上 下
8 / 44

8話 ゲームのサポート役

しおりを挟む
「続きは歩きながら話しましょう。次の電車に乗らないと遅刻です」
 
 三木さんにそう言われ、二人で最寄り駅に向かう。自宅から最寄り駅までの道のりを歩いていると、現実の世界とは違うものばかり目につく。 
 
 やっぱりここは本当にゲームの中なんだよね。これからしばらくここで暮らすなら、道も覚えないと。
 
 学校のことや私がいつも一緒にいるらしい友達の説明を受けながら、三木さんと道を歩く。
 
 最寄り駅は、各駅停車の普通列車しか止まらない小さな駅だった。駅のホームには、私たちと同じ制服を着た男子生徒が二人いた。
 
 あれ……? 男子の一人の心臓の辺りに、ハートみたいなものがついてる。枠だけはピンク色なのに、中身は透明で空っぽ。
 
「胸の辺りにあるハートみたいなもの、見えますか?」
 
 小さな声で、三木さんに囁く。
 
「花井さんへの好感度ですよ」
「え、……ああ。なるほど」
 
 一瞬驚いちゃったけど、そういえばここゲームの中だったんだと思い出して納得する。
 
「もう一人はハートありませんね」
「攻略対象しかハートはないんですよ。女性に興味がない人や彼女がいる人は攻略出来ません」
「けっこうリアルな設定なんですね」
 
 停車した電車に乗り、空いている席に座る。電車の中はそこまで混んでいなくて、三木さんも私の隣に座った。
 
 辺りを見渡すと、さっきの男の子以外にも同じ制服を着た男女が六人くらいいる。そのうちの半分の子はハートがついていたけど、みんな中身は空っぽ。
 
 私の行動によって好感度が上がるのかな。
 何人くらい攻略対象がいるんだろ。
 
 なんとなく三木さんの胸の辺りをチラリと見ると、ハートはついてない。社員なんだから、当たり前か。
 
「三木さんは、ハートないんですね」
「攻略したいんですか?」
「え? そういうわけじゃなくて。ただちょっと気になっただけというか」
 
 しどろもどろになっていたら、クスリと笑われてしまった。
 
「僕は攻略対象じゃなくて、サポート役ですよ。攻略のヒントをくれるキャラ、よくいるじゃないですか。僕はそれです。世話焼きな一つ年下の幼なじみって設定なんですよ」
 
 淡々とした説明を受け、なるほどと私は頷く。
 
 そういえば、一作目は主人公の弟がサポートしてくれたな。でも弟と違って幼なじみとは血が繋がってないし、三木さんみたいなイケメンの幼なじみがいたら、恋に落ちてもおかしくないような気もするけど……。
 
 小さい頃からずっとお隣さんなら、弟みたいなものなのかな?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼女の幸福

豆狸
恋愛
私の首は体に繋がっています。今は、まだ。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓
恋愛
 十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。  だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。  そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。  しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

こいラテ。生徒会長ルート

真鶴瑠衣
恋愛
高校三年生の冬。私は生徒会長のことが好きだった。 …… ふたつの選択肢から、生徒会長とのハッピーエンドを目指そう。 オートセーブ対応。 選択肢を間違えても何度でもやり直しが可能。 同じ選択肢を選んだ際は、早送り機能があるから安心です。

処理中です...