11 / 44
11話 実力テスト
しおりを挟む
◇
疑似高校生生活に希望を持ち始めた私の考えがあっさり覆されたのは、始業式の翌日のことだった。
「それでは、実力テストを始めます」
眼鏡をかけた担任の先生が、そう言ったんだ。
「荷物を外に出してください」
みんな一斉にカバンを廊下に持っていき、私と先生だけが取り残される。
実力、テスト? テスト……。
そ、そんなの聞いてないんだけど! って、高校生ならテストあるのが当たり前だよね。でも、でも~……!
「花井さんも早くしなさい」
「は、はいっ。すみません」
先生に注意を受け、私も廊下にカバンを出す。
全然勉強してないんだけど、大丈夫かな。
だ、大丈夫だよね? 一応高校も大学も卒業してるし。友達は少なめだったけど、勉強だけは出来る方だった。
なんて思ってたけど、やっぱり甘かったみたい。
文系科目はともかく、理系科目が全滅。
そういえば私文系だったから、現役学生の時も理系科目は苦手だったんだよね。
xとyを求めよ?
物体のエネルギーと運動から、速度を求める?
原子の構造……。
どうしよう、全然分からない……。
大昔に勉強したような記憶がうっすらあるけど、全部忘れちゃった。
泣きそうになりながら、私は必死で答案を全部埋めた。
◇
平均点は取れていますように。
祈りながら過ごした数日。物理の時間に最初のテストが返却された。
「花井さん」
「はい」
物理の先生から名前を呼ばれ、教壇までテストを取りに行く。ドキドキしながらテストを受け取り、自分の机に戻ってからこっそり答案を見る。
点数は……
え? 七、点……?
百点満点だよね?
見間違いかと思って三度見したけど、結果は同じ。七点。
いくら苦手な物理でも、七点はまずいでしょ……。
落ち込んでいると、答案が机からヒラリと落ちてしまう。ちょうど私と広夢くんの机の間に。
拾おうと身を屈める前に、広夢くんがそれを拾ってくれた。
「落ちたよ」
そう言って、広夢くんが拾ってくれたんだけど。たぶんその時に点数が見えてしまったんだと思う。
広夢くんがわずかに目を丸くして、テストを伏せ、私に差し出した。
「はい、杏ちゃん」
「ありがとう」
私が受け取ったのとほぼ同時に、広夢くんのハートが透明になる。ちょこっとだけ上がっていた広夢くんの好感度が、一瞬にして元に戻ってしまった。
今のって、私の七点のテスト見たからだよね。
私が余りにバカすぎるから、好感度下がったってこと?
下がることもあるんだ。
そうだよね、七点はさすがに引くよね。
二十点ならともかく。いや二十点でも低すぎるけど。
七点のテストと広夢くんの好感度が下がったことにショックを受けていた私にさらに追いうちをかけるかのように、次々に答案が返却された。
数学十二点、化学十八点、世界史三十五点、英語五十九点、国語八十二点。
文系科目以外は、もうボロボロ。文系のくせに、国語以外はけっこう酷いのも悲しい。
疑似高校生生活に希望を持ち始めた私の考えがあっさり覆されたのは、始業式の翌日のことだった。
「それでは、実力テストを始めます」
眼鏡をかけた担任の先生が、そう言ったんだ。
「荷物を外に出してください」
みんな一斉にカバンを廊下に持っていき、私と先生だけが取り残される。
実力、テスト? テスト……。
そ、そんなの聞いてないんだけど! って、高校生ならテストあるのが当たり前だよね。でも、でも~……!
「花井さんも早くしなさい」
「は、はいっ。すみません」
先生に注意を受け、私も廊下にカバンを出す。
全然勉強してないんだけど、大丈夫かな。
だ、大丈夫だよね? 一応高校も大学も卒業してるし。友達は少なめだったけど、勉強だけは出来る方だった。
なんて思ってたけど、やっぱり甘かったみたい。
文系科目はともかく、理系科目が全滅。
そういえば私文系だったから、現役学生の時も理系科目は苦手だったんだよね。
xとyを求めよ?
物体のエネルギーと運動から、速度を求める?
原子の構造……。
どうしよう、全然分からない……。
大昔に勉強したような記憶がうっすらあるけど、全部忘れちゃった。
泣きそうになりながら、私は必死で答案を全部埋めた。
◇
平均点は取れていますように。
祈りながら過ごした数日。物理の時間に最初のテストが返却された。
「花井さん」
「はい」
物理の先生から名前を呼ばれ、教壇までテストを取りに行く。ドキドキしながらテストを受け取り、自分の机に戻ってからこっそり答案を見る。
点数は……
え? 七、点……?
百点満点だよね?
見間違いかと思って三度見したけど、結果は同じ。七点。
いくら苦手な物理でも、七点はまずいでしょ……。
落ち込んでいると、答案が机からヒラリと落ちてしまう。ちょうど私と広夢くんの机の間に。
拾おうと身を屈める前に、広夢くんがそれを拾ってくれた。
「落ちたよ」
そう言って、広夢くんが拾ってくれたんだけど。たぶんその時に点数が見えてしまったんだと思う。
広夢くんがわずかに目を丸くして、テストを伏せ、私に差し出した。
「はい、杏ちゃん」
「ありがとう」
私が受け取ったのとほぼ同時に、広夢くんのハートが透明になる。ちょこっとだけ上がっていた広夢くんの好感度が、一瞬にして元に戻ってしまった。
今のって、私の七点のテスト見たからだよね。
私が余りにバカすぎるから、好感度下がったってこと?
下がることもあるんだ。
そうだよね、七点はさすがに引くよね。
二十点ならともかく。いや二十点でも低すぎるけど。
七点のテストと広夢くんの好感度が下がったことにショックを受けていた私にさらに追いうちをかけるかのように、次々に答案が返却された。
数学十二点、化学十八点、世界史三十五点、英語五十九点、国語八十二点。
文系科目以外は、もうボロボロ。文系のくせに、国語以外はけっこう酷いのも悲しい。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
【完結】ヤンデレ設定の義弟を手塩にかけたら、シスコン大魔法士に育ちました!?
三月よる
恋愛
14歳の誕生日、ピフラは自分が乙女ゲーム「LOVE/HEART(ラブハート)」通称「ラブハ」の悪役である事に気がついた。シナリオ通りなら、ピフラは義弟ガルムの心を病ませ、ヤンデレ化した彼に殺されてしまう運命。生き残りのため、ピフラはガルムのヤンデレ化を防止すべく、彼を手塩にかけて育てる事を決意する。その後、メイドに命を狙われる事件がありながらも、良好な関係を築いてきた2人。
そして10年後。シスコンに育ったガルムに、ピフラは婚活を邪魔されていた。姉離れのためにガルムを結婚させようと、ピフラは相手のヒロインを探すことに。そんなある日、ピフラは謎の美丈夫ウォラクに出会った。彼はガルムと同じ赤い瞳をしていた。そこで「赤目」と「悪魔と黒魔法士」の秘密の相関関係を聞かされる。その秘密が過去のメイド事件と重なり、ピフラはガルムに疑心を抱き始めた。一方、ピフラを監視していたガルムは自分以外の赤目と接触したピフラを監禁して──?
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
転生悪役令嬢の前途多難な没落計画
一花八華
恋愛
斬首、幽閉、没落endの悪役令嬢に転生しましたわ。
私、ヴィクトリア・アクヤック。金髪ドリルの碧眼美少女ですの。
攻略対象とヒロインには、関わりませんわ。恋愛でも逆ハーでもお好きになさって?
私は、執事攻略に勤しみますわ!!
っといいつつもなんだかんだでガッツリ攻略対象とヒロインに囲まれ、持ち前の暴走と妄想と、斜め上を行き過ぎるネジ曲がった思考回路で突き進む猪突猛進型ドリル系主人公の(読者様からの)突っ込み待ち(ラブ)コメディです。
※全話に挿絵が入る予定です。作者絵が苦手な方は、ご注意ください。ファンアートいただけると、泣いて喜びます。掲載させて下さい。お願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる