスマホの画面を見ていた。待ちきれなくて、横から話しかける。
 
「優しくて、いい人……? 吉川潤が……?」
 
 スマホから私の方に視線を向けたと思ったら、悠真はなぜか怪訝そうな表情を浮かべた。
 
 え。私、何か変なこと言ったかな?
 
「そうだよ……?」
 
 悠真の反応に少し不安になったものの、間違ったことは言ってないはず。だけど、悠真の顔は険しいまま。
 
「どういうところが?」
「え? 家まで送ってくれるし、話してても楽しいところ?」
 
 具体的にどういうところって言われても困るけど、話してても優しい人なんだなって思うし、それだけじゃダメなの?
 
 だんだん自信がなくなってきて後半は声が小さくなりながらも、悠真に潤くんの良さを伝える。しばらくして、悠真が伏し目がちにため息をついた。
 
「杏は詐欺に遭いやすいタイプだよね」
「そんなこと、……」
 
 ない、と思うんだけど、はっきりとは否定出来なかった。悠真の会社からの怪しげな誘いにノコノコ応じたあげく、半分騙されたような形でゲームの世界に生きてるんだから、ある意味詐欺にあったようなものなのかも。
 
 でも、その件と潤くんのことは関係ないはず。
 
「悠真としては、潤くんは反対なの?」
「そうじゃないよ」
 
 悠真の態度が気になって、聞いてみる。そうしたら、悠真はすぐに否定した。
 
「でも、……」
「僕は、杏の攻略をサポートしたいだけ。反対も賛成も出来る立場じゃないから」
 
 立場、か。
 納得出来るような出来ないような返事を返されて、やっぱりモヤモヤが残る。
 
「反対はしないけど、ひとつだけ言わせて」
 
 しばらく沈黙があったあと、悠真からそう切り出された。
 
「うん……?」
「吉川潤は、そんなに簡単じゃないよ。浮かれてるみたいだけど、気をつけて」
「え、わ、分かった。気をつける、ね」
 
 簡単じゃないって?
 順調に好感度上がってるみたいだけど、ここからが難しいとか?
 
 どういう意味なのか気になったけど、なんだか聞きづらい。
 
 結局それきり会話がないまま、私たちは学校に着いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

彼女がいなくなった6年後の話

こん
恋愛
今日は、彼女が死んでから6年目である。 彼女は、しがない男爵令嬢だった。薄い桃色でサラサラの髪、端正な顔にある2つのアーモンド色のキラキラと光る瞳には誰もが惹かれ、それは私も例外では無かった。 彼女の墓の前で、一通り遺書を読んで立ち上がる。 「今日で貴方が死んでから6年が経ったの。遺書に何を書いたか忘れたのかもしれないから、読み上げるわ。悪く思わないで」 何回も読んで覚えてしまった遺書の最後を一息で言う。 「「必ず、貴方に会いに帰るから。1人にしないって約束、私は破らない。」」 突然、私の声と共に知らない誰かの声がした。驚いて声の方を振り向く。そこには、見たことのない男性が立っていた。 ※ガールズラブの要素は殆どありませんが、念の為入れています。最終的には男女です! ※なろう様にも掲載

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

処理中です...