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10話 佐久間広夢登場
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二年生の下駄箱に張り出されていた紙を見たら、私は二年二組だった。案内の通りに階段を一つ上り、二年二組の教室に向かう。
教室に入ると、二人の女の子が私に近寄ってきた。
「おはよう、杏」
「杏ちゃ~ん、今年もみんな同じクラスで良かったぁ」
まぶしい笑顔を向けてくれた背の高い女の子は、たぶん香田千夏《こうだちなつ》ちゃん。
黒髪を高い位置でポニーテールにしている。女子サッカー部らしく、日に焼けた肌が健康的で、スポーティーな雰囲気の美人だ。
抱きついてきた方の子は、私よりも少し背が低いから、東条柚《とうじょうゆず》ちゃんかな?
手芸部所属のおとなしめの子みたいで、りすっぽい雰囲気で可愛い。ふわふわの栗色ヘアを、耳の辺りで二つにくくっている。
二人とも、一年生の時からの私の親友らしい。
「おはよ、千夏ちゃん、柚ちゃん。今年もよろしくね」
悠真が教えてくれた情報を元に彼女たちの名前を呼ぶと、二人とも笑顔を返してくれた。良かった、名前合ってたみたい。
「今日は番号順に座るらしいよ。杏は、佐久間広夢《さくまひろむ》の隣」
千夏ちゃんはそう言って、友達に囲まれて笑っている男の子を目線で示した。
「佐久間くんって、たしかサッカー部だよね。千夏ちゃん仲良いの?」
続けて、柚ちゃんが上目遣いで千香ちゃんに尋ねる。
「それなりにね。いいやつだよ。杏もすぐ仲良くなれると思う」
「そ、そっか。とりあえず挨拶してくるね」
クラスに友達がいるみたいで安心したものの、他に友達出来るか心配だな。ただでさえ人見知りなのに、今さら高校生の中に入っていけるのか……。
それでも、これがゲームだと思うと、ほんの少しだけ気が軽くなる。無職を回避するためにも、ゲームの中でまでコミュ障発揮してる場合じゃないよね。
さっき悠真から勧められた松永先輩も、本当はちょっと気になる。でも親しくなるなら同じ学年の方が手っ取り早いだろうし、クラスにも攻略対象の子がいるといいなぁ。
「お、はよ~……」
後ろから、小声で挨拶をする。
すると、みんなすぐに挨拶を返してくれて、私が座るらしい席を空けてくれた。みんな優しい。
軽く頭を下げてから、席に着く。そうしたら、隣の席に座っている男の子と目が合う。
「隣の席みたいだね、よろしく」
明るめのオレンジブラウンの髪、ヘーゼルの瞳。元気いっぱいのわんこみたいな雰囲気の彼は、ニッと気持ちの良い笑顔を見せてくれた。
しかも、胸の辺りに空っぽのハートがついている。枠だけはピンク色の、例のあれ。
「う、うん。花井杏です、よろしくね」
「杏ちゃんだね。オレは佐久間広夢。広夢でいいよ」
「広夢、くん」
フレンドリーに挨拶してくれた彼の名前を呼ぶ。
広夢くんがもう一度笑顔を見せてくれたと同時に、彼のハートの真ん中にほんの少しだけピンク色がついた。
挨拶しただけで、好感度が上がった……?
そんなこともあるんだ。
広夢くんか。わんこみたいで可愛いのに、かっこいい。いきなりこんなイケメンが隣の席なんて、もしかしてめちゃめちゃ運が良いんじゃない?
しかも、攻略対象みたいだし。
単純かもしれないけど、なんかこれからの学校が楽しみになってきた。
体育祭は好きな人の活躍を見て、学園祭は彼氏と一緒に回って、クリスマスやお正月も一緒に過ごす。放課後デートもいいよね。
高校生の時は、結局好きな人に告白出来ずに終わってしまった。
考えてみたら、これって理想の高校生活を疑似体験するチャンスなんじゃない?
不安ばっかりだったけど、ちょっと楽しみになってきたかも。
教室に入ると、二人の女の子が私に近寄ってきた。
「おはよう、杏」
「杏ちゃ~ん、今年もみんな同じクラスで良かったぁ」
まぶしい笑顔を向けてくれた背の高い女の子は、たぶん香田千夏《こうだちなつ》ちゃん。
黒髪を高い位置でポニーテールにしている。女子サッカー部らしく、日に焼けた肌が健康的で、スポーティーな雰囲気の美人だ。
抱きついてきた方の子は、私よりも少し背が低いから、東条柚《とうじょうゆず》ちゃんかな?
手芸部所属のおとなしめの子みたいで、りすっぽい雰囲気で可愛い。ふわふわの栗色ヘアを、耳の辺りで二つにくくっている。
二人とも、一年生の時からの私の親友らしい。
「おはよ、千夏ちゃん、柚ちゃん。今年もよろしくね」
悠真が教えてくれた情報を元に彼女たちの名前を呼ぶと、二人とも笑顔を返してくれた。良かった、名前合ってたみたい。
「今日は番号順に座るらしいよ。杏は、佐久間広夢《さくまひろむ》の隣」
千夏ちゃんはそう言って、友達に囲まれて笑っている男の子を目線で示した。
「佐久間くんって、たしかサッカー部だよね。千夏ちゃん仲良いの?」
続けて、柚ちゃんが上目遣いで千香ちゃんに尋ねる。
「それなりにね。いいやつだよ。杏もすぐ仲良くなれると思う」
「そ、そっか。とりあえず挨拶してくるね」
クラスに友達がいるみたいで安心したものの、他に友達出来るか心配だな。ただでさえ人見知りなのに、今さら高校生の中に入っていけるのか……。
それでも、これがゲームだと思うと、ほんの少しだけ気が軽くなる。無職を回避するためにも、ゲームの中でまでコミュ障発揮してる場合じゃないよね。
さっき悠真から勧められた松永先輩も、本当はちょっと気になる。でも親しくなるなら同じ学年の方が手っ取り早いだろうし、クラスにも攻略対象の子がいるといいなぁ。
「お、はよ~……」
後ろから、小声で挨拶をする。
すると、みんなすぐに挨拶を返してくれて、私が座るらしい席を空けてくれた。みんな優しい。
軽く頭を下げてから、席に着く。そうしたら、隣の席に座っている男の子と目が合う。
「隣の席みたいだね、よろしく」
明るめのオレンジブラウンの髪、ヘーゼルの瞳。元気いっぱいのわんこみたいな雰囲気の彼は、ニッと気持ちの良い笑顔を見せてくれた。
しかも、胸の辺りに空っぽのハートがついている。枠だけはピンク色の、例のあれ。
「う、うん。花井杏です、よろしくね」
「杏ちゃんだね。オレは佐久間広夢。広夢でいいよ」
「広夢、くん」
フレンドリーに挨拶してくれた彼の名前を呼ぶ。
広夢くんがもう一度笑顔を見せてくれたと同時に、彼のハートの真ん中にほんの少しだけピンク色がついた。
挨拶しただけで、好感度が上がった……?
そんなこともあるんだ。
広夢くんか。わんこみたいで可愛いのに、かっこいい。いきなりこんなイケメンが隣の席なんて、もしかしてめちゃめちゃ運が良いんじゃない?
しかも、攻略対象みたいだし。
単純かもしれないけど、なんかこれからの学校が楽しみになってきた。
体育祭は好きな人の活躍を見て、学園祭は彼氏と一緒に回って、クリスマスやお正月も一緒に過ごす。放課後デートもいいよね。
高校生の時は、結局好きな人に告白出来ずに終わってしまった。
考えてみたら、これって理想の高校生活を疑似体験するチャンスなんじゃない?
不安ばっかりだったけど、ちょっと楽しみになってきたかも。
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