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11話 実力テスト

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 ◇
 
 疑似高校生生活に希望を持ち始めた私の考えがあっさり覆されたのは、始業式の翌日のことだった。
 
「それでは、実力テストを始めます」
 
 眼鏡をかけた担任の先生が、そう言ったんだ。

「荷物を外に出してください」
 
 みんな一斉にカバンを廊下に持っていき、私と先生だけが取り残される。
 
 実力、テスト? テスト……。
 そ、そんなの聞いてないんだけど! って、高校生ならテストあるのが当たり前だよね。でも、でも~……!
 
「花井さんも早くしなさい」
「は、はいっ。すみません」
 
 先生に注意を受け、私も廊下にカバンを出す。 
 
 全然勉強してないんだけど、大丈夫かな。
 
 だ、大丈夫だよね? 一応高校も大学も卒業してるし。友達は少なめだったけど、勉強だけは出来る方だった。
 
 なんて思ってたけど、やっぱり甘かったみたい。
 
 文系科目はともかく、理系科目が全滅。
 そういえば私文系だったから、現役学生の時も理系科目は苦手だったんだよね。
 
 xとyを求めよ?
 物体のエネルギーと運動から、速度を求める?
 原子の構造……。
 
 どうしよう、全然分からない……。
 大昔に勉強したような記憶がうっすらあるけど、全部忘れちゃった。
 
 泣きそうになりながら、私は必死で答案を全部埋めた。
 
 ◇
 
 平均点は取れていますように。
 祈りながら過ごした数日。物理の時間に最初のテストが返却された。
 
「花井さん」
「はい」
 
 物理の先生から名前を呼ばれ、教壇までテストを取りに行く。ドキドキしながらテストを受け取り、自分の机に戻ってからこっそり答案を見る。
 
 点数は……
 
 え? 七、点……?
 百点満点だよね?
 
 見間違いかと思って三度見したけど、結果は同じ。七点。
 
 いくら苦手な物理でも、七点はまずいでしょ……。
 
 落ち込んでいると、答案が机からヒラリと落ちてしまう。ちょうど私と広夢くんの机の間に。
 拾おうと身を屈める前に、広夢くんがそれを拾ってくれた。
 
「落ちたよ」
 
 そう言って、広夢くんが拾ってくれたんだけど。たぶんその時に点数が見えてしまったんだと思う。
 
 広夢くんがわずかに目を丸くして、テストを伏せ、私に差し出した。
 
「はい、杏ちゃん」
「ありがとう」
 
 私が受け取ったのとほぼ同時に、広夢くんのハートが透明になる。ちょこっとだけ上がっていた広夢くんの好感度が、一瞬にして元に戻ってしまった。
 
 今のって、私の七点のテスト見たからだよね。
 私が余りにバカすぎるから、好感度下がったってこと?
 
 下がることもあるんだ。
 そうだよね、七点はさすがに引くよね。
 二十点ならともかく。いや二十点でも低すぎるけど。
 
 七点のテストと広夢くんの好感度が下がったことにショックを受けていた私にさらに追いうちをかけるかのように、次々に答案が返却された。
 
 数学十二点、化学十八点、世界史三十五点、英語五十九点、国語八十二点。
 
 文系科目以外は、もうボロボロ。文系のくせに、国語以外はけっこう酷いのも悲しい。
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