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14話 攻略されてる?
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◇
「送ってくれてありがとう」
「連絡先交換しよ」
家の前まで送ってくれた彼——吉川潤《よしかわじゅん》くんは、制服のポケットからスマホを取り出し、さらっとそう言った。それから、……。
→嫌です。
スマホ持ってないんだ。
もちろんいいよ。
!? 突然テキストボックスのようなものが目の前に現れ、変な声が出そうになるのをギリギリで堪える。
チラリと潤くんの表情を伺うも、潤くんはテキストボックスの存在に気がついていないみたい。ハートと同じく、他の人には見えないのかな?
ハートが好感度だとすると、これは選択肢? どれかを選べばいいのかな?
「も、もちろんいいよ」
一番下の選択肢を口に出して読んでみたら、その瞬間にテキストボックスが消滅する。それから、潤くんのハートのピンク色部分の面積がまた少し増えた。
正解だったのかな……?
とりあえずスカートに入れていたスマホを取り出し、潤くんのそれに近づける。悠真と家族、クラスの親友二人の連絡先しか入っていない私のスマホに、初めて他の男の子の名前が登録された。
まだこっちの世界のSNSは有効活用出来ていないけど、現実のスマホと似たようなものみたい。個別やグループでメッセージが送信出来るアプリもあるし、匿名でつぶやけるようなアプリもある。
「連絡するね」
ニコリと笑って、潤くんは駅の方に戻っていく。
潤くんの良い笑顔が目に焼き付き、潤くんが去って行った後もその場で立ち尽くしてしまっていた。
何……だったのかな。今日一日で色々なことが起こり過ぎて、ついていけてない。
今日知り合ったばかりの潤くんとたった一日でかなり距離が縮まった気がする。
第一印象で近寄り難そうだと思っちゃったけど、全然そんなことなかったな。帰り道も何話していいのか分からずに空回ってた私に、潤くんはたくさん話しかけてくれた。潤くんのことも、たくさん教えてくれた。
吉川潤くん――私の隣のクラスの二年三組。音楽が好きで、軽音部にも時々顔を出していて、現在はギターショップでバイトしているとか。勉強は得意でも苦手でもなく、補習になったのは今回が初めてらしい。
玄関のドアを開けて中に入ってからもまだ余韻が醒めなくて、潤くんが教えてくれたことを一つ一つ頭の中で復唱する。
潤くん。吉川潤くん。
……けっこう良い、かも。
夕ご飯を食べてお風呂に入ってから、宿題のために机に向かっても、思い出すのは潤くんのことばかり。潤くんの笑顔を思い出すと、自然と顔がニヤけてきちゃう。
初日から家に送ってくれるなんて、乙女ゲーム的にはビッグイベントクリアなのでは? 好感度もそこそこ上がったし、少なくとも悪くない出だしだよね。
……もう、潤くんにしようかな。
今日会ったばかりで決めるのもどうかと思うけど、悠真も早く決めてって言ってたし。
広夢くんはこの前ので好感度下がっちゃったし、悠真が勧めてくれた松永先輩にはまだ会えてないし、ほかにめぼしい人もいない。今一番私への好感度が高いのは、たぶん潤くんなんだよね。
宿題をしながらそんなことをグルグルと考えていたら、机の上のスマホが振動する。手に取ると、画面にはさっき登録したばかりの潤くんの名前が表示されていた。
『今日はありがとう。補習はメンドイけど、杏ちゃんと知り合えたのは最高。明日もよろしくね~』
語尾にハートとニッコリマークがついていて、直後にニッコニコの顔スタンプが届いた。
……っ。
潤くんの私への好感度だけじゃなくて、今日だけで私の潤くんへの好感度もうなぎ上りだよ。
乙女ゲームだから、こっちから攻略対象に積極的にアプローチしないといけないと思ったのに、そうでもないのかな? 私の方が攻略されてる気分。
「送ってくれてありがとう」
「連絡先交換しよ」
家の前まで送ってくれた彼——吉川潤《よしかわじゅん》くんは、制服のポケットからスマホを取り出し、さらっとそう言った。それから、……。
→嫌です。
スマホ持ってないんだ。
もちろんいいよ。
!? 突然テキストボックスのようなものが目の前に現れ、変な声が出そうになるのをギリギリで堪える。
チラリと潤くんの表情を伺うも、潤くんはテキストボックスの存在に気がついていないみたい。ハートと同じく、他の人には見えないのかな?
ハートが好感度だとすると、これは選択肢? どれかを選べばいいのかな?
「も、もちろんいいよ」
一番下の選択肢を口に出して読んでみたら、その瞬間にテキストボックスが消滅する。それから、潤くんのハートのピンク色部分の面積がまた少し増えた。
正解だったのかな……?
とりあえずスカートに入れていたスマホを取り出し、潤くんのそれに近づける。悠真と家族、クラスの親友二人の連絡先しか入っていない私のスマホに、初めて他の男の子の名前が登録された。
まだこっちの世界のSNSは有効活用出来ていないけど、現実のスマホと似たようなものみたい。個別やグループでメッセージが送信出来るアプリもあるし、匿名でつぶやけるようなアプリもある。
「連絡するね」
ニコリと笑って、潤くんは駅の方に戻っていく。
潤くんの良い笑顔が目に焼き付き、潤くんが去って行った後もその場で立ち尽くしてしまっていた。
何……だったのかな。今日一日で色々なことが起こり過ぎて、ついていけてない。
今日知り合ったばかりの潤くんとたった一日でかなり距離が縮まった気がする。
第一印象で近寄り難そうだと思っちゃったけど、全然そんなことなかったな。帰り道も何話していいのか分からずに空回ってた私に、潤くんはたくさん話しかけてくれた。潤くんのことも、たくさん教えてくれた。
吉川潤くん――私の隣のクラスの二年三組。音楽が好きで、軽音部にも時々顔を出していて、現在はギターショップでバイトしているとか。勉強は得意でも苦手でもなく、補習になったのは今回が初めてらしい。
玄関のドアを開けて中に入ってからもまだ余韻が醒めなくて、潤くんが教えてくれたことを一つ一つ頭の中で復唱する。
潤くん。吉川潤くん。
……けっこう良い、かも。
夕ご飯を食べてお風呂に入ってから、宿題のために机に向かっても、思い出すのは潤くんのことばかり。潤くんの笑顔を思い出すと、自然と顔がニヤけてきちゃう。
初日から家に送ってくれるなんて、乙女ゲーム的にはビッグイベントクリアなのでは? 好感度もそこそこ上がったし、少なくとも悪くない出だしだよね。
……もう、潤くんにしようかな。
今日会ったばかりで決めるのもどうかと思うけど、悠真も早く決めてって言ってたし。
広夢くんはこの前ので好感度下がっちゃったし、悠真が勧めてくれた松永先輩にはまだ会えてないし、ほかにめぼしい人もいない。今一番私への好感度が高いのは、たぶん潤くんなんだよね。
宿題をしながらそんなことをグルグルと考えていたら、机の上のスマホが振動する。手に取ると、画面にはさっき登録したばかりの潤くんの名前が表示されていた。
『今日はありがとう。補習はメンドイけど、杏ちゃんと知り合えたのは最高。明日もよろしくね~』
語尾にハートとニッコリマークがついていて、直後にニッコニコの顔スタンプが届いた。
……っ。
潤くんの私への好感度だけじゃなくて、今日だけで私の潤くんへの好感度もうなぎ上りだよ。
乙女ゲームだから、こっちから攻略対象に積極的にアプローチしないといけないと思ったのに、そうでもないのかな? 私の方が攻略されてる気分。
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